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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
絶縁王女と幸福な結末

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413.騎士は合わせる。


「う…わぁ……。」


最初に声を漏らしたのはアラン隊長だった。

煌びやかな照明、金や宝石の散りばめられた装飾、白く光る大理石、甘い香り、人の熱気、……深紅のドレス。

夢の中みてぇな光景に、口が開いたまま固まった。


「素敵ですねぇ…。」

次に小声でエリック副隊長が呟いた。

目の前で優雅に踊る姿に声だけでも俺と同じで呆気にとられているのがよくわかる。今プライド様と踊っている人に、俺達全員が釘付けだった。

最初のステイルとのダンスだけでもすげぇ綺麗で、瞬きすら忘れた。今までだって護衛としてプライド様がダンスしている姿は見たことがあるけど、それでも、…何度だってあの人に目を奪われる。


「すげぇ…。」

堪らず今度は俺まで声が漏れた。

ジルベール宰相の後、プライド様に手を取られたその人が踊っているのを俺は初めて見た。もう、現実感がなさ過ぎて全部夢なんじゃねぇかと思っちまう。

プライド様が腕を潜る、綺麗に回って深紅のドレスが揺れた。更にプライド様の背中がしなるように反ればしっかりと支え、観客の歓声の後にはまた引き戻した。あまりにも優雅な立ち振舞いに、時間すら忘れそうになる。





「流石、見事な立ち振舞いだな。……騎士団長」





副団長も。と来賓に紛れて俺達の所に戻ってきたカラム隊長の言葉に、近衛騎士全員が頷いた。

ジルベール宰相の後、プライド様とティアラが手を取ったのは騎士団長の父上と副団長のクラークだった。

最初、プライド様とティアラがこっちに来た時は心臓に悪かった。俺達の横に並ぶカラム隊長にだろうと思っても、王女相手に皆がそうしてるように俺も手を差し出したらそれだけで心臓がバクバクいった。

しかも、手を取ったと思ったら父上とクラークだ。レオン王子の時みてぇにまた俺達の周囲から歓声が上がった。

虚をつかれたみてぇに目を丸くする父上と、ティアラに笑みで返しながら可笑しそうに父上の背中を軽く叩いたクラークがダンスフロアに吸い込まれていった。

ステイルも、ヴェスト摂政の夫人の手を取ってフロアに上がっていて、父上とオレとを見比べて少し笑ってた。…俺もこんなところで、しかも相手がプライド様で父上のダンスを見ることになるとは思わなかった。


……父上もクラークも、すげぇダンス上手いし…。


教養としてある程度知ってても、今まで一度も俺達の前で踊ったことない二人が何で!って思ったけど、あまりにダンスが凄過ぎてどうでも良くなった。しかも、父上とクラークは息ぴったりだ。

まるで同じ人間が踊ってるみてぇにステイルに合わせてプライド様とティアラをリードした。プライド様も、ティアラも楽しそうで、クラークは勿論だけど…父上も少し笑ってた。


今までの来賓と同じように、父上もプライド様と途中から何か話し出していた。

音楽に消されて何も聞こえねぇけど、父上からの言葉にプライド様は苦笑いしたり、首を振って何か訴えるような顔までしてた。そして次には、…顔が少し赤く染まった。どうしたのかと思ったら次には急に表情が固まって。父上に何か怒られたのかなと思えば、困ったように笑って何かを言うプライド様に今度は何故か父上も訝しむような顔をしてた。次の瞬間には、プライドの真っ赤なドレスが父上の手でくるりと舞って、もうそれで頭がいっぱいになった。

ダンスが終わる頃には、父上もプライド様も笑顔で手を取り合って挨拶をしていて…本当に夢でも見てるような時間だった。

父上がプライド様と礼をして、クラークと一緒にゆっくりと俺達のところに戻ってくる。プライド様とティアラがその背後をついてくるように歩いてきて、そろそろカラム隊長かなと思う。二人が前を過ぎようとする度に男性全員が手を差し出す。取られるわけないとわかっても、この人達へ伸ばしているってだけで誰もが手を緊張で湿らせ



「えぇ、踊りましょう。」



プライド様が…俺の、手を。

柔らかな笑顔を真正面から俺に向けてくれて、それだけで息が止まった。周囲が一気に騒ついて、俺も自分の目が見開かれるのがよくわかる。

言われた意味がわからなくなって、手を握られても足が最初は動かなかった。プライド様が笑いながら俺の手を両手で包んで引き寄せる。


「大丈夫!任せて。」


この人には抗えない。

プライド様の両手に、言葉に、笑顔に。その全てに引き寄せられて、足が動く。周りを見回す余裕もなくて、眩しい照明の下に足を伸ばす。カン、カンッと靴と床が響く音が妙に頭に響いた。途中からプライド様に握られた手ばかりに目がいって、顔が熱くて思考が焼ける。

中央まで足を運ぶと、俺の手を握っていた両手が解け、片手が俺の手のひらを握った。手のひら同士が合わさって、はっきりとプライド様の温度を感じただけで心臓が飛び出そうになる。声も出なくて、その間にもプライド様が俺の背に手を回す。柔らかなその腕が俺に触れてるってだけで全身の血が巡って死にそうになる。

「同じように」と小さくプライド様が俺に唱える。その声だけでも頭が真っ白になりかけて、この人に俺の所為で恥をかかせたくねぇってことだけを原動力に俺もプライド様を握り返し、その腰に触れた。

ドレスのつるつるとした質感と、その下に確かにプライド様の身体を感じられて。また、心臓が跳ね上がった。

音楽が流れ、俺もプライド様と一緒にステップを踏む。プライド様の足取りに合わせて、何とか今までのダンスを思い出してそれらしく踊れたけど、今までの人達と比べたら下手クソだ。そこまで考えて落ち込むと、同時に頭が少し冷えて、やっと顔を上げられた。

ステイルが、とうとうどこかの令嬢と踊ってる。ティアラがアラン隊長と踊ってた。さっきまで一緒に居たのに全然気づかなかった。アラン隊長も少し緊張気味だけどやっぱり上手い。


「アーサー、とっても上手よ。踊ったことあるの?」

プライド様が優しく声を掛けてくれて、目が覚める。

いえそんな。と口籠もりながら、騎士本隊になってからは最低限の教養で義務付けられていたと説明する。


「…でも、誰かとこうして踊るのは初めてです…。」

しかも相手がプライド様。こんなの贅沢過ぎる。

ダンスの練習してみた時は、どうせ実際は踊ることなんてねぇだろと思ってた。でも今だけは練習しといて良かったと死ぬほど思う。

プライド様が「初めてなんてすごいわ」と褒めてくれる。そのまま俺に手をあげさせ、中を潜った。目の前でプライド様が舞う姿がすごく綺麗で、至近距離過ぎて眩しくて目が焼けるかと思う。耳まで響く心臓の音がプライド様にまで聞こえそうで、……そんなンなったら恥ずかし過ぎて死ぬ。頭の中で落ち着け落ち着けと必死に繰り返し叫び続ける。

ほら、上手と。どう考えてもプライド様がリードしてくれてるのにそう笑う。こんな綺麗なプライド様を至近距離で、その身体に触れて、俺の手の中で舞ってくれる。幸せ過ぎて一瞬このまま死んでも良いと思えた。

見惚れていると、うっかりプライド様に言葉を返し忘れたことを思い出す。慌てて顔を向ければ一緒に足を運んでくれながら、プライド様はじっと俺を見つめてた。やべぇ、失礼なことをと思ったら


「格好良いわね、アーサー。」


ふふっ、と花が咲くみてぇにプライド様が笑う。

心臓が爆発する、指先が強張る、うっかり足が止まりそうになる、……全身が、熱くなる。

こんなところで、やめて欲しい。本気で頭が馬鹿になりそうで、反射だけで足を動かし身体を捻る。こんなに近くて、くっついて、今俺だけがこの人に触れることを許されている世界でそんな風に言われたら、変な欲まで出ちまいそうで。

なのに俺の気もしらねぇでこの人は本当にどんどん嬉しい言葉ばっかくれるから。


「ティアラが催しを決めた時。絶対アーサーとも踊るって決めてたの。」

満面の笑みで、信じらんねぇことを話すから。

本当にいつか、俺の身体がこの人の言葉だけで焼け死ぬんじゃねぇかと本気で思う。

なんでですか、と口籠もりながら何とか言葉にしてみるとプライド様が俺の手の中でくるりと回った。「だって」と言葉で切ると、次の瞬間俺の手の中に綺麗に収まった。



「私の騎士だって、世界中に自慢したいもの。」



悪戯っぽく笑う姿が眩しすぎて息が詰まった。

本当にこの場で崩れ落ちちまいそうなのを、足で踏ん張って堪えた。目眩がして上手くプライド様の表情が見えなくなる。

この人が、自慢したいくらいの騎士になれたことがたとえ世辞でも、堪らなく嬉しくて。本当に、泣きたくなるくらいに〝この人の〟騎士だということが幸せで。

思わず抱き締めたくなるほど、この人の存在が大き過ぎて。


「…っ、…俺も…自慢です。」


なんとか絞り出せた言葉がそれだった。

この人の騎士でいるということが、言いようもないぐらいに誇らしい。こうして自慢に思って貰えたことが、一生胸張れるくらいに。

俺の言葉に嬉しそうに笑ってくれたプライド様が、指先だけで俺の手を握り返してくれた。きゅっ、と握られた指先が火の粉みたいに熱く肩まで燃やす。

音楽が終わり始めて、身体を一緒に揺らす。腕の中で幸せそうに笑んでくれるプライド様に、夢なら一生醒めないでくれと心から願う。

音楽が止み、プライド様に合わせて礼をする。拍手に包まれて、まだ夢の中だとぼんやり思う。


「ありがとう、アーサー。」

礼を言うのはこっちなのに、先に言われて上擦った。こちらこそありがとうございます、と何とか舌を動かすとプライド様は最後に小さく手を振ってくれた。

騎士団のいる場所へもどった後、とうとうプライド様がカラム隊長の、そしてティアラがエリック副隊長の手を取った。招待された騎士団全員が王女に手を取られた栄誉に、大広間中が沸き立った。

カラム隊長の手を取ってダンスフロアに歩いていくプライド様の背中に、胸が温かい。



ひたすらにあの人の騎士でいられる今が、幸福過ぎて。


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