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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
私欲少女とさぼり魔

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そして掘り出す。


「なんだぁ?まだ出るじゃねぇか。〝俺様の〟落とし穴に嵌まりやがった時はもっと元気だったがもう草臥れたか?」


落とし穴の縁まで立ち、そこで寛ぐように足を崩す。

敢えて自分の仕業だと仄めかす男は、穴から彼らを覗き込むこともなく声だけ投げた。穴の底で地上を見上げる生徒二人は息を飲んだ直後には「お前がやったのか!!」と声を荒げる。

全く聞き覚えのないその声に、何故自分達が狙われたのかもわからない。ただ、男の言いっぷりからして確実に自分達が落ちた瞬間から今の今まで放置して高見の見物をしていたことだけを確信する。


「どういうつもりだ?!俺達に何の恨みがある!?」

「こんなことしてタダで済むと思うなよ⁈」

事故ではなく、陥れられたのだという事実に先ほどの焦燥から僅かに畏れと殺意が滲んでいった。突然足を一歩踏み出した途端に自分達の足下が崩れ落ち、そのまま地面の底へと閉じ込められた彼らからすれば明らかに地上にいるその男は敵だった。

しかし、彼らの怒鳴り声を聞いても男は組んだ足の膝で頬杖を付いたままニヤニヤと不快な笑みを音もなく広げていくだけだ。いくらどう脅そうとも、絶対的優勢なのが自分であることは変わらない。負け犬の遠吠えでしかないそれはただただ愉快なだけだった。更に、彼らの言い分を聞けばいっそ懐かしい台詞とすら思えてくる。

試しに突いてみるかと、水面に小石を投げる感覚で言葉を放る。


「〝何の恨み〟に、〝こんなことして〟ねぇ?ヒャハハッ!そりゃあテメェらに絡まれたガキ共の台詞じゃねぇか」

その言葉に、彼らは今度こそ言葉を失った。自分達が何故こんな目にあっているのかをやっと理解する。

穴を覗かずとも彼らがどんな顔をしているかは男にも予想がついた。やっている本人がよく言うもんだと、下級層の果てや裏通りではよくいた小者の典型だった。昔はこういうイキまいた連中が下手をして格上に半殺しにされているのを見ては楽しんだものだと思い出す。


「まぁ、テメェらが落とし穴に〝ちょうど〟揃って落ちてくれたのは全くの〝偶然〟だが。俺も〝苦労して掘った〟甲斐があったってもんだぜ」

ケラケラと聞こえるように嘲笑いながらも、彼らが動揺している間にといけしゃあしゃあと嘘ばかりを並べ立てる。

実際はちょうどでも偶然でもない。そして男本人が汗水垂らして誰が落ちてくれるかもわからない落とし穴を事前に掘るわけもなかった。しかし、何の否定材料も持たない穴の底の彼らはただ正直にそれを鵜呑みにすることしかできない。


「手っ取り早く聞くぜぇ?テメェら、あのガキ共になにを聞いてやがった?誰から差し向けられた?あとー、……ああ?そうだ明らかに下級層のガキばっか狙うのもついでに聞かせてもらおうか」

必要なデマだけ流せば後はどうでも良い。男はステイルとジルベールからの指示通りの問いを彼らに投げていく。

明らかに自分達のことを調べているのだとわかる男の問いに、彼らは互いに驚愕一色になった顔を見合わせた。潜ませた声で「だれだ」「まずい」と言い合ったが、どうするべきかの結論までは導かれない。

男は明らかに自分達の行いをしっている。つまり、自分達は二人揃って釣り糸に引っかかったのだと理解する。


昼休み。彼らは〝いつものように〟下級層の生徒を狙っては他の生徒から離れたところを掴まえ、この校舎裏へと引きずり込んだ。他の生徒に付けられていないことを確認した彼らは怯える生徒へあとはいつものように尋問し、脅し、口止めをするだけの作業だった。目をつけた下級層の生徒を壁際に追い立て……た、ところで急に足下が崩れ落ちた。

まるで突然地面がめり込みだしたような感覚にふらつけば、次の瞬間には落下した衝撃で目を回し、自分達が連れ込んだ生徒は訳も分からないまま逃げるだけだった。

穴の底も確認せずに一目散した生徒は、まさか自分達を突然連れ込もうとした高等部の生徒が自力では這い上がれないほどの深さへ落ちたとは考えもしない。もともと治安の悪い下級層で生きてきた彼らには、自分達に悪意を向けてきた相手には深入りせず〝今のうち逃げよう〟という回避癖の方が強かった。基本的に関係が築かれていない相手に対しては〝見て見ぬふり〟〝なかったことにして忘れる〟が生きていく上での染みついた常識だ。

そしてそれを、不良生徒を地の底にたたき落とした張本人である男……ヴァルもよく知っていた。

その後も連れ込まれた生徒が去ってすぐではなく、昼休みが終わり、授業が始まるまで放置した。そして彼らが助けを求めて狼狽する姿を校舎裏の壁上で文字通り高見の見物をしていた彼はとうとう本題へと移っていた。


「知らねぇってこたぁねぇだろ?それとも言えねぇかあ?なら、気が変わるまで待ってやっても構わねぇぜ?」

プライドからいくつかの〝許可〟を受けている彼は、久々の感覚を思い出し上機嫌だった。

いままで隷属の契約で許されなかった禁忌を、どうせできるならと敢えて楽しむ。いつもの彼ならば決して他者を落とし穴に嵌めることも、こうして穴の中に閉じ込めることもできはしない。だからこそ、今のこれはまさに彼にとっての〝お楽しみ〟だった。


「ただし。……簡単に掘れちまった程度の地盤だ。素人作りの穴なんざいつ崩れるかもしれねぇが。ま、生き埋めになった時は運が悪かったと思って諦めるんだなあ?」

ヒャハハハハッ!!とまた楽しそうな高笑いが高等部生徒の頭上から降り注いだ。

ヴァルの言葉に彼らの顔色も目に見えて青くなっていく。今、頭上にいる男は本気で自分達の状況を楽しんでいる。下手をすれば本気で穴を埋めるか、もしくはこのまま放置して去っていくこともあり得る。口を割った時の報復も怖いが、それ以上にこのままでは自分達の命が危ない。

言うしかねぇんじゃ、待てまだ早い、と潜ませ合った声で意見が二つに割れる中、彼らが何か意見が分かれていることを耳で察すヴァルは思いついたように穴の縁から足で砂を落とした。

パララッ、と砂が頭の上に振ってきたことに、生徒の一人が張り詰めた糸を突かれたように声を上げる。うああ⁈と間抜けな声を上げた瞬間、ヴァルは今度こそゲラゲラと大笑いした。楽しいねぇ?と穴の底へ投げかけながら、蟻の巣に水を注ぐ感覚で彼らを弄る。


「なぁに、こっちは調べてるだけだ。情報を漏らしたところでテメェらが二度とプラデストに来なけりゃあ漏洩まではバレやしねぇ。安い金とテメェの命なんざ計るまでもねぇだろ」

暗に〝二度と学校の敷居を跨ぐな〟〝情報を漏らした事実ごと消え失せろ〟と告げながら、さも良案を思いついたように投げてみせる。

もちろん彼らもヴァルの魂胆はよくわかっている。だからこそ、ここで易々と彼の誘いに乗ることは躊躇われた。何処の誰かも、生徒か教師かもわからない男に自分達が上手いようにされたなど恥でしかない。ここから出たら絶対にあの男を八つ裂きにしてやると思いながら、歯を食いしばった。が、


パチンッ、と。


「?!うあッ……ッぶわっ!!ああ嘘だろ?!」

うわああああ?!と、指を弾く音がした直後に彼らは揃って考える余裕もないほどに声を上げることになる。

ヴァルの特殊能力により、落とし穴の内壁が突如として表面から崩れだした。パキパキ、バララララッ……と表面だけではあるが逃げ場のない穴の底へ土が注がれる感覚は彼らにとって想像を絶する恐怖だった。

崩れる、埋まる、死ぬ、とその言葉だけが何度も彼らの頭に降り注ぐ中、堪らず一人が「助けてくれ!!」と命乞いをした。

口を噤もうと思っていたもう一人も取り乱すままに「テメェわかってんだろ⁈本当に崩れるぞ‼︎」とヴァルが本気で殺すつもりはないという自信を胸に声を荒げる。だが、彼らのどちらの反応もヴァルにはただただ愉快でしかない。更に彼らが戸惑い、狼狽え、憤慨するのを期待し続ける。

「良いことを思いついた」と。さも、今考え至ったかのように謳い、褐色の指先でまた砂を穴に落とした。


「今から三分したら条件を変える。それまでに口を割らなかった場合は、テメェらのうちの〝どっちか〟で良い。穴の中で殺し合って生き残った方だけに聞いてやる」

よく考えりゃあ二人も要らねぇ、と笑い混じりに言う声にとうとう二人の顔色からは血色がなくなった。

今度はどちらも怒り出すどころか狼狽する余裕もなく、穴の底で崩れ落ちた。気のせいか酸素すら薄くなってきたのかと思うほどに息まで苦しくなった。あまりの状況に過呼吸になりかけていることすら自覚できない。

まさか校内で、しかも生徒を狙う側だった自分達がそんな悪魔の条件を強制されることになるなど思いもしなかった。裏家業に片足こそ浸けていた彼らだが、こんな殺され方をする覚悟などありはしない。そして何より、ちょっとした美味しい小遣い稼ぎ程度の感覚で受けた仕事の依頼人の為に、ここでまた耐えられるほどの覚悟も義理もない。



わかった、話す、全部言う、だから助けてくれと二人が揃って命乞いをしたのはヴァルが悪戯に「あと二分」というより前だった。



「…………へぇ?それで、その〝ライアー〟ってのは?」

先ほどまで言うのを躊躇っていたのが嘘のようにペラペラと知っている限りの情報を吐く二人の話を聞きながら、ヴァルはわりと楽な仕事だったと頭の隅で思う。

彼の役目はあくまで狙われる下級層生徒の守護と、不良生徒への妨害。そして出来ることならと更に注文づけられたのはその生徒が二度と他生徒に手出しさせないこと。そして、彼らの情報を聞き出すこと。

ちょっと穴に落として揺すっただけで簡単にべらべら話す彼らに、これなら他の連中も同じ手でいけるなと考える。

自分の姿は見せず、情報だけ吐かせ、そして情報流出した人間はバレる前に雇い主から逃げるのが定石だ。しかも彼らの正体を聞くと、余計に少しくらい手荒にしても問題ないなとヴァルは判断した。もう二度とこいつらは学校に近づけないようにしてやれば良いと、一人でニタリと笑った。


「おい!!全部言っただろ!!早く出してくれ!!」

情報を言い切った後もヴァルからの反応が全くないことに、しびれを切らす。

しかし、自分でそれを言った直後に彼らは後悔した。生き埋めにされる、殺し合いをさせられるという恐怖のあまり失念していた。順番を間違えたことに今気付く。

何故、自分達は〝穴から出される前に〟全てを話してしまったのかと。


「あー?そうだったなぁ?ならここで〝授業〟に出そびれたテメェらに俺様から一つイイコトを教えてやる」


ゾクッッと、不吉としか思えない投げかけに彼らは全身が震え上がった。

男が自分達と同じ高等部の人間か、それとも教師か部外者かと考える余裕もない。息をする仕方も忘れ、土の壁に爪を立て祈るように地上を仰ぐ。いま、少しでも不用意な発言をしたらそれこそが自分達の最後だと、身動ぎ一つせず投げられた言葉に聴覚を研ぎ澄ます。そして




「〝ガキ〟には一生関わるな」




パチンッ。

再び指が鳴った直後、またガタガタと穴の壁面が崩れだした。うわあああああと彼らが断末魔のような声を上げる中、上塗りするようにヒャハハハハッとヴァルの高笑いが響き、落とし穴から遠のいた。

騙された、利用された、嵌められたと理解も追いつかないほどに混沌とする穴を置き、ヴァルはその場をのんびり去った。授業中もサボることがプライドに許可された今、やっと面白くなってきたと思う。中途半端に足を踏み入れた人間が死を覚悟して後悔するのを眺めるのは彼にとって良い憂さ晴らしだった。


「楽しいねぇ?学校ってのも」


この上なく悪く笑んだ彼は、一人呟いてその場を去った。


……その後、宰相であるジルベールにより〝各授業終了後の見回り必須区域〟を指定されていた守衛が〝偶然〟穴の中で土まみれで気を失っていた生徒二名を発見するのは、三限終了から十三分後のことだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 捨てる神あれば拾う神あり と、思ったらどっちも同一人物だったw
[一言] ヴァルさんは趣味が悪いだけで、ハリソンふくたいちょーは忠犬なだけで二人ともちょっとおいたが過ぎるだけなんだー
[一言] ヴァル、悪いなぁ!(笑)痛快、痛快(笑) 本当に悪い奴は、穴の中にいる奴らですけどね。これを期に、堅実に生きて下さい。
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