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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
高飛車王女とお祝い

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366.義弟は惚け、騎士は仕舞う。


……今日が、俺の命日だろうか。


熱し出す頭で、変に冷静に馬鹿げたことを考えてしまう。

動悸が止まらない。心臓の音が煩く、プライドの声すらはっきり聞き取れない。

自分が今、どんな表情をしているかもわからない。


プライドが、…俺宛のクッキーには宛名しかないと言った時は…少なからずショックだった。

あのクッキーで、充分すぎるほど嬉しいのは嘘ではない。ただ、それでもヴァル達や騎士達に配られた品にはあったそれに俺宛てだけ省かれたのは何故かと。やはり弟宛てにわざわざ書くほどのことはないということか。それに、言葉ならばクッキーを受け取った時にはちゃんと貰った。あれで、あの笑顔だけでもやはり充分ではないかと頭の中で自分を必死に納得させようとしていた時。


『…あれ、俺のも………宛て名だけ…なんすね』


まさかのアーサーまでも。

プライドとティアラは、アーサーの為にこの昇進祝いの料理を用意した。ならば贈物をした相手だけは除外したということなのか。いやだがわざわざプライドが何故そんなことを。

全く意図が理解できず、尋ねる俺に…俺達に笑顔を向けるプライドが差し出してくれたのは。



「だって、二人にはこれがあったから。」



…手紙。

封筒にはそれぞれ「アーサーへ」「ステイルへ」と宛名書きがあった。片手に一枚ずつ摘まれたその品に、俺は当然のことながら隣に並ぶアーサーも動きを奪われた。

更に、封筒は俺のもアーサー宛のも凄まじい厚みだった。何か手紙以外が入っているのかと疑うと、プライドがそれに気づいたように…はにかんだ。


「…実は防衛戦前に書いたものだったのだけれど、今日の為に更に書いたら凄く長くなっちゃったの。読み難かったらごめんなさい。」

とんでもありません!と頭で考えるより先にアーサーと声を合わせていた。

やはり、手紙ということになる。間違いなく、プライドから俺達に宛てた手紙だ。あのプライドが、彼女が、俺に、そしてアーサーにだけ思いの丈を綴ってくれた手紙が、ここに。

しかも、防衛戦前ということは恐らくアーサーの副隊長昇進祝いをする筈だったあの日に渡すつもりだったのだろう。……そういえば、例のセドリック王子が我が国に来国した日。ヴァル達に渡す筈だった書状の準備が間に合わなかったとかで、翌日もプライドはヴァル達を城に呼んでいた。何故間に合わなかったのかとは思ったが、セドリック王子の訪問やアーサーへの料理の支度などあったし大して気にも止めなかった。…だが。


まさか、俺達への手紙に時間を割いてくれていたのか。


「〜〜〜っ…。」

考えれば考えるほど顔が熱くなる。差し出される手紙をそのまま凝視していると、だんだんとブレた。俺の視界がぼやけたのかと思えば違った。

俺ではなく、手紙を差し出してくれているプライドの指先が震えていた。顔を上げ、手紙からプライドの方に視線を変えると





プライドの顔が、真っ赤だった。






笑顔を作りながら、その口元が俄かに痙攣している。

思わず息が止まりそうになった。頭が真っ白になりかけると、プライドが手紙を摘んだままの手を小さく下げた。どうしたのかと茫然としたまま見つめると、プライドの顔が真っ赤に染まったまま今度は不安げに上目で俺達を覗いてきた。


「受け取って…くれる……?」


っっっっっっ‼︎‼︎

気がつけばアーサーと同時にプライドからの手紙へ手を伸ばし、掴んでいた。

しまった、あまりに現実味が薄れ過ぎてずっと手紙を受け取らずに眺めたままだった。ありがとうございます、と言葉を返しながら手紙を今度こそ受け取った。

指先で摘んだ時に、改めて中身の厚みに驚く。…プライドが手紙を書くなど、今まで政治と社交関係以外であっただろうか。

今すぐに読んでしまいたい衝動に駆られながら、プライドの先程の言葉を思い出し部屋に戻るまでは我慢しようと己自身に言い聞かせる。

よかった、と俺達が受け取ったことに安堵した様子のプライドの笑みに心臓が余計に酷く内側を叩いてくる。このまま死んでしまうのではないかと思うほど激しく叩かれ、思わず片手で胸を押さえた。


「あまりこういう手紙を書くのは慣れてなくって。やっぱりちゃんと書く練習もしなきゃダメね。」

口元に手を添えながら恥ずかしそうに笑うプライドに、…手紙以上に目が離せなかった。


……


「あまりこういう手紙を書くのは慣れてなくって。やっぱりちゃんと書く練習もしなきゃダメね。」


…死ぬ。本気で、死ぬ。


口元を隠して、顔を赤く染めたまま笑うプライド様に目が離せない。

指の力だけで手紙を摘み、絶対無くさないようにと胸にとどめる。少しでも気を抜くと、プライド様のあの笑顔に意識全部が持ってかれちまいそうで。

ステイル宛のカードに何も書いてねぇのは不思議だった。もしこれが俺宛のカードだけに何も書いてなかったら驚かなかった。プライド様が俺の好きなモン作ってくれて、祝いの言葉をくれただけで死ぬほど嬉しかったから。


……まぁ少し…残念だったけど。


カードのメッセージが無くて。…なのに、そこでこの手紙はずる過ぎる。近衛騎士としてプライド様の傍にいることが増えた今、この手紙の貴重さは恐いほどよくわかっている。

プライド様は毎日山のように手紙を貰ってる。単純な交流や繋がり目的や招待から、国内外の色んな身分の男性から。それをプライド様はちゃんと全部目を通していることも知っている。でも、



プライド様がその恋文に返事を書いたところは見た事がない。



招待状や社交目的の返事だって、一枚で済むぐらいの文量だ。なのに、こんなすっげぇ分厚い量の手紙。一体どんぐらい時間を掛けて書いてくれたんだろう。国内の貴族や、国外の王族宛にすらこんな分厚い手紙を出していなかった。なのに、それを俺なんかが。


考えれば考えるほど頭が沸騰しそうで、熱くて熱くて、息するのも何度か忘れた。

すげぇ嬉しいし、早く中身を読みたい。…でも、畏れ多すぎて読むどころか封を開けるのもすっっげぇ億劫にもなる。少なくともプライド様の前じゃなくても気軽には開けられない。一体どんな時に読めば良いかも


「本当は書き直そうかとも思ったんだけど、…二人のこと考えたら歯止めがきかなくて。」


一瞬、本気で頭が吹っ飛んだ。

俺達のことで、そんなに顔を赤くしてくれているその笑顔に。

頭がグラグラ揺れて、地震かと思ったぐらいで。

この手紙を書いた時、プライド様は俺のことだけ考えてくれたのかなとか思ったら。…自惚れってわかっていても、心臓がすげぇ音を立てて全身を振動させた。

プライド様に、こんな可愛い顔をさせちまったのがステイルと俺なんだなと思ったら嬉しすぎて顔に出かけた。反射的に口を腕で押さえて俯く。…それでも、まるで杭が刺さったみてぇにプライド様から目を離せない。

俺の耳にまで届くぐれぇにステイルがゴクリと喉を鳴らした。思い切るみてぇに上擦った声で「その…一体どんなことを書いてくださったのでしょうかっ…」と尋ねた。

すげぇこと聞けたな、と思いながらも俺も気になって腕を顔から離して口を絞り、プライド様を見つめる。するとプライド様は少し表情が固まった後、何故か視線を俺らから逸らしちまった。パクパクと口を開けて、顔の赤みが増すプライド様から途中で息遣いぐらいの音量で答えが返ってきた。


「…く、……口で言うのは恥ずかしいことです…。」


っっっ⁈⁈‼︎‼︎

あの、プライド様が⁈‼︎

驚きのあまり、逆に声にでなかった。ぐわっと身体中の血が上昇したみてぇに熱くなる。ステイルも俺と同じみてぇにまた固まった。

今まで色んな言葉をくれたプライド様が恥ずかしいと思うことって一体どんなことだと、考えたくてももう頭が回らない。

こっちに目を向けて、俺らの反応に気づいたプライド様が慌てたように「へっ、変なことは書いてないから‼︎そのっ、人に見せ…られるのも恥ずかしいけれど‼︎でも少なくとも私個人の前で読んだり話すのだけは止めてほしいだけでっ…!」と声を上げだした。いや絶ッッ対に誰にも見せねぇし、プライド様の前で読むなんてそれこそ俺の方がどうにかなっちまうから絶対にしねぇけど。


ガチガチに固まって、今度こそ言葉が出ねぇ俺達にプライド様も顔を赤くしたまま困ったように眉を垂らして寄せた。

早く何か言葉を返さねぇといけないのに頭が真っ白で何も出てこない。このまま窒素死するんじゃねぇかと思った時、ティアラが「きっとお姉様のことですから、とっても素敵なことを書いて下さったのだと思いますっ!」と間に入ってくれた。

そのまま「読むのが楽しみですねっ。アーサー、兄様!」と続けてくれたから、ステイルと一緒に思い切り頷いて見せた。

やっと少し声が出るようになって、ありがとうございます。と返したらプライド様が嬉しそうに笑ってくれた。その笑みのまま「でもね」と一度言葉を切られ、続きを待つとプライド様はまた照れたように指先で小さく頬をかいた。


「あの料理も、クッキーも、それに負けないくらい特別なのよ。」

…すっげぇ眩しい笑顔が、直撃してきた。

この人は何度俺の息を奪えば気が済むんだろうと思うぐらいに眩しかった。ねっ、とティアラに笑みを向けて笑い合ったプライド様が本当に綺麗で、可愛くて。


「だって、あれはティアラも一緒に作ってくれたものだもの。二人の為に、私達二人の、更に二回分の気持ちが詰まっているんだから。」

二回分。…プライド様の笑顔はすげぇ嬉しかったけど、やっぱ一回だめになったのはセドリック王子の仕業かと思って少しムカッともした。プライド様はもう気にしてねぇみたいに笑うけど、俺の隣でステイルからもすげぇ怒りがー…、……?…。

…なんか、尋常じゃない覇気が滲み出してきた。


「二回…。」

ぼそり、と俺にしか聞こえねぇくらいの声量で呟きが漏れた。やっぱプライド様がわざわざ作ったのを駄目にされたのを怒ってン…、………あれ。

〝二人〟ってことは、俺の料理だけじゃなくてもしかしてステイルのー…。





…やべぇ。





俺が気づいた時、プライド様の隣でティアラがステイルに視線を送った。ティアラもステイルが怒った理由に気づいたらしく、ステイルと目を合わせると無言で大きく頷いてみせていた。…途端。



真っ黒な覇気が一気に溢れ出した。



プライド様も気づいて「ステイル⁇」と呼び掛けたけど、その後すぐハッとした顔になって目を泳がせた。どうやら今やっと気づいたらしい。

更にプライド様の反応に確信したのか、ステイルが地の底からみてぇな低い声を放った。


「アーサーの料理だけでなく、まさか俺へのにも…⁇」

ステイルの目が焦げるみてぇに黒く燃えている。…そうだ、つまりセドリック王子は俺への料理とステイル宛のクッキーまで食ったということになる。俺はさっきので既に知ってたけど、ステイルのクッキーに関しては今わかったんだからキレるのも当然だ。

まずい、このままだと今すぐ瞬間移動でセドリック王子を殴りに行きそうな勢いだ。プライド様が「でも!だからこそ今回はたくさんクッキーを用意できたから‼︎」と声を上げたけど、まだステイルの怒りは治らない。仕方なく俺が「落ち着けって‼︎」と叫びながら背中を叩く。前のめりになった後、急に叩かれて息が詰まったからか、少しステイルがむせ込んだ。

まだ目が怒っていたけど、さっきよりは覇気も凪いだステイルは俺を睨んだ後に何も言わずに一人腕を組んだ。…大分根に持ちそうだ。

ふと気づいて周りを見回したら、父上達も目を丸くしてた。クッキーのこと、っていうよりもステイルのヤバい覇気の方だろう。相手が第一王子じゃなかったら絶対全員が剣を構えてた。父上とクラークなんて俺達が何の話してるかも絶対わかってない。


「だからプライド様、泣くほど怒ってくれたんすね…。」

落ち着かすために、ステイルの肩に腕を回しながらプライド様に言葉を掛ける。

気がつけばやっと普通にプライド様に話せるように戻っていた。俺の言葉にティアラが無言で何度も頷いている。…どうやらティアラも案外根に持っていたらしい。

プライド様が「そうね…」と返しながら、俺とステイルに苦笑いした。「子どもみたいな理由でごめんなさい」と言われ、そんなことありませんと返そうもするよりも先にプライド様が言葉を続けた。


「でも、私はもう大丈夫だから。」

怒ってくれてありがとう、と。さらりと言い放ったプライドの言葉に、俺だけじゃなくステイルやティアラも目を丸くした。それは、もうセドリック王子を許したとかそういうことなのかと疑うと、プライド様はそっと隣に並ぶティアラの両肩に手を添えた。


「だって今日。ティアラのお陰で特別な人への特別な贈物を全部、もっと素敵な形で送れたんだもの。いますっごく幸せだわ。」


特別…


その、言葉に折角落ち着いてきた身体がまた熱くなる。

肩を突き合わせたステイルまで熱くなっていくのが触れた腕だけじゃなく目に見えてもわかった。心から嬉しそうに笑うプライド様にまた目が奪われる。

こんな特別な人の〝特別〟に俺がなれたのかということが信じられなくて耳を疑う。聞き返すのもすげぇ躊躇うぐれぇに畏れ多くて、口が開いたまま喉が詰まった。

言葉を失う俺達に、プライド様がにこにこと笑顔を向け続けてくれる。

いや聞き違いだろと頭の中で俺自身に言い聞かすけど、プライド様とティアラの笑顔を見ると、ステイルの反応を見ると、どうしても聞き違いには思えない。

掴んだ手紙が一瞬落ちそうになって、慌てて力を込めた。なんかもう、全部が全部どうでもよくなっちまうぐれぇに嬉しい言葉を言われた気がして、心臓が破けそうになる。

くらり、として今度こそよろけて腕を回したステイルに体重がかかった。その途端にステイルまでよろけたから急いで足に力を込める。「わりぃ」と謝ったけどステイルはまだ口が動かねぇみたいだった。


…こんな、嬉しい言葉ばかりを言ってくれる人が手紙にどんなことを書いたのか。

そう考えただけで心臓が激しく高鳴った。


「お姉様っ、そろそろ帰りましょう!」

ティアラが、俺とステイルを見比べた後に楽しそうに笑ってプライド様の腕をぎゅっと握った。

明るいティアラの言葉に、そういえばこれから帰るところだったんだと思いだす。ステイルから腕を解けば「そうだったな…」とまだぼんやりとした声でティアラへ言葉が返された。


「私もすっごく幸せですっ!またこんなお祝いを皆さんとしたいです!」

そう言ってティアラが満面の笑みでプライド様をはじめとして俺達全員に笑いかけてきた。プライド様もそれを見て嬉しそうに「そうね」とティアラの頭を撫でた。

気を取り直したらしいステイルが、眼鏡の黒縁を押さえながら「ただし、これは非公式だ。あまり頻繁にはできないぞ」と釘を刺すとティアラが頬を膨らませた。

ステイルがティアラからの反撃前に逃げるように俺の部屋へ持ち込んできた料理の皿をテーブルごと全部瞬間移動で片付け出した。一気に部屋がガラリとだだっ広いだけの空間に戻る。

姉君、とステイルがプライド様に並んで手を伸ばす。大事そうに手紙を服の中に仕舞うと、プライド様とティアラと一緒に俺達へ最後の挨拶をしてくれた。

プライド様が改めて締めくくった後、三人は一瞬で消えた。


その直後。その場にいた全員が同時にプライド様から貰ったカードを開き、……俺だけそっと団服の中にしまった。


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