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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
疎まれ王女と誕生祭

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374.騎士達は頷く。


「うあー…ああああ……プライド様が婚約かよぉ…‼︎」


ドン、と力強くジョッキをテーブルに叩きつけながらアランが嘆く。

酔いとは別に顔を真っ赤にして零すアランにカラムが「もう三つ目だ。これ以上は硝子の破片を始末してやらないぞ」と窘めた。既に部屋の隅にはジョッキだった物体の破片が布袋の中に収められている。


「いやぁ…まぁ、でもプライド様が選ばれた方ですし、きっと良い御方ですよ。」

「当然だろ‼︎これで悪いヤツだったら俺達はどうすりゃあ良いんだよ⁈」

エリックの言葉に食ってかかるアランに、カラムが溜息を吐いた。「〝俺達〟と、私達を巻き込むな」と呟くが、ふとグラスの中身へ落とす視線は陰りを抱いていた。エリックもアランの言葉に苦笑しながら、いつもより多く酒を仰ぐ。


「ほんっっとに誰だよその幸せ者…‼︎あの大広間に居たってことは俺達も挨拶を交わしたかもしれねぇってことだよな⁇」

なぁ⁈とアランが今度は向かいの席に座っていたアーサーに投げかける。彼もまた、ヤケ気味のアランに部屋へ連れ込まれた一人だった。アランからの言葉に「そ、そうっすね…」と返しながらアーサーもまた酒を一口飲み込んだ。


「ステイルも知らねぇみたいでしたし、…全く見当もつきませんけど。」

「!ステイル様もご存知なかったのか、流石徹底しているな。」

アーサーの言葉にカラムが目を丸くする。第一王子すら知り得ないのならば、本当に一握りの者しか婚約者候補については知らないということになる。カラムへ「はい、恐らく間違いないと思います」と返すアーサーはそのままぐったりと額をテーブルに打ち付けた。


「………すげぇ気になります…。」

呻くように情けない声を漏らすアーサーにカラムとエリックが背中を叩いた。まだ許容量は超えていない筈だが、それでも酔い潰れたかのように項垂れるアーサーにアランが水を別のグラスに注いで差し出した。


「ティアラ様は恐らく国外の王族に嫁ぐんだろうけど、…プライド様は国内か、もしくはレオン王子の時みたいに王位継承権を外れた王子ってところか。」

アーサーの潰れっぷりを見て少し落ち着きを取り戻したアランは、頬杖をついて向かい席にいる三人の顔を眺めた。


「……。」

アランの言葉にアーサーはティアラのことに想いを巡らせる。

ステイルやプライドと同じ時に知り合った彼女はアーサーにとっても馴染みの深い存在だ。第二王女であるティアラがいつかは国を出て行くことはアーサーも当然わかっていた。だが、婚約者候補のことでティアラが嫁ぐ年月は実質的に一年は伸びた。それに少し安堵しつつ、…同時に寂しいと思う自分も居た。

プライドと相棒のステイルの妹であるティアラは、アーサーにとっても大事な妹のような存在なのだから。


……できりゃァ、あんま遠くの国じゃねぇと良いンだけど。


嫁げば気軽に会えなくなる。それでも近ければ手紙のやり取りはできる。ステイルの瞬間移動で会うことも可能だが、公式には難しいだろう。

婚約者候補発表の時から、アーサーはティアラの笑顔に違和感を覚えることが増えた。相手はティアラ自身が選んだのだから最悪な相手ではないだろうが、ティアラも色々思うところがあるのだろうとアーサーは思う。


…そォいうとこ、やっぱプライド様とステイルの妹だよな。


一人で背負い、笑顔で隠してしまう。力になりたいと思うが、こればかりはどうにもならない。王位継承権を確実に〝失う〟為にティアラが他国の王族に嫁ぐのは必須事項であることはアーサーもよくわかっていた。だからこそ、なるべくフリージア王国と交流の多い…そして近い国にせめて嫁ぐことになれば良いと思う。自分以上に、絶対に寂しがり別れを悲しがる姉兄がティアラには二人もいるのだから。…自分も相当寂しい、と自覚しながらそう思う。


そこまで考えて、アーサーは顔を小さく上げればアランの言葉にカラムとエリックがそれぞれ思考を巡らしている様子に気付いた。恐らく三人はプライドのことを考えているのだろうとすぐに察す。

近衛騎士としてプライドの傍に仕えている彼らは、国内の式典だけでなく国外でプライドが招かれた式典やパーティーに同席することも多かった。プライドに好意を抱く者は多い、だがしかし…


「プライド様が好意を抱いていそうな男性なんて、特にこれといっては思いつかねぇけどなぁ。」

「ですねぇ。自分もそう思います。プライド様は誰にでも分け隔て無…、………アーサー?どうした⁇」

アランに相槌を打とうとするエリックの言葉が途中で止まる。話の途中で隣に座るアーサーが突然自ら思い切り額をテーブルに打ち付け直したからだ。先ほどの頭が落ちるような振動ではなく、自ら額を攻撃するかのような衝撃がテーブルを通して彼らのジョッキを波立たせた。


「〜〜〜っ…いえ、ちょっと酔いを冷まそうと…。」

すみません、と謝るアーサーの顔は見事に真っ赤だった。考え過ぎて酒が回ったのか、とカラムがアーサーにグラスの水を飲むように促した。


…好意。


その言葉にアーサーは誕生祭中のプライドとセドリックのやり取りを思い出す。

会話までは聞こえなかったが、楽しそうに笑うプライドの姿やステイルが間に入った後にセドリックに向けてプライドが顔を真っ赤に火照らした瞬間を彼は確かに目にしていた。その上、以前にも彼はプライドから最高の笑顔を引き出している。

そして今夜も、最後にはティアラの元へとプライドが案内するようにして仲良く歩く姿はどうみてもお似合いの二人組だった。

アーサーがぐるぐると頭を茹で上げている間も、三人の話は続く。一体プライドの婚約者候補は誰かと、とうとう酔いに任せてカラムまでもが具体的に可能性のある者を並べ出す。


「敢えて親交が比較的多かった令息や王子といえば、ヤブラン王国のアクロイド家、ベロニカ王国の第二王子、ライラック王国の第一王子、ネペンテス卿の…」

「二番隊のブレアのことか?」

「違う、我が国の公爵家の方だ。」

「アネモネ王国の騎士団にも居ましたよ。自分が合同演習の時にお世話になりました。」

「アネモネ王国はねぇだろ〜?元婚約者の王子差し置いて結婚なんてしたら角が立つしよ。」

だから違うと言っているだろう!と、若干カラムが声を荒らげ気味に二人を叱る。すみません、と謝るエリックに反し、アランは満面の笑みで返してきた。よくある名前だとわかった上でふざけたのだとその反応を見てカラムはすぐに確信する。

アネモネ王国にプライドの婚約者候補がいる可能性は極めて低い。ならば、もっと遠方の地の王族か貴族。もしくはフリージア王国内の者ということになる。今回の誕生祭ではどちらの人間も多く参列していたのだから。

「あとは、最近ならばハナズオ連合王国の第二王子…セドリック王子だが」


ガチャァンッ‼︎と。


今度はジョッキが割れる音が響いた。

アランではない、アーサーが項垂れたまま手の中のジョッキを腕の力だけでテーブルに叩きつけたのだ。

本人も割ってしまったことに驚いたらしく、割れたと気づいた瞬間にその場から飛び起きた。「すっすみません‼︎」と叫び、三人に怪我はなかったかと確認した。幸いにもすぐに身体を反らした騎士三人は当然のことながら、アーサー本人にも怪我はなかった。ただ、項垂れてテーブルに頭を付けたままだった為、起き上がったアーサーの長い髪にところどころ硝子の破片が飛び、キラキラと反射していた。

指摘したカラムと、そして隣にいたエリックが一緒にアーサーの髪に絡まった硝子の破片を手袋を嵌めた手で取り去っていく。アランが席を立ち「派手にやったな〜」と笑いながら床に散らばった硝子を隅の布袋の方へと掃いていった。


「そんなにセドリック王子が嫌いかアーサー?」

軽い口調で直球に語るアランにアーサーの肩が上下した。「えっ、いや!その‼︎」と狼狽えるアーサーにまだ硝子を取り去り終えてないから動くなと留めながらカラムが「アラン、口を慎め。アーサーが不敬罪になったらどうする」と注意した。


「まぁ、アーサーは特に色々ありましたからね。」

料理とかプライド様への不敬とか暴力とか、とエリックが落ち着いた声でフォローをするとアーサーの強張った肩の力がしゅん、と抜けた。「すみません…」と謝るアーサーにエリックが可笑しそうに彼の背中を叩いた。

アーサーだけではない、表に出さないだけで先輩騎士三人もセドリックが犯した不敬も更には彼のせいで自分達に焼く筈だったクッキーが当時ダメになったことも未だに怒ってはいる。だが、それよりも騎士として恨みを残すべきではないという意識も強かった。…彼ら全員セドリックを殴りたくないかと聞かれた場合、否定すれば嘘になることは確実だが。


「その、まだ料理のこと腹立ってンのも勿論あるンすけど、それよりなんか、……………………………一番…ありそうだなと…思って。」

ぼそ、と最後は本当にくぐもった小声で発したアーサーに全員が聞き返した。なんだ?なんて言った?どうした、と尋ねたがアーサーは硝子を取り去られた後の髪を一度解くと硝子を払うのと三人への返事両方を兼ねて首を横に振った。バサバサと長い銀色の髪が揺れ、彼の顔を隠した。


…プライド様があんなにたくさん笑ったり真っ赤になったりする相手、今までの王族貴族じゃレオン王子くらいしか居なかったもんな…。


しかもレオンの場合も赤面することはあっても、心からの笑みが向けられるようになったのは婚約解消してからだ。つまりあれほど完璧な王子であるレオンよりもセドリックはプライドの心をその手にしたということになる。


…あんだけ無礼して、泣かせて、料理まで食って、なのにあの人の心も奪っちまうとか。


「ずりぃ…。」

髪を結わないままに再びテーブルに突っぷし、無意味に椅子に座ったまま足を交互に揺らして呻く。あー…や、うー…という呻きを漏らしたところでエリックに背中をポンポンと優しく叩かれた。

頭ではセドリックが以前とは違うことも、彼の良いところも、何よりプライドに望む相手ができたことは嬉しいことだとわかっていても、どうしても納得できずに胸がざわついた。いっそレオンとの婚約復帰の方がここまでアーサーにもモヤつきを残さずに済んだだろう。


「そういえば、セドリック王子も今夜は王居に一泊しているんですよね。」

ふと、思い出したようにエリックが言うとアーサーの肩がピクリと揺れた。ああ、そうだなとカラムとアランが言葉を返すとアーサーがゆっくりと肘をついた手で髪を掻き上げた。顔を上げ、酷く不安そうな表情でエリックを見つめる。すると、アーサーの顔色に気がついたエリックが少し笑いながら「大丈夫大丈夫」とその肩に腕を回し、叩いた。


「今回は同盟交渉じゃなく単なる来賓だ。同じ王居でも泊まる宮殿が違う。」


王居内には複数の宮殿が存在している。

女王や王配、玉座の間や謁見の間や執務室などの王室以外にも摂政や宰相の仕事部屋である執務室や私室などを持つ宮殿である王宮。

王宮に回廊で繋がり隣接され、王女や王子、そして同盟や交渉相手などの重要人物のみが一時泊などを許される宮殿。

そしてそれとは別に存在する複数の宮殿。婚約者と王族が本格的に共に住む為の宮殿、王侯貴族の為の宮殿、遠方からの来賓をもてなす為の宮殿や館、施設などが点在している。それを纏めてこその王族が住まう〝王居〟なのだから。

そして、セドリックを含むハナズオ連合王国が一夜を過ごすのは遠方からの来賓用の宮殿だ。プライド達の住む宮殿とは別にあり、距離もそれなりに離れている。王居外にも城内には国の上層部や極一部の貴族のみが住むことを許された館があり、それと比べれば近い方だがそれでも全く別の場所だ。

その事実にアーサーは、正直にほっと胸を撫で下ろした。そうっすか…と呟くとアランが可笑しそうにアーサーの肩に腕を回す。


「気にし過ぎだって!別にセドリック王子がプライド様を狙ってるかもわかんねぇだろ?」

肩ごと身体を揺らされながらアーサーは呻く。たしかにそうっすけど…と呟きながらもセドリックの心情を考えた。プライドに救われてフリージア王国との同盟も叶い、大事なハナズオ連合王国を守り切れた王子のその心情を。


……プライド様に好意を抱かねぇ理由が見つかんねぇし。


考えれば逆に落ち込んでしまう。もし、セドリックもプライドに好意を抱いていた場合、二人は相思相愛となる。それはつまり…


「…やっぱずりぃ。」

顔を火照らせながら再び呟かれたアーサーのぼやきが、今度は騎士三人の耳に届いた。

アーサーが何故そこまでセドリックだけを敵対なら未だしも特別視するのかは三人にもわからない。ただ、少なからずアーサーの中では確定してしまっているそれに今はただ背や肩を叩いて応えた。


ただし


「…セドリック王子、ね。」

「……まぁ。」

アランが小さな呟きと共にカラムへ目を向ける。カラムもまたそれに視線で返した。項垂れるアーサーを宥めながらエリックも二人の目配せには気づいたが、二人が俄かに笑ってジョッキの中身を飲み込んだ為、そのまま首だけ捻って終わらせた。


アランとカラムは考える。

言葉を交わさずとも、お互い考えたことは大体察しもついていた。



ー セドリック王子が狙ってんの、…絶対ティアラ様だよなぁ…。


ー どうみてもセドリック王子はティアラ様へ恋心を抱いているように見えたが。



そんな言葉を酒ごと飲み込んだ。

部下や仲間への察しに鋭いカラムは当然のこと、人付き合いの多いアランにもセドリックのあからさまな恋心は筒抜けだった。


「俺はやっぱプライド様の婚約者候補が気になるなぁ…。」

「間違いなく世界一の幸福者だろう。」

いや、ですから俺はその話をっ…!とアーサーが呻く間もアランとカラムは返事をせずに酒を仰ぐ。

三人の顔を見比べながら、最後にエリックが苦笑するように「でも」と呟き息を吐いた。


「結局〝我々にとって〟大事なのはお二人の気持ちですよね。」


明るい穏やかなエリックのその言葉に、騎士三人は無言で深く頷いた。

政治的要因が絡んでも笑顔で自国の王女が誰かの隣に立てるのなら。


騎士として、そして慕う者としてこれ以上はないのだから。


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