294.義弟は笑い、
「失礼致します。」
サーシス王国港、アネモネ王国船。
瞬間移動した途端、留守を任されていたアネモネの騎士達が一度驚いた表情をしたが、俺の顔を覚えていたらしくすぐに警戒は解いてくれた。
「突然申し訳ありません。先程はありがとうございました。フリージア王国の第一王子ステイル・ロイヤル・アイビーです。」
笑みを作り、手短に挨拶をしながら先程の武器庫へと目を向ける。
「確か、我が国への救援物資が未だ数多く残っていたと存じます。」
宜しいでしょうか、と頼めば彼らは二つ返事で了承してくれた。まだ各拠点本陣に行けば、アネモネから受け取った武器や爆薬は残っているが、どうせならば他の兵士や騎士が一番取りに行きにくい場所の物資を俺が使う方が良い。
どうせ、これから大量に消費するのだから。
「さて。…ある程度規模は抑えたものを選ばなければなりませんね。万が一にも我が軍や国壁にこれ以上の被害を与えてはー…、?」
何となく背後の騎士に語りかけながら、その顔を間近で見た途端。妙な既視感のようなものに思考が襲われた。俺と目が合い、少し驚いたような表情をする騎士は瞬きを何度も繰り返した。何か、思い当たるところがあるのか次第に目が泳ぎ出す。…彼は敵の間者ではなく間違いなく我が国の騎士である筈なのに、何故突然こんなによそよそしくなったのか。
「…っ、ステイル様、どうか…なさいましたでしょうか…?」
俺の視線に耐えかねたのか、恐る恐る口を開く彼にハッとする。そうだった、今はこんな事をしている場合ではない。早くこれをー…!。
あ。
騎士の声で、一気に遠い記憶が思い出される。自分でも目が見開いていくのがよくわかる。騎士が戸惑ったように「ステイル様…?」と声を上げ、俺は思わず笑みが零れた。なんでもありませんよ、と返しながら急ぎ手頃な投下物を選別し、騎士の手で足元へと積んでいく。
「…御心配なく。今度は〝ちゃんと投げ込みますから〟」
俺の代わりに、投下物の箱を上の棚から持ち上げた騎士が、それを足下へ積む直前にガタンと音を立てた。箱は崩れなかったようだが、勢い良い音に俺も驚き、軽く振り向いて騎士へと目を向けた。…分かりやすく顔色が青く変わっていて、場違いにも軽く笑いが込み上げた。
俺は無言で彼に笑い掛けながら、指で別の箱を指し示す。少し緊張した様子でそれを抱えながら、騎士が目を今まで以上に泳がせていた。
動揺する彼に笑いを噛み殺しながら、全ての準備を終えた俺は手頃な場所をと考える。だがすぐには思いつかず、取り敢えず一度西の塔へ箱の山を瞬間移動した。ここで早速火をつけるわけにはいかない。武器庫での火気など自殺行為だ。
……さて。
アネモネ国の騎士達に挨拶をし、再び騎士と共に俺も西の塔へと瞬間移動した。
積まれた箱の中身を確認しながら、俺は火種を騎士へ求める。騎士がそれに応えたのを確認し、まず一番上の箱の中身から俺は手に取った。
見るが良い。
コペランディ王国、アラタ王国、ラフレシアナ王国軍。
投爆の恐怖を、今度はお前らが味わう番だ。
その、身を以て。




