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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
無関心王女と知らない話

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そして報復する。


「セドリック王子殿下。……一つ、勝負をしましょうか。」


勝負?と顔を上げるセドリックにステイルは笑いを噛み殺しながらにこやかに「ええ」と短く答えた。


「もし貴方が勝てば何でも一つ問いに答えましょう。…ティアラについてでも。」

ぴくっ、とその一言でセドリックの左肩が上がった。まことですか?と尋ねられ、ステイルはにこりと微笑んで返した。自分でも性格が悪いと思いながら、それでも誘うように両手を広げ、いかがでしょうか?と尋ねる。


「…わかりました。」

受けて立ちましょう、と覚悟を決めたように頷くセドリックに、ステイルは軽く言葉を繋ぎながらアーサーに視線を投げた。

ステイルの表情に悪い予感を受けながら、呼ばれた事を理解したアーサーは不安げな表情で二人に駆け寄った。

自分の横に控えたアーサーの肩にステイルは軽く手を置く。ポン、という音の後にステイルは「ルールは簡単です」と状況を理解できないアーサーを置いてセドリックに言葉を続けた。


「次は剣だけでなく格闘術も加えた模擬戦にしましょう。僕かアーサー殿に一勝でもすれば、セドリック王子殿下の勝利です。」

はッ⁈と思わずといった様子でアーサーが声を上げる。

セドリックの前だからということもあり、それ以上の言葉は抑えたが、驚愕に見開かれるその目が「なに言ってンだ⁈」と叫んでいる。だが、アーサーのその視線を理解しながらもステイルは話を止めない。


「シンプルに膝をつくか倒れるか、剣を落としたら負け。剣を当てたら勝ちとしましょう。ただし、騎士のアーサー殿は〝剣無し〟で。僕は特殊能力を使いません。」

ステイルの言葉に今度はセドリックが驚いた。

ステイルの特殊能力無しはまだ良いが、アーサーは丸腰状態ということになる。単に武器がないのだけではなく、リーチが短い状態で剣に挑まなければならない。それでは公平どころか、アーサーに怪我を負わせてしまうのではないかとセドリックは顔を青くする。


「御心配なく。アーサー殿は姉君を守る近衛騎士ですから。」

強いですよ?とそう言ってアーサーの肩を再び数度叩くステイルは、セドリックの目から見ても少し自慢げだった。

それに対してアーサーは、丸腰ということよりもセドリックとの模擬戦ということ自体に戸惑っている。「あの、御説明願えますか…⁈」と訴えるアーサーの肩を掴み、ステイルは自身へと引き寄せた。そのまま潜める声で口元を隠しながらアーサーへ耳打ちする。「料理の恨みだ、本気でやれ」と囁かれ、思わず口の中を飲み込むアーサーに最後その背をバシンと叩いた。「では、お願いします」と言ってアーサーをセドリックの前へと押し出してしまう。


「因みにステイル王子殿下。もし、私が二敗した場合は…?」

当然あるのだろう、と思いながらセドリックは剣を構えた。

アーサーもセドリックに対し手合わせの準備をしながら、少しでも現状を理解しようとステイルの方へ顔を向けた。ステイルやセドリックと違い、鎧姿に剣まで腰に差したままのアーサーは二人よりもかなりの重装備だ。

セドリックの問いに、二人の邪魔にならないように数歩下がりながらステイルは「そうでしたね」と一言返し、漆黒の瞳を鈍く光らせる。


「もし僕ら二人が二勝したら、今この場でのことは全て不問。ということでいかがでしょうか?」

にこやかにそう告げるステイルに、アーサーは軽く肩を上下する。穏やかな声で証拠隠滅を計るステイルがまたジルベール宰相に似てきたなと心の中だけで思った。

セドリックが「それだけで良いのですか」と逆に目を丸くする姿に、アーサーは若干良心が咎める。溜息を吐きながらガチャガチャと手の鎧部分を外し、前腕から指先まで外すと足元に置いた。


「?手…外されて良いのですか?」

セドリックが不思議そうにアーサーの素手へと目をやった。

逆に自分とステイルは腕の部分は防護を付けているというのに、と腕の鎧部分とアーサーを見比べた。

するとアーサーは「いえ、こっちの方が安全なので」と言って、腰の剣は外さずそのままに腕を構えた。どう考えても素手よりも鎧を付けた方が安全なのだが、と思いながらもセドリックは取り敢えず頷いた。軽量化の意味もあるのかもしれないと思い直し、ステイルの合図で一気に地面を蹴る。

構えのままアーサーに駆け、セドリックが最初に鋭い突きを繰り出した。だが、アーサーはそれを一度の踏み込みで大きく下がり、避ける。突きの体勢のまま前のめりになったセドリックが、深追いせずに二、三足下がり剣を構え直す。すると今度はアーサーの方がその場から地面を強く蹴り、一瞬でセドリックの懐まで飛び込んだ。


たった〝ひと蹴り〟で。


信じられない速さで一度に距離を詰められたセドリックが「なっ⁈」と思わず声を上げる。上肢を仰け反らせ、迎え撃つべくアーサーに剣を振


ドガッッ‼︎‼︎


─ る、前に。

アーサーの拳が、ひと先速くセドリックの腹部へと到達した。

グ、ァッ⁈と稽古用の鎧を装着しているとはいえ拳の衝撃が響くほど伝わり、セドリックは肺の中を吐き出し、呻く。

膝を突かずに何とか堪えたが、あまりの衝撃に腹部を押さえたまま動けない。至近距離に来たアーサーに手先だけで剣を器用に握り直し、死角を狙って剣を振った。しかしアーサーは剣を握る腕の方を片手で受け止め、掴んで身体を捻り


背負い上げ、セドリックを地面へ叩きつけた。


鎧部分と身体が勢い良く地面に叩きつけられる感覚に、セドリックは目を剥いた。

激しい衝撃音と振動に息が詰まり、地面に背中を付けた後もすぐには起き上がれなかった。あまりにもあっという間過ぎて、仰向けになったセドリックは茫然と空を見上げてしまう。自分の絶対的な記憶力で繰り返し思い出してみても、全く理解に及ばなかった。アーサーが何度も消えては現れ、腕を取られたと思えば次には地面に叩きつけられていたのだから。


……ここまで、一瞬で終わるとは…。


油断はしなかった。だが、あまりにも自分の予想の遥か斜め上にいくほどアーサーが強過ぎた。

暫くそのまま呆けようとしていると、彼を叩きつけた本人であるアーサーがセドリック以上の青い顔で覗き込んできた。


「ッも、申し訳ありませんセドリック殿下‼︎思わずっ…け、怪我とか無いですか⁈」

本当に申し訳ありません‼︎と声を上げるアーサーは、その場で膝を突くと背中に手を添えるようにしてセドリックを丁寧に起こした。

あまりの血相を変えた様子に虚をつかれたセドリックは、言葉も出ずに目だけでアーサーを見返した。アーサーが手慣れた様子でセドリックの意識確認から外傷まで確認し出したところで慌てて「だ、大事ありません」と答えた。

そこでやっと安堵して息を吐けたアーサーは、自分から身体を起こそうとするセドリックより先に立ち上がり、手を貸した。


「本当に申し訳ありません。まさかここまで…。」

再び頭を下げるアーサーへ、セドリックは胸の前で両手のひらを見せて断った。

頭を上げるようにアーサーに願いながら、ふと鎧を外したアーサーの両腕を見る。あの時の「安全」というのはアーサー自身のことではなく、拳を受ける自分自身のことだったのだと静かに理解した。防護服越しであれほどの衝撃だったのならば、鎧の腕で受けていたらどうなっていたのかと考えればぞっとした。それこそ肋骨程度は容易に折られていただろうと思う。

あまりに謝り倒すアーサーを余所に、ステイルは口を手の甲で隠しながら顔を背けて肩を震わせていた。はははっ…‼︎と堪え切れない笑いが漏れてしまう。

ステイルの目から見ても、模擬戦中のアーサーは本気だったのだから。手の鎧部分を外した時は、人の良いアーサーはやはり手心を加えるのかとも思ったが実際は〝本気を出してしまうからこそ〟の行動だった。


突然のステイルからの提案に最初こそ戸惑ったアーサーだったが、やはりそれなりに鬱憤も溜まっていた。

過去の過ちだけでなく、自分宛の料理を食べられていたこと。そして妹のようだったティアラの婚約者候補、…ついでに今までのプライドに関する誤解させられたことによる八つ当たりも無自覚に大人気なく込められていた。

セドリックとの模擬戦の打診を受けた瞬間、拳を叩き込むことだけは確定していた。更に背負い投げもアーサーの技量ならば手心を加えればセドリックが息を詰まらすほどに衝撃を受けることはなかったこともステイルは知っている。


…あの、アーサーが本当に本気を出すとはっ…‼︎


そう思うとまた笑いが込み上げたが、セドリックが負けたのを嗤っているように捉えられてはいけないと、それ以上は口の中を噛んで堪えた。

大丈夫ですか、と言葉を掛けながらいつもの落ち着いた笑みで二人に歩み寄る。


「流石アーサー殿。セドリック王子殿下をここまで圧倒するとは、僕も驚きました。」

圧倒すること自体は予想通りだったが。とそう思いながらステイルはアーサーの隣に並び、「いかがでしたか」と間を持つようにセドリックに尋ねた。


「素晴らしい腕前でした。流石はプライドの近衛騎士殿。……とても私にも真似できそうにない。」

最後の呟きは、言葉に反して嬉しそうに声が浮き上がっていた。

セドリックにとっては貴重な〝真似出来ない技術〟だ。最初の拳に至っては純然たるアーサーの身体能力という、真似のしようがないものだった。

セドリックの眼差しにアーサーへの尊敬が強まったところで、ステイルは自分との模擬戦に身体は大丈夫かと尋ねた。問題ありません、と答えるセドリックに、ステイルがアーサーと再び入れ替わるようにして前に出る。

お疲れでしたら間を空けますが、と確認したがセドリックはやはり首を横に振った。


「では、今度は僕とですね。」

肩をぐるぐると回し、再び模擬剣を手に取るステイルは大分機嫌が良かった。

アーサーもそのステイルの様子に気付き、額に冷たい汗を滴らせながら数歩二人から距離を取った。

アーサーと違い、ステイルはセドリックと剣術のみであれば手合せの時点では拮抗していた。更に、今回もお互い条件は同じ。それであればまたセドリックはステイルに拮抗する可能性はある。

アーサーの合図で同時に駆け出した二人は、最初は再び剣のみでの攻防が続いた。セドリックが隙を突いて剣を振れば、ステイルが剣先を読んで逸らすようにそれをいなし、ステイルが剣を振ればセドリックは同じようにしてそれをいなした。

カンッ、カンッと暫くはまた最初のような打ち合いが続き、セドリックもこのままでは持久戦で自分が不利かとも考えた。一時休息を取ったステイルと違い、セドリックは戦い続きだったのだから。

最初に仕掛けるべく、セドリックは剣を扱いながら足に力を込めた。剣を交差させ、力での押し合いに敢えて持ち込んでいく。一手先に上から体重を掛けたセドリックの方が体格的にも優先だった。ステイルの背が僅かに反り、一歩足を後退させて地を踏み締める。カタカタカタカタと、微弱に剣同士が震え出した時。


「……貴方には感謝しています、セドリック王弟殿下。」


身体の軸に力を込めたまま、ステイルは真っ直ぐとセドリックを見つめた。

突然の声掛けと改まった呼び方に陽動かと警戒もしながら、セドリックも漆黒の瞳を真っ直ぐ覗いた。アーサーに一敗した彼にとって、ステイルとの模擬戦は最後の機会。気を抜く訳にはいかない。


「僕や姉君にとっても、…正直ティアラとの離別は憂いでもありました。我が国に残ってくれることに正直安堵しています。」

お恥ずかしい話ではありますが。と苦笑するステイルにセドリックは複雑そうに顔を顰めた。

完全にステイルの真意を測りかねている。それが兄としてのものなのか、それとも男としてのものなのか。セドリックには全く判断がつかない。

ギリギリと剣同士が鬩ぎ合い、ステイルが反らした背をセドリックに真っ向するようにしならせる。


「それに、国際郵便機関は三年前から姉君の望みでした。貴方のお陰でこうして軌道にも乗り、ハナズオ連合王国の協力も得られました。」

そう続けるステイルは柔らかく笑った。

渾身の力を込めているにも関わらず、その笑みは今までセドリックに向けた中で一番柔らかなものだった。


「本当に、ありがとうございます。……これからも郵便統括役として期待しております。何かあれば僕からも協力は惜しみません。」

これからも宜しく御願いします。となだらかに伝えるステイルにセドリックは目を見開いた。

まるで認められたような言葉に知らず知らずに胸が高鳴ってしまう。拮抗した筈の手の力が弛みかけたのを自覚し、歯を食い縛り気を引き締め




「だが、まぁ。」




突然、先ほどと違う低い声色がステイルから放たれた。それに一瞬だけセドリックが耳を疑った瞬間。






「貴方がティアラに最も相応しいとも、これまでの姉君への無礼を許すつもりも毛頭ないが。」





にこやかな笑顔のまま、ステイルは敢えてセドリックが押してくる力の方向に一気に沿うように後退し、パッと剣を手放した。

突然体重を掛けていた方向に重量が解放され、セドリックは前のめりにバランスを崩す。その場に一瞬で屈んだステイルの足が、セドリックの片足を蹴り払う。足が地面から離れ、それでも転ぶまいと剣を地に刺しもう片足で踏み止まろうとするセドリックの両肩をステイルが掴む。

一瞬だけセドリックの赤い瞳とステイルの黒の瞳が合わさり、次にはぐいっとセドリックが手前に引き倒された。前のめりに倒れ込むセドリックを台にし、ステイルは軽々と長身の彼を飛び越えた。くるり、と円を描き、セドリックの背後に着地したステイルは、振り返りざまに彼の背中を躊躇いなく蹴り飛ばした。

腕を組みセドリックの背中を真正面から蹴り飛ばすステイルが、明らかに悪い笑みを浮かべていたのをアーサーははっきりと見た。

前に重心が行っていた上、背後から蹴り飛ばされたセドリックは勢いよく倒れ込んだ。流石に突っ伏すことはなく反射的に腕は突いたが、膝を突いてしまった状態は完全にセドリックの敗北だった。

またもや一瞬で決着をつけられてしまったセドリックは少し放心した後、落ち込むように地面を握り締めた。


「…だからといって、邪魔をするつもりもありませんから。」

立てますか、とまた紳士的な声を掛けるステイルは彼の正面に回り込み、片膝を突いてセドリックに手を差し伸べた。促されるままに手を取ったセドリックは「ありがとうございます」と返しながら、再び立ち上がる。模擬剣を持っていない方の手で膝の土を払いながらもセドリックの表情は晴れなかった。

敗北したことよりも、ステイルの言葉による打撃の方が大きかった。プライドのことを許されていないのは承知だが、それを改めて指摘された上にティアラに相応しくないと言われれば言葉が出ない。勝負にも負け、セドリックにとって文字通りの完全敗北だった。

ステイルの言葉により、プライドへの過去の所業に再び顔が熱くなり、顔を火照らせながらも瞳は激しく揺れていた。


「そろそろ戻りましょうか。僕もヴェスト摂政の元に戻らなければ。アーサー殿も騎士団演習場に戻る頃では?」

明るい口調で投げ掛けるステイルに、セドリックも浮かない表情のまま笑みを返した。そうですね、と言いながら勧められるままに着替え室の一つへ向かう。

アーサーを先に瞬間移動させたステイルも、セドリックと一緒に別の着替え室の前に立つ。そして入室する直前に「セドリック王子殿下」と彼を呼び止めた。

肩を丸くし、二度も地について乱れた金髪をそのままに振り返るセドリックへ、ステイルはにこやかに笑いかけた。


「因みに。僕にとってティアラは大事な妹であり、家族です。生涯それは変わることがありません。ティアラにとっても、それは同じことですよ。」


パタン、と。

綺麗に一時停止したセドリックを置き、ステイルは一足先に着替え室へと消えた。

ステイルが居なくなった後も、暫くセドリックは固まり続けた。目を丸くし口を半開きに固めたまま、瞳の焔だけがユラユラと揺らめいた。


「⁈…それ、…は…、……つま…り………⁈」

放心した表情がじわじわと驚愕へと変わっていく。同時に身体も微かに動き、行き場のない手が上がってはステイルが消えた着替え室へ意味もなく伸ばされた。細かに震えはするが、口もパクパクと開いたまま声も出なくなる。


やっとセドリックへ一矢報いたステイルが、着替え室で密かに口端を引き上げていたのを彼は知らない。


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― 新着の感想 ―
ステイルの激重感情大好きなので嬉しい。 昔の宣言通り、誰が許そうともステイルだけは絶対に許さないのを有言実行していて愛しかない
[気になる点] ステイルの心の狭さがなあ。なんとも応援しにくいんですよねえ。いい加減許してやれよとしか思えない。逆恨み成分もたっぷりだし。
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