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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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2312/2313

【アニメ放送本日22時!!・感謝話】貿易王子と王弟の戯れ

本日!とうとうアニメSeason2が放送開始致します!

感謝を込めて感謝話を書き下ろさせて頂きました。

時間軸は第一部~第二部くらいだと思って頂ければ幸いです。

アニメ本日22時、ABEMAは22時30分よろしくお願い致します!


「新兵合同演習、か。最初に提案したのは、フリージア王国側だったかな」


パァンッ!と直後にレオンの右手から乾いた音が鳴り響く。その度に、傍に配置されたテーブルの上にあるカップがカタカタと震え、水面が揺れた。

銃口を向けた遙か先にある的の、真ん中に的中したことを確認役の騎士が旗の色で示した。自国の第一王子なら自分の眉間を撃ち抜くのも技術としては造作もないのだろうと密かに思う。

ただ弾の開けた位置と的の交換であれば使用人にも可能であったが、念のための安全を考慮してレオンから騎士を指名した。発砲を行う際には周囲にも充分に配慮し、また自分が試し打ちを続ける一帯もしっかりと人払いを行っているものの、それでも万が一のことがあっては困る。

まだ残数のある銃を、そのまま話し相手へと滑らかな笑みで手渡した。そして相手もまた同じように銃を構え射撃を試みるのを眺めながら、変わらず話を続ける。


「当時、まだアネモネとフリージアは同盟関係ではなくて、あくまで和平を結んだ友好関係だったんだ。我が国は小国だからいつでも侵略することができる立場にいる大国フリージアが敵になる日を恐れ、けれど近付き過ぎることも恐れた」

敵になれば、すぐに侵略されてしまう。だが、親交を深めてもそれをきっかけにいつ名ばかりの事実上〝吸収〟に引きずり込まれるかもわからない。海とそして大国フリージアに挟まれたアネモネ王国にとって、安易に決定づけられる相手ではなかったことをレオンも理解する。

パァンッ!と乾いた音が鳴り響いたところで、的が自分と同じ真ん中に命中したことにレオンは静かに感嘆の声を漏らす。今の銃は射撃方法こそ簡単でも、重さがある分支え無しでは撃ちにくい筈なのにと密かに思う。今や貿易大手と大陸でも名高いアネモネ王国は様々な武器を取り扱っているものの、優れた新武器もあれば逆に取り扱っても意味のない、買った相手が損をするだけの品も多い。そういう銃までも、一度自分が見本を見せれば装填から射撃まで容易に熟す彼に、いっそ今後不要になった武器を提供するのも面白いかもしれないと悪戯心に近い気持ちで考えてしまう。


「アネモネ王国を守る為に、それも一つの大いなる決断だったと思うよ。……!ごめん。決して君達のハナズオ連合王国を否定しているわけではないから」

セドリック王弟、と。そこでレオンは僅かに表情を変え、隣に並ぶ来賓へと顔を向けた。もう何時間にも渡る中、共に射撃を嗜んだ客人に。

セドリック・シルバ・ローウェル。フリージア王国の移住したハナズオ連合王国の王弟は、レオンからの謝罪にも落ち着いた態度で「いえ」と短く首を振り、それから借りた銃を使用済み武器のトレー上へと置いた。


「むしろ、共感できます。今こそ偉大な兄達の功績で王族同士友好関係を持っている我が国ですが、ほんの少し前までは「ハナズオ連合王国」とは名ばかりの、どちらが国の主導権を握るか睨み合う歴史がありましたから」

少なくとも、自国であるサーシス王国側の城貯蔵の蔵書で自分が暗記させられた本はその殆どが「サーシス王国が主導権を握ることが正しい」ことを前提とした物ばかりだった。それを一字一句違えず記憶するセドリックは、それ以上にチャイネンシスの国王であるヨアンと、そして実の兄であるランスの意志を信じている。決してどちらが主導権を握るべきではないのだと、しかし相手が強国であればそのバランスを弱者が握ることが難しいことも防衛戦前に嫌というほど思い知っていた。


今、セドリックが訪れているのはフリージア王国の隣国であるアネモネ王国、その王城だった。

以前よりレオンから誘われていた射撃に、フリージア王国の民となった今は予定を空けて訪問することも難しくない。この日の為に、仕事を全て一区切りまで片付け、早朝からフリージア王国を発ったセドリックは午後までアネモネの騎士団演習場を借りての広範囲武器の銃機器や投爆武器の試用、そして今はバルコニーから城の庭園の開けた場所を選び射撃を嗜んでいた。広範囲武器の使用では、あまりの範囲や引き金を引いただけでの威力の大きさに圧倒されたセドリックだが、今はどの銃も個性こそあっても一度の引き金で放たれるのは銃弾一発だけだと言われた分、比較落ち着いていた。だからこそ今も、簡単な雑談としてレオンに〝騎士団新兵合同演習〟についての話題を自分から投げかけた。


「なにより、フリージア王国の騎士団は他国とは比べものにならない強さであり、それは現在だけでなく古来からそうであるとも存じております」

レオンとの試し撃ちと射撃の方式自体はずっと変わらない。見たことのない武器を、レオンに見本を撃ってもらい、それを観察した自分がまた撃つ。あくまで見様見真似で撃っているだけの自分の為に、何度もレオンに見本を撃たせることは悪いとも思ったセドリックだが、しかし同じ銃でもこんなにも手応えや取り扱いに違いがあるのかと、今は少し興味深くもなってきていた。

そしてこの銃一丁一丁よりも遙かに強固で、そして戦闘力に優れているのはフリージア王国の騎士団だとも今は理解する。今日一日で試し撃ちした銃全てを以てしても、騎士に勝てない人間の方が多いのだと改めて思えばやはりフリージア王国騎士団は尋常ではない。


セドリックの言葉に「そうだね」と滑らかに笑みながら、レオンはまた隣に置かれた木箱から銃を一つ取り出した。

最初は大量に積まれた銃も、今は底が見えてきた。銃身の長いそれを装填準備を説明書も不要に扱いながら、子どもの頃にはとっくに学んだアネモネとフリージアの歴史を思い返す。


「だからだろうね。フリージア王国の方から〝新兵〟の合同演習をアネモネ王国に持ちかけた。それはフリージア王国にとっても大いなる選択だったと思う。本隊騎士ではない、たんなる新兵であればと我が国もそれを許可し、彼らの入国を許した。もちろん、こちらからも条件は色々提示して摺り合わせた上で」

あくまで国内に入るのは新兵のみ、迎えはアネモネ王国がするから本隊騎士は入国しないで欲しい。たとえ新兵であってもフリージア王国の危険な特殊能力者が〝紛れ込んで〟いることも鑑みて、国の代表者もアネモネ王国で立ち会って欲しい。その説明を聞きながら、もしフリージアの新兵が国内で暴れても対応することのできるよう人質に相応しい人間も欲しいという意味合いだと、説明されるまでもなくセドリックもわかった。


事前に訪問する新兵の特殊能力についても教え、入国の許可を求めて欲しいというアネモネ王国からの幾重にも重ねた厳重な警戒に、フリージア王国も譲歩し続けた。

アネモネ王国からすれば、どんな危険な特殊能力者からの工作や暗殺を仕掛けられるかわからないからこその条件だとレオンも理解はしているものの、しかしそれがまさに当時のフリージア王国の民への扱いと差別そのものだなとも今は否定的な気持ちもある。特殊能力者は決して脳のない化け物でもなければ、自分達と同じ礼儀も常識も弁えることのできる人間だ。それを事前に特殊能力で入国の可否をアネモネ王国が決めた、つまりは特殊能力を理由に入国を拒否された新兵も当時はいたのだろうと考える。つい最近までもその条件とやり取りは惰性に続いていたものの、………数年前、アネモネ騎士が裏家業に拷問の末その情報を吐いてしまったという不祥事から、その義務だけは今は無くなった。

他国でもあくまで入国時に特殊能力を自己申告するだけで済む分、フリージア王国の人間も生きやすくなったことは幸いにレオンは思う。


「それほどに大国フリージアが譲歩してまで友好を求められたアネモネ王国は、当時から素晴らしい国だったのでしょう」

「うん、………そうだね。貿易や物流もアネモネ王国が海路に関しては担っていたし、フリージア王国は海がないから。塩や海産物については、特に切実だったと思うよ」

しかも、フリージア王国は昔から〝絶対不可侵〟と〝奴隷反対〟を謳いながらも、決して危険な民族でも国でもないと主張する為に一方的な他国への攻撃は可能な限り避けていた。だからこそ平和的に、アネモネ王国との共存を求めた。

それだけアネモネ王国が恐れるに値しない国だと見下されていた部分もあれば、同時にアネモネ王国が敵に回ればフリージア王国は民の生命線もしくは主張と根幹を揺るがされる恐れがあったのだろうとレオンは冷静に思う。両国のその長い長い綱渡りの末、良好な同盟国となることができたのだとも。


「実際、新兵合同演習を見て僕もフリージア王国は特殊能力だけの騎士じゃないことを知れた。騎士自身の能力が恐ろしく高い。アネモネ王国騎士団にとっても良い刺激になっているよ」

「具体的に合同演習ではどのようなことを?競ったりもするのでしょうか」

「わりと一般的な試合かな。正直、勝敗数で言えばアネモネ王国の騎士が負けることの方が多いけれど、当時からアネモネには最新鋭の武器という切り札があったし、特殊能力が使用されることも少なかったから………」

フリージアの新兵が人間であることも確認でき、フリージアの戦力を垣間見ることもできる。両国の王族が見守る中、互いに実力を披露する場は今や年に一度の楽しみだ。

アネモネでは密かに、フリージア王国の新兵に特殊能力を使わせるまで追い込めた騎士にはそれだけでも報償が与えられたこともある。

話しながらレオンは「あ」と一音を溢した。自分が合同演習を参列できたのは社交禁止が命じられてた前後のみだが、政治にも貿易にも関わらせてもらっている第一王位継承者としては見方もそして関わり方も変わっていた。


「そういえば、今年からはまた新たな試みができそうなんだ。フリージア王国からは新兵の一部特殊能力者が、我が国からは実用開始した武器の一部披露を〝前座〟に行うのはどうかなと。もう今は隠す必要のない同盟関係だし、これからのアネモネの上層部はもっと特殊能力が恐ろしいものだけではないと知るべきだと思うから」

あくまで前座であり、戦闘目的ではない特殊能力披露でも構わない。ただ、特殊能力を見なれるという機会は必要だと、今も順々に銃を手に取っては的の中央にあてながらレオンは考える。

そしてセドリックもこれには僅かに目を見開き、焔色の瞳を輝かせた。「知るべき」という言葉は、兄と慕うヨアンとそしてランスの考えにも通じるものがあると思う。流石は次期国王となる王子だと、そうレオンに敬意を覚えながらも自分もまた的の中央を当然のように次々撃ち抜いた。


「それは良い試みだと思います。是非いつか私も、その新兵合同演習に同行させて頂きたいと願っており………!」

「君になら合同演習に来なくても今日みたいに武器くらい披露するよ。それに、フリージアの騎士団演習場だって視察すれば容易じゃないのかい?」

「いえ!アネモネ王国とフリージア王国がどのように交流を図り、そして互いに良い関係をどのような認識で取り持っているのか、フリージアの民として私もそれをこの身体で向き合いたいと考えております……!」

あぁ、と。熱意あるセドリックの主張に、そこでレオンも納得した。また新たに射撃したものの、セドリックの目が今回は自分の銃までは集中して見ていなかっただろうと、もう一度やってみせようと頭の隅で決めつつしかし今は手を下ろした。


突然新兵合同演習の話題を振られた時は、そんな話題は自分よりも身近にいるプライドか、もしくは意中の相手であるティアラに聞けば良いのにと思ったが、アネモネ王国の第一王子である自分側の了見を聞くことが必要だったのだと正しく受け取った。

きらりと目の焔を輝かせ前のめりになる彼は、本当に今は真面目な王子だと思う。しかし、両国間の関係取り持ちという話題であれば、新兵合同演習よりも自分とプライドの婚約の方が遙かに………と言おうとして、やめた。当時のことはそんな雑談として語るべき話ではない。それをセドリックが配慮して、触れないでいてくれている可能性もある。


もう一度銃を撃ち直し、セドリックに手渡したところで、レオンはふといつの間にか銃が最後の一丁になっていることに気付いた。話に夢中になり過ぎて、銃が底を尽きることに気づくのが遅れてしまった。

目の前でセドリックが、今回もなんの問題もなく的の真ん中を当てたことを見届けてから、最後の銃を装填する。全て、セドリックに装填方法も見せる為に敢えて事前に弾をいれずに準備させた武器だが、今は使用済みの銃はどれもが充分に残弾がある。


「……一つ、僕らもしてみようか?勝負」

「?勝負、ですか………」

ふと思いついたように口にしたレオンに、セドリックは大きく瞬きを返す。最後の銃を片手に持つレオンと、そして試し撃ちを終えた銃を持つ自分でのその話題は、頭ではわかっていても穏やかではない空気に感じてしまう。しかも、自分はレオンに不敬を犯した記憶もしっかり残っている。

僅かに焦燥を滲ませるセドリックに、レオンは滑らかな笑みのまま「大丈夫」と最初に断った。今までの試し撃ちと変わらない、安全な勝負だとそう告げたところでセドリックの上がっていた両肩が下がった。


「君があんまりにも武器の扱いが上手いから、ちょっと競ってみたくなって。もし君が勝ったら、……そうだな。今度プライドとの定期訪問でティアラもいたら、君も誘いたいと僕から提案する、とかどうかな?」

「そッ!!!!れっは……~~っ………いえっお断り、致します……。ティアラも、せっかくのレオン王子との時間を、私に邪魔されたくはないでしょうからっ………~っ」

思わず安全装置を止める前に全指に力が入りかけたセドリックは、血色に反し意識的に自分を落ち着ける。

ティアラに会える機会が増えることは心から望ましい。しかもプライドやレオンもいる定期訪問は、とても良い時間になるだろうとそれだけでも魅力的に思う。しかしティアラからすれば、レオンからの提案は断りにくい上に、嫌っている自分がのこのこと乱入するなど不快で、そして卑怯な行為とも取られかねない。ティアラにひと目でも逢いたい気持ちはあるが、しかし自分本位の都合で彼女に不快な想いをさせたくもない。


最高の報酬提案を断腸の想いで断るセドリックに、レオンは「そうかな」と返しつつ心の中で小首を傾げた。

奪還戦でも共に行動し、祝勝会ではあんなに幸せそうにダンスの相手に選んだセドリックがいたところでティアラは嫌がらないと思う。しかし自分の知らない見方も存在すれば、いくらセドリックの片思いを知っていたところでそれを傍観者である自分が干渉し、突くのも悪いと思う。

自分の気持ちを決めつけられて強制されることがどれだけ恐ろしく、時に苦しめられるかも己は知っているのだから。

「確かに、ティアラとプライドの都合もあるかもね、ごめん。けれど金銭を賭けるのもつまらないし……じゃあこの前のお茶会でティアラからすごく好評だった輸入紅茶葉とか」



「勝負方法はどう致しましょう」



ずしりと急に真剣な声色で上塗られ、レオンは口の動きが止まった。

さっきまで悶絶していたのと同一人物とは思えない、男性的に整った顔立ちに相応しい面持ちで銃を握り直すセドリックは、安全装置を一度つけまたすぐに外した。いつでも勝負できると意気込みをみせる彼の目の奥はどう見ても燃えていた。

あまりの意欲の差に、自分の方が口角が僅かに震えてしまう。「好きな武器で良いよ」と言ったが、セドリックにとって使用の感覚に差こそあれど、難易度は大して変わらなかった。どのような勝負方法でも、今この手で握りやすい銃で問題ない。フリージア王国騎士団にも至急されていた銃とも似た大きさだ。

セドリックが銃を決めたところで、レオンも今自分が握っている銃で問題はない。それよりも自分で言ったものの勝負方法は悩んだ。今のところ自分もセドリックも、文字通り百発百中だ。もう少し撃ちにくい的も考えたが、この庭園では今の的が最長距離だ。あとはもう一度騎士団演習場に戻って……と考えたところで、今日はこの後に用事があることも思い出す。やはりこの場で済ませられる方が良い。

そこでふと、テーブルの紅茶が冷め、減ってきていることに気が付いた。


「!……早撃ち、でどうかな?先にあの的を撃ち抜いた方が勝ちで、同時だった時はより真ん中に近い方の勝利にしよう」

ちょうど自分の使う銃とセドリックの持つ銃では弾の大きさが違う。それなら公平だろうと提案するレオンに、セドリックも頷いた。早撃ちなどそれこそ人と競ったことはないが、同時に面白いとも思う。今も一度銃を構え、的との距離感を確かめる。


「今、多分侍女が新しい紅茶を持って来てくれているところだから。扉を侍女が開けた瞬間に、的を撃つ。それなら公平かな?」

「良いでしょう」

傍にいる他の侍女に確認すれば、レオンの見立て通り少し前に紅茶の替えを用意に給仕の侍女は部屋を出ていた。

突然の射撃音に本人を驚かせてしまう可能性はあるが、既に何発もセドリックとレオンが銃を撃ち続けている最中である。そしてセドリックも、何秒後などの自分に有利な条件よりも遙かに公平だと思う。

お互いに銃を構えたまま、侍女を待つ。その間、お互いに今度は会話をしなかった。背後の扉の向こうから聞こえる微かな気配や音を拾うべく、神経を張り巡らせた。沈黙が長くなればなるほどに、まるで戦場のようにビリビリと研ぎ澄まされていく感覚に、控えて居る侍女や従者達も早く侍女が扉を開けて欲しいと奥歯を噛み締め待ち続けた。

足音が、近付いた。扉よりも二人は的の方を注視し、聴覚を研ぎ澄ます。最初は遠くからうっすらと、そして近づきノックも省略されすぐに扉が開か



パァンッ!!



「………………あれ?」

きょとんと、レオンは思わず顔の筋肉が伸びる。てっきりほぼ同時になると思っていた射撃音は、自分だけだった。的の真ん中を撃ち抜いたレオンだが、隣に立っていたセドリックが構えたままだったことへの戸惑いの方が上回った。どうしたんだい、と聞こうとしたその瞬間。


「びっっくりした~~!……もう!いきなり鳴らすなんて驚くじゃない!」

「外からずっと聞こえてましたけど、悪い人でも入ってきたんですか?」

「おいレオン、そういうご趣味はよそでやれ」

背後から聞こえる声に、レオンも思わず振り返る。お茶を持って来た侍女だと思ったが、ヴァル達だ。

今日、ヴァル達が配達に来ることも知り、もし訪れたら是非呼んで欲しいと使用人に言付けを預けたのも自分自身だが、うっかり張り詰めたせいで誤った。「ごめん」と言いながら、自分がまさかの誤射したことに半笑いをしてしまう。自分で想った以上に、つい本気になってしまったのだと自覚する。

ちょうど今日はセドリックも来ているからと、彼の滞在中にヴァル達が来たら一緒に皆で話をするのも楽しいかもしれないと思っての提案だったが、まさかのセドリックではなく自分の方がある意味驚かされてしまった。

振り返った先で反射的に形成された荷袋の砂の壁と、それを盾にした位置から顔を覗かせるセフェクとケメト、そして煩そうに顔を顰めるヴァルに「ごめん」と



パァンッ!!



「失礼致します。お茶を……、……?」

ひょこりと、お淑やかな動作と共に扉から顔を覗かせた給仕の侍女は振り返ったままのレオンでも砂の壁とヴァル達の影に隠れて声を聞くまで姿は見えなかった。

本来であれば集中状態だろう第一王子と客人の邪魔にならないようにお茶を新しくしようとした侍女だったが、廊下の衛兵により一度閉じられた扉が、二人の集中力を削がない為にノックもなく再び開けられたところでまさかの新たな客人で声を掛けるしかなかなくなった。

ケメトが「すみません!」と気付き退く中、ヴァルとセフェクはまた怪訝な表情で黄金色の背中を見た。さっきからずっと自分達に背中を向けたまま動じなかった男が、よく知る背中であることは気付いている。

しかしまた急に発砲音を鳴らしたことに煩そうにセフェクは自分の耳を塞ぎ、ヴァルも「うるせぇ」と舌を打った。配達中には聞くこともある慣れた射撃音だが、しかし別に特別好きな音でもない。

くるりと振り返ったセドリックはそこで「失礼しました」とヴァル達に謝罪をしてから、レオンに目を合わせた。レオンも振り返れば、確かに的の真ん中をセドリックは撃ち抜いたと騎士から旗が揚げられている。「扉を()()()()()()瞬間に、的を撃つ」と条件をつけた自分の敗北である。


「すごいな……。どうして、ヴァル達には引っかからなかったんだい?侍女の方は、ワゴンの音かな」

素直にセドリックの判断力と腕に感心を示しながら、レオンは思考も巡らせる。

自分はつい張り詰めて扉が開く瞬間を待ってしまったとはいえ、よく考えれば足音が複数だったこともワゴンの音がしなかったことも気にするべきだった。

ヴァル達と会話中、自分もワゴンの音をうっすら拾えたが、もう既に一回撃った後だった以上レオンの中で二度目はなかった。それに対し、冷静に扉を開けた侍女の足音を聴覚だけで判別したのは流石だと素直に思う。

レオンからの問いかけに「勿論それもありますが」と、銃に安全装置をかけトレーに置きながらセドリックは反対の手でヴァル達を示した。


「明らかに()()()殿()()足音でしたので。まさか彼らもレオン王子殿下に招かれていたことは今初めて知りました」


あっさりと言い放つセドリックに、レオンはそれが「侍女以外の足音だとわかった」という意味か、それとも「ヴァルの足音だとわかった」という意味かで、数秒悩んだ。

最終的に後者だとセドリックに確認をとれば、先ずは勝負の条件そのものを自分が誤ったとレオンは理解した。そもそもが射撃勝負だった筈が、まさか足音の聞き取り勝負になってしまったことに最後は少し笑ってしまう。


「君って、…………本当に面白いね」

「?恐縮です」

二人のやり取りに、勝負の経緯を知らないヴァルは意味不明さに顔を歪め、セフェクとケメトもヴァルの影に思わず隠れる。レオンもだんだん可笑しくなってきたその中で、セドリックだけは勝利報酬の紅茶葉獲得ばかりに変わらず思考に巡らせ続けた。


ラス為アニメSeason2放送が本日です!

https://lastame.com/

TOKYO MXで明日から毎週火曜22:00~

無料のABEMAでは明日のから毎週火曜22:30~

に放送です。

とうとうレオンとセドリックの声が聞けます!!!

是非、よろしくお願い致します……!!

活動報告も更新致しました。宜しければ是非。

皆様に心からの感謝を。


==


「バッドエンドから一年後~誰にも期待されない魔法使いの私が、伝説の精霊魔法使いに実力を認められ王子を救う~」 略して「バドいち」連載中です。

ncode.syosetu.com/n9682ly/

こちらも是非よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
足音の聞き取り勝負w 流石セドリックでした。 アニメ2期1話面白かったです!
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