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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
疎まれ王女と誕生祭

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372.義弟は考える。


「この度は我が愛しき娘、プライドの誕生祭にお越し頂き、心から感謝します。」


…母上の話を聞きながら、俺は頭の中で別のことを考える。

目だけを一瞬向ければ、隣に並ぶセドリック王子が真剣な表情で母上の話を聞いていた。以前のような無駄に煌びやかな装飾が減り、男性的に整った顔立ちが逆に際立ったハナズオ連合王国の王弟だ。

王族として必ずプライドに挨拶に来る事はわかっていた。そしてとうとう王族三人がプライドと話し始めた時も、様子を眺めているだけでも随分と穏やかな様子だった。…突然セドリック王子が顔を火照らせるまでは。

珍しいことなどではない。プライドと語らって顔を赤らめる男性など、この城中でも妙齢の男性は殆どがそうだ。彼女はそれほどに魅力的な女性なのだから。だが、



……どうにも引っ掛かり、俺は即刻でプライドの傍に駆けつけた。



別に、話してみてもプライドも変わりはしなかった。更に挨拶の場面でもランス国王、ヨアン国王とともにセドリック王子も礼を尽くしてくれた。…未だプライドへの赤みを帯びた顔色を残したまま。

だが、楽しく話していた、というプライドの言葉に念の為にどのような会話かを探った途端、何故かプライドは酷く言い澱み、今度は彼女の方が顔を火照らせた。

何故プライドが⁇

だが、どう見ても何か不敬をしたようにも見えない、更に言えばそんなことをすればランス国王とヨアン国王がセドリック王子を叱咤してくれるだろうとも思えた。ならば、何故プライドが顔を赤らめるのか。


『セドリックに、…前みたいに話してくれて嬉しいわって話したの。ほら、以前会った時はすごく畏まられちゃったから』


…まさか、あのプライドがセドリック王子に話し方を戻されただけで肌を紅潮させたというのか。

いや、タイミング的には以前のセドリック王子からの敬語口調を思い出して、と考える方が正しいか。だがどちらにせよ、プライドがそんなことで照れるなど考えられない。ならば、何かを誤魔化しているということか。

セドリック王子はそれに対しては畏れ多そうに接していたが、…どうにも怪しい。やはりプライドと彼ら三人は何かを隠しているのか。大体、どうみてもセドリック王子の緊張した様子は尋常ではない。その上、言葉だけでプライドまでを赤面させるなど一体どのような甘い言葉を囁いたのか。いやだが過ぎた言葉であれば国王二人が必ず止めてくれる筈だ。彼らはセドリック王子の不敬を目の当たりにした時はちゃんと叱責してくれる常識ある方々だった。だがそれならば何故…


気付けば高速で回転する頭で苛々と虫の居所が悪くなってくる。自分でも何故ここまでモヤモヤしているのかわからない。だが、それを考えている内に更にセドリック王子は俺の沸点を無意識についてくる。


『そんなことないわ。私がセドリックにはこう呼んで欲しいって思ってるんだもの。…貴方はそのままでずっと素敵よ』

プライドにそう言われてから、次第に彼はその顔を火照らせた。

敢えて笑みと共に剥き出しにした俺の苛立ちを感じ取ったのか、俺の顔を見た途端、目を逸らしたかと思えば次第に顔が赤く染まった。…それとも、俺にプライドへの好意が筒抜けだと勘付かれたことを恐れてか。俺でなくともその赤みを帯びた顔を見れば誰でもわかるというのに。

別に、彼がプライドに好意を持つこと自体は何とも思わない。…筈だ。プライドに好意を抱く者など星の数ほどいるし、それこそ今更だ。彼女が多くの人に愛され、その器と人柄の素晴らしさを正しく知られ、認められることこそが俺の願いでもあるのだから。セドリック王子だって今や立派な王弟であり、国王二人と同じようにプライドを慕ってくれるのは俺としても望むところだ。……なのに。


王弟、且つ我が国の同盟国。優秀な頭脳と人格を併せ持ち、プライドと同年で今や彼女からも悪くは見られていない彼がプライドに好意を持つということに、何故か、どうしても、不思議なことに、自分でもどうしようもないほどにモヤモヤと苛立ちが胸に募る。


正直、自分でもこれほどまでの苛立ちは理解できない。

頭では単にセドリック王子の過去の不敬を俺が許していないだけだと。彼とプライドにもしものことがあれば、俺は王配となる彼を敬わねばならないのかということに不満があるだけだと。そう思ってはいるが、……正直その程度でこんなに苛立つ理由もわからない。

レオン王子の時は未だしも、他の男性がプライドに好意を持とうとこんなにも苛立ったことなど無かったのに。

単に彼が自分を救ったプライドに好意を持ち

単に彼がプライドの隣に立つ者としての条件を多く兼ね揃え

単に彼が過去にプライドへ不敬を犯していた、という事実が


どうにもこうにも腹に据え兼ねる。


更には俺がプライドから離そうと、次のティアラとの挨拶を勧め、敢えて「流石に姉君だけと話せれば充分というわけでもありませんでしょうから」と言ってみれば、また彼は顔を紅潮させた。更には今はプライドと話しているのを優先したいと言う。本当にわかりやすい男だ。……妹のティアラを軽んじられたことについては腹が立つが。

その後もどこかへ目線を泳がせた彼の火照りは続き、やっと引いたかと思えば「ティアラ第二王女殿下とも後ほど是非兄君共々ご挨拶したいと願っております」と改めてはくれた。


『………そうだわ、私もちょうどティアラと話したいことがありましたの。宜しければこのまま御一緒に』


…何故か、プライドが自らセドリック王子との同行を望む。彼女がセドリック王子の背に手を添えれば彼は再び紅潮し、促されるままに足を動かした。

ティアラ、そしてレオン王子に挨拶を交わせば彼は俺との雑談を選んだ。話してみれば意欲的に我が国についての話を望み、好意的に知ろうとしてくれた。文化や歴史、在り方や法律、国の将来的な展望や方針と政策、政治、貿易…。………まるで、当時プライドの婚約者として訪れたレオン王子のように。

何故プライドではなく俺に尋ねるのかは分からなかったが、とても真摯に話を聞いてくれる彼はやはり好感の持てる人物だった。…なのに、何故俺はこんなにも苛立ちが収まらないのか。


確かに、プライド手製のクッキーの件や不敬の件は許していない。だが、今の彼は真摯に我が国を知ろうとまでしてくれている。過去の過ちさえなければ、レオン王子にも匹敵しうる好感の持てる王子ともいえる。なのに何故こうも……。…駄目だ、どうしても最後は同じ疑問に帰結してしまう。

何故、さっきから何度も同じような疑問を繰り返してしまうのか。何故、ここまで考えても結論が導き出せな



「そして、この度。我が国の王女への婚約者選定に関して改めましたことをここで発表致します。」



⁉︎

母上からの驚愕の言葉に、なっ…と思わず微かに声が漏れてしまった。

何度も瞬きを繰り返し、母上を見直す。俺だけではない、突然の婚約者選定の話に大広間中がざわっと大きく波打った。

ふと視線を感じて振り向けば、アーサーが強く見開いた目で俺を見ていた。知っていたのか、と言いたげな表情に俺は反射的にその場で短く首を横へと振った。知るわけがない。そんな重要事項、知っていたら俺はアーサーに話していたか、そうでなくてもアーサー相手に俺が隠せるわけがない。

大広間の騒めきにプライドとティアラが一気に緊張した面持ちで下唇を小さく噛んだ。思わず目を向けてしまう俺やセドリック王子に構わずしっかりと母上の話へと姿勢を正して目を向けていた。来賓や俺達が戸惑っている間も母上の話は変わらず続いていた。両脇に居るヴェスト叔父様、父上はやはり知っていたらしく母上に控えながら真っ直ぐとした視線で佇んでいた。


「我が国では、王女は齢十六になった際に婚約者を女王が選定するという決まりでした。が、それを改め王女は齢十六になったら…」


ごくり、と思わず口の中を飲み込む。大広間も完全に母上の次の言葉を待ち、水を打ったかのような静けさが全ての音を奪い去っていた。








「〝婚約候補者〟を三名、本人の意思により選定させます。」








大広間中が唸りを上げて騒めきが広がる。

〝婚約候補者〟…⁈婚約者、ではなく候補者⁈更には三名だと⁈

戸惑う俺達を置いて、母上が合図をすると同時にプライドとティアラがその場から動き、母上の傍へと並び始めた。俺もプライドの補佐として冷静を取り繕いながらその傍らに並ぶ。だが、正直俺も内心は戸惑いしかない。

すると、母上の説明を継ぐようにして今度はヴェスト叔父様が選定方法の詳細を説明し始めた。


まず、婚約者候補は基本的にはこれまで婚約者を選定していた時と同じように女王、王配、摂政により複数選定される。

齢十六になる前に王女はその中からいくらか選定し、そして十六の誕生日迄には候補者を三名に〝確定させる〟。

確定された三名は極秘とされるが、候補者となった者の家には伝えられる。…ただし、他の候補者に関しては同じく秘匿。妨害や無用な争いを避ける為だ。

そして十六の誕生日後、王位継承者は戴冠までに。そうでない王女は一年の選定期間内に三人の中から一人を選定する。


…ヴェスト叔父様の説明を聞きながら、俺はやっと平静を取り戻す。なるほど、それならば必要条件を兼ね揃えた人物から王女の望む相手を選ぶことができる。期間もある程度設けたことで今回のように婚約解消という事態を防ぐことも可能だ。これならプライドもティアラも自身の意思で、ある程度望む相手と結ばれることもできる。


「そして、今日で十八になる第一王位継承者のプライドには三名の婚約候補者を定める為の選定期間として今日から二年。更に次で十六になるティアラには十七になるまでの選定期間を設けました。」

ヴェスト叔父様から再び母上が言葉を紡ぐ。

…今日制定されるということは、プライドとティアラだけは以降の王女よりも選定期間が短くなる。だからこその猶予を与える為の特別措置だ。確かに、そうでもしなければプライドは制定後すぐに。ティアラは一年も待たずに婚約候補者を三名確定しなければならなくなる。二人の為にも必要な措置だろう。

心の中で大きく頷く俺は、静かに遠目に見えるアーサーへと目を向けた。アーサーだけではない。近衛騎士や騎士団長達も真剣な表情でヴェスト叔父様と母上、そしてプライドを見比べた。


「…しかし。」


ふと、母上が言葉を切る。何かと思えば、優雅な笑みを一度作り、再び蕾のような唇を動かした。











「…プライド、そしてティアラは。既に本人達の意思で婚約候補者を三名に確定させました。」











おおおおおおおおおおおおお…!と、大広間が再びどよめく。

俺自身、来賓前で表情を変えないようにするだけで精一杯だった。「勿論、事前の規定通りにプライドは二年間、ティアラは十七までの制定期間は変わりません」と告げた。つまりは確定したとはいえ、もしもの為にもその三名を見定める為の期間も考え直す猶予をも残したということになる。……一体誰なのか。頭の中で俺が知る限りの候補者の名前が次々と駆け巡る。


「そして、現段階での候補者各三名。名を言うことはできませんが、これだけは宣言します。」


堂々と言い放つ母上の言葉に、目を向ければ比例するように澄ました顔で前を向くプライドの、そしてティアラの顔が俄かに火照った。

彼女達は既にここで何を発表されるかも母上と了承済みなのだろう。…俺も、恐らくは宰相のジルベールも知らない内に。

母上は溜めるようにして口を開き、そしてとうとう宣言した。その直後、これまでで一際大きな騒めきと歓声が上がった。












「今、この会場内にその六名全員が居られることを。」
















近々、こちらからご挨拶と相談に伺うことになるでしょう。その折には是非前向きに宜しく御願い致します、と。母上の言葉を搔き消すほどの騒めきが大広間に膨らみ、溢れた。




………この、中に。


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