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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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咎め、


「失礼ながら、今の状況ではフリージア側の関与の方が疑わしい。今まで長年ここを任されてきましたが、銃声騒ぎなど一度もありませんでした。勿論そのようなことはないでしょうが、状況がわかるまではこちらでお待ち願えませんでしょうか」

「関与とは?」


具体的に、と。全く怯む様子もなくまた間を置かず言葉を返すヴェストに、所長も苛立ちを覚え出す。

なんでもかんでも細かいところを突きやがってと心の声が漏れないように結んで笑ませた口の中で奥歯を噛み締める。こちらは今すぐにでも銃声の原因と看守の報告を確認したいだけだというのに、それすらも許されない。

銃声の原因がまた看守達の不手際ならば懲罰の一つや二つで足りはしない。そして本当に侵入者であれば始末したい。もしフリージアの騎士がやらかしたのであればここぞとばかりに責められる。どれをとっても今すぐに対処したい理由だった。

軽い嫌味を言って振り払おうとしただけなのに、質問を返してくる男を前に本当なら自分の片手で締め上げるものをと、そうして終わらせたいと本気で思う。今は研ぎ澄ましているが本来の顔は強面とはほど遠い、ここで自分が恫喝すれば竦み上がるような優男だ。


何故突然ズカズカと上がり込んできた相手に自分がここまで足を止めてやらないといけないのだと思う。

しかも相手はラジヤ帝国にとっても最も忌むべくフリージア王国だ。黙って奴隷を産出すれば良いのに大国であることと化物を所有していることを傘に着て、他国の商売に文句をつけてくる厄介者だ。暴力で済めば良いものを、恫喝で済めば良いものを、無視できれば良いものを、目の前の相手はそのどれも許さない。


「ッ……貴方様の護衛達が、私の大事な従業員に引き金を引いた場合も視野に入れるべきと申しております。真面目な看守達と違い、貴方がたの護衛は全員が銃を所有しているのでしょうから!」

「何故、どうして、そのような状況になると考えられるのでしょうか。銃を持つのはここの収容所の護衛や警備達も多くが同じだと存じております」

流石は大規模な収容所だと。そこは簡素にヴェストは評する。

剣や槍と異なり、銃は旧式であっても高級品だ。それを見張りの看守達ですら何人かが携帯しているとなると、それだけの給与を得ているかもしくは警備の必要物資として支給されているということになる。

自分も背後に控える護衛から耳打ちで聞かされなければ、向けられてもない銃を所有する人間がそれだけ多いとは思わなかった。恐らくは目の前の所長も隠し持っているのだろうと見当付ける。


うるさい、黙れと。それで済めばどんなに楽だったか。そう考えながら所長は今にも扉へ向けて足を動かしたくて仕方が無い。

何度も会話を切れる言葉を放っているのに、全く自分が踵を返す間も与えられずすぐに言葉を返される。堅物がと、今にも舌先からこぼれ落ちそうになる。

応接室に招き入れてからも既に何度そう思っていた。少しでも気を緩ませようと上等な酒を出したのに一口も付けずに断られ、何だったらお口に合うかと酒の銘柄を訪ねたつもりだったのに紅茶ならばと鼻につく言葉を返された。仕方なく急ぎ看守達に上等な葉で紅茶を入れさせたが、目の前で断りも無く堂々と毒味を通された。その後に一口は飲んだが、水面が揺れる程度の微量で以降は口を付けない。折角高級な茶葉を二倍の葉量で贅沢にいれさせてやったのにも関わらず無駄にする。

いくら世間話に話題をずらそうとしても、つまらない返事しか貰えない。会話が途切れると何度も何度も最初に流した質問をまた持ち出される。フリージア王国の奴隷を取り扱っているという噂は本当か、奴隷を実際に見せてもらいたい、収容所全体の見学でも構わないとどこまでも図々しい。

怒りを飲み込み、表面は繕いながら腹底の沸騰が冷めるのを待つ中でも、またヴェストから「貴方の〝大事〟に奴隷は入らないようですね」と付け足されれば唾を吐いてやりたくなる。

使い捨ての存在である奴隷を何故従業員と同列にしてやらないといけないんだと、従業員を大事と言ってやっただけでも本人なりに猫を被ったつもりだったから余計に腹が立った。

そして今も、カッと頭に血が上る。優男が今度こそ言い返してこれないようにと、気付けば大きく鼻から息を吸い上げた。

「ッ我々が銃を使うわけがない!!!ここは私達の城だぞ?!人の城にズカズカと入り込んだのは貴方達の方だ!そちらが勢いで看守達に銃を向けたと考えて何が悪」




「無礼者ッ!!!」




ゴォッッ!!と一瞬の覇気に全てが塗りつぶされる。

銃声よりも遙かに鼓膜を揺らす轟音のような声に所長も看守も目を皿にした。丸い視線の先はヴェストではない、この場に唯一彼の護衛として入室を許された騎士だ。

応接室と理由もつけて大勢の護衛を引き連れるのはご遠慮願いたいと告げた際、ヴェストが護衛として入室を許可させた騎士はたったの一名。明らかに屈強が身体付きと威厳の溢れた面持ちに熟練の騎士であろうことは所長も想定できた。

しかし、話を聞けば、熟練どころかフリージア王国騎士団でもその頂点に立つ騎士団長だ。今まで顔色も変えず無言を通していた騎士が、初めて放った声はその容姿から想像できる声量を遙かに超えていた。ぐわんぐわんと耳鳴りまで覚えるほどの怒声に、数秒は所長も看守も動けなかった。

嫌でも目に入るのは、騎士団長と紹介された男が尋常では無い覇気を溢れさせ蒼の眼光を剣のように研ぎ澄ませている圧倒的な光景だ。


今まで何百何千と呼べる数の奴隷や看守などを締め上げてきた二人が、喉がカラリと枯れ竦み上がる。

まるで目の前で雷が落ちたかのような衝撃だった。これで剣にも手をかけられていれば、思わず銃を取り出すかもしくは腰を抜かしていた。部屋の外に控えていた騎士達ですら、びくりと肩を上下させた声だ。

突然の一声にヴェストも始めて眉を寄せ、片耳を押さえたがそれ以上は指摘しない。彼が息を吸い上げた気配がした時点で耳を押さえていたお陰で衝撃は比較少なく済んだ。絶妙な間合いだったと、胸の中だけでロデリックを評する。

振り返らずとも、凄まじい覇気は感じられ、彼がどのような顔をしているのかは目の前で表情を固めた所長を見れば想像もついた。

一喝の後の凪に、騎士団長ロデリックは眉間の皺を狭めたまま続きを開く。ヴェストからの制止がないことを確認した上で、改めて彼らを睨む。


「言葉に気をつけよ。我が国の王族であらせられるヴェスト・ロイヤル・アイビー摂政殿下に対し、不敬に値する。国は違えど、この御方は正真正銘の王族だ」

自分の城など、比喩して怒鳴り散らす所長とは違う。本当の城に住んでいる王族を前に、言葉も改めることを忘れまくし立てる〝たかが所長〟相手に騎士として一喝するのは当然だった。

どんな口論になろうとも、王族相手に礼儀を捨てることは処刑に値しても文句を言えない行為だ。異国であろうとも、不敬を犯した人間を自分のさじ加減で裁くことを許される存在こそが王族だ。それだけ神聖な存在なのだから。

場合によっては国家間を揺るがす失言を自分がしてしまったのだと、ロデリックの一喝で頭が冷えた所長は遅れて思い出す。頭に血が上ってしまったと、思ったところでストンとソファーに腰が落ちた。申し訳ありませんでした……と、辿々しい舌の動きと共に深々と頭を下げるのも躊躇わなかった。いくらここが自分の城でも、王族は決して敵に回してはいけない存在だ。


深々と所長と、後方に立っていた看守からも頭を下げて謝罪をヴェストが受けたところで、ロデリックも「突然の大声失礼致しました」とヴェストに頭を下げた。

片手でそれをヴェストが受け許したところで、今度は耳打ちするような静かな声でロデリックは続けて発言の許可を望む。あと一つだけ宜しいでしょうか、と。ロデリックのその願いに、ヴェストは視線を向ける必要もなく一言で許可した。

ロデリックは咳払いの代わりに「先ほどのお話ですが」と比較落ち着かせた声色で彼らに両目を向ける。


「我々騎士のことも侮らないで頂きたい。たとえ銃を抜くことがあるとすれば、それは相応の理由があってのことでしょう。誓って言いますが、私の育てた棋士達は理由もなく〝勢いのみで〟銃口を人に向ける者は一人もいません」

ぐっ、と思わず所長は生唾を飲んだ。自分の怒りに任せた発言など大して覚えていない。しかし、騎士団長が一部分だけ強調した声に、そこも彼の琴線に触れたと理解する。敵に回したのは摂政だけではなかった。


ロデリック自身、先ほどの銃声が恐らくは自国の騎士団のものだろうことは見当がついている。しかし、意図あってのものであることは確信だった。

誇り高き騎士が、理由もなしに銃を撃ち鳴らすなど有り得ない。何より、大概の揉め事は銃などなくとも素手か剣で解決できるように教育したのは自分だ。銃を使うのは牽制や、本格的な戦闘時にのみ。もし近衛騎士達が鳴らしたのであれば現状の潜伏状況である今、それは人に対してとは理由とも考えにくい。

そして、潜入組でもないただ見張りとして配置についている騎士達がどのような理由があったも、銃に頼り撃ち鳴らすような安易な行動はしないと信頼している。

強引に収容所に立ち入ったことは事実だが、それを理由に騎士達まで侮辱されることは聞き捨てならない。ヴェストへの暴言に次いで抗言するには良い間だった。


王族ではないロデリックを相手に、今度は所長も素直に謝罪はしない。「はぁ……」と曖昧に返すのがせいぜいの強がりだった。しかしそれ以上胸をふんぞり返らすことも恐ろしくてできない。


この場で騎士団長こそが最も牙を剥いたらただでは済まない存在であることなど最初からわかりきったことだ。


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― 新着の感想 ―
私の育てた棋士達、、、 すみません、いいシーンなのに笑ってしまいました
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