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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
疎まれ王女と誕生祭

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387.義弟は問う。


「本当に申し訳ありません、ステイル様。折角の誕生祭に…カラムがお騒がせしてしまい。」


挨拶の後、騎士団長が深々と俺に謝罪をしてくれた。

俺の誕生祭にも関わらず部下であるカラム隊長が注目を浴びてしまったことに関する謝罪だった。いえ、とんでもないと返しながら俺からも笑みを返す。正直そちらはどうでも良い。問題なのは…


「本人からも話があると思いますが、家の事情で暫くはカラムが代理で出席するということになるそうです。」

あくまで代理出席と告げる騎士団長に、短く返しながら一瞬だけ背後に控えているアーサーに目をやった。俺と目が合った瞬間ビクリと肩を震わせたが、それ以上の反応は耐えていた。少なくとも俺とアーサーの中での見解は違う。試しに「摂政業務中に拝見しましたが、カラム隊長は特別休暇を今回取られていると…」と聞いてみれば「カラムはもともと騎士として参列予定でしたので。少々配慮させて頂きました」と返ってきた。…一応筋は通るが。


…カラム隊長。

まさか、彼がプライドの婚約者候補だったとは。

ボルドー卿のことは知っていたが、全くの予想の範囲外だった。

以前、怪我を負ってしまいアラン隊長共々責任を問わさせてしまったことの罪滅ぼしか。婚約者候補ともなれば、少なくともプライドがその件に関して感謝こそすれ恨んでなどいないという意思表示にもなる。

それとも、単に俺の知らない内にプライドにはカラム隊長への恋心が…いやだが俺が知る限りはそんな、……………………まぁ恋愛など俺も全くの専門外ではあるが。

誰にでも分け隔てないプライドからの特別な恋愛感情など、今まで見たこともない。一度疑ったのもレオン王子くらいだ。

または、失礼な言い方をすれば単なる帳尻合わせか。もしプライドに決めた相手がいればそれもあり得る。母上の指定は三名。一人を決めたら残りを融通の利く相手で埋めるのも可能性としてはあり得る。ならば、残り二名が本命の…。……しかし、カラム隊長は人格も能力も申し分ない相手だ。しかも、プライドを命懸けで守ってくれたという経緯もある。彼ならば王配になったとしても立派に職務を果たし、プライドを守ってくれるだろう。少なくともセドリック王子よりは、…………………。


「ステイル様、どうかなさりましたか?」

副団長の声で一気に現実に戻る。

大丈夫です、来賓が続いていたので少し疲れたのかもしれません、と笑みを作るとアーサーが無言で顔を顰めて俺を見た。…やはりコイツには隠せない。だが、公式の場で安易に俺に指摘もできないのか、ただ黙して睨んでくるアーサーから視線を逸らして再び会話を続行した。


…何故だ⁈いま、何故セドリック王子の名が頭に浮かんだ⁈


彼がプライドに好意を抱いているのは間違いないがプライドからかどうかはわからない!確かに今迄の可能性がある者の中では比較的に親しいがっ…‼︎

一人がカラム隊長であった以上、もう一人もプライドの親しい相手で埋められている可能性がある。たとえプライドの本命であろうとも数合わせであろうとも、候補の枠に入れられている以上はその人物が世界で最もプライドの隣に近い人物となる。

…そして、カラム隊長は見事その一人に選び抜かれた。


駄目だ、考えるとまた会話が止まってしまいそうになる。カラム隊長に関しては正直何の不満もない。ただ、ただっ…



羨ましい…‼︎‼︎



プライドに、そこまで信頼されたという事実がこの上なく!しかもどういう理由であろうともプライドが選んだということは、彼女に〝結婚しても良い〟と思われたということにもなる。


一体どれほどの幸福者か…‼︎


十七にもなってこんな子どものような感情を覚えるなどとは思わなかった。

ヴェスト叔父様が管理されてるリストさえ確認すれば、カラム隊長がボルドー卿としても招かれていたのかも確認できたというのに。…だが、二度とリストを探すことは許されない。今度ヴェスト叔父様にバレたら本当に部屋に入れて頂けなくなってしまう。


『次期摂政の第一王子が野盗のような真似をするな。…十七歳では子どもの仕業とも笑えない』


……。


『…ステイル。もう十七になったんだ、もっと大人になりなさい』


………ヴェスト叔父様の御言葉が、まるでいまこの時を想定していらっしゃったかのように頭をかけ巡る。

いや、むしろヴェスト叔父様ならば想定していたとしても不思議ではない。

ステイル様?とアラン隊長が声を掛けてくれる。いえ、なんでもと返すと副団長が「そろそろ我々は…」と切り出して下さった。気を遣わせて申し訳なく思いながら俺からも言葉を返す。……正直、騎士団でなくともこのままでは集中力が削がれたままだろうが。

気がつけば無意識に視線をアーサーへと注いでしまっていた。俺と目が合ったアーサーが一度目を丸くすると、騎士団長達を一度覗き込む。


「すみません、…自分はもう少しだけステイル様とお話をさせて頂いても宜しいでしょうか。」


……こういうところがまだ、俺が「大人になりなさい」と言われる所以だろうか。

無意識にアーサーに助けを求めてしまったことを自覚しつつ、笑顔で「僕は構いませんよ」と返す。構いませんどころか、実際は俺が頼んでしまったようなものなのだが。

騎士団長達が理解したように頷き、アーサーを残してその場から引いていく。侍女に新しいグラスに替えてもらいながら、アーサーが俺に向かい合う。今回の主役でもある俺と話そうと他にも来賓が集っているが、…まぁ少しくらい待たせても良いだろう。

アーサーが俺に向き直り「ンで」と小さく呟きながら、ゆっくりと口を開いた。


「だァから言ったではありませんか。あくまでカラム隊長は家の御都合ですと。」

「…ですが、アーサー殿も僕と同じ見解なのでしょう?」

「自分は、…まぁ。ステイル様と違い、短絡的な思考でしか物事を測ることのできない未熟者ですから。」

「………随分と達者な言葉遣いになりましたね。アーサー殿。」

「お陰様で。」


俺よりも冷静なアーサーに少し腹が立つ。

嫌味も上手くなったじゃないかと言ってやりたいが、どうせそれも俺のお陰と返してくるのだろう。むしろ、今の言葉全てにそれが含まれている。俺はこの場で瞬間移動を使って放り投げてやりたい気持ちをぐっと堪えた。

「アーサー殿はどのように御考えですか」と尋ねてみれば沈黙だけが返ってくる。やはりコイツとしても複雑な心境ではあるのだろう。敢えてそれ以上聞かず、俺も無言でグラスを傾ける。

何となく視線を投げれば、ちょうどセドリック王子の姿が目に入った。ここからの角度ではティアラは背中しか見えないが、セドリック王子の方は何やら懸命に話し掛けているのだけはわかる。

俺や姉君と違い、ティアラとはセドリック王子は防衛戦のあの時くらいしか大した接点もない。しかも、ティアラは俺に対してもセドリック王子の話題になると一言「嫌いです‼︎知りませんっ!」ばかりだった。…あいつがあんなに人を嫌うのも珍しいが、まぁ姉君への無礼を鑑みれば当然だろう。

俺だってジルベールの過去については許していない。そう思えばティアラがこうして誰かを嫌うようになってしまったのも俺の影響かと心配になる。できればプライド同様ティアラにも真っ直ぐに育って欲しいのだが。


……ティアラ。


プライドだけでは、ない。ティアラもまた、婚約者候補を三人決めた。

今は誕生祭の催し企画でジルベールや母上達と忙しそうだが、…単に気を紛らわせているようにも見える。プライドが十六歳の誕生祭に学校制度で頭を埋め尽くしていたように、アイツも何かでわざと意識を紛らしているように。

次期女王となるプライドは、婚約候補者とされるのは基本的に王位継承者ではない王族か、貴族だ。

だがティアラの場合、女王であるプライドの王位継承を揺るがさない為に他国の王族、貴族が相手とされる。ただし、貴族の場合は確実に身分が下がる。今代の王女は二人しか居ないし、好ましいのは王族だろう。何より、…他国の王族に嫁げば確実にティアラはプライドの女王継承権を脅かす心配がなくなるのだから。

プライドとティアラは、年が近い。

だが、たとえ女王となったプライドを暗殺したとしても、ティアラが他の王族の妻となっていれば継承権は得られない。それはそのまま他国にフリージア王国を差し出すことと同義になってしまうのだから。もし、万が一そうなった場合は母上が存命であれば、再び母上か…プライドに娘が産まれていればその娘か、…どちらもなければ一番王族に血が濃い者か、第一優先事項である予知能力の覚醒者が最終的には次の女王となるだろう。

だからこそ我が国では女王以外の王女の嫁ぎ先は第一王位継承者と年の近い者ほど他国の王族となることが多いのだから。

ティアラがプライドの命を狙うなど絶対に有り得ないが、その周囲の思惑に巻き込まれる可能性はゼロではない。ティアラの望まぬことに巻き込み、渦中へと引き摺り込もうとする輩も少なからずいるだろう。そういう連中からティアラを、プライドを守る為にもやはりティアラは他国の王族に嫁いだ方が安全といえる。


……正直、寂しくないといえば嘘になるが。


プライドと同じようにティアラとも共に育った。アイツが共に居てくれたからこそ、プライドを支えられると思えた部分も大きかった。兄妹として育ち、アイツの優しさに救われた部分も大きい。俺にとって間違いなく大事な妹だ。

プライドの隣に立つ者が選ばれ、更にはティアラが嫁ぎ…二年後には俺を取り巻く環境はガラリと変わっているだろう。兄馬鹿かもしれないが、もし欲を言えるならばティアラにはあまり遠くの国ではなくせめて近隣国の心優しい王族と一緒になって欲しいと思う。もっと言うならば、隣国の第一王子であるレオン王子であればとも思うのだが、……プライドと婚約解消をしたレオン王子とは難しいだろう。

本人達が全く気にせずとも、外から見れば遺恨まみれの勘繰りを受けるに決まっている。本当に惜しい事をしたと思わざるを得ない。もし、それこそレオン王子が当時プライドの婚約者ではなく、婚約者候補止まりであればティアラと婚約することになっても大した問題は残らなかった。本公表さえしなければ知るのはお互いのみ。プライドに別の婚約者が決まったところで、変に見られる心配もなかったのだから。


「婚約者候補…。」


また、頭が同じことを考え出す。駄目だ、今日までの間にちゃんとカラム隊長のことは心の整理をした筈なのに。実際、ああしてプライドと並んでいるボルドー卿としてのカラム隊長をみるとどうしても…‼︎


『…お前がもっとプライドやティアラに関心が薄ければ、リストどころか婚約者候補について最初から教えても良かったのだがな…』


ッまたヴェスト叔父様の言葉が‼︎‼︎

思わず頭を片手で抱えると、アーサーが「外に出ますか」と尋ねてくれる。いや、そんな暇はない。さっさと頭を切り替えて来賓との会話に戻らなければ‼︎折角この場を整えて下さったヴェスト叔父様の顔に泥を塗ることにもなる!

……だが、こればかりは仕方がない。

俺にとってプライドは全て。そしてティアラは大事な妹だ。この二人に関心を持つなと言われても無理な話でしかない。母上や父上と仲の良いヴェスト叔父様にだってそれくらいわかる筈だというのに。大体、それに関心がなければリストをわざわざヴェスト叔父様の目を盗んでまで探そうと思うものか‼︎

思わずグラスを割らんばかりに握ると、割る前にアーサーが「替えましょうか」と言って俺の手から没収した。空になった手を見つめながら、何か熱い視線を感じて思わず顔を上げる。すると、先ほどまでティアラと話していた筈のセドリック王子が俺とアーサーを見つめていた。

早々とティアラとは話が切り上げられたのか、恐らく話しかける機会をずっと窺ってくれていたのであろうセドリック王子に軽く会釈する。目が合ってしまったものは仕方ない。このままアーサーと会話中ということで他の来賓と同じように遠ざけることもできるが、…………急に、彼に尋ねてみたいことも浮かび上がった。

どうも、と名前を呼んで声を掛け、俺とアーサーの間に招く。新しいグラスを持ってきたアーサーは少し驚いて俺に視線を注いだが、なんとか口裏は合わせてくれた。


セドリック王子から挨拶や俺の誕生日の祝いの言葉を受け、礼を返しながら適当に会話を重ねる。

すると、アーサーが俺とセドリック王子に挨拶をして身を引いていく。押し留めようかとも思ったが、確かにこれ以上は俺との話を待つ来賓の反感をアーサーが買ってしまう。俺からも挨拶を返せば、セドリック王子からも「ぜひ、後で宜しく御願い致します」とアーサーへ挨拶を返した。

騎士団へと戻るアーサーの背中を見送った後、改めてセドリック王子と挨拶を交わし合う。話が例の書状でのやり取りの内容に移り、セドリック王子から改めて俺に礼の言葉が放たれた。


「本当にステイル第一王子殿下のお陰です。とても聡明で優秀な方だと、改めて思い知らされました。頭脳もさることながら、何より考察力が素晴らしい。次世代の摂政として貴方ほどの器はないでしょう。」

生き生きと語ってくれる彼の瞳に嘘偽りがないことは俺でもわかる。ありがとうございます、と返しながら俺からも彼に話題を振る。


「姉君の婚約者候補については僕も全く存じ上げませんが、その方にも全力で尽くさせて頂くつもりです。」

「素晴らしい。ステイル第一王子殿下と共にならば間違いなく安泰と言えましょう。」

……これは遠回しに自分もそのつもりだという意味だろうか。今の熱した頭ではどうしても穿った見方しかできない。


「そういえば、セドリック王子殿下の兄君方は如何でしょうか。失礼ですが、まだ婚約などのご予定は…?」

「いえ。兄達はどちらも未だそのつもりはないとのことでした。早くとも国を開き、貿易を円滑にするまでは。」

「そうですか。……セドリック王子殿下は、早く陛下方にお相手を見つけて欲しいとは思いますか?」

俺からの問いに、セドリック王子は少し目を丸くし、次には眉を寄せた。考えるように顎に指を添え、そして絞り出すように「そうですね…」と口を開いた。


「まぁ、私の場合はお恥ずかしながら兄二人に寄り掛かりきりだったところもありますから。」

そう言いながら照れたように笑うセドリック王子は、俺へと目をやり「ステイル王子殿下もご存知のことと存じますが」と続けた。彼がどれほどランス国王とヨアン国王を兄として想っているかはよく知っている。


「なので、まぁ…寂しい、と思う可能性は捨て切れません。ほんの数ヶ月前までは兄達だけが、私の世界の全てでした。」

…世界の全て。その言葉に、どこか親近感を覚えてしまう。やはり弟としては大事な兄姉にそう思うものか。数ヶ月前、という言葉にふと今は違うのかとプライドの顔が浮かんだが、今は気付かない振りをして話の続きを促す。


「ですが、…それでも、兄達には幸せになって欲しいという思いが強いです。たとえ婚姻が明日であろうと、…十年先であろうとも。私は、構いません。兄が望む未来と伴侶であれば、…もう何も。」

そう言って静かに笑むセドリック王子の顔は間違いなく国王を兄に持つ〝王弟〟としての顔つきだった。…悔しいことに、お陰で俺にも少し心の整理がついた。

そうだ、やはり姉妹を想ってしまうのは仕方ない。問題はそこで俺がどう動くかだ。

二年前にも俺はそう決心した。その為にこうして今も摂政業務と兼ね合わせて王配業務をジルベールから習っている。…やはり、問題などない。たとえプライドの隣に立つのがカラム隊長や、………億が一にもセドリック王子であろうとも俺は。

そう思いながらセドリック王子に「素晴らしい御心ですね」と言葉を返す。ありがとうございます、と笑んで返してくれるセドリック王子がふと周囲を見回し、俺と話すべく待ち続けている来賓を確認する。「それでは、私はこれで」と長らく御時間を頂き申し訳ありませんでした。と礼をしてくれた。俺も少しセドリック王子に対して以前よりは穏やかな気持ちになりながら言葉を返す。そして最後、去り際にセドリック王子は


「ステイル王子殿下、私は…───────────────────」


ッッッッッ⁈ちょっと待て‼︎⁉︎

予想外の言葉を放つセドリック王子に思わず思考が止まる。だが、セドリック王子は俺の反応に気付く前に俺への礼をするとそのまま速やかに去って行ってしまった。

待て、ふざけるな、それは、どういう、アレは、まさか、お前がプライドの婚約…⁈

この場には削ぐわない発言が喉までで詰まり、そこから出せない。俺が戸惑っている内にもまた雪崩れ込むように次の来賓からの挨拶に阻まれる。これ以上無下にもすることができず、相手をするが頭の中は再びカラム隊長を押しのけてセドリック王子のことばかりが頭を回り続けた。


……俺の人生で恐ろしく濃い誕生日になりそうだ…。


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