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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
私欲少女とさぼり魔

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Ⅱ185.私欲少女は問いかける。


「なら、お父様達は今もそこで働いていらっしゃるの?一日帰らない日も⁇」


「まーなー」

私の確認に、ネイトはふんぞり返るように壁際に寄りかかった。

リュックを盗まれる恐れはないと判断したのか、今は抱え込まずに自分の隣に立て掛けている。腕を組んで未だ心は許さないぞといわんばかりだけれど、一応こちらの問い掛けには全部答えてくれていた。ふて腐れたような言い方が本当のことを言っているのか、嘘を言っているのかはいまいちわからないけれども。

それでも、今のところ家族構成や家での生活とか今回のことに関係ない内容については普通に返してくれるだけマシだろうと思う。私が単純に話しかけているだけなら未だしも、教師であるカラム隊長や背の高いアーサーやパウエル、そしてステイルにまで囲まれているのだから。

一応今は扉が閉められているけれど、一般生徒に見られたら誤解されかねない。弁明してくれるカラム隊長がいるのが唯一の安心だ。

彼の方からもあれ以降は「ブス」も悪口も大して言われない。代わりに彼自身が全く興味がないのであろう、私達への質問返しもなかった。未だに自己紹介した私だけでステイル達の名前すら聞こうとしない。

この間カラム隊長に捕まった時に自分を紹介された私達のことまではあまり覚えていないだろうし、本当なら自分に絡んできたことから理由が気になっても当然のはずなのに。

ともあれ、全部受け答えしてくれるのはやっぱりありがたい。


「ご両親ともお忙しくて大変ね。じゃあ伯父様は」

「いつまでどうでもいい話ばっかすんだよ?他に俺に言いたいことあるんじゃねぇの」

とうとうネイトから受け答え以外が返された。

じとー、と不信感いっぱいの冷めた目を向けられて背筋が伸びる。言いたいこと、……と言われると確かに直球で聞きたいことはたくさんある。でもまさかネイトがそれを私が探ろうなんてしているとかわかるわけもないし、じゃあ何かしらと考えても思いつかない。

言葉に詰まらせて笑顔が固まってしまったまま、いっそのことこのままもっと踏み込んだところまで聞いても良いかしらと考える。じっとり私を睨むネイトも、この様子ならちょこっと聞いても覚えがなかったらすぐに流してくれそうだもの。

そう考えて私が質問を考え出すと、先に今度は背後のステイルから「では僕から」と一声が上げられた。今まで私しか質問を重ねなかったから、突然のステイル登場にネイトが明らかに嫌そうな顔で眉をぎゅっと寄せた。


「どうして今まで授業に出なかったのですか。わざわざ出席だけしても授業に出なければ意味がないと思います。……それとも、他に何か疚しいことでもされているのですか」

今日は授業にも出たそうですが、と続けながらのステイルの問いは一般生徒としても当然の疑問だった。

ネイトはぎゅっと顔の筋肉を中心に集めた後、釣り上げた狐色の眼差しでステイルの次にカラム隊長を睨んだ。もしかして、私達がカラム隊長に頼まれて授業をサボる理由を聞いてくれと頼まれたとか勘違いしているのだろうか。その為に友達から仲良くなって欲しいと言われたとか、……十三才にもなって先生からそんな介入されたと思ったとしたらここまでの不満な態度も納得できる。中学生はただでさえデリケートな時期だもの。


「それを知ってから。……私達、ずっと貴方のことが気になって。それでカラム隊長にお願いして付いてこさせて貰ったの」

あくまで貴方に関わったのは私達の意思です!と伝わるように私からも無言のネイトに言葉を重ねる。

これでカラム隊長の誤解も解ける筈と思って言葉を待つと、ネイトは一度唇を絞った後ゆっくりと子どもらしい未成熟な声を低めた。


「授業つまんねーからさぼっただけだよ。本読むだけなんてくだらねぇしどいつもこいつも馬鹿ばっかだし、……悪い事なんてしてねぇよ」

ぼそっ、と最後だけ少し弱々しい声になった彼は、じっと顔を俯かせてしまった。

無意識にか、傍らのリュックを片腕で引き寄せるように掴み、指にまで力が入ったように拳を作った。ゲームでアムレットに言っていた「他の奴らは馬鹿ばっか」と、意見は一緒だ。

怒られた子どもらしい表情に、まだ彼は十三才なんだなと改めて思う。ゲームでも後輩キャラとして子どもっぽさが残るキャラだった彼だけれど、今の彼は正真正銘の子どもだ。


「いや悪いだろ⁇」

ネイトの言葉に引っかかったのか、ずっと静観していたパウエルが今度は動いた。ネイト、だったよなと彼の名前を確かめながら一歩だけ前にでた彼は大きな身体で怖がらせないように両膝を曲げてその場にしゃがみ、ネイトと視線の位置を近づけた。


「そんなに授業嫌なのになんで学校に来るんだ??嫌なら学校辞めて働けば親父さんとお袋さんも助かるんじゃねぇのか?こんなところで自分だけさぼって授業も受けねぇのなんて一番悪いことだと思うぞ?」

「ッ‼︎…………!!う、っ……うっせぇ‼︎‼︎」

さらりと正論を放ったパウエルに、ステイルやカラム隊長も頷く。

その言葉にネイトも思わずといった様子で顔を上げ、言葉を詰まらせながら怒鳴った。ギリッ、と悔しそうに顔を顰めた後また悪態をつくまま顔を背けてしまう。けど、パウエルはそれでも全く怯まない。


「さっきジャンヌに、学校へ行くように勧めてくれたのも親って言ってたよな?せっかくそんな良い親いるのに裏切るのか??…………勉強もしねぇで家族ばっか働かせて。まさか、働かずに楽だけしてぇから学校に来てるとかじゃねぇよな?」

最後に、パウエルから地の底へ響くように声が低められた。最初は落ち着いていた声が段々とドスが低くなり、切れ味が増していく。

ヒィッ!!と思わずネイトより私の方が肩を上下してしまう。真っ直ぐに目を向けられたネイトも蛇に睨まれたように動けないどころか目も逸らせなくなっていた。肩から指の先まで強張らせたまま僅かに震わせている。

さっきまでいつものお兄さんらしい表情をしていたパウエルの目がいつの間にか刃のように鋭い。今まで明るいパウエルばかり見てきたけれど、その表情と声の凄みの利かせ方は間違いなく第三作目のパウエルさんだ。


まさかここでキレたりしないわよね……?!と背筋がひんやりしてきた途端、どこからか静電気が弾けるようなパチパチッと音がして思わず一人心臓と一緒に跳び上がってしまう。

慌ててネイトが失言を言う前にと、顔色が若干蒼白くなってきたネイトを横から守るべく抱き締める。少なくとも今のパウエルなら怒っても大好きなステイルの親戚である私までは巻き込みたがらない筈!と願いを込める。

パウエルがこれまでのネイトの話を聞いてそう受け取るのも怒るのもすごくわかる!!わかるけどもちょっと待って!!ネイトにはネイトなりの事情がある筈なのだから!


「ぱ、パウエル……?!ええと、落ち着いて??取り敢えずまだ彼にも言えないことは沢山あると思うの。だからまだ怒らないであげてくれないかしら……?」

まさかのここに来て対パウエル?!と心の中で叫びながら、ネイトを抱き締める腕に力を込める。

力を込めすぎて苦しかったのか、抱きしめた途端ネイトから「は……?!」と声が漏れたけど気にしない。むしろここで更に怒らせることを言わないで!と祈りながら小さな身体を確保した。

すると、私の焦りに気付いたらしく鋭くなっていたパウエルの目がパチパチと二回瞬きをしてから元に緩んだ。きょとん、とした表情をするパウエルが次の瞬間には「あ!すまねぇ‼︎」とまたいつもの表情になる。


「大丈夫だ!女と子どもには絶対手は出さねぇ!!ちゃんと、それはわかってる!」

ガバッ!とさっきまでネイトに向けて前のめりに近い姿勢になっていたパウエルが慌てるように背中を反対に反らす。

無実を訴えるように両手のひらを胸の前で開いて見せ、思い切り首を横に何度も振った。どこかで確実に聞いたことのある台詞に、私もほっと胸をなで下ろした。良かった、取り敢えずネイトには叱りつける気しかなかったようだ。

そのまま慌てたように背中を反らすだけじゃ落ち着かないパウエルが「すまねぇ!!」とネイトに向けても大声で謝ってから、立ち上がった。後ろ足で二歩下がり、更に背中を向けて一気に扉の前まで後退しきった。あまりに一気に下がっちゃう彼にステイルも気にして目で追えば「俺はこっちで黙って見てる」と早口で言い切った。

やっぱりちょっと言い過ぎたというか怒り過ぎちゃった自覚はあるらしい。いやでも、ゲームのパウエルと比べれば全然平和主義だ。


「……じゃねぇよ」


ぼそっ、と。

小さな零れる声が腕の中のネイトから放たれた。パウエルに怒られた後も、私に掴まれた後もずっと離さなかったリュックを掴む手が目に見えて震え出す。

一度ぎゅっと絞った唇を開いて歯を食いしばり、俯いたまま顎まで震わせた。ネイト?と呼べば、余計に彼の口が歪んだ。息を引く音が聞こえたと思った瞬間、しがみつく私を突き飛ばすようにして腕から抜けた。

思わず押されたままお尻と一緒に手もついてしまえば、すぐに動いたアーサーが一瞬で私の傍に支えるように駆け寄ってくれた。背後から起こすように肩を支えながら「大丈夫っすか!?」と心配してくれる。突き飛ばされて体勢を崩しただけで、痛めたところは全くない。

それよりも壁際にそのまま固まるネイトの方が気になった。


「ッ俺はガキじゃねぇ!!お前らこそ平和ぼけの馬鹿のくせに偉そうにすんなよ!!何にも知らねぇくせに!!」

小さな身体全てから放ったような叫びに、教室全体の空気がピリリと僅かに震えた。

まだ少し幼さも残る声が、叫び慣れていないのか最後の方では僅かにガラリと擦れていた。言い切った後には使い切った酸素を補充するようにハァハァと音も消せずに息を整える。

突然怒鳴りだしたネイトに今度はステイルまでもが眼鏡の黒縁を指で押さえながら絶対零度の眼差しを刺した。

自分の息の音以外沈黙に浸りきっていた部屋で、数十秒のあとにゆっくりとネイトは顔を上げた。その途端、正面に立っていたステイルの眼差しにビクリと全身を一度大きく震わせてから壁に背中を打った。

子どもに今の眼差しは流石に怖いだろう。俯きから上げた顔が一瞬で恐怖に染まったネイトを確認してから、ハァ……と少し脱力したようにステイルが肩を落とした。視線をネイトから外し、私に向けると「お怪我はありませんか」と落ち着いた声で聞いてくれる。それに返せば、ステイルもゆっくりとネイトの前から私の方に歩み寄ってきてくれた。


「……ジャンヌ。話したいことは終わりましたか。他に聞きたいことがあれば、俺から聞きます。もう昼休みも終わる頃ですし、貴方はジャックとパウエルと一緒に教室へ先に戻っていても良いのですよ」

「いえ、本当に大丈夫よ。心配かけてごめんなさいね。気にすることじゃないわ」

子どものしたことだから、という言葉を飲み込んで心配してくれたステイルにお礼を言う。

彼の背後では、カラム隊長が座り込むネイトに歩み寄ったところだった。どういう理由でも女性に手を上げてはいけないと、落ち着かせるような声でネイトに指導してくれている。けど、いきなり抱きついたまま離さなかったのも私だし、もともと話すのも嫌だった私にくっつかれたのもきっと嫌だったのだろうと思う。

パウエルから守る為とはいえ、つい子どもだからって馴れ馴れしくした私も悪い。私にとっては小さな子どもでも、彼にとっては私はたった一つしか歳の違わない女生徒なのだから。歳の一歳二歳の差なんて同い年とあんまり変わらない。


「今日は、もう教室に戻りましょう。あと一つ確認できれば今は充分よ。また三限が終わって落ち着いたら会いにいくわ」

「来るなよ!!お前らなんか」

「いいえ、行きます」

崩れた体勢から立ち上がり、彼の言葉を両断する。

今はちょっとお互いにタイミング悪く熱が入ってしまっている。一度仕切り直してまたもう一度、話してみよう。言葉を遮られた彼にまっすぐ目を向け、私からの意思を彼に通るように声に張る。


「確かに貴方のことは知りません。だから教えて貰いたいだけです。馴れ馴れしくしたのはごめんなさい」

礼儀正しく頭を下げてお詫びする。

悪い事をしたらその非は詫びる、そこから彼には始めるべきだろう。私が謝ったのが意外なのか目を皿にしたネイトは、腕だけでそっとリュックを背負い出した。部屋を出る準備をする彼に私も歩み寄る。


「だけど約束するわ、私達は貴方の味方です。この質問に覚えがなかったら、今すぐそれも謝ります」

鐘の音が降り注いだ。昼休み終了の合図だ。生徒の私達も当然ながら、カラム隊長も教師として授業に向かわないといけない。鍵を職員室に返すのも含めて時間はない。先に廊下へと帰ってくる生徒に見られないうちに廊下に出る。

そしてカラム隊長が改めて施錠している間に私は向き合った。

私の質問、という言葉に気持ち悪そうに喉を掻いていたネイトは、教室を出た後も唇を結んで待ってくれる。ここで走って逃げないのを見ても、根は良い子なのだろうと思いたい。

問い掛けたいものは沢山ある。でもこの場で尋ねて、またネイトを逆上させない言葉だけを選べばそれは一つに限られた。

早くしろよと言わんばかりに軸足を変えたり、首を左右に振ったり落ち着かない動作の彼に私は切り込んだ。



「貴方、〝売ってる〟でしょう?」



瞬間。

狐色の目が、大きく見開かれた。クロイの時と同じ、真実を射貫かれた表情だ。

引いた息と共に両肩が上がり、鼻の穴を広げてリュックの紐を握る手が硬くなったネイトにそれだけで確信は充分だった。「何を」も「どういう意味だ」も瞬間的に出てこないのは言葉の意味をわかった証拠だ。

言葉も出ない様子のネイトに「そうなのね」とだけ返した私は一人で頷いた。


「……どうして知っているのか、次の休み時間に話すわ。貴方に提案もあるの。」

ネイトから返事はない。固く結ばれた口と丸くなった目から今は驚愕しか読み取れない。

それでは、とカラム隊長に挨拶した私達は放心するネイトを置いて一足先にその場を去った。ネイトも私達と途中までは方向も一緒だけど、きっと一緒に歩きたくはないだろう。


「すまねぇ、ジャンヌ。俺の所為でなんかネイトを怒らせちまって」

「いや、それを言うなら俺が勝手に不用意な問いを投げたのがそもそもの原因だ。申しわけありませんでしたジャンヌ」

角を曲がってネイトの姿が見えなくなったところでパウエルとステイルが順々に声を潜めて謝ってくれる。

二人とも悪くないわ、と首を振ったところでそれよりもとネイトの状況を頭の中で整理する。彼がどこまで本当のことを言っていたかはわからないけれど、少なくとも最後の質問だけは間違いない。

それだけでも彼の状況がある程度は予測できる。ネイトもどうして私が知っているのかは気になるだろうし、これで次の休みは逃げないでいてくれる筈だ。あとは提案を〝どちらか〟だけでも受けてくれれば良い。


「…………あいつ」

一番最後列に下がって歩くアーサーからの声に首だけで振り返る。

ステイルやパウエルも彼へ振り返る中、視線を受けたアーサーも同じようにこの場にいないネイトが居た方向に向けて首を捻っていた。

ステイルが「何か気付いたか」と尋ねると、それに押されるように言葉が続いた。




「変なとこで誤魔化しやがった」




何か確信を持ったようにも聞こえるアーサーの呟きの後、昼休みを終えた生徒達の足音が響きだした。


次回の更新は7日になります。

ご迷惑をおかけ致します。

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― 新着の感想 ―
なんでパウエル連れてきてるんだろう?
[一言] 今更だけどアーサーの嘘発見器的能力、素でそれを持っているのなかなか凄いのでは。違和感に気づくだけだから嘘だと特定はできないけど質問の仕方次第で特定できるし、今まで気のせいで終わったこともない…
[一言] なんか2作目の対象者面倒くさい奴多いな。評判イマイチになったのも分かる気がする
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