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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
嘲り王女と結合

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Ⅱ481.本隊騎士は紡がれた。


ノーマン・ゲイル。

家系最初の騎士から得た、僕の名だ。


先祖代々継ぐ騎士の家系。

騎士として栄えある城に務め、村で騎士の子をつくり、そして騎士の務めを終えれば村に戻り、元騎士として山奥の村を護る。

そんな家が幼かった僕は誇らしく、父や祖父、曾祖父……先人達のような誇らしい生き方を継ぎたいと心から思った。

父も祖父も死ぬまで村の人達に誇られ感謝され敬われ、僕と母さんも同様に扱われた。父さんが騎士として家を空ける間残された僕ら家族を村全体が、……いや僕ら一族を村全体が支え生活を保障してくれた。

祖父は父が騎士になって数年後に命を落とし村の守り人としての任は果たせなかったが、それでも残された父に村の人達は良くしてくれたらしい。そしてその父の子として生まれた僕とブラッドも揃って村の人達には良くして貰えた。……僕らが子どもの間に父が殉職してしまった後も、暫くは変わらず。


父の死も祖父の死も決して恥ずべきものではなく、騎士として誇り高いものだった。祖父は人身売買の巣窟で囚われていた被害者達を庇い命を落とし、父は土石流から逃げ遅れた人々を一人でも多くと救い続けた。

誰も祖父の死も、父の死も悪くは言わなかった。二人とも最後まで騎士として生き続けた結果なのだから。村の誇りだと誰もが言ってくれた。




ただしその分、期待は重かった。




二代続いての守人の不在。

本来ならば祖父が村を守り僕らを騎士として指南してくれていた。

それまで僕らの家系でこの流れが途絶えたことはなく、誰か一人は少なくとも騎士として生き残り、先祖代々の任を紡いでいた。なのに祖父と父の代で続いて村を守る立場の者が亡くなってしまった。

昔のように他国からの侵略戦争激化時代でないにも関わらず、平和に近づいている時代で続いて二代も。「なにをやっているんだ」と、……そう胸の底で考えた村人もきっと少なくはないと、僕も母もわかっていた。

祖父は六人の兄妹で、男児は末の子である祖父だけで姉達は全員村を捨てた。早くに祖母を亡くした祖父は、その後も新しい妻を取る気になれず子は父一人。そしてもう村に残されたゲイル一族の男児は僕と弟のブラッドだけだった。


『え~いいよ。僕は見てるだけで』


弟のブラッドはすぐに投げだしたが、僕は違った。

ブラッドが放り投げるのも無理はないと思う。九歳まで父に騎士としての生き方を聞かせて貰い鍛錬や稽古をつけ続けて貰えた僕と違い、父が亡くなった時ブラッドはまだ三歳だった。

僕や母、村の人から騎士や騎士だった父達のことは聞いても具体的に目にした記憶も殆どない。父の背中を見て憧れた僕とは違う。

それに父を亡くして間もなくライラを産んだ母が患った。一人では家事やライラの面倒を見ることも難しくなったから、ブラッドは僕と母の分もライラや家のことを賄ってくれた。騎士を目指さずとも充分に家族の力になってくれていた。


僕も教えるのは上手くなかったし、応援してくれる人達はいても指南してくれる人はブラッドにも僕にもいなかった。

騎士としての技術や能力を身に着ける為の稽古や訓練方法、心構えを、僕は父の教えや先代が残してくれた書物で埋め合わせた。

僕は自分で学ぶことで精いっぱいだったし、意欲のないブラッドに未熟な腕で教え込む技量もなかった。

何より僕自身が絶対父のような騎士になると決めていたから、弟を無理やり同じ騎士の道に強要する気にもなれなかった。僕一人が騎士として先祖の血を紡げば良いのだから。


『兄ちゃん見て見て!!父さんの昔の机からも日誌見つけちゃった!騎士の任務とかも書いてある!!』

『⁈でかしたブラッド!!』

それに、ブラッドも騎士自体は子どもの頃から好きだった。

僕が騎士を目指すと言っても応援してくれたし、お互い毎日のように騎士の話をした。いつか騎士になれたら、兄ちゃんが騎士になったらとそう語り明かした日は数知れない。父さんを早くに亡くした僕らにとって、騎士は理想の大人で憧れそのものだった。


何故そんなに騎士に憧れているのに僕のように目指さないのか、遠慮しているのかと子どもの頃ブラッドに聞いたこともある。だけど理由は単純で「死にたくないから」だった。

僕だって別に死にたくはない。だけど誇り高い騎士の血を絶やしたくもないし、僕ら一族に良くしてくれた村の人達の期待にも応えたかった。

何より、祖父や父さんのように生きられた上での騎士として名誉ある死ならばと思う部分もあった。村の人達も僕の騎士を目指すことは全面的に応援してくれ、文字通り村の期待を一身に背負って努力してきた。

ブラッドが特殊能力に目覚め、それが拡散の特殊能力と銘打たれてからは村人からの風当たりは強くなったがそれでもまだ何とかやってこれた。ブラッドの特殊能力の影響で被害が出た時は謝り回したがそれも大した苦労じゃない。むしろ問題なのは



『お言葉ですが「厄介な弟で苦労するね」と言われるのは心外です。確かに貴方方の家と息子さんにご迷惑をかけましたし謝罪した通り申し訳ないとは思っています。ですが僕ら家族はブラッドのことを全く厄介とも面倒だとも思っていません。迷惑をかけられた立場というのを傘に着てそこまで勝手に決めつけるのはどうかと思います。弟が迷惑をお掛けしたのと、僕らの中でのブラッドの存在を勝手に悪い方向に決めつけるのは別の話です。少なくとも母の前で言う発言ではありません。今すぐここで謝罪して頂けますか』



……僕の性格だと、思う。

ブラッドがなにか問題を起こしてしまった後に謝罪に回るのは、主に僕の役目だった。母も基本的にはなるべく家で休んでいて貰ったが、大ごとの時は付いてきてくれる時もあった。

謝罪を必要とする側が、ブラッドの特殊能力でまた被害を受けたくないから本人を連れてくるなという希望で、殆どは僕一人で謝りに回った。

謝るだけなら素直に謝れる。ブラッドに悪気や故意がなくても物や人を傷付けた事実上は僕らが謝罪するのも責任を取るのも当然だ。

ただそこで特殊能力を制御できない弟や、女性に生まれたライラ、病気がちの母のことをくだらない理由で中傷されるとつい口に出た。

毎回ではないが、謝りに行ったのに逆に喧嘩を売ってしまい余計に関係悪化させてしまった時があっては家で項垂れた。「兄ちゃんは僕の為に怒ってくれたんでしょ」「そもそも僕が悪いんだから」と慰めるべき弟に、逆に慰められる時もあった。


正直、僕以外の家族の立場が悪いことにいっそ家族全員で村を出ようかと何度も思った。

その頃には既に騎士になることは僕の意思だったが、家族のことを悪く言う人間が増えれば増えるほどこれ以上村の為に務める意思も希薄になっていた。ただ、ブラッドは「僕はこの暮らしで満足だよ」「自分から避けてくれる方が楽だし」と言い張った。さらに母の療養の為にも今までの体調経過を理解する薬師がいる、空気の綺麗な村からは離れられなかった。


村の子ども同士の喧嘩で複数の被害を出した事件をきっかけに、人を傷付けないようにブラッドはなるべく家に籠るようになった。

ブラッドのことは心配だったが、それでも弟が付き切りで母と妹の面倒も家のことも手伝ってくれたからこそ、結果として僕は騎士になる為の鍛錬にも集中できた。僕が騎士になれたのは家族と、……僕ら家族の生活を支えてくれた村の人達のお陰だと理解もしている。


最年少で挑んだ入団試験には落ちたが、翌年に受かることができたのも周囲の支えがあってこそだ。

新兵になれた時は家族だけでなく村全体も喜んでくれた。あの日からは村全体の風当たりもかなり良くなって、僕は家を空けることが増えたがブラッドは前よりは過ごしやすくなったと喜んでいた。

新兵になってからも僕は相変わらずこんな性格で、同期や先輩とも入団前からの想像通り全く打ち解けられず、もともと仲間を作る為に騎士を目指したわけでもなかった僕もそれで良いと思った。


飲み会も村にいた頃から好きじゃなかったし興味もない。そんなことよりも本隊になるべく努力が僕には最優先だった。

本隊騎士になれれば僕はやっと目標に一歩踏み出せるし、村では家族の扱いもまた良くなる。

騎士団ではサラブレッドと呼ばれる僕が新兵で足踏みしている場合じゃない。それに今までずっと一人で鍛錬も修行していた僕には、入団してもそうする方が変わらず集中できた。同じ空間に誰かがいるくらいは良いが、一緒に何かするのは落ち着かない。相手が慣れ親しんだ家族以外であれば余計に。……騎士団には騎士しかいないし。

父の日誌で読んだ完全個人主義の八番隊を志願することも最初から決めていたから、他の騎士と打ち解ける必要も感じなかった。八番隊に入隊すればどうせ各自判断で連携も必要とされない。連携どころか協力作業も村でまともにやったことのない僕には、八番隊はうってつけだった。完全個人主義なら、誰かと関わる必要もない。


別に口が悪いつもりはない。ただ僕が当然の正論を言えば、それが突っぱねていると判断されだけだ。別に間違ったことを言っているつもりもないから反省はしない。…………後悔はしても。

仕方がない。僕は騎士になる為に騎士団に来た。規律正しく先祖代々模範的な騎士の生き方に憧れた。騎士として振舞う以上、常に騎士として意識し言動にも気を払うべきだ。

僕は決して間違ったことを言ってないし、全て正論しか言っていない。そして他者が間違った判断や言動があれば、立場など関係なくはっきりと指摘するべきだ。そこに騎士の先輩や上官など関係ない。

立場が上であれば騎士道に反して良い訳でも、権力があれば規則に反して良いわけでもない。

騎士を目指す以上、そして騎士として生きることを誓った以上は騎士として常に振舞うべきだ。その証拠に騎士団長や副団長は決して騎士としての模範を外したことがない。常に己を律し騎士として厳しい判断も躊躇わず、新兵から隊長格にも隔てなく厳しく、時には優しい。なら僕ら騎士も立場は関係なくそう務めるべきだ。

騎士団長や副団長だから、じゃない。騎士だからそう在るべきだ。


立場が低いから、経験が浅いから、後輩だからなんて理由で騎士としての自分を殺し、振舞いたくなどない。

新兵になってもその意識は変わらず、二年後には念願かなって入隊できた。希望通り、完全個人主義の八番隊に。

父が遺してくれた日誌通り、寧ろそれ以上に八番隊は個人主義で隊員同士の関わりがなかった。入隊祝いとして騎士団総出の歓迎会は行われたが、他の隊のように同隊員達に絡んでこられることもなかった。


出席だけした僕はその時も当時の隊長、副隊長達に挨拶だけ回れば後は隅で大人しくするだけだった。

僕らの為に開かれた飲み会を途中退場するのも無礼だから出席はしたが、他の同期と違って八番隊の僕にわざわざ話しかけてくる騎士も殆どいない。カラム隊長やアラン隊長、他の先輩騎士にも何人かに話しかけられはしたが簡単な会話の往復で終えた。「それでは失礼します」と切り上げれば、わざわざ別隊である僕を無理に引き留める人もいない。

同隊直属の騎士であれば別かもしれないが、予想以上に八番隊の騎士は新入りへ話しかけてこなかった。




『気分でも悪いか?』




まだ副隊長にも就任していなかった、アーサー・ベレスフォードさんを覗いて。


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― 新着の感想 ―
[良い点] アーサーの騎士相手のため口…何か…くるものがある。
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