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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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2250/2255

Ⅲ230.来襲侍女は追い詰められる。


「ジルベール。まだ報告はないのか」

「はい。通信兵には小さな状況でも随時報告を寄越すように伝えておりますが、まだ私の元にも届いておりません」

「お姉様達はご無事なんですよねっ……?」


フリージア王国城内王居にある王配の執務室。

珍しく焦燥を態度にも滲ませ始めるアルバートに、ジルベールは落ち着けた声で深々と頭を下げた。傍ではジルベールの書類整理を手伝っていた第二王女ティアラも未だに心臓の音が鳴り止まない。

今自分にできることは状況の整理だけだと、ジルベールに促されるまま通信兵を介した情報を見返しては地図やラジヤ帝国属州のパボニア周辺国にいる密偵からの過去報告履歴を確かめる。調査の為とはいえ、上層部達にまとめられた資料の中に奪還戦での記録に目を通せば嫌でも胸中が乱された。


指名手配されているティペット・セトスをプライド本人が目撃したと、ローザの元にいる通信兵から報告を受けてから数時間経過して尚プライドが宿に戻ってきたという報告はない。

代わりにステイルからこまめに報告が行われていることが、唯一の安心材料だった。プライドの安全を確保したことと今は複数の近衛騎士達と行動を共にしている。更には、騎士団から温度感知の騎士が急遽プライドの元に派遣されている。

何かあればすぐに騎士やステイルによって本部となる宿に報告が来る筈だと、それはティアラも理解している。しかし、ティペットがどれだけ危険な人物か。そして彼女の傍には常に誰がいたのかもわかっていれば安易に安心できるわけもない。

今もジルベールから「大丈夫でしょう」「騎士もステイル様も付いておられますから」と言われても一瞬の晴れも束の間にまた曇る。ただただプライドの身の心配だけでなく、彼女がどれだけ不安な気持ちかそしてプライドの傍にいるステイル達の心境はと考えれば考えるほど思考が塞がってしまいそうになる。

今は時期王妹としてもっと役に立たなければならないと、我に返る度にそこでまた資料を読み込む目に力を込めた。


「やはり、一度プライド様にこちらへお帰り願うことも視野にいれるべきでしょうか」

「わかっている。しかしアダム皇太子の存在は確認できていない。今もまた何かを仕掛けている最中とも限らない」

おっしゃる通りでございます。とジルベールの低頭に、アルバートは片手で額を押さえる。

透明そして透過の特殊能力者で判明しているのがティペットというだけの話だ。他にも似たような系統の特殊能力者を確保し今もこちらが体制を崩す機会を見計らっている可能性もある。

ティペットの目撃情報から間もなく、王配命令により城の門も一時的に閉じられた。騎士団へも城内の安全確保と見回りを強化するように命令を出し、王居にも数隊の騎士が配属されている。常時も門兵の確認や温度感知の特殊能力者により見張りも置かれている城に、たとえ透過の特殊能力者であろうとも侵入することは不可能だ。

しかし、一度式典の仕組みを利用されたことからも楽観視ができるわけもない。プライドに何も起きていないとはいえ、この全てが陽動である可能性もある。

こういう時、プライドの補佐がステイルであって良かったとアルバートは心の底から思う。最終手段としてはプライドを瞬間移動させれば帰路で待ち伏せや奇襲を受ける心配もないとそう考えた



瞬間の、表出だった。



「?!きゃあっ?!!」

「プライド様!?」

「プライドか?!!!!」

自分のすぐ傍に現れたその女性に、ティアラは口を両手で覆って目を見開いた。

ステイルの瞬間移動だとは反射的に理解しても、突然現れた女性は自分の目では全くの別人だった。同じく父親であるアルバートも目を見張り、席を立つ中彼女の仮の姿をよく記憶するジルベールが彼女の名を呼ぶ。

プライドが姿を変えていることは知っていたアルバートも続けて彼女を呼び、そしてティアラも今度こそ確信を持って向き直った。仮の姿に扮したプライドを覚えてはいたが、数日ぶりに目にする彼女がすぐに本人と思うのは難しい。しかしジルベールが言うならば間違いないと、ティアラは未だ呆然としている様子の姉に迷わず抱きついた。

ぎゅっと腕の力の限り抱き締めれば、大好きな姉の香りと共にその感触もまた間違いないプライドのものだった。


未だまどもに返事をしないプライドらしき女性に、アルバートはもう一度ジルベールと目を合わせ確認する。

補佐であるジルベールが真っ直ぐに目を合わせ頷けば、そこでアルバートも素早く歩み寄った。三人で呼びかける中、そこでやっと「何故か急にステイルが」と戸惑いながらも彼女は口を開く。その声は聞き間違えるわけのないプライド・ロイヤル・アイビーのものだ。

確信を持てたところで娘達二人をまとめて抱き締めようとしたアルバートだが、その前にちょうどヒラリとティアラの頭上にカードが表出する。舞い落ちたそれを娘達の足下から拾い、……文面を見れば眉間に皺が寄った。


しかし今はまず叱るよりもすべきことがあると、片膝のままティアラにカードを手渡した。

そっと腕を伸ばしプライドと呼ばれる女性の髪を撫でれば、いつものような徹底した艶は薄れていたがそれでもさらりとした指通りは姿形が変わろうと間違えようがない。母親譲りの質感は愛しい娘のものだ。

見たところ怪我した様子がどこにもないことには安堵したが、どこか血色が薄い気もすれば頭には通信兵からの報告内容が頭に過る。

カードを送られたジルベールから伝言を受けながら、ティアラも抱き締める腕を緩めてカードに目を向けた。兄からの言付けということはやはり報告以外にも何かあったのかと、読む前から緊張で指が微弱に震えた。

こうしてプライドが無事に戻ってきてくれたのは嬉しいが、また兄が迎えにくるということはまだラジヤでやり残したことがきっとあるのだと考えながら読んだその文面は。


〝姉君がティペットとの接近を決めた〟

〝遠慮はいらない俺が許す寧ろもっとやれ〟

〝あと休ませて欲しい〟

〝任せた〟


「お姉様……?」

そう、短文短文が走り書きで連結していた。妹宛だからこその簡略した気安い文には文字数以上の意味が多く含まれていることを、ティアラは一目で理解した。

最後の二行はティアラも一人強く頷けるほどにはっきりと任された。自分の傍にプライドを瞬間移動してくれたことも兄からの信頼の証だ。しかし同時にその二行を見れば見るほどに、まずは眉が自然と釣り上がった。

プライドのことだからきっとそういう行動へ移る理由があるのだとはわかる。事情を聞けば納得できる筈だとも信じてる。しかしあの兄がアーサー達ではなく自分に任せこんな文面を残すということはと、十年以上プライドとステイルの妹をしてきた彼女は結論に至るまで時間は掛からなかった。

優しい笑顔を浮かべるプライドと、そして複雑な表情を浮かべる兄達の姿が容易に目に浮かぶ。

まずは事情を聞かないと、的確な言葉などただの一つも言えはしない。しかしそれでもと、ティアラはプライドを抱き締める腕に改めて力を込めた。鼻から肺を風船と思うほど膨らませ、抱き締める形から自らプライドの肩を掴み引き剥がし、正面を睨む。


「お一人にならないでくださいと何度言えばわかるのですかっ!!!!!」

もぉおおっ!と、顔が真っ赤になるまで怒るティアラを眼前に、プライドも目を丸くそして泳がせた。

いきなりステイルに帰還させられただけでも戸惑っていたのに、更にはティアラに大声で怒られてしまった。しかも泳がせた視線の先ではアルバートまでいつにもまして厳しい眼差しで自分を見ている。

ティアラのカードを拾った際に文面を呼んでしまったアルバートも、今はティアラの大声を注意する気は削げた。突然の騒ぎに扉の向こうから衛兵が声を掛けてくるのをジルベールが一言の呼びかけで宥めるのを聞きながら、腕を組み息を吐く。

ステイルが残した最初の一文の内容が気になって仕方が無い。ティペットと遭遇し報告では相対することはなかったらしいと聞いたが、ティペットとプライドの間に何があったのかと考える。

ティペットから逃れる為に避難してきたのかと思ったアルバートにとって、そのティペットにプライドが接触をしようとしているなど意味がわからない。何か大事なものでも奪われたのか、聞き捨てならない会話でも聞いたのか。想像すれば果てしないが、どれをとっても他ならぬプライドが直接挑む理由にはならない。

本音を言えばこの場で早速椅子に座らせて自分の口から言及したいくらいのアルバートだったが、誰よりもプライドを身近に見てきた筈のステイルがティアラに任せたならばと今は敢えて口を閉じた。


「まっ、待ってティアラ??違うのごめんなさい、でもね?ちゃんとステイル達にも皆にも頼るつもりはちゃんとあって……」

「〝つもり〟ということはまだ兄様達にはちゃんと言ってないのですかっ?!お姉様一人でそんな危険なことを決めちゃったのですか??」

「ぅ……その、ちょっと状況がずっと大変で……部外者の目もあって、王女として会話することも難しかったの」

「そんな大変なことがあったというのにお姉様は更に大変なことを決めちゃったのですねっ??!」

ぬぐぐぐぐぐぐぐぐっ……。

両肩を掴まれた体勢のままなんとか自分なりにティアラを宥め誤解を解こうとするプライドだが、ものの見事に墓穴を掘るだけだった。

たった会話の二往復で唇を絞って背中を反らすしかなくなる。頭には〝仰る通りです〟の言葉が浮かんで消えた。ステイルからのお仕置きもそういうことだなと痛感してしまう。


細かく一から百まで話せばなんとか許して貰えそうな気がしたが、的確な部分の会話になれば余計に自分の欠点が浮き彫りにされる。

サーカス団員の目があったとはいえ、自分の中で先に全部決意してしまった。説明と説得の時間がなかった言い訳がサーカス団員の目と言えば、ステイル達が一言ももの申すことができなかった理由もまたサーカス団員の前だったことに他ならないとティアラの言葉で今気付く。ステイル達であれば自分が後できちんと〝予知〟を絡めて事情を説明すればきっとわかってくれる筈だと思った甘えでもある。

ティアラの言葉を受け止めれば受け止めるほど、そもそも自分はティペットから逃げ帰ってきた直後だという事実が自分の頭をぐりぐり抉る。そりゃあ皆言葉も出ないしステイルも怒る筈だと心で叫ぶがもう遅い。


ちらっと先ほどティアラのカードを見たであろう父親にも目だけを向けると、やはり怖い顔だった。

もともと睨んでいると勘違いされやすい父親が、今は意思を持って自分に目を吊り上げているとわかってしまうから余計に怖い。いつもは優しい父親が怒るようなことをやってしまったのだと、それだけで十九歳の王女は血の気が引いた。

どこでどうやってしまったのだろうと思考を巡らせようにも、今日だけであまりにもめまぐるし過ぎて思い返すのも難しい。父親の隣に立つジルベールと目が合えば、未だににこやかな笑みのまま目の奥は全く笑っていなかった。

ステイルの言葉を借りれば「いいぞもっとやれ」とティアラに言っているような目だとプライドは喉を鳴らしながら思う。

そこまで思考したところで、ずっと黙していた自分へ「お姉様!!」とティアラから尖った声を向けられる。思わず妹相手に「はい?!」と声を裏返せば、潤んだ金色の瞳に罪悪感をチクチクと刺激された。


「兄様から具体的にどれくらいのお時間こちらにいるか聞いていますか?!」

「い、いいえ………。本当に突然だったから……」

「でしたらまだ絶対時間はあります!今すぐ湯浴みをしましょう!カーラとチェルシーにお願いします!!」

ふぇ?!と、まさかの突然の湯浴み命令にプライドの目が丸くなる。

両肩から今度は自分の手をぎゅっと包むように握るティアラの目は冗談を言っている目ではない。自分の専属侍女が不在の分、ティアラの専属侍女を貸してもらえると聞けばそれは本気という意味だ。

まさかこのまま湯浴み場に連れて行かれるのかと手を引っ張られながら思えば、途端にティアラが「父上よろしいですか?!」と振り返りざまに父親へ会話を投げた。既にカードで、ステイルにティアラが何を任されているか知っているアルバートも、ここで待ったをかける気にはならない。ステイルならば今この場に目に見えるプライド一人を瞬間移動していることも間違いない。

話ならばその後にもできるだろうと、己の優秀な補佐へと釣り上がった目をそのまま向けた。


「ジルベール。今すぐ王宮の浴場を開けさせてくれ。ティアラの専属侍女の他にも信用できる侍女と、プライドの近衛兵も呼びつけよう」

「承知致しました。騎士も念の為派遣要請しましょう。湯浴み場は女性だけですから入口にはしっかりと温度感知も含め見張りに立たせておくべきかと」

そうしてくれ。と、アルバートも速やかに行動を立てるジルベールに深く頷いた。

着替えは同じ侍女の服で良いかと、プライドの今の服装を確認しながら尋ねる父親に、プライドも遠慮するよりも前に背筋を伸ばして肯定を返す。まさか自分の住む宮殿ではなく近いからという理由で王宮の湯浴み場を使わせて貰えるのかという衝撃もまだ感情が間に合わない。目の前の三人に逆らえるわけがないと顔が強ばりながらも笑みを保つことで精一杯になる。


今頃ステイル達は宿への帰路か、もしくはまだサーカス団にいるかもしれないのに自分だけが湯浴みだなんてとも思うが途端にティアラから「後回しにしたら兄様のお迎えに重なってしまいますっ」という言葉に王手を掛けられた。

流石に入浴中にステイルにお迎えされる事故は避けたい。今でさえティペットやノアによる誘拐騒ぎが続いたのにこれ以上の心労もかけたくない。

音もなく速やかに行動へ移すジルベールが、そのまま扉の外に控える従者達に命じればまた廊下は慌ただしくなる。今すぐ湯浴み場を、騎士を、近衛兵を、という伝達が繰り返される中、命令を受けたティアラの専属侍女もプライドの着替えを用意するべく宮殿へと急ぐことになる。水を温めるまでは時間がいるが、その間準備する側の人間は暇なわけではない。


「殿下、こちらから陛下へのご報告が必要でしょうから通信兵を呼びましょう。私と、プライド様とティアラ様はどうされますか」

「……そのままで良い。私が部屋を移ろう。二人を頼むぞジルベール。件の従者も呼んでくれ、娘の顔をちゃんと見たい」

「フィリップ殿ですね。一度解く方が混乱も防げるでしょうから最優先で手配させて頂いております」

もちろん内密に。と、命令を受ける前から密やかに従者へフィリップ指名で珈琲を届けさせるように命じたジルベールに抜かりはない。プライドの仮の姿を知るのは王宮内でもごく一部の人間のみ。全員に事情を知らせるよりも、一度特殊能力を解かせた方が円滑に全て進むと判断した。

あくまでステイルの専属従者、そして他の手配される者達と違いその能力も機密である彼には唯一内密に指令を送った為廊下の伝達でもその名はおおっぴらに上げられなかった。


「そうか」と一言返すアルバートは、席に戻る前にプライドとティアラに歩み寄る。

無言のまま娘達二人を両腕で抱き締めてから、ソファーへと促した。本当なら客間や応接室で休ませたかったが、プライドの姿を今は他の者に見せるわけにはいかない。フィリップが到着するまではこのまま自室で匿うことにする。通信兵を呼ぶのも、妻との会話も自分の方が場所を応接室に移れば良い。


娘達の見張りをジルベールに任せ、自分一人が部屋を出る。「大人しくしていなさい」と最後に二人へ命じ、護衛の衛兵より先にジルベールが内側から扉を閉じた。


明けましておめでとうございます。

今年も宜しくお願い致します。

「純粋培養すぎる聖女の逆行~闇堕ちしかけたけど死んだ仲間に会えて幸せなので今度は尊い彼らを最善最優先で…って思ったのになんで追いかけてくるんですか?!~ 」

https://ncode.syosetu.com/n1915kp/

こちらは引き続き毎日20時更新連載中です。

略称は「ぴゅあ堕ち」になります。

是非、楽しんでいただけると嬉しいです。

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