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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
私欲少女とさぼり魔

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Ⅱ206.私欲少女は立ち寄り、


「ジャック!今度は高等部を運んだってマジかよ⁈一人で⁉︎一人でか⁈」

「噂の高等部の不良を追い払ってるのってやっぱりジャックなんじゃッ」

「三人とも休み時間になると毎回出てどこか行ってるよね!」

「ジャック、フィリップ、ジャンヌ。話しは職員室で聞くのでこのまま付いて来なさい」


はい、と。

四限終了後、放課後になってすぐ私達は生徒達に取り囲まれ、そして教師のロバート先生に回収された。

四限前にヴァルがボコボコにした不良生徒をアーサーが医務室まで運び、それから私達は教室に戻った。既に授業が始まっていたけれど、ステイルが窓から校舎裏で高等部生徒が気を失っているのを発見して医務室に運んだと説明してくれた。お陰で彼の計算通りお咎めは無しで済んだ。……代わりに大注目は受けてしまったけれども。


更には教師からも授業が終わったら詳しい話を聞かせるようにと言われてしまい、授業参加は許されたものの現在に至る。

まぁ教師側からすれば、昨日から勃発している落とし穴事件と関連していると考えて当然だ。そして生徒達からしても高等部二人をアーサーが運んだというのは、以前の身体能力お披露目に続いて当然のことながら興味の対象だった。アーサーが高等部を倒したという尾ひれが若干早々につきそうだなと考えれば私まで自然と身体が落ち着かずに前屈みになってしまう。

教師に呼ばれるままに席を立ちながら、私達の分荷物を持ってくれるアーサーは「本当にただ運んだだけですから‼︎」と身の潔白を声高に叫び、集う彼らを後にした。


「それにしてもなぁ……またお前達か…………」

教室を出たところで私達を待っていてくれたロバート先生の目が今回はちょっと冷ややかだった。

迷惑かけるなとかそういう嫌な眼差しというよりも「どうすればそうなるんだ」という気持ちをいっぱいに含んだ眼差しだ。自分の担任生徒が二回も問題に巻き込まれてしまえばそう思いたい気持ちもわかる。

職員室へ向けて私達に背中を返しながら歩くロバート先生に私達も続く。エリック副隊長をまた待たせてしまうことになると思うと今から気が重い。職員室に着くまでは何も言わなかったロバート先生に続き、私達も口は堅く結んだまま目配せだけしあった。あくまで通りかかりに倒れている生徒を救護しただけ。他は何も見ていないし知りもしないという体でいこうと言葉もなくお互いに意思を固める。

職員室に着くと、そのまま三人で中へ通された。失礼しますと挨拶をしながら、ロバート先生の席まで続く。私達以外にも自主的や呼び出されての生徒が何人かいて、また以前のように不用意な発言はしないようにしようと今から自分に言い聞かす。

自分の椅子に座り、身体ごと私達にむき直るロバート先生は肩を落とすように溜息を吐き私達を端から端まで確認した。


「……因みに、今回はまたジャンヌが狙われたわけじゃないか?」

やっぱりそうなるわよね……。

ロバート先生の言葉に既にある程度予想をついていた私は、心の中だけでそう呟く。以前も高等部の生徒に監禁されたことがある私がまた高等部生徒と接点ができていればそう思われるのも無理はない。

違いますと。一言ではっきり断った私に一応は納得してくれた先生は、そのままいくつか発見した時の状況を私達に質問する。どれくらいの時間で、周りに人はいなかったか、その高等部生徒とは顔見知りか、三人とも何かされなかったか、怪しい人間は見なかったか、と。主にステイルが上手く受け答えをして流してくれたお陰で今回は何も怪しまれずに済んだ。……アーサーが高等部生徒を一人で運んだという一点にだけは、二回確認を取られてしまったけれども。

恐らく調書とは関係なく、純粋に先生が信じられなかっただけだろう。最終的に「よしわかった」と納得してくれたロバート先生は、ステイルとアーサーを順番に見比べた後ゆっくりと私へ視線を投げた。


「ジャンヌ。……もうこの二人のどっちかで良いんじゃないか?」


『二人は私の好みじゃありません』

以前にロバート先生と話した内容を思い出し、嫌でも言わんとしていることがわかってしまう。

苦笑した顔のまま何ともいえずに表情だけで返すと、先生からは諦めたような溜息だけが返ってきた。本当にご心労をお掛けして申し訳ない。ステイルとアーサーも流石にこの言葉には意図がわからないように首を傾ける中、私だけが肩の幅を狭めて小さくなってしまう。

少なくともその関連の会話はもうしないと決めていた。前回の反省を生かして恋愛脳のふりをするのは必要最低限にしたい。

あはは……、と沈黙に堪えかねて枯れた笑いが細く零れる中、ロバート先生は「まぁ、お前の問題だから先生はとやかく言えないが」と調書を取った紙を机の上で纏めた。そして気付いたように、説明を求める視線だけを注ぐステイルとアーサーへ一度目を合わせると「あーまぁ、話しはわかった」と言葉を濁し話の軌道を戻した。


「実はここだけの話、お前達が見つけた以外にも既に今日だけに二件も同じようなことがあったんだ。教師や守衛以外で見つけたのはお前達が初めてだが……また今回は特に手酷くやられていたなぁ」

ハァ……、と溜息と一緒に肩を落とすロバート先生は鉛でも背負っているかのようだった。

お疲れ様です、と言いたい気持ちをぐっと抑えて私は相づちを打つ。というか、今回は私達が中断させたのに特に手酷くやられていたってどういうことだろう。

三件目になってエスカレートしてきたとかだったら流石にまずい。本格的にヴァルへ許可を改める必要も出てくる。

そんなことを考えていると、不意にロバート先生の話を聞いていた別の教師が「ついさっきもう一件見つかったので、これで四件目です」と声を掛けてきた。どうやら私達と解散した後にまた一件引っ立てたらしい。それを聞いたロバート先生が両手で頭をガシガシ掻いた。大分疲労に響いている。

すると、その反応を見かねてか、また別の先生が労うように落ち着かせた声で優しく声を掛けてきた。


「ですが、中等部以下の生徒の問題は逆になくなりましたよね」

ああ、まぁ……と、生徒である私達の前だからか言葉を伏せて話すロバート先生達に、恐らくカラム隊長が話していた途中早退や不登校の話だろうなと考える。

その犯人でもある高等部の不良をヴァルが標的にしているお陰で、結果としては善良な生徒の被害は防げている。

そのことに気付かれないように音を出さずに息を吐き出した私は、すぐに口の中を飲み込んだ。

けれどその後にはまた別の教師から「標的が変わっただけではありませんか?」と不穏なイベントフラグを立たされた。実際は犯人が標的にされただけの話しなのだけれども、と心の中で言いながら表情筋に意識を込めて平静を取り繕う。

するとステイルが試すように「犯人に目星はついていないのですか」と尋ねだした。

あくまで一般生徒としての問いかけだ。それにロバート先生は首を横に振、……ろうとして口端を引き攣らせた。彼だけではない、ロバート先生にだけ投げかけたステイルの質問に、話に加わっていた教師全員が口を引き攣らせたまま言葉を止めてしまった。

私達の周囲だけが沈黙するという異様な空気に、前に結んだ手を何度も組み直してしまう。


「……と、りあえず中等部にはいない。良いか?取り敢えずお前達はできる限り高等部には近付くな。そしてジャンヌ、お前は問題に好かれているから絶対にだ。特に目つきが鋭くて背がでかくて牙みたいな歯を剥いて威嚇してくる明らかに凶悪な上級生が見えたらすぐに逃げろ。良いな?」

以上だ。と、妙な具体的な忠告の後は力技で締めくくられる。

一番特徴の肌のことこそ指摘しなかったけれど、明らかに彼のことだなと理解する。ステイルとアーサーもわかっただろう。

まぁ、突然授業に出なくなったと思ったらその途端高等部がバッタバッタと倒されていったら教師間のブラックリストにも入るだろう。そして実際当たらずとも遠からずだ。

前のめりに私達へ忠告してくれた先生は、ぐっと背中を反らすようにして座り直すと「もう帰っていいぞ」と許可してくれた。運んだアーサーを労った後に、「お前達が無事で良かった」と言ってくれるこの先生は本当にいい人だなと思う。直後には「ロバート先生、先日お願いした学園長への報告書は」と声を掛けられた途端にまたぐんなりと疲れた顔をしていたのが本当に心配になるくらいに。


「……全部が片付いたら、教師の給与制度も見直しましょうか……」

ぼそり、と声を極限まで潜めて言ってくれるステイルに、廊下に出た私も強く頷いた。

前世でもSNSとかテレビとかで知っていたことだけれど、本当に教師の仕事はハードワーク過ぎるなと思う。この世界にも家庭教師とか教授系の先生は元々いたけれど、学校の先生というのもまた疲労が溜まる仕事だ。一気に数百人規模の生徒を見て把握して援助しなければならないのだから。

絶対にこれからもっと働きやすい環境にしようと思いながら、よたよたと私達は帰宅すべく昇降口へと向かった。職員室にもカラム隊長はいなかったし、多分今頃そそくさと寮から出ている彼を見送ってくれている頃だろう。

昇降口を出て、エリック副隊長を待たせないようにと足早に校門へ向かう。きっといつものようにセドリックやアラン隊長のことも待たせてしまっている筈だ。私達が遅くなると同時に芋づる式で何人もの人を待たせることになってしまうから、考えれば考えるほどつい足を速めてしまう。しかもその内の一人は王弟だ。

校門まで行けばアラン隊長や守衛の騎士、他にも王族相手に迎えで堂々と護衛が付いてくれているから大丈夫だと思うけれど、毎回あれだけ目立つセドリックを生徒が必ず通る場所に立たせてしまっている。

寄り道もなく真っ直ぐと校門まで近付けば、校門の向こうでかなりの生徒が密集しているのが見えた。もしかしてセドリックが何かと思いながら目を凝らして近付いてみると、……違った。

セドリック本人は、校門の邪魔にならないように端の方でいつものように安全確認兼警備に回るハリソン副隊長を待つという体でアラン隊長と並んでいる。私が視界に捉えられる距離まで来れば、ハリソン副隊長も高速の足で一足以上早くセドリック達と合流を果たした。そして校門前で待っていてくれるエリック副隊長は



「それで!ジャックって本当に山で鍛えてたんですか⁈」

「騎士の訓練受ければあれだけ跳べるようになりますか?!」

「ジャンヌってジャックとフィリップとは……‼︎」

「ジャックは騎士になれると思いますか⁈」



……ものすっごく、集われていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] まさかりかついで、山で熊と修行して…(笑)伝説が出来上がりそうです(笑)
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