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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
冒瀆王女と戦争

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334.宰相は次期摂政へ重ねる。


「この調子ならば、明日には完治するでしょう」


私の怪我を診てくれた騎士のジェイルとマートがそう言ってくれたのは、セドリックと話をしたその翌日だった。

毎日、怪我治療の特殊能力者の騎士達が少しでも早く治るようにと協力してくれたお陰だ。

それを聞いた騎士達やティアラ、ステイル、そして近衛騎士のアーサー達も凄く喜んでくれた。「なら、明日にでも早速祝勝会をしましょうっ!」とティアラが飛び上がって早速ステイルに提案してくれた。確かに明日足が治るなら、この国を発つのは明後日だ。ステイルもそれに頷いて「ジルベールとランス国王、ヨアン国王にもその旨を伝えましょう」と言ってくれた。


「ありがとう、二人とも。だけど、平気かしら。国王もお忙しいでしょうし、ジルベール宰相やそれにステイル。…貴方もちゃんと眠れているの?」

わざわざ私の為に祝勝会を待っていてくれたのは凄くありがたいけれど。でもこの三日間、ステイル達はずっと働き詰めだ。特にステイルは毎日私の代理として仕事をしながら報告の為に私に会いにも来てくれている。正直、毎回目の下にクマができていないか心配になるくらいだ。

そっと手を伸ばして、ステイルの頬に手を添える。親指の腹で目の下を撫でてみるけど、一応未だ黒ずんではないようで安心する。何故か、代わりに少しステイルの顔の体温が上がったような気がしたけれど。


「だっ…大丈夫、です。ここに来ている間の仕事はジルベールに任せていますし、後は騎士団との連携や母上への報告くらいでっ…。」

それにしては少し慌てた様子のステイルが早口で説明してくれる。本人やジルベール宰相としてはハナズオ連合王国にももっと手伝いをしたかったらしいけど「これ以上は申し訳ない」と断られてしまった。


「大丈夫です、お姉様っ!ランス国王もヨアン国王も、騎士や兵士の方々も皆、お姉様とお祝いできるのを心待ちにしていらっしゃいますからっ!」

ティアラが眩しい笑顔で言ってくれる。そう言って貰えると私も嬉しい。

勝利した当日、ランス国王やヨアン国王、そして私の代わりにステイルが民の前に出てくれたらしいけど、私自身はまだ騎士や兵士にしか挨拶もできていない。負傷とは知ってくれている筈だけど、いつまで経っても挨拶できてないのは凄く心苦しかった。特にチャイネンシス王国に対しては、血の誓いでやらかした後だ。それにも関わらず挨拶しないのは印象も悪過ぎる。

気がつけば、あの防衛戦からもう三日が経っている。やっと女王代理、そして第一王女としての役目が果たせると思うとそれだけでも凄く嬉しい。


「ええ、私も楽しみだわ。」


ありがとう、とティアラの頭を撫でて私はゆっくり背後の枕に身を沈めた。今から明日の祝勝会を待ち遠しいと思いながら。


……


「そうですか。プライド様が明日には完治、と。…何にも勝る喜ばしいことです。」


ステイルから話を聞いたジルベールの顔が綻ぶ。少し不機嫌そうに自身を睨むステイルへ笑みを向けながら、そのまま「早速、私から両国の国王にも報告致しましょう」と更には明後日の帰国の準備をと忙しなく動き始めた。


「…姉君が心配していたぞ。俺や、…お前が無理をしていないかと。」

敢えてジルベールから目を逸らすように、自分が不在の間の報告書を確認しながらステイルが呟く。その言葉にジルベールは苦笑気味に「確かに直後から翌日までは慌ただしかったですが」と答えた。


「少なくとも、これから明日の祝勝会に向けての余力は充分にありますね」

ジルベールの断言に、今度はステイルが「フン」と鼻を鳴らすだけで答えた。そのまま読み終えた書類を元の場所に戻し、今度は窓の外へと視線を投げる。

実際、プライドに話した通りもう殆ど仕事は残っていない。昨日まではそれなりに仕事もあったが、今は手持ち無沙汰な為、むしろちょうど仕事が舞い込んできたくらいだ。プライドの完治の話が無ければ、無理を言ってでもチャイネンシス王国かサーシス王国の手伝いに携わらせて貰っただろう。


…まぁ、そちらも俺たちの成すことはあまり残っていなさそうだが。


チャイネンシス王国の城下町も、城から眺めるだけでステイルにも活気が戻っているのがよくわかった。

たった三日で自国をここまで纏めるなど、やはりヨアン国王も優秀な国王なのだと、改めてステイルは考える。

サーシス王国においても、民が復興活動に取り掛かれるところまでは充分に及んでいた。兵士も多くが町の復興の為に派遣されている。ジルベールから、せめて城門の修復だけでも騎士を派遣すると提言があったがランスがはっきりと断ってしまっていた。


「…そういえば。……マリアとステラは元気なのか。」


突然、脈絡なく掛けられるステイルの言葉にジルベールは目を丸くした。そろそろ国王の所へと扉に向かって歩いた足が止まり、思わず振り返ってしまう。

見れば、未だに自分から目を逸らすように窓の外を眺めながら無表情を決め込むステイルがそこにいた。


「…ええ、とても。昨晩も、少しばかり話しましたよ。今頃は、…屋敷の者達と共に久々に大量の買い物にでも出かけている頃でしょうか。」

勿論、城からの派遣された護衛の騎士と共に。と続けるジルベールにステイルが「大量?」と少し眉間に皺を寄せた。苦笑して返すジルベールは肩を竦めながら「昨日、我が屋敷から大量の酒と菓子が無くなりまして」と説明した。全て理解したステイルは納得の意味を込めてゆっくりと頷きながら「まさか一日でフリージア王国に着いたのか」と呟いた。ヴァル達がステイルの瞬間移動ではなく直接その足と能力でハナズオ連合王国から去って行ったのを知ったのは、彼らが去ってからかなり後のことだった。


「……本当に、あの時はありがとうございました。」


静かにジルベールから放たれる穏やかな声色に、ステイルが目だけを彼に向けた。不機嫌にも見えるその表情のまま腕を組み「お前だけの為ではない」と断った。


「頭は下げるなよ、それ以外の行動で示せ。……今度からは絶対に頼れ。」

俺にも、姉君にも。と続けるステイルは眼鏡の縁を押さえたまま、じっとジルベールを睨んだ。言い方とは裏腹の優しい言葉に思わずジルベールの口元が緩んだ。


「ええ、約束しましょう。……本当に、似てきましたね…。」

しみじみと、首を仄かに横に傾けながら静かに呟かれたその言葉にステイルが眉間に皺を寄せた。眼鏡を押さえていた指先を緩め「誰にだ」と短く返した。


「またお前にか?それともヴェスト叔父様にか。最近はそう言われることも増えたが。」

尊敬するヴェスト叔父様ならば、褒め言葉として受け取ってやる、と皮肉を返すステイルにジルベールがフフッと声を漏らして笑った。ジルベールの目からも、ステイルが摂政のヴェストと似てきているのは以前から感じてはいた。だが、今は。


「いえ、プライド様とアーサー殿に。」


バッ‼︎と勢いよくステイルの顔が上がる。

さっきとは打って変わって顔を真正面にジルベールへ向け、目を丸くさせた。予想外の返答に言葉を無くすステイルに、また笑ってしまう。そのまま「おや、御自覚はありませんでしたか?」とわざと驚いたように尋ねてみた。すると、ジルベールの前にしては珍しく、みるみる内にステイルの顔が赤みを帯びていった。唇までもがわなわなと勝手に震わしてしまう。


「〜〜っっ…世辞は良い。さっさと国王へ報告に行け。」

隠すように手の甲で口元を押さえつけながら、忌々しげに扉に向けて手を振るう。「世辞ではないのですが」と軽く返しながら、ジルベールは今度こそ扉の方に足を伸ばした。そして最後に扉に手を掛け


「ジルベール。」


…るところで再びステイルが呼び止める。

何かと思い、振り向けばまだうっすら赤みを帯びた顔を腕ごと隠すようにして、ステイルがもう片方の手で真っ直ぐとジルベールを指し示していた。まるで戦線布告のように指を差され、僅かに目を丸くするジルベールをその目だけが真っ直ぐに捉えていた。



「…この俺が、お前を最高の宰相にまで仕立ててやる。」



覚悟していろ。と呟くステイルに、ジルベールの目が最大に見開かれた。

扉に掛けた手が緩み、パタリと力なく垂れ落ちた。身体ごと向き直るジルベールは、何も言わなかった。ただ、ステイルについ先程「下げるな」と言われたその頭を腰ごと使い、深々と彼に向かって下げきった。

ステイルがそれに「下げるなと言った」と言い切る前にジルベールが敢えて言葉を重ねた。






「宜しくお願い致します。…ステイル・ロイヤル・アイビー次期摂政殿下。」






恩も、罪も、感謝も、あのプライドすらも関係ない。

確かな忠誠と信頼を、一人の〝宰相〟としてその胸に宿して。


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