表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2247/2257

泥酔王女は飲み、


「これくらいで良いかしら……?」


エリック達近衛騎士にも口止めを済ませたプライドは、ステイルとティアラにも無事隠し通した。

就寝時まで待ち、部屋を締め切り、部屋の外に専属侍女達を控えさせたプライドはグラスを手に取った。テーブルの上にはレオンから貰ったワインとグラス、そして充分な量に満たされた水差しとコップも用意した。

前世では酒を飲むことがなかったプライドだが、酔った時の処置は前世の知識とそう大きくは変わらない。今回はあくまで酔うことが目的だが、それでも人生初めて過ぎる体験に、どうしても準備は入念にしたかった。


自分でグラスに注いだワイン量にも、一度凝視する。グラスのちょうど半分、普段の自分ならどんなに強い酒でも並々注がれようと問題ないが今回は酔って倒れてしまうことも考える。

グラスを持てば、そこでソファーにも座り直した。うっかり寝ても、そのまま転倒はせずにソファーに受け止められる位置に座する。一定時間経てば、侍女達が部屋を確認にきてくれる。その時に毛布でもかけてもらえば問題ない。

万全だ、あとは酔うだけだと、グラスを回し色を確かめながら考える。真紅の色は本当に何変哲ないワインの色で、変わったところは見当たらない。更に香りを確かめれば、ワイン独特の香りもまた妙なものは感じない。ほんのり甘い香りを覚えるが、この程度はワインの品種によってはあることだ。

そしてとうとう覚悟を決め、グラスを唇へと傾けた。舌の上に乗せ、その味わいについ少し多めにさらに傾けた。こくりと喉に通し、プライドは思わず唇に指を当て大きく瞬きをする。


「美味しい……」


一瞬、ただの美味しいワインを開けただけだと本来の目的を見失いかけるほどの美味だった。このワインを製造したワイン蔵の主は本気で最高のワインを目指したのだと、王族の舌が証明する。

同時にくらりと心地の良い目眩のような感覚を覚えれば、それも合わせて余計に形容しがたい未知の美味だった。心臓がまるで高鳴るように動悸が早まり高揚する感覚と、雲の上のような感覚に、きゅっと唇を閉じて頭が混乱する。

酒に酔うというのがこういうものなのか、それともこのワインが特別美味しいのかもわからなくなってくる。しかし、ゲームの攻略対象者が身分も関係なく誰もが美味しいとつい口に運んだ理由を理解した。

ただワインを飲んでるだけなのに、まるで自分が今凄まじく幸福で満ち足りた時間を過ごしている感覚に全身が火照りだす。まだ冷静な部分の頭が、これはもう充分酔い始めていると判断するのに、それ以上の思考力が奪われる。酔ったならもう何杯飲んでも同じだと、酔うのは今回だけなのだから飲める機会も今回だけと、思考が甘くて心地の良い方へと転がっていく。

気付けば一度止めたグラスを、最後の一滴まで飲み干した。

美味しい、美味しいと、こんなに気持ちも良くなる上に美味しくて未知の体験を与えてくれる飲み物があるなんてと、プライドは弾む胸を抑える時間も惜しみ更にグラスへワインを注ぐ。

普段の自分ならワイン一本飲んだところで何も体調に変化はない。それどころかワインを付き合い以外でそんなにがぶがぶ飲みたいと思ったことがない。注がれたら注がれた分で満足したのに、今はこの味とそして高揚する感覚を手放したくなくて仕方がない。

気付けば2杯、更にと瓶が空になるまでと飲み続け、酔いに心身が委ねられすぐそこの水差しに意識も向かなくなってから、……ほんの五分。



コンコン



それが、最初の不運だった。





………





「……あの、それで本当になにか話すこととかあるわけじゃねぇんすか?」


騎士団演習場の騎士館、その自室でアーサーは未だに探るような眼差しをアラン達に向けていた。

演習が終わった夜、近衛騎士で飲むこと自体は少なくない。しかし今夜は急だったとアーサーは思う。「ないない!」と笑うアランも隣に立つエリックもまた取り繕いの笑みを浮かべているせいで妙に気になった。

アラン達と飲めること自体は嬉しく思うアーサーだが、同時にこの面々でなにか話し合うことでもあるのかということも気になった。しかしアランに共に連れてこられたカラムもわからない様子で訝しんでいるのを見ると、決して自分だけが隠されているわけでもないらしいと静かに理解する。


「まぁ良いじゃん。適当に飲んだら帰るしさ」

「アラン隊長……それでは答えになっていませんが……」

大して言い訳を考えることもなく笑って流すアランに、流石にエリックも言葉を返す。

アランが何故今夜突然飲みにカラムを誘ったかも、そしてアーサーの部屋に乗り込んだかもわかっているが、それを話せばプライドからの口止めを話すことになりかねない為、結局何も明かせない。


今夜、〝酔い〟に初挑戦するプライドへの念の為の控えだと。


侍女も衛兵も控えている中で、いくら深夜であろうともプライドが泥酔のまま発見されないという事態はないとはアランも思う。既にレオンからも厳重に忠告が告げられた後だ。

しかしただの酒ではなく、特殊能力という強制力の関わる劇薬のようなものだ。酔ったプライドがどんな行動に出るかは、誰もわからない。もしプライドの身に万が一のことがあり、騎士の手助けが必要な事態でもあればステイルは必ずアーサーを呼ぶとわかっている以上、今はこうしているのが一番プライドの現状と無事を把握できる術でもあった。

そしてアランに説明されるまでもなく、エリックも同じことを考えてもいたからこそ今夜の酒の集まりにも参加した。しかし、プライドの事情もレオンからの品も知らないアーサーとカラムにとってはただの唐突な酒の誘いだ。

アランの取り繕いに気付いているアーサーに反し、カラムの方がむしろあまり気にしていなかった。アランに大した理由もなく飲みの席に引きずり込まれるのはカラムにとっては珍しくもない。相変わらず強引に飲みに誘ってくることにもアーサーやエリックを巻き込むことにも思うことはあるが、そこに深い理由があるとまでは思うに至らないほどには慣れている。


「改めて話すことってのは本当に別にねぇしなんでも良いけど……ん~、!そうだ。アーサーお前さ、プライド様の酔った姿とか見たことあるか?」

まさかの、と。エリックは唐突な直球に思わず苦笑いする。しかし、実際はレオンとの会話でもプライドが酔ったこと自体一度もないとわかった上で話題として敢えて聞くのが流石アランだとも思う。

同時に今こうして自分達が飲みの席であることも考えれば大して突拍子もない話題でもない。現に、カラムも軽く眉を上げるだけでそれ以上は指摘をしようと思わない。アランが何か話したいわけではないらしいということは、その言い回しからだけ察する。

そしてアーサーもまた、アランから今度こそ取り繕いのない本心からの興味の眼差しに一瞬で靄が晴れた。「いえ」と言いながら、思考は今までのプライドの酒の席の姿だ。


「見たこと……ないです。王族ですし、昔からやっぱ良い酒飲み慣れてるのもあるんですかね?」

しかしステイルが酔い気味になったのは見たことあればティアラが酔ったという話も聞いたことはある、と。それは視線を浮かせたまま口の中に飲み込んだ。

酒を何歳からでも飲めるものの、純度の高い酒は値段も張れば当然若い頃から飲める年齢も財産的に限られている。その中で、王族や貴族ほど酒は飲み慣れるだろうとはアーサーは考える。

アランもそれ自体は「そりゃあ良いもん飲んでるだろうしな」と笑って流した。可能性によってはステイルと子どもの頃から友人であるアーサーはプライドが酔ったのも目撃したことはあって、しかし酔った本人であるプライドが酔った時を忘れるタイプであることも考えたが、アーサーが知らないならやはりなさそうだと思う。

しかし王族ではないが貴族出身のエリートである騎士でも酒に酔うことは普通にあることも近衛騎士である彼らは知っている。アランとエリックに至っては、今この場にいるカラムが酔う時の姿もよく記憶している。良い酒に飲み慣れたからといって全く酔わなくなるわけでも、………………酔った時の症状が上流階級らしいお上品で済むとも限らない。

だからこそ今、プライドのことが心配だった。酔った時に自制の聞かない人間を、騎士である彼らは同じ騎士同士でも、裏家業でも、そして貴族のパーティーでさえ見たことがあるのだから。


「酔ったらどんな感じなんだろうな。わりと剣もって暴れるとかも面白そうだけど」

「アラン。冗談でも王族相手に不敬な物言いをするな」

わははと、笑い混じりに言うアランにすかさずカラムが今度こそ指摘する。

カラムからすれば奪還戦での豹変してしまったプライドを彷彿とさせる姿だからこその叱責でもあったが、アランとしては奪還戦よりも彼女の戦う姿をまた見たい欲は純粋にある。暴れて怪我人を出すまではしてほしくないが、豹変といってもたかが酒での悪酔いなら良いとも思う。その場合は是非自分が相対してみたい。

プライドの戦う姿は今までも何度も目にしたことのあるアランだが、プライドと直接対決したことは幸も不幸も一度もない。しかし酔ったプライドを止める程度の平和な理由ならちょっとくらい期待しても悪ではないと思う。プライドが酔ったせいで倒れた怪我したどこかに頭を打ち付けたよりはずっと良い。


「でも結構、騎士の中にもいるだろそういう酔い方のやつ。ハリソンとかもそっちの酔い方だったよな?」

「そうなンすか?!!」

注意されたことも気にせずカラムに投げかけるアランの言葉に、思わずアーサーが声を上げる。ガタッ!!と、椅子が倒れる勢いで立ち上がりながら興味と共に若干顔が青かった。

ハリソンが酔って暴れる自体は意外では全く無いと思いつつ、しかし酔ったことがあることの方が意外だった。

目を丸くするアーサーとそして半笑いでアーサーとアランを見比べるエリックに、アランは「いや見たことはねぇけど」と手の動きでアーサーに座るように促しながら反対の手で酒を一口飲んだ。ハリソンとは同世代ではあるアランとカラムは、入隊したばかりのハリソンを知っている。アランからの投げかけに今度はカラムも「そんな話もあったな」と呟きながら前髪を指で軽く整えた。


「だが、実際に酔ったという話ではないだろう。ハリソンに飲みの席で副団長が「また暴れても私は止めてやらないぞ」と飲みすぎないよう注意されていたからそういう話が膨らんだだけだ」

入隊したハリソンが、初めて騎士団での飲みの席に姿を見せた時だったとカラムは思い出す。

もともと今と変わらず飲みの席に参加すること自体少ないハリソンが酒の席でジョッキを手に取った時、副団長であるクラークに注意されたのを周囲の騎士が聞いたのが始まりだった。その忠告通り、ハリソンは無理に飲み過ぎることもなければ、クラークの口から「ハリソンに飲ませすぎないように」と忠告された為周囲の騎士も興味本位でも飲ませようとすることもなかった。

恐らくハリソンの酔った姿を知るのはクラークただ一人だろうとカラムは考える。


「ハリソンの酔い方とプライド様を一緒にするな。せめてもう少し淑やかなものを想像しろ」

悪かったって、と。注意されたアランはそこで非は認めた。しかしそう注意するカラムの方こそ、究極に酔った時はハリソンよりも厄介であることは心にしまう。カラムがそこまでになるのは、記憶が飛ぶほど酔ってしまった時だけだ。

代わりに「けど気になるだろ?プライド様の方は」と言ってみれば、カラムも今度は一度唇を結び返し言葉に詰まった。プライドに酔うほど飲んでほしいとは思わない。しかし、酔ったらどうなるのかについて興味が全くないというわけではない。


─ 相手との距離が急激に近くなるような酔い方でなければ良いが。


そう、心配を覚えてしまう程度の興味はある。

騎士団に所属し飲み会に参加すれば自然と人の酔う姿は様々なパターンを目にはする。酔った人間を介抱することも悪酔いしないように注意することもカラムはあるから余計だ。

更には、騎士団入団までは貴族として夜会にも出席したことはあるカラムは、当然年端もいかない令嬢の酔う姿も知っている。頬を火照らせ、瞼が重くなる程度なら可愛いものだが、しかし酔うと普段より相手との距離感が一方的に詰めるのは騎士のような男性だけではない。

酔っても酔わなくても距離が近いのがアランである。しかし中には酔った途端、アラン以上に距離を詰め、それこそ恐ろしいことにも上官や身分の上の相手にも馴れ馴れしくしてしまう場合もある。

もともと、王女でありながら騎士である自分達や庶民にもそして前科者にも心を砕き親しく触れ合うプライドが、………………もし酒のせいでそれ以上に距離を詰めるようになってしまっては。

そう考えれば、どうか今後も酒の量には気を付けてほしいと切に思わざるを得ない。


「陽気になってしまうくらいなら可愛らしくて良いですね」

あはは、とやんわり笑いながらエリックから一番平和な予想を口にすれば途端にカラムも思考のままに深く頷いた。アランからも「あー良いなそれ」と想像するだけで顔がにこにこと緩む。

近衛騎士になってからプライドの女性らしい姿だけでなく子どものような可愛らしい一面を目にするようにもなった彼らだからこそ容易に想像もできた。

酒に顔を赤らめにこにこと笑い続けるプライドなら、ずっと見ていても飽きないとエリックは思う。いつも自分達や妹と義弟に対しても凜としようと背筋を伸ばして振る舞おうと意識している彼女が、むしろ酒に背を押される形で素の姿ではしゃげるなら酒で酔うのも悪いものではない。

今も願わくば、酔ったところできゃらきゃらとベッドで笑い転げてくれていればと考えてしまえば、つい想像だけで軽く吹き出した。「ふっ」と肩を揺らし俯くだけで堪えたが、それでもまた口が緩んだままだ。

酒で酔う姿など誰にも見られたくないだろうと理解はした上で、しかしそんな彼女なら見て見たいとは思ってしまう。


「で、アーサーはどう思う??」

「あんま……想像はつかねぇですけど、眠くなるとか……?」

アランから前のめりに再び矛先を向けられれば、アーサーはジョッキを傾け始めながらも眉を寄せて最終結論を口にした。

全員の話を聞いている間にも色々考えたが、ピンとこない。欲を言えばどんな酔った姿でも一度見て見たいとは思うが、まず王族がそんな無防備になったら大変だともわかっている。

ただ、酒で酔って眠そうにうとうとするプライドを想像すると、それだけで少し顔の熱が上がった。彼女が眠くなりウトつくと、どれだけ可愛らしい声で話すのかを自分は扉越しに知ってしまっているから余計にだ。当時のことを思い出せば、ある意味エリックの予想が一番当たっているような気もした。……と、同時に思い出す。



「!あ。……そういえば、前にステイルともそういう話したことあって。アイツも見たことはねぇらしいですけど、予想だと確か─………」



手合わせ中のちょっとした雑談だ。

しかしプライドの義弟であり、アーサーよりも更に前からプライドのことを知る第一王子の意見に、アラン達は酒の手も口も止め聞き入った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おーまさかの続きが!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ