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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
頤使少女とショウシツ

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1301/2210

〈コミカライズ宣伝更新・感謝話〉現代王女は買う。

本編と一切関係はありません。


IFストーリー。

〝キミヒカの舞台が、現代学園物風だった場合〟


※あくまでIFです。

登場人物達は本編と同じような経過を経て同じような関係性を築いていますが、一部呼び方を含む関係性や親密性が本編と異なります。

本編で描かれる登場人物達の関係性は、あくまで本編の世界と舞台だからこそ成り立っているという作者の解釈です。

友人、師弟、主従、恋愛等においても本編と全く同じ感情の種類や強さとは限りません。


※現代をモデルにした、和洋折衷の世界観です。

特殊能力は存在せず、日本をベースに王族・騎士が存在します。年齢も違います。


※時間軸は第一作目解決後です。

※学年・進級等の時間経過も現状ありません。


※あくまでIFです。

※ 本編と一切関係はありません。

簡単に現パロの感覚でお楽しみ下さい。



「嬉しいわ、こうして四人で休みの日に遊べる日が増えて」


ふふっ、と嬉しさのあまり笑みを溢しながらプライドは三人へ笑い掛けた。

そうですねと言葉を返す彼らもそれぞれ気持ちは一緒だ。学校も冬休みとなり休みの日が多くなったことで、学校開始前の今日、互いに予定も合わせられた。王族であるプライド、ステイル、ティアラも公務などで多忙だったが、もう一人騎士部高等部部長もまた多忙であることに変わり無かった。


「すみません、毎回毎回俺が一番予定合わせられなくて」

「何言ってるの!むしろ私達の方が暫く部活に顔を出せなくてごめんなさい」

「お姉様も兄様もマネージャーと主務のお仕事お疲れ様でしたっ」

頭を掻きながら腰を低くするアーサーに、プライドに続いてティアラも応戦した。その隣ではステイルも無言のまま同意を示す頷きを落としている。

騎士部のマネージャー、主務に所属しているプライドとステイルだったが、ここ暫くは部にも顔を出せない日が多かった。両親に部活に所属することは許されているものの、本来の義務である王族の公務を優先しなければならない。その事情は例え説明されずとも国民全員がわかっていた。

特に、将来騎士団への入団を望む騎士部部員が理解しないわけがない。もともと王族が自分達のマネージャーや主務を担っていることに萎縮や疑問を抱いている部員も少なくないのだから。


「この前の初日の出もすっごく綺麗でしたね!」

「あの、アレなんすけど…そろそろ俺のは画像変えても大丈夫すか……?」

当時を思い出してぴょんぴょんその場で跳ねるティアラに、アーサーが僅かに声を抑える。

数日前四人で揃えたSNSのアカウント画像だが、流石にここ数日で騎士部のグループで浮き始めてしまった。新年初日をきっかけに王族二人と揃って騎士部主将まで同じアカウント画像であることに騎士部が気付かないわけがなかった。

「主将、まさかプライド様達と?」「大学部の先輩方にバレる前に変えた方が」「やっぱ親子で王族の警護についたとか」と、グループではなくアーサーの個人アカウントへメッセージの雨が絶えなかった。


見事に綺麗な初日の出をティアラが撮れたからと揃えた四人だったが、プライドやステイルはともかくアーサーにはなかなか肩身が狭くなる状況だった。

新学期になる前に変えれば良いと踏んだが、結局騎士部の活動や連絡事項であっさりと画像を揃えたことにもバレてしまった。プライド達が公務で不在中、騎士部初日には新年早々「部長あの画像は⁈」と問い詰められてしまったアーサーにとってはなるべく早く画像を変えたい。

そして折角四人で揃えた画像を、自分の独断で勝手に変えるのもアーサーには忍びなかった。


「!でしたら今日また新しいお写真撮れると良いですねっ」

景色の良いところ行きますか⁈と声を弾ませるティアラは、敢えて写真を変えることへ前向きに返す。

もともと恥ずかしがり屋のアーサーが一番にそう言うことは想像できていた。あの時の一日、寧ろほんの一時でもお揃いにしてくれただけで充分嬉しかった。

画像を変えることを、当時写真を共有してくれたティアラが肯定してくれたことにほっと息を吐くアーサーはそれでも「わりぃ」と一言謝った。本当なら自分も画像も気に入っている。揃えていたいとも、変えるのが残念な気持ちもあるが、やはり騎士部で王族と同じアカウント画像で発言することは厳しい。

しかしティアラはご機嫌の笑顔のまま「屋上に庭園があるそうですよっ」とすぐそこの大型商業施設を指差した。


「去年セフェクとケメトと一緒にヴァルのプレゼントを買いに行ったのもこちらなんですっ!色々あってすごく便利でした!」

流行りにも敏感なティアラは大概のお楽しみ設備は把握している。

自慢げにアーサーの腕を引き、笑い掛ける姿は恋人同士にも兄妹同士にも見えるとプライドもステイルも顔を見合わせては微笑ましく思う。ティアラに腕を引かれるアーサーの後を追う形で二人も建物の中へと入った。もともと今日は買い物の為に合わせた休日の為、大型商業施設はちょうど良い。

入ってすぐの入り口に置かれていた施設図をティアラが上から下まで確認し、折角なら買い物ついでに今の階から順々に上階へと回ろうと提案した。そのまま、あてもなく奥へと進んでいく。


「やっぱりどこも新年一色ね」

「あ!お姉様っ福袋がまだ売っています!」

どれか買ってみませんか⁈と、アーサーの腕を引きながら進むティアラが指差すのは店頭にどっしりと置かれた福袋の総列だった。

あまりの大きさとそして数に、〝まだ〟どころか充分過ぎるほど残っているなとプライドは半分苦く笑ってしまう。新年一番に並んで買うというのも楽しそうだとは思うが、こういう纏め売りのような楽しみは醍醐味でもある。クラスメイトのセドリックも、福袋を大量購入して楽しんだとついこの前SNSで上げていたと思い出す。鍵アカウントの為問題はないが、そうでなければ立場上炎上する購入数だなとひっそり心の中にしまった。

プライドもティアラも、そしてレオンもまた表向き用の公式アカウントではないプライベート用の鍵アカウントを所持はしている。一般人向けの商業施設で大量買いを楽しんだと記録したセドリックは、昔の黒歴史な自撮り写真を抜けばなかなか一般人と似た正月の楽しみ方が多かったなと思う。それに比べ、レオンに至れば高校生とは思えない海外旅行の数々のセレブっぷりだったのだから。


◯◯海が綺麗だった、珍しい食事だ、偶然祭りにと。そういった何気ない文章に反し、画像は全て世界美しい物写真集にしても良い被写体ばかりだった。……時たまに「友人と」の記載された画像にチラリと褐色肌の腕やレオンにしては妙に散らかったテーブルが料理と共に写っていることを除けば。ヴァルが女性だったら完全に匂わせとしてあれはあれで一般公開したら炎上案件だったとプライドは密かに思う。いっそ一緒に映れば普通なのに、写真嫌いなのかSNSへの警戒が強いのか、なかなかヴァルが性格上自分の顔を撮らせない結果だとも。

そうねどれ買おうかしらと、福袋の行列を眺めていれば他の並ぶ店もまた福袋を並べている。最初にティアラが見つけた福袋は衣服店のものだったが、並ぶ店のどこにも福袋を始めとする新年だからこその品が前へと出されていた。


「取り敢えず福袋を買うとしてもどの店にするかひと通り見てから選びましょう。プライドとティアラには俺からのお年玉代わりに一つ贈らせて下さい」

えっ良いの⁈ほんとに⁈と、プライドとティアラが同時に声を合わせる。

まさか最年長者である自分を置いてステイルが、とプライドは思うがしかし奢ってもらえるのは純粋に嬉しい。

ある程度の生活面での資金援助は王族である両親から受け取っているプライド達だが、それとは別に与えられている小遣いは父親の方針もあり健全な一定金額だ。その中で明らかに遊興費である福袋であれば、間違いなく自分達の財布の中での支払いになる。そんな限られた資金で貰える贈り物が嬉しいのも当然だった。


「じゃあ、ステイルの福袋は私が払うわね」

「!私も買います‼︎」

「でしたら、代わりに俺が買う福袋は二人で選んで頂けますか?」

自分で引くよりも良いものが当たりそうなので。そう笑いながら、ステイルも最初から決めていた返しで提案する。

ステイルからの頼みに、二人も「もちろん!」と力いっぱい同意した。ステイルなら文房具や雑貨のお店とか、兄様ですしお洒落に身につけられるアクセサリーのお店にと、姉妹揃って鼻息荒くアイディアを重ね合う。やはり店を全て見てから福袋は選ばなければと気合が入る。

がんばりましょう!とティアラがアーサーの腕から飛び移る勢いで今度はプライドの腕にがっしりと掴まれば、それだけでプライドの気合は更に高まった。そうね!と掴まってくれたティアラの腕を握り返しながら速足で歩み出す。

さっきまでは先導を歩いていたティアラとアーサーから、今はプライドとティアラにと入れ替わった。三姉弟妹の様子をいつも通り微笑ましく眺めていたアーサーもその背後に続けば、すぐにステイルが足並みを揃えて肩を並べる。


「お前には買ってやらないが」

「いらねぇよ」

フフンッと冗談めいた嫌味でからかえば、アーサーからも即答が返された。

自分で買える、とステイルの冗談と理解しながらも断るアーサーも折角なら自分もステイルと同じ店で買えば良いかと適当に考える。もともと騎士関連以外、私物にこれといって拘りがないアーサーは福袋についても特に買いたいジャンルはない。

騎士専門店系列があればちょっと見ようかな、と頭の隅で小さく考えるがそれはそれで自分の父親関連の品があったら視界に入れるのも気まずい。父親の性格上と、その父親の置いて目立つつもりもない副団長の意思により騎士団トップ揃ってそういった商品やメディア関連には極力関わっていないが、それでも取材等で顔出しした部分はある。

新聞や雑誌ならともかくそれ以外で顔を見るのは息子という立場から複雑なものがあった。しかも、自分はその父親と顔が似ていることも自覚している。

今は騎士団関連の商品も殆どが団章や証などの象徴を模した品や、現役・歴代騎士団の人間で広告塔に立っている者の品が多い為幸いにも目立たず済んでいる。学園では生徒全員にそういったメディア関連への活動は禁じられている為、アーサーも他の部員や騎士科生徒も騎士部としての取材しか受けたことはない。アーサー自身、そういった他の部員が取材に応じた雑誌は必ず買っている。

そして今後も、自分はできればあまりそういった目立つ露出はしたくないと思う。現役騎士団長子息という肩書に、目をギラギラさせて取材をしてきた女性記者の目が未だに忘れられない。

しかしそれはそれとして、騎士団関連グッズと自分や父親やクラーク関連以外の先人騎士や騎士の先輩達の商品は欲しいと思ってしまう。騎士部に所属こそしているアーサーだが、それ以前に彼も騎士への筋金入りのファンであることは変わらない。私物を全く持たないハリソンでさえも、騎士団関連グッズだけは学校繋がりで得ても一切破棄せず部屋の片隅に積んでいる。


「毎年ほんっと三が日過ぎても色々残ってンな……。これでも新年初日はもっとすげぇ並ぶンだろ?」

「人気な福袋関連は初日に売り切れている。こういう店のものとは別だ。騎士科でも並ぶ側はいるんじゃないのか」

「あー、アラン先輩はわりと毎年並んでるらしいけど」

毎年エリック先輩とか仲間誘って皆で買いに走ってるらしい、と。そう続けるアーサーの言葉にステイルも容易に想像できた。

騎士科の生徒とアランならば、あの熾烈な福袋戦争にも間違いなく戦い勝ち抜ける。そう理解しながらある意味そういう争奪戦自体を楽しんでいるのではないかと推理する。頭の中では開店直後に駆けるアランへ「走らないで下さい!」と注意する不憫な店員とそして止めながらも後を追いかけるエリック達がはっきりと想像できた。

きゃあきゃあと目の前で楽しそうに腕を組み合いながら横切る店の並びを餞別していくプライド達の背中を眺め、彼女達もテレビを前に「やってみたいわね」と話していたことを続けて思い出す。王族である自分達にああいった警護が極めて難しい人混みの戦場に突入は難しいが、それを考えればこうやって争奪戦後も福袋が大量に陳列されている大型商業施設はありがたいとも考える。


「‼︎お姉様っ!お姉様大変ですっ!あちらに!あちらに‼︎」

さっきまで和やかに店前を通り過ぎては首を右の店に左の店にと忙しかったティアラが、突如として声を上ずらせながら一方向へと指差した。

どの店で買うか、値段と福袋とを見比べながら考えていたプライドも妹からの急告に一気に思考がひき寄せられる。真っすぐと示される指先の向こうへと顔ごと向ければ、一つの衣服店が目に留まった。

ここまでも女性向けの衣服店はいくつも見ては目を奪われたプライドだが、その方向はひと際目を引いた。目を丸くさせながら、気付けば腕を引くティアラと足並みを合わせて駆けている。何か目星を見つけたらしい二人にステイルとアーサーも速足でそれに続けば、彼女達が何に目を引かれたかもすぐに察した。


雑貨と衣服の複合店という印象の店は、お世辞にも高級ブランドとは言い難い。

むしろ年頃の少女を標的層とした店は、ティアラには向いているがプライドには聊か年齢層が低いとも考えられる。しかしそれでも店頭にでかでかと「謹賀新年特別価格‼︎」と可愛らしい字で掲げた店は、既に大勢の少女や女性が足を運ばせていた。そして今、年頃の第二王女と高校生の第一王女もそこへと真っすぐ吸い込まれる。店頭の棚に目玉商品と言わんばかりに並べられた福袋と



干支である虎グッズの山々に。



可愛い……‼︎‼︎

目に付いた瞬間から反射的に思ったプライドは、未だにサンプルとして飾られた虎グッズの数々から目が離せない。

今年の干支だということを前出しに、福袋の底でサンプルとして並べられたのは「この中のどれかが入っています」という説明書きとそして可愛らしい虎を模したグッズの数々だった。

店内の方にも虎関連の靴下やTシャツ、ヘアバンドなどのヘアアレンジ系統の品も並んでいたがそれとは別に福袋に収められているのは単品では置かれていない商品でもある。それぞれシールでS・M・L・XLと書かれた福袋は、当然ながら中身は見えない。しかし、説明書きのボードの品揃えを見ればプライドとティアラにとっては全てが当たりのようなラインナップだった。


「見て下さいお姉様っ!こちらのパーカーは必ず入っているらしいですよっ!」

「そ、そうね……すごく可愛いわ……」

あとこのモコモコ手袋とかだらっとポーズのぬいぐるみとかペンケースとか!!!!

心の中で叫びながら、高校生にもなって大人げなく燥ぎそうな喉を必死に自制させる。可愛いティアラの影響か、未だにこういう可愛らしいものへのときめきが抜けきらないプライドにとって、福袋は色々な意味でお得の固まりだった。

少なくとも値段と照らし合わせても、この可愛いパーカーが確実に手に入るだけでお得は間違いない。パーカー一つにこの値段を払っても惜しくはないと本気で思う。耳付きフードに、更には裏起毛のモコモコ具合は今年の寒さにばっちりだった。

もしここで福袋を買った上で〝偶然〟可愛らしい虎グッズが手に入っても、当たっちゃったなら仕方ないと言い訳になるわよね……⁈と苦しいことまで考える。福袋という性質上、自分が特にときめいた虎グッズの他にも靴下やミニキーホルダーやタオルやハンカチやダボッとズボンやポーチや帽子など二十種類以上の中から別の品が入っている可能性の方が高い。しかし、どれが当たってもそれはそれでどれも可愛いし良いと思う。


「他にお姉様はどれが素敵だと思いますかっ?!」

「え、ええと……~っペンケースとか……あとこっちのぬいぐるみも可愛いわよね……?」

「私も思います‼︎あとこちらの手袋もお姉様にお似合いだと思いますよ!あとヘアバンドとか、あっちのシュシュやヘアゴムもすっごく可愛いと思いませんか⁈」

妹に正直に答えるまま、自然と耳が熱くなる。

今ここでティアラと一緒に買えば姉妹でお揃いの可愛いパーカーが手に入る。可愛いものが似合うティアラと違い、怖い顔であると思う自分はあまり同じ系統を変えなかったプライドにとって、一度で二度美味しいパーカーが目の前にいる。

だが、しかし、でも、この年にもなって……‼︎と、直後にプライドは一人表情筋に力を込めて葛藤を表に出した。

どちらにせよこの可愛いグッズを買いたいと思ってしまった事実は避けられない。ティアラはまだしも高校生になった自分がこれを……‼︎と、ステイルやアーサーもいる中で余計恥ずかしいと思う。更には虎グッズなど、今年の干支だから許されるだけで来年になれば普段使いするのにもちょっと恥ずかしくなるかもしれない。

雑貨ならば未だしも衣服は特に干支は、いや今年の干支でもそんな干支動物を高校生が着るのって……‼︎と恥ずかしさのあまり自分への駄目出しが次々を浮かんでいく。ここはティアラが買うのを応援して、自分は妹が買ったものを眺めて満足すれば良いと自分で自分に言い聞かせようとしたその時。


「三つ買いましょう」

「俺も。折角なンで」


え?!!?!と、プライドが店前にも関わらず素っ頓狂な声を上げてしまうのと、ティアラが「はいっ‼︎」と他の客に持っていかれる前にと残り3つだったLサイズ二つとMサイズSサイズを一つずつ計四つの福袋を両手で確保するのは殆ど同時だった。

ぐるんっ!と首を回して背後の二人へ振り返ったプライドに、ティアラが「お姉様っ!兄様のはどちらが良いと思いますかっ⁈」と二つを掲げながら尋ねる。爛々と目を輝かせながら尋ねるティアラに再び首を向け、まだ頭が整理できていないまま「こ、こっち……?」と指差せばすかさずアーサーが残った片方をティアラから受け取った。そのまま流れるように残ったLサイズとXLサイズを取り替える。男性サイズであればまだしも、女性向けであろう福袋のLサイズでは身体付きの良いアーサーでは肩幅が足りない可能性が高い。

ステイルもティアラから自分が買う三つを纏めて受け取ればそれを追うようにプライドの首の向きも二人へ戻った、


「あ、あの?二人も無理して買わなくても良いのよ⁇ほら、これって女の子向けの品が多いし……それに私まだ買うか悩」

「確かに女性向けもありますが、雑貨が多いですし新年らしい商品で良いのではないでしょうか。プライドこそ俺達に合わせて買う必要はありませんよ」

「‼︎お姉様も買いましょうっ!私っお姉様と一緒にこのパーカーお家で着たいですっ‼︎」

「えっと、もし女向けの品合ったらプライド様とティアラどっちかが引き取ってくれりゃあ俺も全然。まだ干支っぽいモン何も買ってなかったンで」

確実に自分達に気を遣ってくれたであろう男性二人にプライドもあわあわと唇を動かすが、既に返しを決めていた策士ステイルとティアラのゴリ押しに口を噤ませた。更にはアーサーからも「女向けは引き取ってくれれば」と言われれば、ここはもう自分も買って物々交換しかないと思う。その分の料金を払うと言ってもアーサーがそういった金銭を受け取ってくれない人だとよく知っている。


もともと福袋にそこまで思い入れのないアーサーにとって、プライドやティアラに欲しいものがあるなら協力したいと思うのは当然だった。

しかも、実際確かに可愛らしい女性向けの商品もあるがそれ以外にも普通に飾るか使えそうなものはある。明らかな女性向けや二人が欲しいものだけ受け取ってくれれば、自分は他は何でも気にしない。ぬいぐるみやキーホルダーの飾りの類も今日の記念だと思えば良いと思う。

更にステイルとティアラに至っては、去年もプライドがこの辺の次期に売られていた牛柄の可愛らしいパーカーを横切る度に目で追っては「見ていただけ」と首を振り最終的に店頭に並ばなくなってから静かに肩を落としていたのを知っている。

「……はい」と。三人からの恥ずかしいくらいのお気遣いと優しさに、プライドが真っ赤な顔で折れるのは、それから間もなくのことだった。


「どこかカフェで中身を確認しましょうか」

「その方が交換もできますし」

「!ちょうど屋上庭園にカフェがあった筈ですよっ!」

レジから帰ってきたステイルとアーサーが福袋を二個ずつ持ちながらスエスカレーターを指差せば、ティアラがきらりと目を輝かせた。

行きましょう!と、四つのお買い上げ済み福袋に胸を浮き立たせながらスキップ混じりにティアラがプライドの腕を引く。


緩みそうな唇をきゅっと内側から噛んだプライドも、少しスキップを混じえたくなった。



……




「おはようございますアーサー部長!」


おう、と。

新年、学校の初日。朝練習で登校したアーサーは早速部室で他の部員に声を掛けられる。クラスであれば敬語抜きの同級生も、部室を潜れば畏敬を込め敢えて敬語を投げかけてくる部員がいる。

ちょうど着替え中だったアーサーも、今は敬語を受けてもそこまで戸惑わない。練習用に着替えた後、脱いだ服を畳みながら他愛もない会話を交わすのは日課の一つでもある。アカウント画像を変えた途端、やっとそれ関連の弄りもなくなった。


「ンで、カラム先輩が出たその記事どこの雑誌─……?」

畳み終えた服を収納しロッカーを閉じる前に携帯を取ろうとしたところで、画面の通知に気が付いた。

ピカリと輝く携帯には、SNSの通知で見覚えのあるアカウントからのメッセージが上がっていた。〝昨日はお買い物にお付き合いして下さり…〟と途中文面まで見えたそれをアーサーは手に取り早速開く。

グループではなく、敢えて個人メッセージで送られてきたそれを何とも無しに開けば直後にはビクリッと肩が上下し固まった。




虎パーカーをお揃いで着た王族三姉弟妹の写真に。




〝昨日はお買い物にお付き合いして下さり、ありがとうございましたっ!〟

〝すっごく楽しかったです!〟

〝早速昨日三人で撮ったのでお礼にお送りしますねっ!〟

〝お姉様と兄様にはちゃんと許可貰ったので安心して下さい〟

その文面が、可愛らしい絵文字とスタンプと共に送られてきたが、すぐにはアーサーの目に通らなかった。それよりも遥かに画像の破壊力が凄まじい。

自撮りをした本人であろうティアラの満面の笑顔とピースに、その横には羞恥を隠すように眼鏡の黒縁を押さえたステイルとそしてはにかみながらも控えめなピースで笑い返すプライド。その三人が揃って耳のついた可愛らしい虎の顔フードまでしっかりと被っている。背景からして自宅のマンションだろうとアーサーも察しもついた。

姉妹に頼まれたと思えば、ステイルも部屋着ならお揃いで着ただろうと納得できる。しかし、まさか部屋着として楽しむと話していたそのパーカー姿が送られてくるとは思いもしなかった。


「?どうしました部長。なんか連絡でも」

「いや‼︎‼︎全ッッ然‼︎」

突然一時停止した自分へ首を捻る部員に、アーサーは慌てて電源ボタンごと押しブラックアウトさせる。

それでも落ち着かず背中にスマホを隠せば、額の汗が盛大に散った。「先行ってる‼︎」とロッカーの鍵を閉め、携帯と部活用の持参物だけ鷲掴み飛び出した。

お、おい。とあまりにも不審なアーサーに、同級生の口調に戻る部員は直後に彼が見ていたスマホの画像までは気付かなかった。それよりも遥かにアーサーにしては珍しい



虎柄のタオルを持って行ったことの方が遥かに気になって。



その後、合流したプライドとステイルが同じトラ柄のタオルを持参してしまったことでアーサーへ新たな話題が沸騰するのは間も無くのことだった。


コミックス3巻発売がもうすぐに迫っています。1月31日発売です。

本日ゼロサムオンラインより(https://online.ichijinsha.co.jp/zerosum/comic/rasutame)宣伝ショートが更新されております。

今回の話とも少しリンクしております。是非ともお楽しみ下さい。


来週月曜日からまた更新再開できると思います。

ご迷惑とご心配をお掛け致しました。暖かい御言葉本当にありがとうございました。

また来週からよろしくお願いします。

心からの感謝を。

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― 新着の感想 ―
[一言] IFストーリーの更新ありがとうございます。 新年らしく、また四人の仲の良さが微笑ましい素敵なお話でした。これから店頭で可愛い虎グッズを見かける度にプライド様たちの顔が思い浮かびそうです。 お…
感想一覧
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