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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
冒瀆王女と戦争

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267.騎士隊長は堪える。


「プライド様!今、応急処置するんで動かないで下さい‼︎」


…腕の中で痛みに耐え続けるプライド様へ声を張る。誰でもない俺自身への無力感と失望感に怒りが沸き、胸が焼け爛れそうになりながら。


最悪だ。

プライド様を、守れなかった。

俺がプライド様の傍を離れ、そのせいでカラムはプライド様を手放さざるを得なくなった。俺が最初から傍にいれば、こんなことにはならなかった。カラムだってあのまま…、……っ。

駄目だ今考えたらいけねぇことまで頭を駆け巡る。

ヴァルから受け取った後、鎧を外し投げ出されたままのプライド様の痛々しい素足が視界に入るだけで、胸が更に焼け焦げる。

俺が連れてきた騎士達も、誰もが周りで息を飲むのがわかる。焦燥感が他の奴らに伝染しないようにするのが精一杯で、プライド様とそれ以上のことが考えられなくなる。


「プライド様!痛むのは左足だけでしょうか⁈」


カラムが、プライド様に声をかける。七番隊…治療や救急に特化した隊の騎士が特殊能力でプライド様の傷を見る。見ただけでわかる、きっとプライド様の左足は折れている。か細いプライド様の足が倍近くに腫れ上がり、特殊能力のお陰で少し、ほんの少しずつ赤みが引いてくるけど絶対痛みは引いていない。

カラムの問い掛けに、プライド様は少し間を空けた後、辿々しくその口を開いた。


「…右足も、捻ってしまって。…ごめんなさい。」


視界が、暗くなる。プライド様を抱える手に無意識に力が入り、震え出しそうなのを必死に堪えた。急いでカラムがプライド様の右足の鎧を外し始める間も、冷や汗が拭えず頬を伝った。


両脚の不能。


つまり今のプライド様は、一人で立つことすらままならないということになる。特殊能力者の治療も痛みを引かせることはできても、治療自体には時間がかかる。これからの短時間で歩けるようにするのは絶対無理だ。鎧を外された右足を見れば、関節部分が腫れていた。左足みたいに折れてはなさそうだけど、まだ特殊能力の治療を受けていない白い肌からは酷く赤みが際立っていた。急いで傍で見ていた騎士からもう一人怪我治療の特殊能力者を呼ぶ。七番隊の騎士が同時に四人こっちに駆け込もうとしたから、カラムが一人を名指しした。


「セドリック…。」


荒い息で、プライド様がセドリック王子を呼ぶ。騎士達が同時にセドリック王子の方に振り向き、道を開けた。俺が騎士を呼びに行った時、騎士達と一緒に避難していたセドリック王子も騎士と一緒に来たらしい。騎士達に囲まれていたセドリック王子が、重そうな足取りで歩み出した。まるで全責任が自分にあるような表情に、思わず息が苦しくなった。全ての責任は俺と、…カラムにある。近衛騎士の任が疎かになった結果だ。

遠目からでも微弱に震えたセドリック王子の足が、俺が抱き上げたプライド様の傍らにいるカラムの横に並ぶ。至近距離でプライド様の足の状態を確認したセドリック王子が、思わずといった様子で一歩たじろいだ。身体を俄かに逸らしながら、目だけはプライド様の腫れた足から離せないようだった。


「…大丈夫よ。命に別状はないし、足が無くなる訳じゃないんだから。」

プライド様が、無理して笑う。一瞬、特殊能力者の治癒が効いたのかと思ったけど、両脚からの激痛に耐えるその額からは尋常ではない汗が滴り落ちていた。顔色も酷く青白い。

セドリック王子もそれがわかるらしく、表情を酷く歪めて何も言えないように黙り込んだ。プライド様が返事がないことに不安げに笑みを無くすと、そのままゆっくりとセドリック王子を覗くように顔を傾けて口を開いた。


「…ごめんなさい。」


…霞むような、声だった。

俺も、…そしてセドリック王子も耳を疑うように目を見張り、プライド様を凝視した。

カラムがプライド様とセドリック王子の会話を邪魔しないように一歩引き、周囲の騎士に指示を出し始めた。手際良く包帯の用意や敵兵の襲撃に備えてこの場の防衛配置を確保する。カラムや騎士達の声に紛らせるように、プライド様が言葉を続ける。


「…守る、って言ったのにね。」


今この場で一番痛い思いをしている筈のプライド様から懺悔のような声が漏らされて、俺まで胸が掻き乱された。何も言えずに歯を食い縛るセドリック王子に、プライド様がそっと鎧の手を伸ばした。頬に指先だけを薄く添わせて、言葉に詰まるセドリック王子に今にも泣きそうな目を向けた。

…その途端、セドリック王子からギリッと歯を噛み締める音が俺まで響いた。絞り出すように、初めてその口から言葉が零れだす。


「ッ…何を、…っ言っている⁈俺のせいでお前はっ…‼︎俺、のっ…‼︎」


俺の代わりに、とセドリック王子が口の中だけで吐き捨てるように呟いた。拳を震わせ、顔を歪めたセドリック王子がまた言葉を詰まらせた。プライド様に向けた顔が真下へ俯き、堪えるように今度は肩まで震え出した。


「貴方のせいじゃないわ。…貴方が居なくても、きっと私は飛び出しちゃったもの。」

無理に笑みを作るプライド様の口元が痙攣している。こっちが痛くなる程、プライド様が全身で無理をして一人で自身に鞭を打つ。もう話さないで下さいと訴えたくなるほどに痛々しい。いくら平気な振りをしても、俺達の目にはひたすら辛かった。


「…セドリック。」

肩を震わせたまま再び黙り込みだしたセドリック王子に、プライド様が頬に添わせた手を重そうに今度は頭へ浮かせた。頭を撫でるようにそっと乗せたプライド様の手が、セドリック王子の頭を俄かに沈めた。顔を俯かせたまま上げようとしないセドリック王子に、プライド様が静かに語り掛ける。


「…大丈夫よ。貴方が思っている以上に、この世界は貴方に優しいから。」


プライド様の言葉に、セドリック王子が顔を上げた。

強く上げた拍子に目元に滲んでいた涙が溢れて弾けた。見開いた目が赤く、何か言いたげにその口がパクパクと動き、息だけをこぼした。

それを見たプライド様が可笑しそうに少し力の抜けた笑みを浮かべてみせた。さっきよりずっと自然な笑みにプライド様の左足を振り返れば、大分赤みが引いていた。患部の熱が引いたせいか、心なしか顔色も少し良くなった気がする。


「本当の貴方は、きっともっと沢山の大事なものを守れるわ。」


プライド様が少し身体を起こす。その拍子に少し足が動いて一瞬辛そうに顔を歪めた。それでも、構わないように今度は両手でセドリック王子の頬を指先だけで挟んだ。


「だって、貴方はあんなに素敵な国王二人の自慢の弟なんだから。」


セドリック王子の目が、…見開かれた。

これ以上ないくらい大きく開いた目の中で焔が揺れていた。そのまま開いた目が激しく揺らいだと思ったら、さっきとは比べ物にならない量の涙が溢れ出してきた。歯を食い縛った口の隙間に涙が伝い、入り込む。瞬きを忘れたみたいに見開かれた目から涙が溢れ続けた。


「…っ、…ーーっっ…。」

言葉も出ないで泣き出すセドリック王子に、プライド様がまた柔らかく頭を撫でた。大丈夫、大丈夫よと繰り返し唱えるプライド様が淡く光って見えるようだった。

額の汗が引いて、身体を少し起こしたプライド様が気がついたように自分の足に目を向けた。赤みが殆ど引いて、先に赤みの引いた右足を動かした。やっぱり動かすと痛みが走るみたいで、小さく呻くと同時に治療をした騎士が「動かしてはなりません!」と声を上げた。そのまま先に、軽傷だった右足が包帯で固定されていった。


「ほら、もう大丈夫!動かさなければもう痛くもないもの。」

ありがとうございます、と騎士に礼を言いながらプライド様がほっとしたように息を吐いた。そのままプライド様はセドリック王子を慰めるように笑ってみせる。…それでもセドリック王子からの涙は止まらなかった。


「アラン隊長、重くはありませんか?」

まるで意識的にその場の空気を変えようとするように、プライド様が明るい口調で俺に聞く。全然軽いです!と思わずうわずった声で返すと、プライド様が「良かった」と柔らかく笑ってくれた。…まだ、自由も利かない筈の足を力無くぶら下げたまま。

プライド様はそのまま左手で、右手の鎧を外そうとして戸惑ったように眉間に皺をよせた。手に上手く力が入らないみたいだった。


「……。…ごめんなさい、カラム隊長。右手の鎧、外して貰えませんか?」


本当に申し訳なさそうに苦笑いするプライド様が、ちょうど治療の具合を窺いに来たカラムに右手を出した。カラムが早口で一言返すと、手早くプライド様の右手の鎧に触れた。

一体何をするつもりなのかはすぐにわかって、俺もカラムも口の中を飲み込んだ。

カラムが、鎧を外す。白くて細いプライド様の手が緩やかに閉じ、開かれた。

プライド様の左足に目を向けると、治療が出来るところまで終わったらしく、騎士が左足も固定して包帯を巻き始めた。




ピィィィィィィイイイイイイッッッ…‼︎‼︎




腕の中で、甲高い指笛の音が響く。プライド様が指を口に含み、空へと鳴らした。











…ステイル様を、呼ぶ為に。


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[一言] 自慢の弟 NO 自慢の(?)愚弟 YES 励ましの言葉だとは分かってるけどツッコミを禁じ得ない
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