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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
見かぎり少女と爪弾き

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Ⅱ430.騎士は戸惑い、


「うわぁぁぁああ、不死鳥さんだぁ」


「不死……⁇」

扉が開いて一番の言葉に、思わず中途半端に聞き返す。

丸くされた目に俺も瞬きが勝手に多くなりながら見返した。説明もなくて「どうぞ」と簡単に部屋へ通される。あんなに用心深かったのに急に簡単に部屋の中は許すから勝手に肌が警戒しちまう。ノーマンさんの弟さんだし大丈夫だとは思うけど。

でもブラッドが俺を見上げながらまたあのにこにことした笑顔で返してくれるから、妙に肩が強張った。失礼しますと一声かけて、中に入ればすぐに扉が閉められる。

ノーマンさんが教えてくれた宿は、城下のわりと外れだった。それでも結構良い宿でこうして見回しても二人分以上の部屋だから昨日はノーマンさんもここに泊まったのかなと思う。


「すみません、本当はお茶とかコーヒーでも淹れたいんですけど水しかなくって。騎士さんって水飲みます?」

「あ、飲みます。っじゃなくお構いなく。すみません、いきなりお邪魔して」

「いえいえー。あ、椅子かベッドか好きな方座ってください」

伸びやかな声で言われて、気づいたらこっちが気を遣われる。

ベッドの目の前に椅子が運ばれて、椅子かベッドは悩んだけどとりあえず人のベッドに座るのは気が引けたから椅子を借りることにした。

その間にも、グラスがないのか棚の上に置かれたカップを取り出して水差しの中身が注がれた。鼻歌交じりで機嫌よさそうにもてなしてくれるブラッドは、この身体で会うと結構小さいなと思う。十四の姿の時はそこまで変わらなかったけど、今は視界にしっかり入るように俺が首を丸くする。

いや、この年だったらむしろ高い方か。十四のプライド様よりは高かったし、十四のステイルにも多分勝ってる。

失礼します、と椅子に腰を下ろせばちょうど良い目線に合った。


「嬉しいなぁ、一度兄ちゃんの上司っていう隊長に会ってみたかったんです。不思議ですよねぇ、なんだか初めて会った気がしなくって」

「ッ⁈き、気のせいだと思います……」

ばちりと合った瞬間に言われて思わず肩が強張る。

見透かすような水色の瞳に思わず舌が軽く詰まった。ブラッドがどこまで知ってるかもわからない。ノーマンさんは口留めしてくれているらしいけど、プライド様は確実だとして俺はどこまで気づかれてんだ?もしかして扉前ですげぇ質問ばっかされたのも怪しまれてたのかなと思う。


ノーマンさんに場所と部屋を聞いて辿り着けたのは良いけど、「自分と隊長の名前を言えばすぐ開けてくれると思います」って言われたのに実際は開けて貰うまでにすげぇ時間がかかった。……しかも、なんか変な質問も多かった。

「尊敬する騎士は?」「身長は?」「得意技は?」「紅茶派?珈琲派?」「毎日なに食べてます?」「好きな食べ物と嫌いな食べ物は?」「恋人います?」「モテます?」「父親が騎士団長ってどんな感じでした?」って、身長はともかく他の質問はどれも答えたは良いけどブラッドどころかノーマンさんすらちゃんと正解知らねぇと思う。

もっとプライド様の近衛騎士かとか、八番隊の特化型とか父上の名前とかそういう質問で確認されると思った。


「うわー不思議。昨日たくさん騎士見たはずなのに、やっぱりアーサー隊長格好良いや」

「⁈あ、りがとうございます……?」

っつーかなんでこんな褒めちぎってくんだこの人。

昨日も手放しに強い格好良いって褒められたけど、そういうの惜しみなく言える人なのかなと思う。それとも兄貴の上司だからか、単に騎士が好きなのか。

水の入ったカップを一つ俺に手渡したブラッドは、向かいになるようにベッドに座る。真新しい色違いのマグカップに、もしかして俺に出されたのはノーマンさんの分かなと思う。……勝手に使って怒られねぇか?


「気にせず使ってください。兄ちゃん絶対怒らないから」

やっぱノーマンさんのか。

けど、せっかく出されたもんを飲まないのも悪いから使わせて貰う。〝絶対〟って言葉に、家ではノーマンさんもやっぱ家族には甘いのかなとか想像した。まぁそうでなくてもあんなことあった後じゃ簡単なことで怒れねぇだろうけど。

水を飲む俺を見てにこにこ笑って眺めるブラッドは、すげぇ機嫌が良い。思ったより元気そうなのは良かったけど、……だからこそやっぱ昨日と似た気味の悪さに舌が鈍った。水だけど、たぶん中身が水でも茶でも酒でも多分わからない。

一口飲みながら上目で覗く間、口を結んで笑顔で返してくるブラッドに眉をしかめないように意識した。いきなり来たのはこっちなんだし、嫌な顔されねぇだけよかったと思わねぇと。


「すごいなぁ、伝説の聖騎士が目の前で水飲んでる」

ゴフッ、とうっかり噎せこんだ。

まるでジルベール宰相にからかわれてるみたいな錯覚まで覚える。さっきからちょいちょい呼び名変えられてるのもわざとか?

馬鹿にされてンのか嫌味かなと思ってみたけれど、やっぱりにこにこの上機嫌だ。噎せたまま肩を揺らす俺に「大丈夫ですかぁ?」と尋ねた後は、何事もなかったようにカップを一口分傾けて横に置いた。

俺も俺で咳止めるのに忙しいけど、この人の一挙一動がすげぇ気になる。ある意味最初のレオン王子より怖ぇ。


「それでどうして来てくれたんですか?もしかして昨日のことで城に出頭しろとか」

「いえ……違います。昨日はその本当に、いろいろありましたし……個人的に気になったので。ノーマンさんも今日は親御さんの様子を見に行かないとで夜までブラッドさんはお一人だと聞きましたし」

なんかこうやって言うと押しつけがましいかなと少し肩が狭くなる。

プライド様が予知して気にかけてたこともあるけど、やっぱすげぇ特殊能力者なのに制御もができなくて、なのに家族とも離れて村も離れて一人じゃいろいろ不安かなと思ったとか。言葉をどう捻ってもやっぱ見ず知らずの俺に言われても余計なお世話でしかないことはわかってる。

けど、ここまで来て「昨日の件で詳しく話を聞きたい」って建前を吐くのもとか「騎士として気にかけるのは当たり前」って隠し事をするのも嫌だった。

カップを両手で持って見据えれば、「ブラッドで良いですよ」と向こうから笑顔が返される。


「僕は大丈夫ですよぉ。母さんも命に別状はないらしいし、兄ちゃんもライラも無事で済んだし。あ、この怪我も後遺症はないらしいです」

最後に思い出したみてぇに包帯が巻かれた左手を振ってくる。

指から肩までぐるぐるに細かく包帯で巻かれているけど、治る怪我ってことにほっとする。ノーマンさんも絶対心配しただろう。


「騎士さんには感謝してます。格好良かったなぁ、あんな大勢の騎士さんに囲まれてちょっと嬉しくなっちゃいました。騎士って本当に格好良くて、僕も兄ちゃんも子どもの頃から大好きなんです」

そういわれるとくすぐったくなる。

俺もガキの頃からそうだったし、ブラッドだけじゃなくてノーマンさんにもそんな時があったんだなとか知れたのも嬉しい。けど変わらずにこにこ陰りなく笑うブラッドに腕ごと寒くなる。

机に腕を伸ばしてカップを置いて、また座り直す。その間も楽しそうに一人でくすくす笑うブラッドから目が離せない。


「でもやっぱりアーサーさんにが一番会えて嬉しいですよ。兄ちゃんから聞いた時からずっと会ってみたかったから」

「?ノーマンさんからどんなこと聞いたンですか」

「ん~~……それは秘密です」

兄ちゃんに怒られちゃうから、と。そういって人差し指を口元に立たせるブラッドは悪戯するみてぇに笑った。

どんな駄目出しされてたのかすっげぇ気になるし、わりと俺に直接言えねぇ不満とかあるのかと考えれば落ち込む。っつーか私物のカップ勝手に借りるより怒らすって相当だろ。

わりと俺にもハリソンさんにも他の騎士にも遠慮なくザクザク言ってくる人だと思ってたけど、あれでも抑えてんだなと今更知った。

考えれば考えるほど気になるけど、だからって言えないというブラッドに無理やり聞き出すわけにもいかず押し黙る。俺が口を結ぶ間もにこにこ笑うブラッドは、ベッドから降ろした足まで揺らし始めた。

目が会えばまた嬉しそうに笑って頬まで綻んで、……だからこそすげぇ怖い。



取り繕いも薄気味悪さも何も感じられねぇ今の笑顔が。


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― 新着の感想 ―
[一言] あー、アーサーも割とプライド症候群(割と自分の価値を低く見積もっている)が伝染してるんね
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