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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
見かぎり少女と爪弾き

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Ⅱ405.見かぎり少女は足を止め、


「ええと……どうして私の部屋に……?」


当然です、と。

そう私達を瞬間移動で迎えに来てくれたステイルは言い切った。


ブラッドが無事、兄であるノーマンに迎えられたことを見届けた私達は騎士以外の人目はない場所へ移動してからステイルと合流した。

通信兵に繋げて言い切る前に瞬間移動で現れてくれたステイルに私とアーサー、そしてエリック副隊長は城に帰ってくることができた。


騎士団にはバレてしまったのだしてっきりそのまま騎士団の作戦会議室へ移動かなと思ったけれど、視界が切り替わった先は私の部屋だ。既に帰り予定時間を大幅に過ぎていた私を専属侍女のマリーとロッテ、近衛兵のジャックも待ってくれていた。

お帰りなさいませ、プライド様そのお姿は⁈と畏まったり驚いたりと忙しい専属侍女の二人に、私も棒立ちのまま見返してしまう。

温かい部屋の空気に触れて、大分身体を冷えていたんだなと実感した。ポタポタと滴る感触もはっきり感じて足下に視線を落とすと、部屋の絨毯に影と間違うほどの沁みができていた。

私だけじゃない、アーサーとエリック副隊長に振り返れば二人もずぶ濡れだ。


エリック副隊長の柔らかい髪はべったり前髪ごと顔に額にとくっついていて、アーサーなんて侍女達渾身の三つ編みが使い古された梯子縄みたいにぐちゃぐちゃだ。

私に付き合って二人とも雨に打たれ続けてくれた結果、三人揃ってプールから上がった後みたいになってしまった。雨の中では気にならなかったけれど、温かい部屋の中だとなんとも壮絶さがわかる。

エリック副隊長が苦笑気味に笑う中、アーサーが慌てたように足下を見ては目を丸くした。「すみません!」と謝ってくれるけれど掃除は侍女達がどうにかしてくれるから良いけれど、二人の格好の方が気になる。


「騎士団へ合流するにせよ、その格好で向かわせることなどできません」

ステイルの落ち着いた声に続き、マリーが化粧台から手持ち鏡を持ってきて私に向ける。

ロッテが大慌てでタオルを私の頭に掛ける姿が映る。……瞬間、思わず悲鳴を上げそうになった。

もともと庶民に混ざる為に化粧をしていなかったお陰でお化けにはならずに済んだけれど、振り乱した長い髪が台風を歩いてきたみたいに分け目関係なく乱れている。

冷たい場所から温かい場所に移った所為で、肌も赤らんでいて幼児みたいだし心なしか頬もむくんでいた。極めつけには雨に打たれた所為で顔が汗か水かもわからないくらいべっちゃり濡れて滴って気持ち悪い‼︎

こんな顔でブラッド達やアーサー達に話して居たの⁈と思ったら急激に羞恥に襲われて頭のタオルで顔を覆い隠した。とにかく髪はともかく汗まみれと間違えそうな顔だけはどうにかしたいと水分をタオルに押しつける。


顔を急いで隠し、鏡から背ける私にステイルから「隠すべきはそこではないのですが……」と困ったような声が掛けられた。

ここ以上に酷いところが⁈とタオルから目だけを覗かせてみれば、ステイルも私から顔を背けていた。恥ずかしい王女の姿にステイルまで顔が僅かに赤らんでいる。せめて恥ずかしい部分を具体的に指摘してから顔を背けて‼︎


もう濡れたままベッドに潜り込みたい気持ちに駆られれば、鏡を置いたマリーが大判タオルを持って私に羽織らせた。

背中からではなく、正面から隠すように羽織らされた。助かったと思ったら、……マリーに釣り上げた眉を向けられた。


「プライド様、お召し物に手を加えるのはお止め下さいと申した筈ですが」

ちょっと怒り口調のマリーに、ひぇっと肩が上がる。

それからやっと自分のスタート丈の短さを思い出した。ブラッドを止血する為に包帯二枚分ほど短くした丈だ。

でも、膝が見えるかどうか程度だしこれくらいは……と思ったけれど、どちらにせよ身嗜みが最悪なのは変わりない。


覆われたタオルの隙間から内側を覗いて自分のずぶ濡れ丈を確認する。

少し短くなった丈もぺったり脛につき、服もボディースーツのようにべっちゃり私に密着していた。身体の線がわかりやすい格好に、十四才のお色気無しの姿で助かったかもしれないとこっそり安堵する。これが元の姿だったら恥ずかしくて立ってられない。雨の中では空も暗かったし見えにくかったけれど、今はくっきりだ。


でも、侍女達はそうも言ってられるわけもなく急いで大量のタオルをとロッテが部屋の外に控えて居る侍女達に声を掛けた。

扉際に立っていた近衛兵のジャックも今は、私達に背中を向けて扉を見つめている。


「ご、ごめんなさい。だけどその、ちょこっとだけよ?」

「いま、入浴の準備をさせますので整い次第すぐに入りましょう」

「いえっ、その、身嗜みだけ整えて貰えれば良いわ。先に騎士団へ行かなくちゃ……」

「お風邪でも引かれては大変です。御身を一番にお考えください」

落ち着いた声で断るマリーにステイルが大きく頷くのが見えた。

アーサーに触れれば風邪なんて引かないのに‼︎とステイルも知っている筈の事実が喉の手前まで来る。助けを求めてアーサー達の方に振り替えるけれど、二人も同意なのか「先ずは濡れた服を脱ぎましょう」と言うマリーに合わせて部屋から出て行こうとする。

待って二人こそ今は騎士団長に報告が大事とわかっている筈なのに‼︎


「騎士団長からは身支度の断りはいれてます。俺から伝えるので、プライドもアーサーも特殊能力が解けると思います」

折角だからお前も着替えろと、ステイルに続けられたアーサーもそれに頷いた。

私と一緒にアーサーも別室で着替える為の時間、と思うともう逃げる手はない。

ジルベール宰相に伝われば、身体も伸びるしますますこの格好ではいられない。ジャックの開けた扉から退出するステイル達を見送ってから私も観念した。


最後にジャックが退出して扉が秘められたところで、さっそく専属侍女二人で脱がしにかかられる。

いつものドレスと違いシンプルな構造にもかかわらず、濡れて張り付いた服を脱ぐのは凄まじく体力が必要になった。特に腕を抜くのが。

借りた団服はすぐに脱げたけれど、直接肌に張り付いた服は強敵だった。下着までびっしゃり濡れている状態から何とか脱却し、簡易服とタオルで何重にも巻かれて暖炉の傍に座らされる。

乱れきった髪は、ブラシすら簡単には通らなかった。……うん、確かにこれはお風呂案件だったかもしれない。


ロッテが運ばれてきたタオルの山を扉の前で受け取ってくるのを眺めながら、暖炉の温かさに指先からじわじわと痺れる感覚がした。

数個を扉の向こうに分けているように見えたから、エリック副隊長にかもしれない。アーサーは着替えられるから良いけれど、エリック副隊長は上着もないし濡れたままで大丈夫だろうか。ハリソン副隊長が城にいるなら交代して貰えれば良いのだけれど。それに今、村の人や騎士達はー……。


「…………雨の向こうの人達もいるのに」

「……雨の向こうに傘も差さず赴く王族は、プライド様くらいのものです」


髪を少しずつ解かされ、大量のタオルで水気を吸われながらジルベール宰相の特殊能力が解けるのを待った。


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