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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
侵攻侍女とサーカス

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そして立ち止まる。


「君の優秀さはわかっているつもりだったけれど、……〝彼〟が君を信頼する理由はまだ他にもありそうだ」

「いえ、そのっ……本当、本当に出過ぎた発言を致しました……申し訳ありません……」

「むしろ感謝してるのだけれど」


レオンの言葉巧みさと詰問の成果もあり、商品棚として並べられた場所にいた奴隷の一人がアネモネ王国の民として確保できた。今は我が国の奴隷被害者と並んで座り込んでいる。

アネモネの民としてわかって見てもちょっとわかりにくい顔立ちだったから、レオンがわからなかったのも仕方ない。今は無事特定して保護できた分、レオンもいつもの調子に戻っていてほっとする。


言葉を伏せてステイルの信頼を持つアーサーを再評価するレオンは、私の耳で聞いても褒め言葉だと思う。けれど、アーサーは恐縮どころか萎縮に近いまま肩を狭めてペコペコ二度また頭を下げた。いつもより更に言葉をレオンに整えて、ちらりとゴーグル越しに見えた蒼の瞳が見事に泳いでいた。汗も首筋までじわじわ滲んでいる。

仮の姿でいるとはいえ、他国の第一王子であるレオンにうっかり助言してしまったのがアーサーも気にしているのだろう。いや、それ以前にここ最近はちょっとレオン相手に緊張気味かもしれない。喧嘩したようには見えないけれども。

実際今もレオンは含みのない滑らかな笑みをアーサーに向けている。レオンからすれば危うく見逃しかけたアネモネの民を確保できたのは大きいもの。それでもアーサーは申し訳ありません恐縮ですと目も合わせられない。

レオンも肩を竦めるとそこでアーサーとの会話を諦めるように視線を切り替えた。私達から離れ、暇そうに荷車に寄りかかっているヴァルへと照準を合わせる。


「ヴァル。君はジャンヌに付いていくだろう?ハリソンもいなくなっちゃったし、僕には護衛もいるから」

「あ゛ーー?どうでも良いが、聞き込みなんざしねぇぞ」

よろしく。と、レオンはにこやかにそこでヴァルに任せた。

ヴァル本人は面倒そうに首を掻いていたけれど、どうでもということは付き合ってくれる気はあるそうだ。まぁ護衛でいうならばレオンもアネモネの騎士二名、私も近衛騎士二名いるから同じなのだけれど。それでも私の身を心配して配慮してくれたのだろうレオンの気遣いをここは受け取る。私だってヴァルもいてくれる方が心強いことは変わらない。……問題を起こさないか心配なところも勿論あるけども。


このままレオンは奴隷被害者の迎えの騎士を待ちつつ、ハリソン副隊長が戻ってきたらそのままレオンの護衛に一時的についてもらうことにした。他の市場での調査がどれくらい時間がかかるかもわからないし、早めに終わって次の市場に移ったらまた行き違いになってしまう。地図を持っていないのに位置情報だけで私達を見つけるのも一苦労だ。

それならレオンと一緒に行動してもらって、一緒に私達と合流して貰う方が都合も良い。レオンはもうこの辺街の奴隷市場の位置は頭に入っているし、用事さえ終われば私達と合流もすぐできるだろう。あと、……やっぱりなるべくハリソン副隊長とヴァルは離した方が良さそうだもの。


ハリソン副隊長をそのままにレオンに任せるのが心配なのか、アーサーが少し何か言いたげに口を開いたけどそのまま言葉は発せられずにすぐ結ばれた。私から聞いてみたけれど「いえなんでもありません……」と苦そうな口で返されてしまった。エリック副隊長もちょっとそれに苦笑している。

レオンはフリージアの奴隷被害者を騎士に預けた後、今度はアネモネの奴隷と商人へ手を打つ為の別行動だ。先日もアネモネの被害者を発見して取り締まらせたばかりだから今回も衛兵に奴隷被害者と確認させればすぐに対応されるだろう。……良くも悪くも。

つい最近一度アネモネに抗議文で圧力をかけられたばかりだから、同じ事例が出れば大ごとになる前に叩き潰すに決まっている。むしろ問題は、どういう理由で近日に二人目のアネモネの奴隷被害者が発見されて衛兵に突き出されたかだけどレオンなら間違い無く上手くやるだろう。

「向こうも奴隷被害者返還数は多い方が検挙の功績もアネモネに主張できる」と断言したことからも既に算段はついているに違いない。ステイルほどの策士ではなくても、やっぱりこういうのはアネモネの王位継承者様だ。

時間も有限である今、私とアーサー、エリック副隊長そしてヴァルで次の奴隷市場へ向かうことにする。私も街の地図は頭に入っているし、奴隷市場の位置はわかる。レオンに次向かう奴隷市場の場所だけ摺り合わせて、奴隷被害者とハリソン副隊長を任せた。


「エリックさん、大丈夫ですか?もしお疲れなら一度どこかで休むのも……」

「いえ大丈夫です。お気遣い頂きありがとうございます。どうか目的の方を優先してください」

「途中にまともな市場もあったろ。酒買わせろ」

早速もうこの人は。

私達の何倍も実働してくれているエリック副隊長が遠慮してくれてすぐ、ヴァルの方から中継地を所望される。確かに彼も空腹だろうからそれは良いけれど、せめてエリック副隊長の配慮を水泡にする間で言うのはやめてほしい。少なくともエリック副隊長を気遣ってのお酒休憩提案ではない。


エリック副隊長も眉は寄せないけれど、ヴァルへ振りかえらず私に目を向けたまま発言を控えてしまう。本当に大人の対応のエリック副隊長に申し訳なさがどんどん募る。エリック副隊長もヴァルには良い印象がない筈なのに!!

もうどこまで地雷踏むのかこの人は!!アーサーが「今エリックさんが話してンだろ!」と怒って振りかえったけれど、欠伸しか返さない。いや、まぁヴァルも今の今まで空腹でも酒を買いに行かず私達に付き添ってくれていたのだけれども!!

決定権がある私から口を開く前に肩に力がこもってしまう。時間が勿体ない。でももうお昼に近いし、確かに食事補給も必要だ。エリック副隊長に小休憩取って欲しいしヴァルもお腹に何かいれるべきだろう。できればお酒よりも固形物を。


「……この先の市場で、食事にしましょう。私もお腹が減ってきました……」

あくまでヴァルの所為でもエリック副隊長の所為でもないと強調しつつ、ここは受け入れる。声を潜めつつ、眉が寄りすぎてネイトのゴーグルがわずかに浮いた。回数が減ったら困ると、自分で指でぐいぐいと顔に押しつけ直す。

奴隷市場は複数あるし、まずはここから一番近い場所へ向かうつもりだったけれど途中に一般的な市場もあった。頭の中の地図を確かめる必要も無い。私達がサーカスの宣伝回りをした時の一角だ。

レオン達を置いて食事は悪い気もしつつ、目的場所を一時変えて健全な市場へと途中で曲がる。手前から早速果物や花束の屋台があって、なんだか自分で思ったよりも全身から息が抜けた。なんだかんだでやっぱり奴隷の市場に気分が曇っていたなと思う。

それこそここ数日で見慣れた筈の普通の市場がいつもよりも眩しく見える。

めぼしい食べ物の売っている店を探そうと足を進めれば、中間位置に達するよりも前にヴァルが早足で逸れ出した。言うまでも無くお酒の店だ。


「もっとお腹にたまるものを食べたらどうですか……」

「生憎酒で腹も膨れてる」

そういう問題じゃないのだけれども。まず栄養を考えて欲しい、と口に出かかったけれどここは飲み込む。健康管理を気遣って欲しいとは別に、彼が旅先で食べるものに文句を付けるのは悪い。今だってなんだかんだで付き合ってくれてはいるのだから。

先に行ってろ、と数歩後に続いた私達を手で払う彼だけどただでさえ昼時で人通りが多いのにこれ以上分裂するのも躊躇う。でも買っているのをじろじろ見るのもと思い、妥協点で傍で立ち止まれるような店はないかしらと立ち止まった、その時。




「ヴァルキリ~~~!!!」




ア゛ァ゛ッ?!!!と、直後には今日一番不機嫌なヴァルの唸り声が放たれた。

反射に近いくらいの速さで振りかえり、牙のような歯を向いて私達の斜め後方を睨み付ける。あまり目立つ言動はと、注意する余裕はこちらにもない。ヴァルと相反する上機嫌の声に目で確かめるよりも前に正直に顔が引き攣ってしまう。どうしよう振りかえるの怖い。

もうこの意味不明なネーミングセンスと声で別の人間がいたらむしろ奇跡だ。今だけはヴァルのお怒りに同情しつつ、他人のふりをしたいまま口を結んだけれどそれが間違いだった。群衆に紛れて一時退避すべきだった。ネイトの発明の弱点を、私はちゃんと聞いた筈なのに。


「!!おお!アーサー達も一緒じゃないか!!こんな所で出会うなんて奇跡を通り越して運命だな!!」

ハハハハハハハッ!!と軽快に大笑いを続けるクリストファー団長に、流れるようにアーサーと、そして恐らく私も見つかった。〝達〟と言っているもの。

ギギギ……と油の差してないブリキのような首で振りかえれば、やっぱり思った通りの人がいた。団長、そして隣には荷馬車を引っ張ったアレスも並んでいた。私達が入ってきた方向とは別方向からやってきた彼らにはもう私とアーサーも認識できてしまっている。ネイトの発明はあくまで目立たない、本人と認識し辛くするだけだ。

こうして私達に気付いたということは、ヴァルを発見した時点で私達のことも尋ねるか周囲にいないか注視したのだろう。あくまで完璧に変装しているくらいの気付かれにくさだから、ヴァルと一緒にいる人物という認識で団長の思考に引っかかってしまった。更には団長が呼ぶものだからアレスまで私達に気がついたように遅れて眉を上げた。


「なんだその眼鏡。今朝のアラン達とお揃いじゃねぇか仲良しかよ」


…………ヴァルの言うとおり先に行って離れておけば良かったと。そう後悔しながら、私達の足はその場で完全に固まった。


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― 新着の感想 ―
いつも更新ありがとうございます! あら、やっぱりサーカスからは逃れられそうにないですね。アレスに会えて嬉しい!展開楽しみにしてます! ↓以下「アーサー」への鬱憤吐き出し 笑 んー。アーサー謙虚であっ…
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