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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
頤使少女とショウシツ

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そして改める。


「ンじゃあこれでもう用はねぇな?」


そう言って頭を掻きながらヴァルが立ち上がると、セフェクとケメトも目が覚めたようにソファーから起き上がった。

ティアラは良いの?と尋ねる彼女に、足下に零れた砂を操って荷袋に回収するヴァルは背負い直してから生返事を返した。明日からは気兼ねなくサボれるとわかったからか、さっきよりは機嫌も良さそうだ。


「今日はどこで食べますか⁈宿取りますか⁈」

「食ったら寮に帰れ」

「良いじゃない!どっかでご飯食べて寝れば‼︎どうせ明日も学校には来るんでしょ⁈」

「テメェらだとまた朝一で行かねぇといけねぇじゃねぇか」

何よ!と、セフェクが次の瞬間にはヴァルの腕を引っ張るようにしがみついた。

ヴァルは学校ではセフェクとケメトとの関係は最低限隠している。今日もきっとこの調子だと、明日はまた朝一で二人を学校に送ってからまた校舎裏に隠れることになるのかなと思う。相変わらず二人は寮生活も順調ながら、できる限りはヴァルとも一緒に居たいらしい。仲が良いようで私としては何よりだ。

折角重い腰を上げたヴァルだけれど、二人に左右から腕を引っ張られるからグラグラ揺れて前進できない。「私達いなかったらまたその辺で寝るでしょ⁈」「宿取りましょう‼︎」と言っているのを聞くと、ヴァルのことを心配してもあるようだけれども。


「どうせ早起きでもヴァルは授業中さぼってるなら良いじゃない!」

「ヴァル!僕また市場に行きたいです!広場で食べてその後いつもの宿に」

だああああああうるせぇ‼︎と、最終的にはヴァルが怒鳴った。

勝手にしろ、と吐き捨てながらズンズンと二人を引き摺る勢いで床を踏みしだくヴァルに、セフェクとケメトも嬉しそうに彼の腕に掴まった。不機嫌この上ないヴァルの代わりに「お邪魔しました!」「また今度!」と左右の二人が明るく挨拶をしてくれる。

ケメトが扉を開け、内側に開く扉を踵で蹴飛ばしながら去って行くヴァルにセフェクが「扉は手で‼︎」と窘めた。……うん、学校の教育もしっかり息づいている気がする。

手を振り、声をかけて三人を見送る為に立ち上がった私は、一息吐いてまたソファーに腰を下ろした。

ふぅ……と肩を降ろし、壁の時計を眺めながら取り敢えずは部屋に戻ろうかなと考える。セドリックに会うのはまた後日にしよう。


「私も今日は早めに休もうかしら……。明日はまた忙しくなるもの」

んんーー……と大きく伸びをして背もたれに背中を預ける。

自分の部屋に戻るべくゆっくりと立ち上がれば、アーサーとカラム隊長も「それが良いです」と同意してくれた。明日はまた色々と恐ろしくイベント目白押しだし、私も疲れは残さないようにしよう。…………本ッ当に色々あるもの。


取り敢えずレイからの協力合意こそ貰えたものの、まだ問題は残っている。その一番がライアー探しだ。

こればかりは私の前世知識も役には立たない。それに、レイは協力的になっても逃げ去った裏稼業達の動向も心配だ。ハリソン副隊長の話によると、私達が帰る頃にはかなり離れた場所にだけれど裏稼業の人間がいくらか戻ってきていたらしい。……それを私達が気付く前に一足先に拘束してくれたから本当に流石過ぎる。

衛兵が回収してたなら、それだけの数の裏稼業回収であの道も暫くは警戒も強まって衛兵の巡回も増えるだろう。捕まえた裏稼業も指名手配じゃなければ、今回は不審者程度の罪だからすぐに釈放されちゃうだろうし、レイの屋敷には衛兵も一人だけだから衛兵の警備が強まるのはこちらとしてもありがたい。彼が本気を出せば裏稼業どころか屋敷丸ごと消し炭にできるけれど、それをされると今度はレイが逮捕されかねない。


「すぐにライアーの手がかりが見つかると良いですね」

「予知した学校の生徒と並び、こちらも我々でできる限り協力させて頂きます」

アーサーとカラム隊長の心強い言葉に心からの笑顔でお礼を返す。

自室へと向かいながら、やっぱり今夜はもうステイルともティアラともすれ違わないなと思う。ステイルは明日も学校があるし無理しなければ良いのだけれど。

一番難航するであろうライアー探し。主人公のご都合主義展開な偶然イベント無しにどう見つけるか。明日レイから情報を得たら少しでも早く捜索を始めたい。

アンカーソンの余罪が調査されている間にレイがいつ行方を眩ませてしまうかわからない。今のところはやる気になってくれたけれど、既に彼は手を尽くしきった後だ。ゲームでも彼はアムレットに「情報を持ってやがったのはあの女だけだ」と言っていた。

つまりあと一年経ってもまだライアーの情報が何も手に入らなかったということになる。レイルートのバットエンドでもラスボスに全て奪われた上でライアーも見つからないのだから。全てを失い絶望した彼は、アムレットへ別れを告げた夜を最後に行方を眩ませてしまう。


「残りの人生全てをかけてでも、ライアーを見つけ出す」と言い残して。


……本当に、レイの覚悟は本物だ。

結局ハッピーエンドルートでさえ、ラスボスがライアーの居場所を知っているということが嘘だと発覚するまでアムレットよりもライアーの情報を選んだのだから。

レイの恩人であるライアー。レイは彼を見つけ出す為だけに生きてきた。そして、その固い意志をラスボスに利用されてしまう。

ライアーの居場所を知っている、会ったことがある。そう言ってライアーかレイしか知らない情報で照明したラスボスの言葉をレイは信じ、居場所を教えて貰う為に彼女の言う通りに貢ぎ続けてしまう。

侯爵家である父親の金で贅沢を叶え、従者であるファーナム兄弟を与え、彼女が欲しがったネイトの入学から生活の面倒まで補助し続け、彼女に自分と同等の学校での権威まで望む通りに与えた。その間も「ライアーは酷い状態だった」「助けを求めてる」「貴方に会わす顔がないって」とライアーが苦しんでいるとだけ彼女は囁き続けた。

日に日に偽りだった苦しむライアーの影に苛まれながらも、ラスボスに彼自身も逆らう事ができず、「私を満足させて」という抽象的過ぎる望みをそれでもずっと叶え続けようと努力してきた。そして最後には







学校理事長の椅子まで彼女に与えようとする。







第二作目の大筋ルート。そして結末にある学校の危機。私が母上に報告した「学校の根幹を揺るがす危機」そのものの正体がこれだ。現実ではラスボスに利用される前にこうして告発できたけれども。

学校での権威に酔った彼女は、高等部三年のレイに理事長の座をくれればライアーの居場所を教えると口ずさんだ。

そしてライアーの情報欲しさに学校理事長……つまり、学校の所有権を与えようとするレイを止めるのがアムレットと攻略対象者だ。折角の民の為の学校が永遠にラスボスの物になってしまう、そんなことはさせないとアムレットは攻略対象者と共にラスボスの嘘を暴き、譲渡契約書にサインする一歩手前でレイに告発する。


『彼女の話は全部嘘‼︎』と。


レイルートであれば主人公一人でその嘘を暴きレイのサインも暴走も止めるのだけれど、他の攻略対象者だと問答無用でラスボスはレイに焼き殺されるか攻略対象者に半殺しにされていた。

その後レイは騙されるところだったと感謝し、アムレットは攻略対象者と幸せな学校生活を送る。その幸せそうな主人公達の様子に前作主人公ティアラが物陰から祝福するような笑みを浮かべていたり、もうここは大丈夫ですね的な台詞でステイルが連れ帰ったりしていた気がするのだけれど……細かくは思い出せない。なんかよくある前攻略対象者の美味しいとこどりな雰囲気だった気がする。


他の攻略対象者ルートでは、レイがその後にどうなったかまでは描かれていなかった。

私もゲームでは全く気にしなかったけれど、学校を非公式な方法で手に入れようとしていたラスボスも大罪だけれど、レイの殺人も立派な犯罪だ。一部は正当防衛や現行犯逮捕で処理できなくもないけれど……どういう理由であれ譲渡しようとしたのもレイだし。

裁判になったらちょっと匙加減が難しい案件かもなぁとこの国の法律を知った今だから思う。

この現実では、もうレイにはこれ以上の罪は犯させたくない。その為にも絶対にライアーを見つけないと。……じゃないとレイはバットエンドと同じように行方を眩ましてしまう。そして最悪の場合は


ゲームのようにラスボスに利用だってされるかもしれない。


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