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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
無頓着少女と水面下

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そして締めくくる。


「お疲れでしょうか。また私から出直しますか」

「いえいえ、どうかお気になさらず。別の案件がつい浮かんでしまったもので。お気遣いありがとうございます、騎士団長」


ロデリック騎士団長。我が王国騎士団の要である彼は今、私の執務室に訪れていた。

国外への牽制と防衛そして国内治安を担う彼が、女王であるローザ様や王配であるアルバートへ定期的に報告へ来ることは珍しくもない。今回はティアラ様と共に多忙を極める王配のアルバートの代理として私が受けたが、それ以外にも聞きたいことがあった。

年ですかねと冗談めいて言ってしまいたいが、私よりも年上である彼に言えば失言である。どうやら私が呆けていたことも怒っているのではなく、単純に心配をしてくれているらしい彼へ私から笑みで返した。ここ最近は多忙だった為、確かに少々は疲れも溜まっているのかもしれない。


テーブルの紅茶を一口含めば、騎士団長も合わせるように一口傾けた。

接点こそそれほど多くはないが、騎士団長である彼とはなかなか長い付き合いである。もともと険しい表情や威厳の圧にはアルバートで慣れているが、今では少々彼には気を引き締めてしまう。

王国騎士団を統べる騎士団長を立てるべく遜ることは以前から変わらない。あくまで宰相として関わりプライド様方の為ならばそれなりに圧力を与えたこともあるが、……アーサー殿のお父上と思うとどうしても。

アーサー殿がこの世に生を受けたのも彼のお陰だと思うと、騎士団長という立場を覗いても軽くは見られない。


「頂いた件については私から陛下にも御報告しておきます。流石騎士団長、相も変わらず見事な手腕です」

「恐れ入ります」

そう言って頭を下げる騎士団長は、やはり昔と変わらず優秀だ。

この数年で騎士団が力をつけ規模を拡大させたのも彼の功績に違いないだろう。騎士団が民から憧れの的であることは昔からだが、その騎士団からの支持を一身に受ける彼は貴重な人材だ。

愛想や社交に関しては副団長の方が突出しているようだが、それでも彼も人となりと懐も広い。既に何度か圧力をかけたことのある私にも、こうして変わらず友好的に接してくれるのだから。恐らく、第三者から見ればアルバートよりは社交に向いているだろう。


「潜入視察の方も残すところ三日です。そちらの方もどうぞ宜しくお願い致します」

「はい。……未だ、プライド様の仰る件の生徒については見つけられずと近衛騎士からは聞き及んでおります」

声を潜め険しく眉をつり上げる騎士団長に、私も小さく肩を竦める。

プライド様の予知。学校の根本を変えかねない一件については手も打ち終えた。

お陰で影響が広まる前に理事長を立て直すことができた。開校初日と比べれば教師の負担も激減したことは現理事長からも、そして講師として潜入中のカラム隊長からも報告は受けている。

しかし、あの御方のもう一つの目的である生徒はまだ見つかっていない。中等部に的を絞れたのは幸いだが、未だに記憶を彷彿をさせるものはいないらしい。


「予知とはいっても、時期は未定ですから。入学希望者もまだ増えている最中ですし……、最悪の場合はまた機会を見て探りに入るしかありませんね」

「その際もやはり今回のように潜入を……?」

「どうでしょう。プライド様のご意志にもよりますが。どちらにせよ、今回の極秘視察は有意義なものとして陛下も殿下も一目置かれております」

そこを付けば再度潜入視察も不可能ではないだろう。

しかし、中等部に絞れたのならば生徒としての潜入以外にも方法はある。創設者としても堂々と中等部へ定期的に訪問すれば良い。

プライド様は城下へ降りることも制限されている身の上だが、創設者としての公務であれば問題ない。どちらにせよ今度も同じような御苦労はおかけするでしょうと可能性を提示すれば、騎士団長も僅かに眉間を狭めながら頷かれた。「承知致しました」の声も先ほどより重々しい。


「お手数をお掛け致します。……あの御方の性分でして。プライド様は民を捨て置けないのですよ」

「存じております……」

そう言って深く長い溜息を吐かれる騎士団長は、今日一番の鉛のような重い声だった。

私よりも前からプライド様と実質的に親交を持たれていた彼には不要だっただろうと改めながら、私はそのまま学校警備に関して話を進める。

変わらず学校の厳重警備は崩さないこと。三日後にはセドリック王弟の体験入学を区切りに守衛に騎士を置くこともなくなるが、学校側からの要請で引き続き騎士を講師として派遣して欲しい旨を告げる。

前者は真っ直ぐに頷かれたが、後者に関しては騎士団長もすぐには頷かれなかった。当然だ、あくまで騎士の本分は講師ではない。しかも現在の講師を担うのは三番隊の隊長であり、プライド様の近衛騎士だ。


「もちろん、講師も守衛の時のように交代制で構いません。お手すきであれば新兵であっても問題はないかと」

「いえ、新兵は本隊騎士となるべく訓練がありますので。交代制で宜しければ本隊から派遣させて頂きます。……流石に隊長格の派遣は難しいですが」

充分です。笑みと共に返しながら、やはり彼にもカラム隊長は手放しがたいらしいと判断する。

騎士団演習場の門兵や警備の騎士と同じように交代制であれば騎士一人が担わずに済むが、それでも隊長格の立場は重い。近衛騎士として担わす体制を作るのにも当時時間を要したのだから。

一先ず騎士団長からも無事了承を得たところで胸を撫で下ろす。宰相として聞くべきことと打ち合わせはこれで全てだ。

カップを指にかけ、一口味わってから騎士団長へ目を向ければ私からの退室許可を求めるように見返された。

あくまで宰相である私の方が立場は上。そうやって真っ直ぐ私を見返す眼差しはやはりアーサー殿に似ている。

彼の言いたいことを知りながらも、敢えて私は柔らかく次の話題を投げかけた。


「……そうそう、ところで噂を耳にしまして。先日行われたセドリック王弟の夜会、なんでもプライド様とティアラ様の装飾を仕立てられたのはクラーク副団長の妹君とか」

ぴくり、と。微弱にだが騎士団長の肩が揺れる。

私の言いたいことを早くも察したように表情を固める彼に、あくまで私は笑みだけを浮かべてみせた。

実際は噂というほど広まっているわけではない。あくまで私が偶然耳聡く副団長とプライド様とのやりとりを聞いていただけだ。あの夜会で事実を知ったのは当事者達以外は私くらいなものだろう。

何所でそれを、と出所を探る騎士団長に「小耳に」とだけ返す。別段広まってはいないと示すべく「私ぐらいのものです」とだけ続けた。


「騎士団長は、副団長の妹君のこともご存じだったのでしょうか?プライド様の極秘視察の件では何も仰られなかったもので」

「極個人的なことなので。報告の必要はないと私が判断致しました」

まさか副団長の妹君が学内に紛れ込んでいたとは。

教師講師の採用に目を通した私だが、ネル・ダーウィンが副団長の妹とは知らなかった。珍しくもない家名に、彼女自身騎士団との繋がりなど一つも仄めかさなかった。騎士団が身内にいると話せばその方が有利に採用へ運んだにも関わらずだ。

実際、彼女の技量と人格が優れていた為採用とはなった。しかし、プライド様を生徒として隠さなければならなかった時点で副団長の妹という存在は少々採用を考えたかもしれない。

一般の講師生徒よりも、身内である副団長からプライド様の話を聞いていてもおかしくない。しかも騎士団長と親交も深いらしい副団長の妹では、アーサー殿の正体がひと目で気付かれた可能性もある。それを鑑みれば、少なくともプライド様の潜入視察中はネル・ダーウィンの採用も見送った可能性がある。

結果としてプライド様のお気に召す優秀な刺繍職人を得たから良いが、……見事に隠し通されたものだと思う。やはり彼は優秀だ。私のみならずステイル様やアーサー殿にすら気取られなかったのだから。


それが何か、と今もしらを切る騎士団長に私も追求はしない。

恐らく実際はその問題も鑑みた上で、彼はネル殿と副団長のことを庇われたのだろう。お二人の為か、それとも〝プライド様であれば〟万が一の場合もと信用して下さった結果か。そういう性格がまた騎士達から人望を受ける要因の一つだろう。

「いえなんでも」とそう短く返しながら、私は彼へ軽くだけ首を傾ける。


「ただ、今度是非私も仕立てて頂きたいものだと思いまして。我が妻も娘も喜ぶでしょうから、是非にと。私もプライド様を通し依頼させて頂くつもりです。宜しければ騎士団長から副団長にもお伝え頂ければと」

「私やクラークに許可を取る必要はございません。あくまで決定権はネルにあります」

「勿論、ご挨拶程度です。ネル殿にまでお伝え頂く必要はありません。いかがですか?騎士団長も奥様宛てにドレス用の刺繍を頼まれてみては。折角お知り合いなのですし」

「……そうですね。生憎、我が家ではドレスを着る機会など滅多にありませんが」

「愛するご主人に披露し、愛する妻の輝かしい姿を目にするだけで充分に意味を成すと思いますがねぇ」

ン゛、とそこで騎士団長の口が一度閉ざされた。

顔中の筋肉に力が入った様子の彼に、笑いが音になりそうになりながら喉で止める。

機会さえ欲しければ騎士団長である彼は貴族に来賓として招かれることもあるだろうに。聖騎士となられたアーサー殿で再び注目を浴びていれば余計にだ。

しかしどちらも揃ってなかなかそういったパーティーの招待を断るところは、流石親子だと思う。


「今度、私からも夜会にお招きしましょうか。アーサー殿も是非ご一緒に」

「いえ、妻も息子もあまりそういった場は不得意なので。………………ご助言の方、感謝致します」

そう言ってまた深々と頭を下げられた騎士団長は、心なしか先ほどよりも血色が良い。


やはりそういうところもアーサー殿のお父上なのだと思いながら、私は退室の許可で彼との話を締めくくった。


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