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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
使役王女と休息

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347.使役王女は真実を知る。


「あー…アーサー、ハリソン捕まえられたかな。」


なぁ?と、アラン隊長が時計を眺めながら隣にいるカラム隊長へ投げかけた。そのまま返事をもらう前から少し楽しそうに笑っていた。

私も、部屋でいつものように手紙を整理しながら時計を眺める。

今朝、最初に近衛騎士業務で来てくれたアーサーはスタートから疲労いっぱいだった。騎士団も帰ってきて二日経つし、少し状況も落ち着いた筈なのにどうして?と思って聞いてみると本人曰く「ハリソン隊長にどうしても聞きたいことがあるのに、今朝からずっと逃げられる」せいだったらしい。

あのアーサーの足から逃げ続けられるなんて、流石ハリソン隊長。アーサーの聞きたいことについては教えて貰えなかったけれど、一緒に来たカラム隊長も、アーサーと交代したアラン隊長も察しはついているらしい。アーサーが今朝「絶対…次の休息時間には捕まえます…‼︎」と息巻いていた時も、アラン隊長との交代と同時に騎士団演習場へ全速疾走した時も二人とも苦笑いしていた。


「アーサー、そんなに聞きたいことって何だったのでしょうね?」

ソファーで本を眺めながら小首を傾げるティアラに私も同感する。アラン隊長もカラム隊長も笑ってはくれるけど、教えてくれる兆しは全くなかった。


「ハリソン隊長は、それほど気難しい方なのですか?」

今度はちょうど摂政業務から休息時間を得たステイルが、私宛の手紙を次々と不採用処理しながらカラム隊長達へ問い掛けた。読み終えた後だからまだ良いけれど、数秒で処理される手紙の末路が凄く居た堪れない。「差出人は控えていますし、全て残しては嵩張るだけです」といつも言われるけれど、なんか、本当に申し訳ない気持ちになる。


「気難しい…も、勿論ありますが…。」

ステイルからの質問に、カラム隊長とアラン隊長はまた苦笑いをしながら顔を見合わせた。カラム隊長にしては珍しく歯切れが悪い含みのある言葉がすごく引っかかる。私も気になって身体ごと向けて二人の返答を待つと、今度は代わりにアラン隊長が口を開いた。



「ハリソン…。アイツ、アーサーのこと大っ好きだからなぁ…。」



え。

アラン隊長の予想外の言葉に私だけではなく、ティアラもステイルも目を丸くする。ステイルもティアラもハリソン隊長のことは防衛戦で知っているし、アーサーから少しだけ話を聞いている。でも…


「…アーサーから聞いた話では、なかなか厳しい方だと聞いていましたが。」

ステイルがオブラートに包んで二人に尋ねる。正確には「すげぇ怖い」と言ってたけれど。一応、同職の隊長二人相手だから言葉を選んでくれたらしい。

ステイルの言葉にまたアラン隊長とカラム隊長が苦笑う。


「勿論、ハリソンは厳しい人間です。完全実力主義の八番隊の隊長であることを抜いても、昔からその腕でしか相手を量りません。ただ、その分…一度心を開いた相手には絶対的な信頼を寄せておりまして。」

「つまり、アーサーは剣の実力でハリソン隊長に気に入られたと?」

カラム隊長の説明にステイルが問いを重ねる。

確かにそれなら納得だ。アーサーの剣の腕は確かだし、去年の私の誕生祭でもカラム隊長からハリソン隊長がアーサーを評価していると聞いたことがある。

でも、カラム隊長はその問いに「それもありますが…」と濁して、アラン隊長に目を配った。どこから話すべきか悩んでるような様子だ。…そんなに深い話なのだろうか。すると今度はアラン隊長が明るい様子で、笑いながら続きを任された。


「ハリソンって、騎士団長と副団長のことを凄く慕ってるんですよ。そりゃあもう、お二人への忠誠心の塊ってぐらいで。」

騎士団長と副団長、あの二人が騎士達に凄く慕われているのは私達もよく知っている。あんなに立派な騎士だもの。ハリソン隊長もその一人だと言われても、それに関しては別に驚かない。

私達がそれぞれ頷いて続きを求めると、アラン隊長は「それっていうのも…」と言いながらカラム隊長に話して良いかを尋ねるように視線を投げ、そして続けた。


「ハリソンって、俺らと同世代なんですよ。」

おおっ⁈すごい世代!確かに並べると三人共年が近いように見えるけれど、この三人が同時に騎士団に入団なんてすごい黄金世代だったんだなと思う。


「で、カラムとハリソンは最年少で一発入団も決めたんですよ」

俺は一年目は落ちて。とさらっと自分の経歴を告白するアラン隊長にちょっと驚く。アラン隊長は騎士団入団試験に一度落ちたなんて意外過ぎる。


「でも、カラムと同時期に本隊入隊したのは俺なんです。」

んん⁇


「そんで当時カラムが隊長就任した年に俺は一番隊の副隊長に就任して、ハリソンがその年に本隊に入隊して 。」

んんんんんんんんん⁇⁇

おかしい。計算が合わない。

ステイルも必死で頭の中で帳尻を合わせているらしく表情が固まっているし、ティアラも難しそうに眉の間を寄せている。


「まぁ、その翌年にはハリソンが当時の騎士隊長を軽々と越して俺より先に隊長に就任してましたけど。」

飛び級昇進というところではエリートのカラムと一緒ですね。とアラン隊長が私たちの反応も気にせずに続けちゃうから余計にわからなくなる。取り敢えずいまわかることは…


「つまり…ハリソン隊長は、新兵の期間が長かったということですか…?」

ティアラの言葉に、私もステイルも頷いてアラン隊長とカラム隊長を見る。二人とも「そういうことです」と声を合わせて答えてくれた。

いまや誰もが実力を認めているハリソン隊長がまさかの!私もハリソン隊長の腕前を直接はあまり見ていないけれど、それでも凄まじく強いことはわかっている。なのになんで、とアラン隊長達に答えを求める。


「ハリソンは…ああいう性格なので、本隊入隊試験を毎回違反行為で一回戦で失格にされていまして…。」

違反⁇

確か本隊入隊試験はトーナメント戦だった筈だ。そこで違反行為なんて一体なにをやらかしたのだろう。

カラム隊長の言葉に首を捻ると、アラン隊長が頭を掻きながら続けてくれた。


「対戦相手を毎回必要以上にボッコボコにしてて。降参しようと、剣を弾こうと、判定出ようと暫く剣振れなくなるくらいの大怪我負わせていました。騎士道に反する行為ということで、実力はあるのに入隊を逃してましたね…。最後はもう本当に除名寸前でした。」


…どうしよう、少し想像つく。

アーサーの言ってた、すっごく怖いハリソン隊長と防衛戦で見せたあの怖い笑顔を思い出す。

ステイルも何か覚えがあるのか、今は凄く納得したように頭を縦に振っていた。そのままカラム隊長が「当時のハリソンと剣で打ち合って重傷を負わなかった新兵はアランくらいのものでしょう」と視線を投げた。アラン隊長が「いや、俺も本気で殺されると思ったけどな」と笑いながら返している。


「そんな時に以前より彼の実力を買っていた副団長が騎士団長に掛け合い、騎士団長が反対する当時の騎士隊長達を抑え、特別にハリソンの入隊を許可して下さりました。その後は副団長が彼を預かり、ハリソンを八番隊に入隊させ、更には教育係を買って出て下さっていました。」

「ハリソンも二人には剣で負けて、完全に言うこと聞くようになってたよなぁ。」

…さすが騎士団長と副団長。面倒見の良さもさることながら、実力でもハリソン隊長を捩じ伏せたということだ。

カラム隊長の言葉に続くアラン隊長が懐かしそうに視線を浮かせていた。カラム隊長も私達が納得した表情をしたのを確認してから話を続けてくれる。


「ですからハリソンは騎士団長と副団長には絶対的忠誠を抱いています。なので、当時騎士団長を救われたプライド様のことをお慕いしておりますし、アーサーについても…彼は、…まぁ、…なので。」

…何故か突然私の話題が来た。いやちょっと待って、私がハリソン隊長に慕われているなんて初耳だし今まで殆ど目も合わせて貰えなかったのに⁈

しかも、最後の部分だけは凄くカラム隊長が言葉を濁した。……でも、まぁわかる。アーサーは騎士団長の実の御子息だ。更には騎士団長と仲の良い副団長にも可愛がられている。自分にとって大恩人である二人が可愛がっているアーサーを、ハリソン隊長が大事に思わない訳がない。

ステイルとティアラも合点がいったように声を漏らしている。いやでもアーサーには全くハリソン隊長の可愛がりが伝わってないようだけれど。

そう思っていると、ステイルが先に「アーサーはそのことを知っているのでしょうか」と質問が飛ばした。すると二人から「いえ…」「いや〜〜…?」と同時に返ってきた。


「ハリソンは滅多に自分から言うような男ではないので。…ただ、アーサーに目を掛けていることは当時のハリソンを知る騎士ならば誰でもわかることかと。」

「時々すげぇ極端なくらいわかりやすいんで。」

アラン隊長の言葉にカラム隊長が「お前には言われたくないだろう」と突っ込んだ。でも、…わかりやすいってどんなだろうか。ステイルが「アーサーでもわからないのに、ですか…」と不思議そうに呟いている。


「正直、騎士団で唯一アーサーを贔屓してるって言っても良いくらいベッタベタに可愛がってますね。」

そんなに⁈

とうとう開いた口が塞がらない。それは見事な甘やかしっぷりだと思いながらアラン隊長を見返すと、カラム隊長も同意しながら「確かに」と返している。…アーサーからそんな話全く聞いたことないのだけれど。基本彼の話題のメインはカラム隊長、そしてアラン隊長やエリック副隊長だ。


「取り敢えず、アーサーとの初の戦闘任務の時は上機嫌で絶好調だったらしいですし。」

大した相手でもなかった筈なのにそりゃあもう、と当時アーサーから聞いたという話を聞かせてくれた。相手は小悪党の盗賊だったらしいけれど、ハリソン隊長は高笑いを上げながら全員をグッシャグシャにしたそうな。…上機嫌モードのハリソン隊長、すごく怖い。


「いつもなら騎士団長や副団長の重要な勅命でもない限りは、高笑いまではしないんですけどね。」

…あれ。グッシャグシャは通常営業なの?

平然と話すアラン隊長に頭の中でつっこみが止まらない。私の戸惑いも知らずにアラン隊長が「あ、プライド様の御命令でも上機嫌になりますよ」と言ってくれるけれど全く喜べなかった。


「あとアーサーが騎士団に入団した時も上機嫌でしたし、アーサーが本隊でしかもハリソンの八番隊に入隊した時なんかすっげぇはしゃいでました。」

「その、戦闘任務以外で機嫌が良いとわかる方法は…?」

アラン隊長の言葉にステイルが難しそうな顔をする。私もすごく気になる。そんな目に見えてわかりやすいなら、アーサーだって自分への関連性くらい気付きそうな



「「部下に斬りかかる数が増えます。」」



……なんか、またもの凄く物騒なワードが聞こえた。

まず、部下に斬りかかるとはどういう意味だろう。声を合わせてくれた二人にティアラもステイルも口をあんぐり開けている。

私達の反応が意外なのか、アラン隊長が「あれ?アーサーから聞いたことありませんか⁇」と逆に驚いた様子で見返してきた。カラム隊長が前髪を押さえながら説明をしてくれた話によるとハリソン隊長は八番隊の部下を見かける度に奇襲を仕掛けているらしい。ちゃんと副団長の教育の下、手心は加えているらしいけれど。…アーサーが怖いと言ってた理由がもう一つわかった。そこまで考えた時、ふと一つの疑問が頭を掠める。


「……あれ?…あの、…〝贔屓〟っていうのは…?」

さっきまでの話では、ハリソン隊長がアーサーが可愛いのはわかるけれど、贔屓という言葉はしっくりこない。

まさか、アーサーが副隊長に就任したのもハリソン隊長の贔屓だとか⁇いや、確か隊長や副隊長に就任するのには各隊の規定以外にも隊長格の半数以上の合意が必要だった筈だ。何より、ちゃんとアーサーは実力のある騎士だ。贔屓だけの出世とは思えない。

ステイルも訝しむように少し眉を寄せた。私と同じ事を考えたのか、アーサーの実力はそんなもんじゃないと言わんばかりの表情だった。ティアラも首を左右に二回傾げている。

するとアラン隊長が私達の反応に頬を掻きながら笑った。少しまだ苦笑も混ざっている。カラム隊長が言うべきか悩むように口だけ笑ませながら私達を窺い、少しの躊躇いの後にとうとう口を開いた。



「………ハリソンは、…六年前までは短髪でした。」



…え?

またハリソン隊長の不思議な情報に、私だけじゃないステイルもティアラも短く聞き返した。すぐにステイルは察しがついたのか「まさか…」と呟きながら口元が歪に引き上がった。それにカラム隊長が頷き、言葉を続ける。


「当時、アーサーが騎士を目指すとプライド様に宣言した時。…まぁ、騎士団ではプライド様と同じくアーサーの話題も多くありました。」

流石に父親である騎士団長の前では控えていましたが…と続けるカラム隊長が言いにくそうに、こめかみを指先で押さえた。


「その時…一部の騎士で、本当に下らない酒飲み話なのですが、アーサーの長髪がどうなるのかと話題になりまして。」

「別に戦闘に邪魔なだけで、騎士団に頭髪の規定まではないですし、単に当時の騎士団に長髪の騎士は居なかっただけなんですけど…。」

…私も、少し想像がついてきた。そのまま私も口元が変に引き上がりながら二人の話を聞くと、もう苦笑いしか出なかった。


当時、六年前に騎士達の前に姿を見せたアーサー。


そして本人が騎士を目指す宣言をしているのは、当時の騎士全員が見ている。更には後日、騎士団長が家に忘れた剣を届けにきたアーサーの素顔を多くの騎士が目にしていた。…騎士団長似の、アーサーの顔を。


『彼が騎士として戻ってくるのが楽しみだ。』

『あの長髪には驚いたが、騎士団長に顔はよく似ていたぞ。』

『騎士になったら髪も騎士団長と同じように切るのか?』

『そうだろ?あの長髪では邪魔だろうし。何より戦闘には不利だ。』

『いやだが、それだと騎士団長と完全に被らないか⁇』

騎士達に悪気はないし、むしろ騎士団長似のアーサーがそれ以上騎士団長に似せたら本人が〝アーサー〟ではなく〝御子息〟扱いされないかを心配しての話だったのだけれど。…その時に会話に乱入したのが当時本隊に入隊して一年も経っていなかったハリソン隊長だったらしい。思いっきり同業者である騎士達にナイフを投げ付け、それをギリギリで避けた彼らへ言い放った。


『髪の長さなどどうでも良い。私ならばどんな頭であろうとも貴様ら程度簡単に叩きのめせるぞ。その時も同じことが言えるのか?』


邪魔だ、戦闘に不利だと。と、いつも寡黙なハリソン隊長が珍しく人前で一言以上を話し、騎士達を威嚇したらしい。

当時、半年ほど前に騎士団長や副団長相手に敗北したとはいえ、凄まじい実力を見せつけたハリソン隊長の強さは多くの騎士が知っていたし、その前からハリソン隊長の恐ろしさも実力も騎士団内では有名だった。実力…というか殺傷能力だけで言えば新兵の時から既に上位と周知されていたハリソン隊長。その彼がまさかの殺意剥き出しだったらしい。


『アーサー・ベレスフォードに文句があるならば私を倒してからにしろ。』

その後すぐ副団長に怒られて乱闘にはならなかったけれど、…その後からハリソン隊長は髪を伸ばし始めたらしい。そしてそれから一年も経たない内に当時の八番隊隊長を倒して自分が騎士隊長にまでのし上がってしまった。

しかもアーサーのように伸ばした髪を束ねず、敢えて見せつけるように髪を振り乱したままを貫き続けている、と。



なんという溺愛っぷり。



むしろ前世の言葉で言えば若干モンスターペアレント級じゃないだろうか。

確かに、ハリソン隊長が長髪を振り乱していたらアーサーの束ねた髪なんて大したことないように思える。アーサーが騎士団で浮かないようにする為か、…それとも当時アーサーの髪を話題にした騎士に「文句言ったら今度こそたたきのめしてやる」の意思表示の為か。どちらにせよ、なによりの牽制にはなっただろう。

アーサーの長髪は昔からだけれど、もし入団してからでも他の騎士の先輩に指摘されていたら真面目な彼はすぐに切っていただろう。…でも、未だに長髪のまま。つまりは今まで指摘されなかったということになる。まさか、そんな背景があったなんて。


「基本、他人と関わらないハリソンが思いっきりアーサーの肩持ってたんで、当時の騎士達はみんな驚いてましたよ。」

よっぽど可愛かったんだろうなぁ…と呟くアラン隊長が思い出したように笑ってる。ふと、別方向からも笑い声が聴こえて振り向くと、ステイルが肩を震わして笑いを噛み殺していた。それに気付かないようにカラム隊長が一言付け足す。


「因みに、ハリソンが〝お前〟と呼ぶのもアーサーぐらいのものでしょう。」

…なんか、ここまであからさまだといっそ清々しい。説明を聞けば、どれだけハリソン隊長がアーサーにメロメロなのかよくわかった。


「騎士団長の御子息で顔も似てて副団長にも可愛がられててその上プライド様を守る発言までしてたからなぁ…もう、騎士団に入団する前からハリソンが気にいる要素全部持っちゃってましたから。」

そのアーサーにハリソン隊長からの愛情が全く伝わってない気がするのが何だか不憫だ。私がそれを言うと、ハリソン隊長も言う気はないのだろうとカラム隊長が話してくれた。


「彼は、ああいう性格ですから。一方通行であろうとも、自分が尽くせれば満足だと以前にも話していました。彼が賛辞を求める相手は、それこそ副団長くらいのものでしょう。」

…教育係だった副団長には未だ褒められたいらしい。少し人間味のあるハリソン隊長を知れてほっとする。


「ある意味、アーサーは唯一ハリソンが尽くすのではなく、庇護していた存在とも言えますね。」

庇護…カラム隊長の言葉にほんとに可愛がられてるんだなぁと思う。というか、実の父親より贔屓して良いのだろうか。まぁ、本人には伝わってないけれど。

そんなアーサーが自分の八番隊に来て、しかも副隊長に就任までしたら嬉しくて仕方がないだろう。そのままアラン隊長が「もちろん、副隊長の就任〝は〟ハリソンの独断ではなく騎士団の総意ですよ」と話した時だった。


コンコン、と扉から音が鳴り「お待たせしました…」と明らかに疲れ切ったアーサーの声がした。

その途端、アラン隊長とカラム隊長が「この事は一応アーサーには…」と私達に声を潜めた。ハリソン隊長のプライベートなことだし、確かに私達から話しちゃダメだろう。ステイルやティアラも了承で頷いてから、近衛兵のジャックが扉を開けてくれた。

休息時間を終えたアーサーは、休息前よりもぐったりとした様子だった。大分話す声もガラガラだったので、専属侍女のマリーが気がついて水を用意してくれた。話を聞くと、なんとかハリソン隊長の部屋で話して貰えるまではこぎ着けたけれど、有耶無耶にされてしまったらしい。


「…で、時間になって急いで戻ってきたのか?」

ぐったりと項垂れたアーサーを、不憫そうに眺めながらアラン隊長が声を掛ける。…アーサー、全く休まっていない。

大分疲れ切っているアーサーが心配になり、私もティアラも二人でハンカチを使って扇ぎまくった。カラム隊長がマリーから受け取った水をアーサーに差し出してあげている。ステイルもアーサーの弱り果てた姿に溜息を漏らしていた。


「…質問に、答えてはくれたんすけどっ…納得いかねぇっつーか…もう、全部が全部ハリソン隊長らし過ぎて…。」

ぷはっ、と水を一気飲みし終わり、顔を上げてくれたアーサーは私とティアラが扇いでいたことに気づいて、お礼を言いながらも「もう大丈夫ですっ!」と遠慮されてしまった。


「ていうかすげぇなぁ…流石アーサー。ハリソンの部屋に招かれるとか。どんなんだったよ?アイツの部屋。」

「いや…流石の意味がわかんねぇっす…。部屋は…ほんっとに何もなかったです。俺よりも私物の少ねぇ人の部屋、初めて見ました…。」

アラン隊長の問いに、少しずつ息を整えながらアーサーは答えてくれる。もう少し飲むか?とカラム隊長に水差しを差し出され、お礼を返して飲み干した。ゆっくりと姿勢を正し、最後に大きく息をついた。


「ほんとわっかんねぇ、あの人…。」

質問が何かは知らないけれど、なんかハリソン隊長の話を聞いた後だと微笑ましい。そう思っていると、アーサーが今度は唸るように「今度は絶ッッ対逃げられねぇとこで抗議します…‼︎」と拳を握った。まだまだ納得もしてなければ諦める気もないらしい。若干怒りの混じった覇気を滲ませたアーサーにステイルが「お前はハリソン隊長をどう思ってるんだ?」と聞いた。


「すっっっっげぇ怖ぇ。…あとはよくわかんねぇ。」

アーサーの相変わらずの答えに思わず笑ってしまう。更に「よくわからない」という新しい項目まで追加されてしまっている。するとティアラが話を変えるように「じゃっ…じゃあハリソン隊長の髪をどう思いますかっ⁈」と声を上げた。

なんでいきなり髪の話を、と言わんばかりにアーサーが目を丸くする。そのままティアラに首を傾げたけれど、それでも今度はすぐに答えてくれた。


「戦闘中に邪魔じゃねぇのかなとは思うけど、別に…。でも、あの髪のままでも敵を圧倒しちまうのはすげぇ格好良いと…思う。」

怖ぇけど。と小さく付け足したアーサーに「その台詞を本人に言ってあげて‼︎」とすごく叫びたくなる。


その後、アーサーと交代のアラン隊長が騎士団演習場に戻っていった。ハリソン隊長のことで何度も溜息を漏らすアーサーの背中を叩いて「ま、深く考えるなよ」と笑っていた。アーサーの聞きたかったことを知っているであろうアラン隊長が気楽そうなのを見るとそんな大問題でもないのかなと少し安心した。


近衛騎士中もまだ悩みが晴れない様子のアーサーだったけれど、そのうち他の騎士の方々と同じようにハリソン隊長とも仲良く話すようになってくれればなと思う。


177.189.251.314.346

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― 新着の感想 ―
ハリソン隊長推しとしてはこのエピソード悶えるくらい好き
ハリソン隊長ほんと可愛い
[一言] 実はハリソン隊長の話は全部好きです
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