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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ229.来襲侍女はあらためる。


「まぁまあまあ!!落ち着けアレス!ラルク!これには事情があってだな?!」

「いやどんな事情だよ!!?」


衛兵へ今にもつかみかかりそうなアレスに団長が待ったをかける。アレスに並ぶラルクも目の前の光景に目を疑うように表情筋を強張らせていた。……遅かった、と。その一念が頭を過る。

先生を連行する衛兵二名を前に、自分でも見る目が睨んでしまっているとわかる。そもそもこの人達がすぐに対応してくれれば、アレス達には見つからなかったのにと切に思う。さっきまで医務室テントの訪問者は私達だけだったのだから。


アラン隊長が馬も使わずにひとっ走りで連れてきてくれたこの国の衛兵二名は、……本ッ当に呆れるほどに職務怠慢感凄まじかった。

アラン隊長が急かしてくれたのか、上手く言ってくれたのか、ここに訪れるまではそこまで時間もかからず寧ろ迅速に駆けつけてくれた。けれど、……その後の事情聴取が本当に前世ならグーで殴りたくなるくらいの態度だった。

捕まっている先生も頷きで容疑を認め被害者の私も訴えたというのに、事情説明役を買って出てくれたカラム隊長の話を聞いてもしっくりこないように首を傾けるばかりだった。明らかに捕まっている犯人も、被害者の私が平然としているのもお気に召さなかったらしい。

「本当にやったのか?」「それにしては……」と、もう検挙するのがめんどくさいですと顔に書いてあるようだった。歯に衣を着せてはいるつもりの口調だったけれど、要約して言えば「犯人捕まって大した騒ぎにもなっていないならこの場で厳重注意で良くないか?」といった旨で……ステイルはもちろんのこと我が騎士達の静かなお怒りもなかなかだった。

なんか前世でもこういう問題がご時世的にはあったけれど、幸いにも私の身の回りにはなかったから「これか」とまさか今世で実感することになる。うん、これは不快極まりない。


先生も無言のまま何も言ってくれな……いや、あそこで「記憶にございません」とか言われた方が大変なことになったからまだ無言の方がマシか。

しまいには私から「もう良いです」の一言を引き出したかったのか、被害者の私に何をされたかを具体的に且つなかなか失礼な言い方で尋ねてくるから危うくラジヤの衛兵対我が騎士で一悶着あるところだった。説明役のカラム隊長も「女性に配慮の欠けた言い方はやめてください」と少し強めの口調で指摘したくらいだ。

あの温厚はエリック副隊長まで睨むし、アラン隊長は拳まで鳴らしていた。……最終的にハリソン副隊長が剣を抜いたのが一番効いたなとは思う。もう、明らかに殺気を放っていたもの。

命の危機を悟った衛兵が「どうせ二、三日で出てくるぞ」と言いながらもなんとか引き受けてくれたところで、黒い覇気を醸し出していたステイルとアーサーも「顔は覚えた」「国出る前にぶん殴りてぇ」となかなかヒヤッとす会話がひっそりと聞こえた。


そうして悠長にも衛兵が先生を仕方なくも連行し始めた時に、……アレスとラルクに見つかってしまった。

先生が一目もくれない中、止めようとするアレスとラルクに団長が前に立ち早口で事情を説明してくれる。その間に衛兵の方が逃げるように先生を駆け足で引っ張っていった。恐らく、これ以上の面倒ごとに巻き込まれたくなかったのだろう。


「つまりだな?この国でも拉致監禁は犯罪だから法に則り適正な処置を受けなければならないのだよ。大丈夫、二日三日も反省すれば戻ってくる!」

「いや大体なんで先生がジャンヌにそんなことしてんだよ?!先生がするわけねぇだろ!!ていうか法に則りって今更なんだ団長?!」

「僕とオリウィエルとリディアとヤンとミケランジェロとマルコが過去にのやったことはどうなるんですか。先生を裁くならオリウィエルもしかるべき場所に突き出すべきです!」

珍しくまっとうなことを言っている筈の団長に、矢継ぎ早にアレスとラルクの猛攻が続く。さらっとオリウィエルも突き出せと提案するあたりラルクの本音が窺える。……というか、このサーカス団思ったよりも前科者容疑が多い。

団長から、今回はサーカス団内ではなくジャンヌに被害があったということと、……私、ではなく雇い主である〝フィリップ〟が確固たる裁きをと望んだと。

自分も穏便にと頼んだけれど敵わなかったと告げれば、仕方が無いとはいえ当然責任が私達へと回ってくる。バチリとアレスとラルクの視線が私とステイルに向けられると同時に、アーサー達近衛騎士か庇うように前に出てくれた。ステイルが今にも口を開きそうだったけれど「私が」と衛兵への説明役のままカラム隊長が一歩前に出てくれた。


「我々もフィリップ様の護衛として黙認するわけにもいきません。ジャンヌさんの安全を確保する為にも必要な処置であったとご理解ください」

「いやだから先生はそんなことする人じゃ……」

カラム隊長の意見にもアレスは顔を顰める。相手が元団員で信用あるカラム隊長だからか、アレスも衛兵に対してのような態度ではない。けれど、やっぱり先生への信頼も大きいのだろう。……本当に、よく上手く擬態していたと思わざるを得ない。


団長も団長でラルクに「お前もオリウィエルも他の皆はあくまでサーカス団だけでのことだっただろう?」と説得してくれている。

先生が本性が出し始めた時から呆然としていた団長だけれど、今は協力的で良かった。保釈金……罰金の発生もこちらが支払う手筈なのも伏せてくれているところから、これでも騒ぎを最小限にするもりだろう。

カラム隊長がアレスに一つ一つ紐解くように状況を説明しても、団長が「大丈夫」をラルクに繰り返しても、二人とも先生が連行されたことにはなかなか納得できない様子だった。戸惑いも見える二人の顔色に、口を結んでいた自分の胸がぐっと鈍痛を覚える。アレスも、ラルクも、やっとサーカス団員が足並みを揃えようとしたところで先生が抜けることがただ事ではないのは私だってわかる。

先生を捕まえたのは私が王族だから、ということもあるけれどそれでももっと先生を弁護して団長の言うとおり穏便にするべきだっただろうか考えてしまいそうになる。アレス達にとっては信頼あるお医者様である先生だったのだから困惑は当然だ。……ッいやでも、私が先生にされたことも許されるべきことではないのは確かだ。

口の中を噛み、ぐっと両手首を掴み意思を新たにする。


先生のあの状況だといつまた私以外にも被害を出したり暴走するかもわからない。今この場で逃れても、また先生がいつ発作的に私やステイルもしくは関係者かもしれないという理由でアーサー達まで狙うかもわからない。むしろ他に無力な被害者も出るかもしれない。

残りの日数、やっぱり一番安全で確かなのはきちんと罰を受けてもらうことだ。


「ちょっと~!なに騒いでんの~?!先生から薬貰ったんじゃないの~??」

アンジェリカさんだ。直後、「あっ団長~!」と嬉しそうなまで飛び上がった。

出口付近とはいえ医務室テントの中にいる私やステイル達と違って、訪れたラルクとアレスそして二人を止めに入ったカラム隊長と団長は外側にいるから当然アンジェリカさんにも見つかった。

恐らくアレスの大きな声が届いてしまったのだろう。とうの本人であるアレスも「げっ」と嫌そうな顔でアンジェリカさんの声がした方向に首を回した。

ラルクと団長も彼女に向き直ると、さっきまで説得する側される側だったのを忘れたように違いに目配せし合った。この場をどう誤魔化すかと言わんばかりの表情に、ラルクも先生がいなくなるのは困っても事態を大ごとにするのは避けたいらしいと理解する。

「先生は??」「レラちゃん達待ってるんだけど」「またオリウィエルちゃん逃げるよ?」とアレスとラルクへ交互に尋ねるアンジェリカさんに、顔を引き攣らせるアレスと唇を絞るラルクの代わりに団長が両手を広げて前に出る。


「アンジェリカそれがだな?先生は用事で出ているんだ。二、三日もすれば帰ってくるが、それまでは皆身体には気をつけるように言ってくれ」

ありがとうございます団長!!

「ええ~!!」と声を伸ばすアンジェリカさんの両肩を抱いて宥める団長の背中に向けて、両指を組んで感謝の念を飛ばす。細い眉を垂らして唇を可愛く尖らせるアンジェリカさんをアーサーの肩越しにこっそり覗きながら、上手く誤魔化せそうだと思う。

アレスも「団長がそう言ってんだからしょうがねぇだろ」と今は団長の味方になるように肩を並べてくれる。ラルクも頷く中、アンジェリカさんが「動物どうするの?」とアレスを見上げた。

そのまま流れるように今度は団長の方から事情を尋ねれば、どうやら捕まえた動物達を眠らせる為の薬を処方してもらう為に先生を頼ろうとしたらしい。多分オリウィエルが威嚇されたのかしらと思う。野良猫もいたし、彼女がヴァルやアーサーみたいに足を固めたり力尽くで押さえつけられるわけもない。


「ああそうかそうか。わかった、この街なら確か馬屋の医者がいただろう。そこでなら動物用の麻酔の一つや二つ買える筈だ」

「なんであの女の為に野良拾いで次は麻酔なんか買ってやんねぇといけねぇんだよ。あれすげぇ高ぇんだぞ」

「…………。団長。僕が、猛獣達に命令します……。あの動物くらいなら、猛獣に威嚇させれば大人しくなるから……」

「おお!!流石ラルク!我らがケルメシアナサーカスの天才的猛獣使いだ!!助かるよ助かる!!」

アンジェリカさんの肩からパッと両手を挙げるとそのまま今度はラルクを抱き締める団長は、そのまま「行こうか」と肩へ腕を回しながらアレス達を促した。

まだ何か言いたげだったアレスとラルクだけれど、今は団長の為か口を噤んで先生の話題には触れないでくれた。アンジェリカさんもくるりと私達から背中を向けると団長の隣を歩き出す。

なんとかアンジェリカさんに知られて騒ぎがサーカス中に広がることはなくなったと静かに胸を撫で下ろした。同時に、……やはり団長は先生を迎え入れるつもりなのだなと理解する。


ふと罰金を思い出しステイルに目を向ければ、私が言うよりも先に「今日中に充分な額を騎士に届けさせましょう」と小声で言ってくれた。

眼鏡の黒縁を抑えながら少し不服そうな声ではあったけれど、それでも協力してくれた団長と何よりもこちらの条件を飲んでくれた先生にはきちんと約束を守るのはステイルらしい。

先生の保釈が具体的に二日か三日かそれ以上になるのかはまだわからないけれど。あの面倒そうな衛兵からしても、しっかり先生を取り調べまですることはないだろう。


団長がアンジェリカさんとラルク、アレス達を連れていくのを見えなくなるまで見届けてから私達は一度医務室テントの奥へと戻った。

入口を閉じ、その前に見張りとして温度感知の特殊能力を持つ騎士が立つ。入口付近に最初は立っていたヴァルも、衛兵が来てからは部屋の奥に引っ込んだまま倒れた棚を椅子代わりにして座っていた。

サーカス団関係者が一度いなくなり、私達部外者しかいなくなったテントの中は一分近くは静まりかえったままだった。

先生が無事逮捕されたことと、団長の協力を得られたこと。ティペットの情報とそして関係者の判明と、あまりにも瞬く間の内に情報量と展開が多すぎた。私だけじゃなく全員が頭と心の整理をしている頃だろうと、唇を固く閉じたままゆっくりと深呼吸を繰り返した。

まさかの予想しなかった形ではあったけれど、無事ティペットの関係者を見つけることはできて良かったと思おう。


「ジャンヌ……。……今日のところは一度帰還でよろしいでしょうか。皆も心配しております」

ステイルが糸を通すような慎重な声色で、私に視線を向ける。また私に対して口調が戻っていると思いつつ、足音も消して目の前まで歩んでくる彼に指摘するのも躊躇った。

気付けば定位置かのように寝台にふらりと座ってしまっていた私と違い、ステイルはまだ椅子にすら一度も腰を降ろしていない。私の正面で立ち止まったステイルが、自分だけの意見でもないと示すようにテント内の全員を目でざっと示した。きっと彼らだけじゃない、報告を受けたであろう母上達のことも含んでの〝心配〟だろう。今頃ティペット捜索に並行して私達からの報告も待っているに違いない。

もともとティペットの関係者をサーカス団で探す為に留まったのだから、留まる理由も消化してしまっている。……今は別の理由ができたけれど。それでも、やっぱり一度は報告と体勢を立て直す必要はあるだろう。


そうね。と一言笑みと共に肯定を返せば、アーサー達からほっと息を漏らす音が聞こえた。どうやら彼らにもまだ私が残りたいと言う危惧もしていたらしい。

何よりですとステイルが深く頷く中、早速宿に向かおうとベッドから立ち上がった私にステイルが一度右手の平を見せて待ったをかける。まだ話しが終わっていないと言わんばかりの彼に瞬きを繰り返すと、一度ぐっと眉の間を狭められた。


「因みに、今回。毒味を通さず口をつけた不注意は、言わずともご自身がよくわかっておられますね?」

どきりと、心臓が波打った。

淡々とした口調で流れるように続けつステイルから最後に声を低められた。上目に覗く漆黒の眼差しが、無表情に関わらず間違いなくお怒りだとわかる。

確かにアレは本当に私が悪い。学校潜入でも徹底したつもりだったのに、先生から差し出された白湯に思考停止で口をつけてしまった。


「あなたが呼び掛ければすぐに理由をつけて毒味する人間が、テント一枚向こうにいました。逆に言えば呼びかけてくれなければ、流石の彼らにもどうしようもありません。護衛される側(我々)にも、護衛を命じた立場としての責務があります」

「はい……、……。本当に、あれは私の不注意だわ……。本当に、本当にごめんなさい……」

どことなくヴェスト叔父様に似たお叱りに、私も肩が悪くなる。

ステイルへだけでなく、アーサーとエリック副隊長にも向き直り謝罪すれば、二人とも頭を横に振ってしまった。いや、こればかりは本当に私が悪い。


「……明日からは、ティペットを捜索するおつもりなのですね?」

「え、ええ……。さっき先生とも約束したから。ティペットを直接確認したのも私だけだし、一番接触の可能性も高いもの」

「?!いや接触は絶ッッ対駄目っすよ?!」

ステイルからの静かな確認に返せば、今度はずっと黙していたアーサーから思わずといった声が上がった。

うっかり不用意な発言をしてしまったと自分でもわかり片手で口を押さえながら顔を上げれば、騎士達全員も深くはっきりと頷いていたのが視界に入った。しまった今のは失言だ。

私だってティペットにまた捕まりたいとは思わない。触れられることはないように気を引き締めるつもりはある。ただ、彼女から近付いてくる相手は間違いなく私だという確信はある。報復でも誘拐でも、一番私は標的にされていることは間違い無い。

「わかってるわ!?」と慌てて両手を振って弁明するけれど、前のめりになったアーサーの顔が険しいまま戻らない。余計心配させてしまったのだろう。彼女に触れた時の危険性はこの場の全員がよく知っている。


「大丈夫。今日は騒ぎも起こしてしまったし、宿に戻るわ。できることはやりたいと思っているだけだから。レ……リオ達にも帰ったら私から説明するわね」

「いえ、……リオ殿とダリオには俺から説明します。先に貴方の意思を確認したかっただけなので……。なので、ジャンヌは休息も含めて俺は少々離れる許可も頂けますか?」

良いわよ。と、首を傾けながらステイルに返す。

眉間を指先で摘まみ押さえながら尋ねる彼に、何かもう考えがあるのかなと思う。宿に戻ってからでも良い筈なのに今すぐなんてレオン達に急を要することで間違い無い。

私からの許可に「ありがとうございます」と頭を下げるステイルはもう完全にフィリップではなくいつものステイルだ。アーサーやカラム隊長達もステイルがどういうつもりかわからないらしく僅かに丸くなった目で見つめる中、ステイルは温度感知の騎士と目で合図を互いに取る。近くに私達以外は誰もいないという確認だ。そして私の手を取り、笑みを





─ 視界が、切り替わった。





「?!きゃあっ?!!」

「プライド様!?」

「プライドか?!!!!」


………………へ?

何度も覚えのある、その感覚に不意に襲われ目の前の光景にいつものように反応が間に合わなかった。間の抜けた声が一音漏れてしまったまま、目の前にいた人達も光景もまるっと変わっていることに口が半端に開く。


さっきまで目の前にいたステイルの位置に、今は可愛い妹であるティアラが立っていた。

私の存在にまん丸と水晶の目を開いた直後、そのまま細い腕で抱きついてきた。更にはその後方には書類を落としてしまったジルベール宰相と、席から勢い良く立ち上がった父上までいることに、サーーーッと遅れて血が引いていく。……間違いない。

どうしてここに?!お怪我はございませんか、報告は聞いたぞと、あっという間に三人に囲まれる中で私はティアラの背中を抱き締め返すので精一杯になる。見間違うわけがない、ここは王配である父上の部屋だ。

しかも仕事用にの執務室。ジルベール宰相もティアラも父上のお手伝い中だったのだろう。三人の様子から、もう私達の騒ぎは我が城にも通信兵を介して伝わっているのだなと理解する。


「ええとごめんなさい、無事よ。今、何故か急にステイルが……」

ヒラリ、と。まるでどこかで見ているかのようにタイミングぴったりにそこでカードが二枚降ってきた。一枚はティアラの頭上に、もう一枚はジルベール宰相の上に突如として現れた。

ジルベール宰相は指先で素早く宙で掴んで読んだけれど、ティアラの方は気付かず私を抱き締めたまま固まっている。そのまま足下に落ちたカードを父上の方が気付き、片膝をついて拾ってくれた。父上はまだこの連絡手段は使われてないのか、きょとんとした顔だけれどカードの文面を見たところで「ティアラ、ステイルからお前にだ」とすぐにティアラに渡してくれた。そのまま私の安全を確認するように頭から髪、そして頬まで優しく撫でてくれる。

父上から受け取ってびっくり丸い声を上げたティアラも、抱き締める腕を一度緩めてそのカードを手に取った。正面から抱き締められている私にはティアラの手のカードは読めないけれど、……父上とそして自分のカードをガン見しているジルベール宰相の表情は怖いほどはっきりわかる。


「……。殿下、プライド様。ステイル様よりご伝言です。突然のお詫びと「今日中には迎えに参ります」とのことです」

そうさざ波のような声で言うジルベール宰相の表情が、絶対カードの文面に書いてあるのがそれだけじゃないと物語っている。

にっこり笑っているけれど、びっくりするほど目が笑っていない。背筋に冷たいものが駆け抜け、思わず口が引き攣ったまま返事ができなかった。

父上まで、一体ティアラのカードから何を読んだのか私と同じ鋭い目が今はさらにますます睨んでいるように見える。撫でてくれる手は優しいままなのに、怒られる直線のような気配に肺が詰まる。待って、なんかものすごく嫌な予感が


「お姉様……?」


ひぃっ!!!!

抱き締めてくれるティアラの鈴の音のような声が耳元で低く、低く囁かれ思わず背中が苦しくなるほど仰け反った。このままキュッと首を絞められるくらいの危機感に襲われる。

可愛い可愛い我が妹が、ステイルからのカードを読み終えた後なのだとそれだけは間違い無い。「ティアラ……?」と口の中を飲み込んでから呼び返す私に、ティアラはすぐには続きをくれなかった。

ぎゅううううううっ!と抱き締める腕に力を込められ、そして震えるほど彼女の腕力の限界値までいったところで一度解放され、今度は真正面から細い眉で睨まれた。既に潤み始めたその可愛い金色の眼差しで。




「お一人にならないでくださいと何度言えばわかるのですかっ!!!!!」




ピシャアアッと雷でも降ったかのような次期王妹のご叱責に、……取り敢えずステイルからのお仕置きだなということは痛いほど理解した。


次の更新は1月5日となります。冬休み頂きます。

良いお年をお過ごしください。


「純粋培養すぎる聖女の逆行~闇堕ちしかけたけど死んだ仲間に会えて幸せなので今度は尊い彼らを最善最優先で…って思ったのになんで追いかけてくるんですか?!~ 」

https://ncode.syosetu.com/n1915kp/

こちらは引き続き毎日20時更新連載中です。

略称は「ぴゅあ堕ち」になります。

是非、これを機会に年越しのお供に楽しんでいただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
さすがステイルしごデキw
珍しいティアラのお叱り!いいぞティアラ! それにしてもオリウィエルひとりのために色々な人が振り回されてますね……。ティペット問題がある中でなんという二重苦
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