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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
冒瀆王女と戦争

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308.女王は会談する。


「…それは、誠でしょうか。」


フリージア王国。

会合の為の特別室。そこで専用の椅子に座しながら女王のローザは長テーブルの向こう岸に座する青年へと言葉を掛けた。椅子に掛ける女王ローザ、王配のアルバートの背後には副団長であるクラークを筆頭に騎士達がズラリと並んでいる。更には、摂政のヴェストが本来の柔らかい筈の目元が嘘のように銀食器よりも鋭く光らせた眼差しをその青年へと向けていた。


「ええ、誠ですとも。女王陛下。」


簡単なことのような口振りで語る男は、酷く丁寧な物腰に反してその表情だけは取り繕えないほどに怪しく、そして軽薄だった。狐のように細い目で笑み、深紫色の髪が整えられたまま耳の後ろまで右分けに流していた。まるでまったく愛嬌を感じられない笑みを浮かべる彼に、ヴェストは眉間の皺を寄せかけた。

ラジヤ帝国の代表として現れた男の背後には、付人だけでなく彼と同じく国の重鎮である参謀長と将軍が控えていた。だが、他の付人同様に控えたままじっと動かず、まるで置物のように黙し続けていた。


防衛戦の勝利が耳打ちでヴェストに、そしてヴェストからローザとアルバートへと知らされたのは、つい数分前のことだった。

予想よりも遅い時間に城を訪れた彼らは、まるで防衛戦が終わるのを見計らったかのようだった。城内に通され、会合を快諾した彼らは…〝彼〟は、会談中にコペランディ王国三国の敗北、フリージア王国の勝利もその戦況を知るすべも無い筈だというのに、それでも尚落ち着き払っていた。


目の前に出されたグラスを揺らしながら、男は笑う。

彼は入城した時から既に大国フリージアの女王に萎縮する様子が微塵もなかった。むしろ旧知の仲かのように笑みを向け、握手も交わした。

特別室に招かれた後も、彼の余裕のある態度は変わらなかった。部屋に入る前には武器を護身用のナイフからペンに至るまで全て騎士によって没収された時も変わらず彼一人笑みを崩さなかった。

それどころか国を褒め、城を褒め、女王を褒め、そして部屋を褒めた。

ローザの問いかけに答えた男は、グラスの中身を一口含んだ。上等なワインに笑みをこぼし、此処は何もかもが素晴らしいと褒めた後にもう一度ローザへ言葉を重ねた。


「我がラジヤ帝国は、件のコペランディ王国とハナズオ連合王国の侵略には全く関与しておりません。」


その話もお恥ずかしながら、今知りました。と涼しい笑みで答える男はそのまま再びグラスを揺らして遊んだ。

ラジヤ帝国。奴隷大国でもある侵略国との会談はあまりにも簡単に話が進んだ。ローザからの問いかけに、ラジヤ帝国の代表である彼は全くの戸惑いもなく明らかに話したのだから。


「そうですか。…ですが、確かコペランディ王国、アラタ王国、ラフレシアナ王国はラジヤ帝国の植民地として管理下にあると存じておりますが。」

「ええ、その通りです。ただ、…お恥ずかしながら我らも商いの為に手を広げ過ぎまして。近隣国ならばまだしも、それ以上の国に関しては商い以外その国の代表に統治を任せているのが現状でして。」

全ての国の把握は難しいのですよ、と語る彼は首を軽く傾げた。


「恐らくはコペランディ王国の独断でしょう。我らがラジヤの威を借りて、近隣国で同じく我が従属国の一員アラタとラフレシアナに協力させたといったところですね。」

あの地帯はもともと昔から諍いのあった国々と聞いています、と彼は全く悪怯れもなく言い放つ。だが、その表情は清廉潔白とはかけ離れるほど怪しく歪みきったままだった。返事をしないローザ達に頭をゆらゆらと揺らす男は「まさかそんな事態になっていたとは」と呟き、考えるように顎にグラスの口を当てると小さく天井のシャンデリアを見上げた。


「では、これでいかがでしょう?」


思いつきのような言葉にローザはその眼差しを少し強める。共にヴェストも気づかれないように必要書類を握る手に力を込めた。


「我がラジヤ帝国の望みは純然たるフリージア王国との和平。そして女王陛下のお望みは和平と引き換えにハナズオ連合王国から我が国が手を引くこと。ですが、先程御説明した通り我が国は関与しておりません。ならば…」

ぐいっ、と今度は一気にグラスの中身を吞み下す。話を切り、酒を嗜んだ彼は喉を潤してから機嫌の良さそうな笑みをローザへ向けた。


「もし、フリージア王国がこの場で我が国と正式な和平を結んで下さるのならば、我らラジヤが責任をもってコペランディを含む三国を〝対処〟し、ハナズオ連合王国に二度と関与しないようにと禁じ、手を引かせましょう。」

ニコッと愛想の良い筈の笑みだが、全く親近感も感じられない。ローザは訝しむのに気づかれないように整えた表情をそのままに彼を見返した。それは願っても無いお話ですが、と続けながらローザは静かに言葉を綴る。


「ですが、貴方の一存でそのような事を決めても宜しいのでしょうか。…アダム・ボルネオ・ネペンテス第一皇子殿下。」

「〝皇太子〟です、女王陛下。私はアルフ皇帝から既に次期皇帝として全権を与えられております。」


こうして、フリージア王国との会談も任されました。と続けたアダムは目を薄く開く。

口元の笑みをそのままに語る彼は、さわやかに笑もうとしてもその奥底は明らかに黒ずんで見えた。空になったグラスをテーブルに置くと、今度は手を組みテーブルに体重ごと寄りかかるようにしてのせた。


「本当ならば〝同盟〟を願いたいのですが、端の小国とはいえ従属国を御しきれなかったこちらの落ち度もありますから。」

三国を馬鹿にするように笑うアダムは、まるで獲物の隙を窺うように口を開き「いかがでしょう?」と尋ねた。ローザはそれに少しだけ口を噤んだ。

フリージア王国としてもそれは願うところだ。

奴隷大国であるラジヤ帝国と奴隷反対国であるフリージア王国は相容れない。だが和平であれば、互いの国とその同盟国への不可侵を約束するだけだ。関わりも相手国の式典の中でも特別大きなものにだけ招かれるくらいで、それ以上は何もない。

そして、同盟になれば協力関係にもなってしまう。ラジヤ帝国が侵略をする度にフリージアがその侵略に戦力として巻き込まれる可能性もある。更には


「もちろん同盟を結んで頂き、我が国の〝商品〟にフリージア王国の協力を頂ければ市場も活性化するとは思うのですが。」


ゴホン、とアダムの言葉にヴェストが強く咳払いをした。

だが、アダムはそれでも構わないようにもう一言だけ「罪人でも構わないのですが」と発した。

世界唯一の特殊能力者が生まれるフリージア王国の民は〝奴隷〟としての価値が非常に高い。正式にフリージア王国が奴隷産出国になれば、多くの奴隷容認国が市場に詰め寄るだろう。


「和平は、こちらも望むところです。是非とも調印を交わしましょう。…ですが、同盟に関しては我が国の意思は変わりません。」

申し訳ありませんが、と続けながらはっきりと言い放つローザの言葉にアダムは表情を崩さなかった。予想出来ていた返答に「残念です」とだけ答えた。


「…では、調印の準備を。」

ローザの合図にヴェストは頷き、既に用意していた調印書類を彼女の前に広げた。

ローザもヴェストも示し合わせずとも理解していた。ラジヤ帝国…延いてはアダムの言葉が信用ならないことを。表向きどう言おうとも、実際はラジヤ帝国の関与が事実だろうと確信を持つ程度には。


ただ、それを入れても今回の調印は価値がある。


ハナズオ連合王国を救えるだけではない、ラジヤ帝国との争いを望まないのはフリージア王国もその同盟国も同じなのだから。

〝和平〟という形で協定を結べば、互いがどれほど相入れずとも戦争からは免れる。更に、ジルベールが水面下で進めている奴隷にされた自国の民をラジヤから取り返す為の取り組みも〝和平〟という関係からならば進めやすくなる。人身売買の大元こそが、彼らラジヤ帝国なのだから。

ラジヤ帝国もまた、フリージア王国と和平を結ぶことで今後の人身売買参入への勧誘もしやすくなり、フリージア王国を敵に回す恐れもなくなる。

互いにマイナスの無い、利点しかない取引だ。


「…こちらに。」


これによりラジヤ帝国従属国コペランディ王国、アラタ王国、ラフレシアナ王国は、フリージア王国の同盟国ハナズオ連合王国からの完全撤退が決定した。と、同時に




この協定はフリージア王国とハナズオ連合王国の歴史に深く刻まれることとなる。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ま、大国としては我々は関係ないというしか無いよなあ
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