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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
侵攻侍女とサーカス

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2093/2210

Ⅲ133.舞台裏は荒れる。


数分前。


「アーサー。品のない客も一掃すべきだと思うか?」

「ア゛?客居なくなったらやべぇのはこっちだろァが。けど今度指差した奴明日からはぜってぇ叩き出す」


二度と来ンな。と、思考の中だけで吐き捨てるアーサーに、投げかけたステイルも「同感だ」と眼鏡の黒縁を指で押さえつけた。

プライドが演目の為トランポリンに上がって間もなく、上機嫌になる観客に反比例するように二人の機嫌は傾いていった。よりにもよってプライドの時にこんなにも観客への腹立たしさが湧き上がるとは思いもしなかった。


今までも、女性が主役の演目はあった。その間も女性の魅惑的な登場やその後の演目に歓声を上げることは自然に起きたが、今回プライドの出だしへの態度は少し違う。

顔つきや容姿こそフィリップの特殊能力により変えられているプライドだが、もともと顔は化粧と仮面に隠されている。問題は首から下と衣装だ。

いくら顔や容姿を変えて見せることはできるフィリップも体型は変えられない。元々この上なく女性らしい体つきのプライドが、胸を露出する衣装を着ていればそれだけで色を求める男性客には充分な見世物だった。


今までもサーカスである程度の冷やかしや囃し立ては黙認されていた為、男性客も全く控える気は無い。むしろこれが楽しいと言わんばかりに声を上げ口笛を吹き、鼻の下を伸ばして笑う。

豊満な体つきの女性がそれを揺らす演目と知れば、安易に色目で見るのは彼らにとってごく当たり前のことだった。もともと妙に他の女性演者と比べても女気のない、そして露出も少ない衣装の中で胸の谷間だけが露わになっていれば、むしろ他の衣装よりも強調されているようにも見えてしまった。

その結果、舞台裏に控えているステイルとアーサーにすら遠目と耳で察せてしまえるほどにプライドへ卑しい目を向ける観客が急激に沸いていた。


社交界のパーティーでの色目など比べものにもならない、この上なく不快な視線と声にステイルは一気に黒い気配が渦巻いた。

アーサーも隣でステイルを止める気にもなれない、むしろ自分も舌打ちを我慢するのがやっとだった。本来王族であれば決して向けられるわけがない扱いをプライドが受けているに殺意が沸く。

サーカス自体がいくら煌びやかな世界を演出し芸術に見せようとも、見る側の客に品位がないことをもっと視野にいれるべきだったとステイルは渦巻く底で猛省する。明らかに男達の視線はプライドの顔でも全体でも演目でもなく、たった一点に向けられてる。

観客には囃し立て程度の歓声や応援でも、その意味を理解し不快に思うものにはただただ汚い野次と侮辱である。プライド本人がまだそれに気付いた様子が見られないのがせめてもの救いだった。後ろ姿しかみえない彼女だが、少なくとも各方向の客へ愛想を返す為に顔を向ける程度にはまだ余裕もある。


ただし、アーサーの目にはそのプライドの笑みに少なからず違和感も覚えれば、更にその事実がアーサーから教えられたステイルも殺気を隠さずにはいられない。

客に逃げられては困るが、それでも本音を言えば今すぐこの場からつまみ出したい。ラルクとの賭けさえなければ客席にいる元裏家業の前科者へ「下品な野次連中をつまみ出せ」とカードを送るのも視野に入れていた。

実際、客席の方へ角度を変えて視線を向ければ王族として気品を愛するセドリックやレオンだけでなく、そういったものに慣れているヴァルも鬱陶しそうに観客の男達へ鋭い眼光を向けているのをアーサーは確認できた。お忍びでなければ護衛の騎士が動いていてもおかしくない案件である。

それほどに、男達の野次はあからさまだった。

普通に演目見ろコノヤロウとアーサーが心の中だけで悪態を吐き、ステイルが遠目でもなんとか迷惑な男達の顔を脳に焼き付けようとしていたその時である。


ライオンが舞台に飛び込んできたのは。


それまでは、自分達の殺気しかなかった。それなのに

観客からのどよめき混じりの歓声に、迷い無く駆け走る百獣の王が突如として現れた。これにはステイルとアーサーどちらも怒りも忘れて声を漏らす。

零れるほどに目を大きく見開き疑うが、間違い無く自分達の知る猛獣が何の脈絡もなしに舞台を駆け出している。

アーサーが飛び出しかけ、直後に不自然にビクリッと止まる。見えない手が合図代わりに自分を叩いたのがわかり、踏みとどまる。「私が行きます」と声にされずとも騎士同士のやり取りで理解した。


なんだなんだと舞台を伺い控えていた下働き達だけでなく、客のどよめきと悲鳴には他の団員達もすぐに異変を感じ顔を覗かせた。そして直後には、誰もが同じ人物へと振り返る。

つい、今さっき。まるで頃合いを計ったかのようにライオンの登壇から間もなく舞台裏に姿を現した猛獣使いにに。


「ラルクッどういうつもりだ!!今度はジャンヌ食わせる気か!!」

「人聞きの悪い言い方をするな。僕は何もやっていない。ライオンを僕が出した証拠がどこにある?」

胸ぐらを掴み怒鳴るアレスに、ラルクも動じない。

決めていた理論武装を立て、ライオンを放った直後に鳴らした鞭も隠すことなく片手に握ったまま腕を垂らした。テント入口まで誰にも気付かれることなくライオンを誘導できた以上、自分が責められる謂れはない。猛獣の扱いを任されているのは自分だが、その世話や管理はサーカス全体の責任でもある。


大方悪ふざけした客が鍵を開けたんだろと、涼しい声で言い返す。

ちゃんとライオンにも人を襲うなとは指示をしたラルクは、舞台へ目を向けるまでもない。今自分が狙ったのはジャンヌでもなく団長でもない、あくまで舞台上のハプニングとして最後の大道具が使い物にならなくなることだ。

ジャンヌがいくら泣きわめこうと怯えようとも、餌にしないでやるだけラルクにとっては譲歩と情けである。たとえそれが、単にサーカス団で決定的な事故と売上げ払い戻しを防ぐ為だけであろうとも。

結果としては、食われるよりは充分良い〝事故〟で済む。


「あいつらが言うことを聞くのはお前だけだろ!!」

「あの女がライオンに嫌われるようなことでもしたんだろ。僕が知らない間に虐めてたんじゃないか?」

さらり、そよそよとアレスの言及など受け流す。

それどころか「僕に話しかけるなと言っただろ」といつもの切り返しをする余裕もある。どうせいくら時間をかけようとジャンヌも客も死なないし、その分トランポリンが使用不可能になっていくだけである。もし本当にジャンヌがライオンに襲われた場合、それはライオン自体が彼女から危害を加えられた時だ。そうなったら本当に餌にされてもラルクとしては別に良い。

崩壊決定の演目舞台よりも、今はジャンヌと親しげだったフィリップの顔色が変わっているかとそちらの方が興味深い。

アレスの眼光から視線を逃がすかのように顔の向きを舞台袖へと向けた。期待通り自分に対し険しい表情で「今すぐに引っ込めろ!!」と声を荒げるフィリップだが、それよりも隣に並ぶもう一人の新入りの方が目立つ為見劣りするとラルクは思っ



「死んで良いンだな?!!!」



「は……?」

一括りにした後ろ髪を払った直後振り乱すアーサーに、ラルクも初めて耳を傾け、直後に疑った。

ジャンヌが死んで良いんだななど、何故自分が聞かれる側なのはわからない。自分の耳を疑い、アーサーが混乱のあまり言い間違いをしたのかとも考える。

しかし、限界まで開かれた蒼の瞳は迷いもなく自分へ訴えかけている。「良いンだな?!!」とまた今度は叱るように怒鳴られ、これにはラルクも肩が揺れた。

もともとライオンに敵う相手など現れないことが前提での投入である。しかし、アーサーの真っ直ぐな眼差しを見れば嫌でも頭には、そのライオンがつい最近たった一人に制されたことを思い出す。


アレスに胸ぐらを捕まれたまま、ラルクは無理矢理向きを変え今度こそ自分の目で舞台を見ようとした。まさかカラムがと、歯を食いしばり今この場にいない男を警戒したが、事態はそれ以上だった。

おおおお?!なんだあれ?!マイキーか?!と観客の歓声に加え団員達のざわめきもラルクが理解できない方向に変わる。

アレスも戸惑い「どうした!!」と叫び、ラルクの胸ぐらを掴む手が緩んだ。あまりの胸騒ぎに、ラルクは無理矢理腕を振り払い駆けだした。声で引き留めるアレスの声も聞かず、団員を細い腕で「どけ!!」と無理矢理押しのけ前に出る。

やっと舞台の様子が見えるほど前に来れば、次の瞬間には目を疑う。


ライオンの眼前に刃物が十本以上突き刺さっているのを見せつけられた。


一体何が、ジャンヌがやったのか、それともナイフ投げを得意とする縁者のミケランジェロかと。思考こそしたが、今はまともに考えられない。無慈悲なナイフを前に姿勢を低くし、後ずさりするライオンの方が気にかかった。

やったのが誰にしろ、そいつに頭がおかしいのか心がないのかと言いたくなる。

ぐいっと再び胸ぐらを横から掴まれても顔は向けない。それよりもライオンに怪我が無いかの方が遙かに心臓を危ぶませた。しかし、直後に叫ばれた声色にラルクもハッと顔を向け直す。


「引っ込めろつってンだろ!次近づけたらテメェらの牙折ンぞ!!!!!」


ドサァッ!!と、抵抗どころか瞬きの間もなく仰向けに叩きつけられる。

てっきりいつものアレスにまた掴みかかられたのだと思えば、新入りでもあるアーサーだった。胸ぐらを掴んだ手でそのままラルクの細い身体を持ち上げたのも束の間に、ほぼ垂直に地面に倒す。転ばせる、というよりも投げつけるに近い衝撃にラルクも一瞬物理的に息を詰まらせた。

これには周囲の団員とアレスも口が開いたまま動かない。


いくら怒鳴られても言うことを聞かない、ライオンが危ないと事実を伝えても動こうとしない。しかも今は常識と説得が通じる状態でもない相手に言うことを聞かせる方法など限られている。

今はハリソンが指示通り我慢してくれているが、またライオンがプライドに近づけば別である。そしてもしハリソンが動かなくても、ローランドがいても、今度は自分が飛び出すとアーサーも決めている。

プライドの為にも今は演目のトラブルがバレないように自分達が我慢するが、それも彼女に危険が及ばない場合に限る。

今も地面に叩きつけたラルクへ自分も腰を曲げ鼻先をぶつけるほど至近距離で睨みながらも、神経はピンとプライドとライオンへと張り詰めた。


ライオンを操っているのがラルクであることはアラン達の証言からも彼の演目からと明らか。だからこそ責任を取らせる時はライオンだけでなく彼とオリウィエルの歯も折るくらいはすると本気で考える。

ただでさえプライドの危機と、ついさっきまで不快な男達の言動の野次に気が立っていたところだ。

今最善かつプライドにとっても望ましい展開は、ライオンが死ぬ前に自ら退散することである以上アーサーも躊躇わない。


サーカスの上司ではなく敵としてラルクに声を荒げ、胸ぐらを掴んだ拳をそのままぐいっと一センチ分押しつけ更に圧迫する。

アーサーの息巻きに、ラルクも今度は向き合わざるを得なかった。ぐっと下唇を噛み、自由な右手で鞭を握り直す。

パシン、と。手首と腕の力だけで一度浮かせた鞭をそのままま地面で鳴らす。舞台まで届く程度の力を込めた鞭の音に、ライオンが気付き撤退するのを背中をつけた地面の響きと団員達の顔色で確かめた。パチパチと的外れな拍手が聞こえ鼻を鳴らせばアーサーも顔を上げ、ラルクを解放した。掴んだ手を緩め、自分から先に腰を起こし背を伸ばす。

アーサーの位置からもジャンヌは見れる筈だったが、今は団員達が多くて一見では確認できない。ライオンが横切っていったのだけは陰でわかった。


「ジャンヌは?」

「無事だ安心しろ。アーサーまだ押さえてろ」

アーサーからの一言の確認に返したステイルが、そこでようやくラルクに目を向ける。いつプライドを瞬間移動しても良いように瞬きもしていなかった。そして今、人混みの隙間を縫いながら歩み寄る。

ステイルの指示を受け、一度離した手で今度はラルクの左肩と鞭の右手をアーサーは掴む。まだ仰向けに倒れたままのラルクも慌てて起き上がろうとしたがすぐにアーサーの鍛え抜かれた腕で地面に縫い止められた。左の肩で上体を、そして右手はしっかりと鞭を持つ手ごと押さえつけられもう振るえない。

離せと声を荒げようとしたが、ライオンが去った今これ以上叫べば表に聞こえてしまう。抑えた声で叫びながら、肩の代わりに手足をバタつかせる。

自分一人が地面に倒れている状態は嫌でも他の団員からの視線も刺さった。いくら本人が理論武装しようとも、誰もがラルクが犯人だと思い、蔑視の眼差しを上から落とす。

自分が彼らにどう思われるかは気にならないラルクでも、大勢から侮蔑で見下ろされるのは思わず顔が強ばった。更には、そこで歩み寄ってくるステイルがまた気味が悪い。


アーサーに確保され、更には一番自分と敵対関係であるフィリップが指示をした。どういう報復をするつもりかと睨めば、にこやかに作り笑いを浮かべるステイルはおもむろに羽織っていた自分の上着を脱ぎだした。

まるでこれから殴り合いを行う準備のようなその動作に、アレスも団員同士の殴り合いは禁止だと制止をかける。ステイルより遙かに体格の良い団員もこれには取り押さえるべきか悩みつつ、手の行き場に悩んだ。ラルクの有罪も明らかである以上、ジャンヌと親しい彼がラルクを殴りたいのも納得できる。


「おいフィリップアーサー!気持ちはわかるが今はそれどころじゃねぇぞ?!ジャンヌを引っ込めるかトランポリンをなんとか……」

「ええわかっています」

バサリッと、団員が舞台を指差しながら掛ける声へ一言断るステイルは脱いだ上着を勢い上下にはためかせた。まるで上着の皺を取る動作だ。

てっきり投げ捨てるかと思った上着をそのままテーブルクロスのように下ろすと、真っ直ぐに押さえつけられたラルクへ覆い被せた。もともと丈の長かった上着を広げれば、線の細いラルクの押さえつけられた左肩から右手まで綺麗に覆われた。当然真ん中にある顔も上着に隠され、まさかラルクを窒息させる気なのかと団員達は一瞬身を強ばらせる。

突然視界を覆われたラルクも「?!なにをする!」と言葉と自由な足でバタバタと抵抗するが、その間もステイルの動きは的確かつ流れるような速やかだった。

一度かぶせた上着をすぐに回収するように引く直前「よし離せ」とアーサーへ合図をすれば、ラルクも当然起き上がる。

自分からも顔にかぶせられた上着を払いのけようと腕を動かすその瞬間、指先で触れていたラルクの鞭だけを瞬間移動させた。上着で隠され、誰の目にも消える瞬間は気付かれない。


「ッなにするんだ!僕が犯人の証拠がどこっ……、……?!鞭っ、僕のッおい!僕の鞭をどこにやった!!」

「魔術師なので。ご存じでしょう?こういう手品は得意なんです。で、そんなことよりもジャンヌですが……」

起き上がってすぐ鞭を握り直そうとしたラルクも、すぐに手の中が空であることには気が付いた。

自分が転がった床を見回し、誰か拾っていないかも首をぐるぐる回し確認したが、最後には奪われたのだと気付く。鞭なしでも動物達との信頼関係は変わらないが、離れた位置から細かな命令をすることは難しい。

ステイルが持っているのだとわかっても、彼がどこに隠しているのかは全くわからない。わざとらしく脱いだ上着をパタンパタンと皺取りの振りではためかせる彼は、残された衣服の下にはどうみても鞭が隠されているようにはみえない。


ラルクへ鞭を自分がどこにも隠す場所がないことを示しながらのステイルは、もう彼に今は用はない。脅威でなくなった以上、今はか細い生意気男よりもプライドのフォローである。

トランポリンの紐が二本切られた。すぐに修繕は難しく、貼り直すのも練習用のボロで見栄えが悪いトランポリンを運び込むにもまずは今の中途半端に張られたトランポリンを撤去するにもまた時間がかかり、どうやっても大掛かりにもなる。その間に客が白ければ、夢にも覚め帰ってしまう。

唯一幸いなのはプライドの後にはもうトランポリンを利用する演目がないことだ。

どこに隠した返せとラルクは詰め寄るが、それもアーサーがステイルへ阻むように前に出ればピタリと足も手も止められた。つい今さっき力付くで制され脅された後である。

今はステイル同様構う気のないアーサーだが、ラルクは今その目に自分を映されるのも今は嫌だった。

ライオンが去ってから数十秒が経過している。

その間、プライドは舞台上に残されたままだ。進行役の誤魔化しに便乗し、途中から遅れてライオンが去っていった方向へと手を振っていた。

そのまま時間を稼ぐことに費やす進行役から「切られちゃいましたね〜!」と誘われる形で、切られたトランポリンの紐をプライドもその足で一つ一つわざとらしく確認しに行



ボゴォァ。



「へ。……ふぇ?!え!」

突然の違和感に、プライドも冷静を取り繕うのは不可能だった。

進行役に並び、なんとか次の策を優秀な頭で思考しながら時間稼ぎを行っていたプライドには完全な不意打ちである。すぐ隣に立っていた進行役もわけがわからずたじろぐ。

足元などなんの仕掛けもないただの〝地面〟であるにも関わらず、そこが急激に盛り上がったことに。


その場から動いてはいけないということだけを、プライドは瞬時に理解する。

ガチリと足を揃えて固めるが、視線を向けるのは躊躇った。むしろ彼がタネだと誰にも気付かれてはいけないと、意識的に向けないようにした。結果、余計にこれから何が起こるのかも彼がどういうつもりかもわからない。

異変に気付いたステイルとアーサーも「まさか」「マジか」と声を溢す。よりにもよってこの展開は策士ステイルすら想像もしていなかった。

ボコッボコボコボコッ!!と、足元が急激に持ち上がっていく。観客の注目と期待値が充分に集まったところで、プライドの足元が最初は段差程度の高さから、みるみるうちに上昇した。気付けば馬の上よりも、トランポリンの上よりも、観客の頭上よりも高く高く上がっていく。そして。


ガガガガガガガガガガガッと。


……今度は地鳴りまで起き始めたことに、プライドは客がうっかり避難しないことを社交の笑顔の下でひたすらに願った。


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