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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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そして鑑みる。


「失礼致します」


ロデリックに挨拶し、カラム、エリックそして温度感知のドミニクと共にステイルは騎士団の元を後にした。

そのまま廊下を歩き、自室ではない一室へ真っ直ぐに向かう。途中見張りの騎士や侍女とすれ違っては礼をされたが、手の動きで返すことはあっても視線は固定されたかのように固まっていた。落ち着いた表情を保っていたステイルだが、思考は酷く波立っていた。今、報告に残ったアーサー達がどういう報告をするのかは、確認するまでもない。

騎士の護衛がいたにも関わらず、プライドが一時的に誘拐された。その事実は時間をいくら置いたところで変わるものではない。ハリソンは当然のこと、アランもそして当事者の一人であるアーサーからも報告がされるだろうと確信する。第三者的、客観的、主観的報告を告げられれば、あとは騎士団長のロデリックが判断することだ。普段は報告は状況整理にも慣れた三番隊のカラムが残るのを、アランが残ったのも近衛騎士としてだけでなく直接の部下であるエリックの責任も取る為だろうとステイルは察する。

すぐ犯人を捕らえプライドを救出した実績に加え、あとは自分とそして戻ってきたプライドで減罰を訴えなければとそれだけでもステイルは頭が痛くなる。冷静な騎士団長のロデリックならばこの任務中にプライドの護衛から二人を外すことはないと思うが、任務から帰ってきたら何かしらの罰を受ける可能性は高い。ロデリックは冷静ではあるが、同時に甘くないこともステイルは信用している。間違いなく、その後は騎士団長の口から宿にいる女王と摂政にも報告がされる。


─ 騎士からは……いや近衛騎士からは誰も外されないようにしなくては。


そう思考を常に巡らせるステイルの向かう方向を察し、こちらにと手で示す者も現れる。従者達に示されるまま、とうとう扉の前に辿り付く。

自分がプライドの近衛騎士を引き連れるまでもなく、そこには騎士がずらりと整列し佇んでいた。ステイルと近衛騎士達の登場に深々と礼をする彼らの中、一人が王子の代わりに扉を叩く。

部屋の内側でも護衛に立っているであろう騎士に向けてステイルが来ていることを伝えれば、間もなく許可を得てその扉は開けられた。瞬間、部屋にいた全員から一身に視線を浴びる。

一瞬だけ反射的に社交的な笑みをしようとしたステイルだがすぐに留まり、代わりに一礼を彼らに向けた。


「お待たせしましたレオン王子殿下、セドリック王弟。この度は急なことで驚かせてしまい申し訳ありませんでした」

ステイル王子、ステイル王子殿下、と。二人の王族が同時に椅子から腰を起こした。更に壁際にはどっかりと床へ直接腰を降ろしているのは先ほど離脱したヴァルだ。


ティペットの目撃情報を受けてすぐ騎士により保護されたセドリック、そしてレオンもアネモネ王国へ断りも得て今はフリージアの滞在宿に戻ってきていた。

アネモネ王国にも騎士はいるが、それでも特殊能力者であるティペットへの対応策としては温度感知の騎士以上の存在はいない。何よりレオン自身もまたいち早く情報を聞く為にも今はフリージアの宿で待っていたかった。


ヴァルが入ってきてからは彼に事情を聞こうとした二人だが、プライドが無事であることと今はフリージアに瞬間移動されたこと以外は面倒がって話さない彼から得られる情報は充分にはほど遠かった。

レオンからもセドリックからも離れた壁に寄り掛かる彼は、今も入ってきたステイルに片眉を上げるがそれだけだ。傍にプライドがいないことを確認すると、一度だけ舌打ちをしてから目を逸らす。あくまで騎士だらけの空間に落ち着けないことと、他の王族に会いたくなかったから促されるまま一足先にレオン達のいる客間に合流しただけで、説明役を担った覚えはない。

ヴァルのその態度も予想できていたステイルも、最初から期待していない。「お前の部屋も用意された」と、もともと余っていた部屋の一つを伝えればそこですぐにまたレオンとセドリックに目を合わせた。


「プライドは、大丈夫なのですか。今はフリージアにと聞きましたが、それだけのことが彼女にあったということだと思います」

「少々動転しておりまして、安全の保証と少し落ち着いてもらう為にティアラに預けました。僕らがどう言ってもあの状況ではきっとすぐには聞き入れて頂けないと思いましたから」

後で僕も姉君に謝ります、と。そこでやっとステイルは苦笑交じりだかレオンへ笑みを見せた。プライドが無事ではあるということが責任持って示す。


しかしそれでもレオンの表情の険しさは変わらない。

客間にいる間、護衛対象とはいえ彼らに情報の詳細までは回らなかった。つい先ほどヴァルから聞いた情報だけだ。プライドをフリージアに戻すべきだとステイルが判断するようなことが起きたというだけでもよっぽどのことだと判断できた。

更に続けてセドリックから「このままプライドはフリージアに?」と尋ねれば、また今日で何回目かの同じ返答をすることになる。もう暫くしたら迎えに行く、しかしその後の進退はわからない。それを受け、セドリックもまた表情は曇ったまま変わらない。

今ティアラが傍に居てくれるというのならば安心だとは思う。しかし、プライドだけでなくそれほど動揺していたプライドに会ったティアラの心痛まで考えてしまう。もしプライドがこのままフリージアに残るとしても、自分だけでも調査を引き継ぎたいと思う。

アダムの仲間を見つけたらこの手で捻り上げたい気持ちは当然消えていない。自分にとってはプライドより前から怨恨のある相手だ。

ステイルがゆっくりとした足取りで自分達と同じテーブルを囲む席に腰を卸してから、また僅かに状態を前のめる。


「ステイル王子殿下は、ッどのようにお考えでしょうか。ティペットに遭遇したということであれば、やはり調査はここまでにすべきとお考えでしょうか」

「あくまで姉君の意思を優先するのは変わらない。が、…………正直言って少し、困ったことにもなった」

セドリックからの追求に最初こそはっきり断ったステイルだが、最後は一度眉を寄せ眼鏡の黒縁を押さえつけた。

静かに溜息を吐きながら、身体全体も俯き気味になるステイルにセドリックもレオンも大きく目を見開く。互いに顔を見合わせることもなく、ただステイルを凝視した。

この話は内密に、と。二人に告げたステイルはそこで一度彼らだけでなく室内に控えていた騎士達にも目を合わせた。セドリックの護衛についていたジェイルとマートは同じフリージアの騎士団である為問題ない。しかし、レオンの護衛についていたアネモネの騎士は正確には部外者だ。信用できるレオンに話すことはできても、その護衛にまで明かすのは躊躇われた。


ステイルの視線の意図に気付き、レオンもすぐに彼らへ一時的に部屋の外へと命じた。

アネモネの騎士が退室して再びジェイルが扉を閉じた後、ステイルは大きく深呼吸をする。既に、ここに来る前に女王であるローザから二人へ情報共有する許可は得た。もともと奪還線で無関係でもなければ今回のプライドの調査にも尽力した王族だ。今もこうして安全保障の為にとはいえ、部屋で待機させている彼らにステイルが情報を共有したいと言えば、厳しいヴェストもまた頷いた。


さっきまでの会話よりも更に声を小さく潜ませたステイルの声に、レオンとセドリックを筋の通った姿勢のままで耳を近付けた。

壁際に控えていた騎士のジェイルとマートまで、姿勢は崩さないまでも聴覚に意識してしまう。立ち聞きは許されても、直接自分達まで情報共有を望まれたわけではない。

ステイルから語られた話は、単なる経緯だけではない。ティペットの生存確認とそこに重なる彼女の新たな情報だ。奴隷被害者の可能性と、過去の関係者。そして、プライドが彼女を自ら探しに向かおうと考えていたと締めくくられれば、王弟と王子は小さく空いた口がそのまま塞がらなかった。ティペットがアダムの協力者ではなく、被害者である可能性も彼らの胸を揺るがせたというのに更にはプライドがと聞けば瞬きも忘れてしまう。

そんな無茶を、とそれぞれがあと少しで口から溢れた。そして改めて理解する。彼女が何故一時的にでもティアラの元へ送られたのか。

彼らの顔色に、自分達と同じ想いなのであろうとステイルも少し肩が降りる。レオンだけでなくセドリックもまた同じ意見であってくれた。


「……母上もミスミには参加しますが、その後はすぐに帰還することは決められています。最長でも、僕と姉君は近衛騎士達と共に一足先に帰還することは命じられました」

たとえ予定通り断行するとしても、本来の目的であるミスミへ訪問した後はすぐに帰還。プライドは馬車ではなく瞬間移動でと、これには命じられた時に受けたステイルだけでなく聞いていた近衛騎士達も心の中で深く頷いた。

馬車で移動中に狙われることも考えられる。敵の標的がまたプライドになる恐れがある以上、彼女だけでも早々に帰還させる必要がある。

ステイルの特殊能力もあくまで特別処置である為、レオンやセドリックまでは瞬間移動の許可は得ていないとステイルから謝ったがそれは二人も気にしない。フリージアの女王と摂政が不自然に思われないようにそのまま馬車で帰る予定だというのに、アイビー王家でもない自分達がわざわざ第一王子の特殊能力を頼れないことはわかっている。もともと、ステイルの特殊能力を知っていること自体が特別なのだから。


「アダムの生存はまだ確認できていません。もし、ティペットがノアの話通り透過の制限がありそれが不変であるのならば、当時の崩落でアダムだけでも死んでくれている可能性もあります。が、……残念ながら特殊能力はたとえ同じ能力でも個人差が激しいので、判断できません」

自分一人しか透過できないのならば、彼女一人が生き延びた可能性も多いにある。〝主人〟というのがアダムかまではわからない。しかし、プライドが一度は予知で生存の可能性を示唆し、ステイル自身が成長と共に特殊能力の可能範囲が伸びている以上、期待は薄かった。

たった一人透過が可能になるだけで、アダムは生き延びている可能性が高くなることが忌々しい。

せめてアダムだけでも死亡していれば、ティペット捜索にももっと前向きになれたと思う。ティペットの特殊能力は厄介だが、それ以上に悍ましい存在の影である印象の方が強い。


ぐっと眉の間を狭め、二人の前で正直な表情を見せるステイルはしかしそこで強く俯いた。レオンとセドリック相手にならば見せても良いとは思えたが、しかしまだ他にも騎士がいたことに自分を叱る。まだプライドのことで自分も心の整理も冷静も完全には取り戻していない。

膝の上に肘を突き、額を当てる。やはり、ここまで根回しをしても完全には安心できない。プライドの考えがもしも変わっていなければ、その時はどう窘め説得するかを時間の合間を見つける度に数十は想定したが、手を差し伸べる彼女の意思が鉄より固い。

いくらかティアラやジルベールと場所を移して話せば落ち着いてくれる筈とは思っても、そういう考え自体が自分のエゴかもしれない。勝手にプライドを瞬間移動してしまっただけでも時間経過と共に胃が重く、槍でも刺されているかのようだった。

低い声で「突然強制送還させたことは姉君に謝るつもりです」と落としながら、背中まで平たく沈んでいった。


「皆さんも、……姉君が帰ったらご配慮とそして場合によっては説得にご協力頂ければ幸いです」

語りかけたレオンとセドリックにだけでなく、改めてこの場にいる近衛騎士達にも願ったステイルの言葉に誰もが肯定を返す。


プライドと共に危地へ赴く覚悟もあれば、彼女を止める覚悟もまた同様に彼らにはできている。


「時間です」と、時計を確認したステイルが腰を上げる。誰もが見守る中で、彼は姿を消した。

三分に満たない時間で帰還した彼と、そしてプライドの顔色に誰もが一度安堵の息を吐いた。


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― 新着の感想 ―
1205に説明がありましたが、ステイルは数回会っただけの人のところには瞬間移動出来ないとのことです。ヴァルで半年、レオンで一年かかっている。感情としては、どんなに憎んでいても数回しか会っていないアダム…
あれだけ憎んでいたアダムの居場所にステイルは瞬間移動は出来ないのであろうかと安易にか感じるのは私だけだろうか。
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