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〈コミカライズ3巻発売前‼︎・感謝話〉現代王女は潜み、

コミカライズ3巻発売記念。本編と一切関係はありません。


IFストーリー。

〝キミヒカの舞台が、現代学園物風だった場合〟


※あくまでIFです。

登場人物達は本編と同じような経過を経て同じような関係性を築いていますが、一部呼び方を含む関係性や親密性が本編と異なります。

本編で描かれる登場人物達の関係性は、あくまで本編の世界と舞台だからこそ成り立っているという作者の解釈です。

友人、師弟、主従、恋愛等においても本編と全く同じ感情の種類や強さとは限りません。


※現代をモデルにした、和洋折衷の世界観です。

特殊能力は存在せず、日本をベースに王族・騎士が存在します。年齢も違います。


※時間軸は第一作目解決後です。


※あくまでIFです。

簡単に現パロの感覚でお楽しみ下さい。


「こっち!こっちですよお姉様っ!」


暗く沈んだ人通りの少ない道で、少女はぱたぱたと足も胸を弾ませ急ぐ。

帽子を被り、細い首を厚いストールで覆う彼女は人混みの中では比較目立たない格好だ。同性である他の女性が遥かに煌びやかな衣装に身を包み歩く中、輝く金色の髪も整った愛らしい顔立ちも今は目立たない。

行き歩く人々の密集地手前で立ち止まり、振り返り手招きを繰り返す。そんな彼女に、後続する深紅の王女も手を振り返した。心配する兄が少しだけ早足で妹を追う中、深紅の王女の背後には高身長の青年がぴったりと控えたまま付いている。


「離れるなと言っているだろう。はぐれたらどうする」

「だってこんなに出店がたくさん並んでいるんだものっ!お姉様っ!アーサーもこっち向いてください!」

撮りますよー!と声を掛け、パシャリと慣れた手つきでスマホで自撮りをするティアラは怒られても今はなかなか反省しない。それよりも今この四人でここに居ることが嬉しくて仕方がない。

あまりにも心の準備もなくスマホをかざすティアラに、視線だけは合わせられたステイルと違い、追いかけるプライドとアーサーはスマホのカメラ位置を間違え視線がずれた。しかし結果撮れた写真へ誰も気にしない。既にここに到着するまでも何度もティアラは同じように記念撮っている。今更一枚二枚視線が外れていても目を瞑っていてもそれはそれで良いかと全員諦めている。


「私っ!ずっと来てみたくって憧れてて‼︎しかもこんな格好で思い切り歩き回れるなんて夢のようで‼︎」

「はしゃぎまわる為の格好じゃないぞ。あまり目立ちすぎる行動はしないように気を付けろ」

まったく、と。いつも以上に本能のまま飛び跳ねる十五歳の妹の腕を掴み、彼女の被っていた帽子を深く被せ直す。

自分の手でやっと確保できたことに一息吐くステイルだが、それでもティアラの跳ねる欲求までは止められない。こんなことになるのなら長いスカートを履かせるか、いっそ別の和服にすべきだっただろうかと兄は考える。

いつもは少女らしい格好を普段着とするティアラだが、今日は暗色のコートやズボンで機動性に優れている。「おまたせ」と寒さに両手へ息を吐きかける姉も、そしてステイル自身も同じく暗色のコートとズボンだ。アーサーだけがいつもと変わらない普段着のコートにパーカーのフードだけを被っている。


「ティ……あー。取り敢えずンなはしゃいで大丈夫か?お前一睡もしてねぇンだろ?」

「大丈夫ですっ!今夜の為にお昼にたっぷり仮眠を取りましたし珈琲も飲みました‼︎」

「正確には今は〝今夜〟ではなくもう〝明け方〟だ。日が昇っていないだけで新年だ」

「ふふっ、でも気持ちはわかるわ。私も昨日からパーティーよりもこっちの方が楽しみだったもの」

人混みの中でうっかり名前を呼ばないように口を一度結んだアーサー同様、三人も全く眠くない。

つい二時間前まで王族の年越しパーティーに出席し多忙を極めていた三人だが今は抜け出し、宿泊しているホテルの梺にある神社へ初詣に訪れていた。


最初に梺で行われる祭りと神社に気付き提案したのはステイルだったが、結果として一番気合いっぱいになったのはティアラだった。

今まで王族として年末年始のパーティーに追われていた彼女にとって、近くに祭りと神社が偶然あることははまさに奇跡だった。

年越しのパーティーを終え、次に行われる初日の出の観覧時間までの数時間。ほとんどの参加者は自室で休むかパーティー会場で寛いでいたが、王族三人は両親の許可を得て急ぎ目立たない服に着替え飛び出した。同じくパーティー出席者として家族ごと招待された騎士団長ロデリックの一人息子アーサーと共に。

決して目立たないように、名前もできる限り呼び合わないように、王族と知られたら騒ぎになる上に危険だと。そう強く言われたプライド達の側近として騎士部主将でもあるアーサーが同行を許されたが、離れた位置には他にも護衛として現職騎士も潜み見守っている。

危険が訪れない限りはプライド達へ接近すらしない為、傍で自然体で目立たず護衛できるアーサーは貴重な護衛でもあった。まだ未成年で準騎士ですらないアーサーだが、聖騎士として表彰もされた彼は今では学内だけではなく上流階級でも評判と信用が高い。


「アーサーは本当に良かったの?貴方もフードだけじゃなくてマスクくらいした方が良かったんじゃ……」

「いや俺はそこまで有名人じゃねぇですし……。もうネットでも下火で顔も殆ど出てないから平気っすよ」

「ジルベールが持てる手を全て尽くしてお前の事個人情報を公的以外焼き尽くしたからな」

「テメェもだろ」

聖騎士として一時期は時の人になったアーサーだが、今は都会のど真ん中を歩いていても整った容姿以外の理由では振り返られない。

探せばネットで画像が出てはくるが、当時悪目立ちや噂されることを望まない彼の意思を守るべくジルベールとステイルが即刻手を打った為、今では私生活に全く影響がない。情報操作して貰ったのはアーサーだけでなくプライドも同じだが、あの時のジルベールとステイルの徹底ぶりはすさまじかったなとプライドは思う。


自分の肩でステイルの肩を突くアーサーはそれでも気持ちだけでも目立たないよう、コート下のフードは被ったままだ。自分が目立つとは思わないが、それでもどこかで現役騎士が自分のことも見ているのかと思うと視線の感覚に落ち着かずフードを外せない。

妙にチクつく各方向を感じながら「行きますか」とプライドとティアラへと笑いかければ、今度は四人一丸となって人混みの中へと歩み出した。


「二人とも、あちらで甘酒が配っているそうですよ」

貰いましょうか、と。ティアラの名前を呼べない代わりに腕を引くステイルの言葉に、姉妹揃って目が輝いた。

まだ神社の敷地内に足を踏み入れたばかりにも関わらず、まるで出店の一つと言わんばかりに配られていた甘酒と大鍋に、それだけでプライドまでも声が弾む。飲みましょう‼︎と二人の声が綺麗に重なれば、早速四人で列に並び受け取った。


熱いから気を付けてね、と笑いかけてくる年配の女性も整った顔立ちの若者とは思うが、それ以上は気付かない。仲良く腕を組み合うステイルとティアラと、その背後に続く背の高い男女の四人は目こそ引くがただのグループデートだろうとしか思わない。

ありがとうございますと四人それぞれ言葉を返しながら紙コップを手に取れば、最初にプライドが舌を火傷した。

ふーふーと冷ます癖がついているティアラと違い、完全に油断した結果だった。アツアツの甘酒を口につけたステイルとアーサーも味わってから「熱いので気を付けて」と警告をしたが、既にプライドは舌先をヒリつかせた後だ。


「なにか冷たいもので冷やした方が良いですね……。出店にかき氷でもあれば」

「ごめんなさい……でも大したことないから飲み物くらいで大丈夫よ」

むしろこの寒さの中かき氷を食べきれる自信がない。そうステイルの提案に心の中で唱えながら、プライドは一度飲むのを中断しホッカイロ代わりに紙コップを両手に持った。

自分以外にも紙コップ片手に歩いている参拝客に紛れながら、高い視線から飲み物屋か自販機を探す。男性二人に守られる形で、か細いティアラも無事紙コップの水面を溢すことなくちびちびと飲み歩く。行き交う人と人の隙間を覗きながら、自分もまたプライドの舌を冷やせるものか美味しそうな食べ物を両方探す。


「!そこにタピオカ店ありますよ。これとかどうすか?」


1月31日にラス為コミカライズ3巻が発売致します…‼︎

今回の感謝話は、発売前日の1月30日まで連日続きます。

こうして続いておりますのも皆様のお陰です。本当にありがとうございます。

是非、お家にお迎え頂ければ幸いです。

各店舗様で特典もつき、今回はアニメイトだとステキなアクキーもついてきます。

どれも松浦ぶんこ先生による素敵なデザインです。


松浦ぶんこ先生のコミカライズはキャラのイラストも魅力的な上、漫画構成も何度見ても飽きない素晴らしい出来となっております…!

ジルベールの物語を、是非皆様もお楽しみ下さい。

是非皆様にもお楽しみ頂ければ幸いです。


本当に本当にありがとうございます。

どうぞこれからもラス為をよろしくお願い致します。


皆様に心からの感謝を。

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― 新着の感想 ―
[一言] コミカライズ3巻発売おめでとうございます。 (アニメイトのアクキーセット予約しました♪) 小説の本編·ifの更新もいつも楽しみにしています。 お身体に気を付けて、これからも頑張って下さい。
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