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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
私欲少女とさぼり魔

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Ⅱ184.私欲少女は改める。


「二年のジャンヌ・バーナーズよ。手荒になってごめんなさい。……ちょっとお話させてもらえるかしら?」


また変なことをしないようにとアーサーが腕を掴まえ、完全に捕縛状態のネイトへ握手を求める。

私達を順々に何度も見比べてはリスのようなの瞳を白黒させていた。座り込んだまま大きく膨らんだリュックを大事に抱え、口がぽっかり開いている。当然だ、突然殆ど覚えのない上級生に囲まれればドン引くなという方が難しい。

私の握手にもグローブを嵌めた手を下ろしたまま返してくれる様子のない彼に、素直に諦めて大人しく手を引っ込めた。


パウエルと一緒に昼食を始めてから、ステイルにお願いしてカラム隊長に伝言を瞬間移動で送って貰った。ステイルがメモに短く要件を書いてカラム隊長の下へと瞬間移動させる、今までも何度か使ったことのある物理的メールだ。パウエルもステイルに四年前助けられたときに瞬間移動を受けて知っていたし、「おぉー……」と声を漏らしたままちょっと嬉しそうにするだけで驚かなかった。

そして、メモを無事受け取ってくれたカラム隊長が、昼休みまでもつれ込んだ生徒指導後早速それを行動に移してくれた。私達も早めの食事を終えて、予定通りに職員室へ向かえばカラム隊長が教師からそれを借りてきてくれた後だった。


学校内の施錠付き教室の鍵を。


本来なら教師も警備もそしてカラム隊長も、見回りで中を確認するのは鍵のついていない部屋のみ。生徒が出入り可能だからこそ、中に潜んでいないか教師が確認する。けど施錠付きの部屋で確認するのは〝ちゃんと閉まっているか〟だけだ。私が捕まった時みたいに職員室でバレずに盗むような生徒は滅多に居ないし、鍵さえ無事しまってあれば生徒が入り込んでいることなんてありえない。

メモの指示通りに中等部から高等部の教室の鍵を借りてきてくれたカラム隊長と合流し、パウエルに「親戚のアランさんの友人」という形で紹介した私達はそこで校内の見回りを始めた。

敢えて施錠が付いている部屋ではなく、施錠がされている部屋だけに絞れば、一気に回るのもそこまで大変じゃなかった。荷物置きの倉庫や書庫として足の踏み場しかない教室か、もしくは逆に何もない空き室だからこそ生徒に無断利用されないように鍵がつけられているかのどっちかだ。

鍵を開けて一望すれば人が居るかいないかはすぐにわかる。しかも、ここには歴戦の騎士が二人もいるし開けなくても扉越しで気配を探れば素人のネイトくらい察知してくれる。私が監禁された時だってアラン隊長は声を出す前から中に人がいることは気付いてくれた。


先ずは教師としてカラム隊長が教室にちゃんと鍵が掛けられているかをドアノブを捻って確認し、人の気配がないかも確認。それを繰り返し、とうとう辿り着いたのが高等部二階のこの教室だった。

そして怪しんだカラム隊長がすぐにドアを解錠した途端、煙幕弾みたいなのを投げ込まれた。カラム隊長から今までのネイトの逃走劇を聞くと予想できなかったわけじゃないけれど、扉を開いた瞬間の攻撃には流石に驚いた。

カラム隊長がすぐに息と目を瞑るように指示を飛ばしてくれて、その間にアーサーが一人特攻してくれた。更にはステイルが煙幕に紛れ、煙を噴出し続けるそれを瞬間移動で捨ててくれたから煙もそこまで広がらずに済んだけれど、……うっかり教室の外にまで広がったら軽い騒ぎだったなと思う。私の目と口を覆ってくれたカラム隊長が手を離した時には殆ど煙も晴れて、騒ぎになる前に収束できた。

煙は誰も吸わないで済んだし、ネイトのことだからもともと人畜無害の目眩まし効果だろうけれど。


「こんな形でごめんなさい。ただ、貴方とちょっとお話をしてみたかっただけなの」

なにはともあれ、やっとネイトに接触できた。

ゲームの設定と一緒に彼がよく潜んでいた場所を思い出せて良かった。ゲーム三年前でもやっぱり考えつくことはあまり変わらないらしい。

ちょっと驚かせてしまったことは申しわけないけれど、攻撃を受けてしまったのだから仕方ない。彼にとっては全部が正当防衛だったのだろうけれども、こちらはこちらで同じく正当防衛だ。

大丈夫よ、とアーサーに彼を離すようにお願いした私は彼の返事を待つ。「俺に……話⁇」と目をきょろきょろさせる彼に、今度はステイルが言葉を重ねる。


「因みに。施錠された空き教室への侵入と私物化も充分学校の規則違反の筈です。それだけでも厳重注意程度の罰則にはなりますが、更に教師や一般生徒の僕たちに攻撃をしたともなると……場合によっては今度こそ私物没収くらいにはなると思います」

しかも一度警告されてましたよね?という言葉にネイトが大きく反応した。

特に私物没収、という言葉にネイトの肩がビクリと震える。予想はできたけれど、この様子だとまたがっつり持ち込んじゃっているようだ。振り返らなくても背後から「ですよね?」とカラム隊長に同意を求めるような敢えての明るい声に、きっとステイルが黒い笑みを浮かべているのだろうなとわかる。パウエルがびっくりしていなければいいけれども。

横でアーサーがまた彼が変なことをしないかと目を光らせてくれている中、ネイトはステイルの言葉に顔色が青くなっていっては両手としゃがみこんだ両足でぎゅうぅっとリュックを抱え込んだ。視線が今は私ではなく、私の背後にいるであろうカラム隊長へと向けられている。……もう、大分カラム隊長は天敵扱いされちゃっているようだ。

ステイルからの言葉を受け、その意図を汲んでくれたのであろうカラム隊長からも「そうだな……」と困るような声が溜息交じりに零れ出す。


「私への攻撃はこの際目を瞑ろう。しかし、一般生徒を四名も巻き込んだことは問題だ。もし……、……………もし、その張本人である生徒達から苦情がないのであれば、厳重注意のみに、……しよう」

後半からはかなり苦しそうに言うカラム隊長に心から申しわけなさしかない。

言っていることは本当に学校の規則に則った内容なのだけれども、結果としてネイトを脅迫しているようになるのに気が咎めているのだろう。まるで悪行の片棒を担がせている感覚に肩の片方だけに力が入り、上がってしまう。


ネイトの顔色が蒼白から少しだけ色を取り戻していく。リュックを抱え込む手足に少し力が弱まり、やっと視線が背後から私の方へ向けてくれた。

金色の髪をしたツンツン頭と、嵌めたゴーグルの下に見せる狐色の瞳。正面からこうしてしっかり見れば本当にゲームのネイトだ。もしかすると一番面影が強いかもしれない。

ゲームでも主人公の年下キャラとして登場した彼は見かけが幼いままだったから、余計に今と殆ど変わらなく見えてしまう。女の子であるアムレットより背が低く、でも男勝りで仲良くなれば人なつっこい性格でキミヒカの年下キャラの中ではわりと人気はあった方らしい。……彼の暗い過去が余計にキミヒカファンの人気を強めたのかもしれないけれども。


「苦情なんて言わないわ。けど、代わりにお願いがあるの。私達とお友達になりましょう?」

「ともだち……?」

意味不明の言葉のように繰り返すネイトに、そうよと笑みを返す。

本当はもっと自然に友達になれれば良かったけれど、もう四の五の言ってはいられない。彼のことを知る為なら、このくらいの無理矢理は許容範囲だ。もう幸運にも彼に何も問題がなかったらそれこそ半月の縁で彼も済むのだし、私も彼の行動に教師以上に文句を言うつもりはない。


「それ、……友達とか言って俺に何かさせるつもりじゃねぇだろうな……?言っとくけど俺金もねぇし力もねぇし、この眼鏡の十分の一の役にも立たねぇからな」

眼鏡、というのは恐らく視線で見上げる様子からみてアーサーのことだろう。

なんだかステイルではなくアーサーがそう呼ばれるのは新鮮だなと思ってしまう。ちょっと最初よりは落ち着いてきたのか、少しずつ口を開いてくれた彼は今度は疑りに眉を潜めた。

ちょっと彼の発言に不吉感こそ感じたけれど、今は飲み込む。チラチラッとカラム隊長の方を確認しているから、教師がいる分少しは今の状況も不良生徒に絡まれているのでは無く安全だと思ってくれているのかもしれない。……逆に不良集団と騎士がグルだと思われていたら困るけれども。

すると視線の意図を汲んでくれたのかカラム隊長の声で「彼女達はそういう類いの人間ではない」と今度は惑い無く断言してくれた。その途端、強張っていた彼の肩からも力が抜けた。


「そんなこと良いわ。ただ、貴方のことをもっと知りたいだけ。これからちょっとお話しましょう?貴方の話を聞かせてくれれば良いの。あとは休み時間に教室にいてくれれば私達から貴方に会いに行くから」

「俺……、昼休みは一人でやりてぇことがあるんだけど……。ていうか、話とかなんでそんな下らないことに俺が」

「〝やりたいこと〟というのは、今日のように教室の私物化でしょうか⁇」

ぎくっっ!!とネイトの肩が上下する。

ステイルの言葉に、今自分が規則違反の現行犯中だということを思い出したように顔ごとカラム隊長の方に向けた。

私も今度は一緒に振り向けば、背後で佇んでいたカラム隊長が前髪を指で押さえつけながら厳しい眼差しでネイトを見ていた。ちょっと私にとっては珍しいその表情に「君は厳重注意を受ける前からまた常習するつもりか」と言いたいのが伝わってくる。

よく考えればネイトが空き教室に潜んでカラム隊長に見つかっていること自体は今回だけじゃない。授業をさぼっているだけではなく、空き教室に勝手に侵入というのも踏まえての私物没収だ。しかも今回は施錠していた教室での現行犯だ。更なる余罪が溜まっている彼にカラム隊長が怒っている可能性は充分にある。よくよく考えれば私達より遥かにネイトの方が問題児だ。

ちょこっとお怒り気味に見えるカラム隊長の隣で、にっこりと対照的に笑顔を作るステイルがわざとらしく頭を傾ける。


「昼休みがカラム隊長からのお説教になるか、それとも楽しくジャンヌと友人として話すかの二択ですが。……どちらがよろしいですか?」

脅迫‼︎ステイルそれ間違いなく悪魔の選択‼︎‼︎どっちに転んでもネイトを事情聴取するぞという意味にしか聞こえない。確かに話を聞くだけならカラム隊長にお願いしてお説教ついでに事情聴取すればいい。けれどあまりにもご無体な。

うぐっ、と息を詰まらせるような音を漏らしたネイトもこの悪魔の選択には一つしかないと考えたらしい。「べっつにいいけど⁈」と八つ当たるように声を荒げた彼は、ゴーグルを額まで上げてからリュックを抱え込んでいた足を組み直した。

完全に腰が引けている状態から前のめりの体勢になる彼に、これは話してくれる気になったのかなと思う。ムッとご機嫌斜めの顔にツンツン頭の金髪が余計に尖っているように見える。最後に私へ向き直る彼は、身体正面を私に向けた。

完全に悪役のリーダーを見るような目で真っ直ぐ私を睨み、はっきりとした口調で問い掛けてくる。


「で、何を話したいんだよブス!」


……意外と口が悪い。

そう思ったのも一瞬だった。彼がその発言をした瞬間、ゾワッと怖い気配を背中に感じると同時に風を切る音が聞こえた。その音を聞き取った瞬間、寸前予知をした私がネイトを右手に引っ張るのとアーサーが手刀で横からたたき落とすのは殆ど同時だった。カラァンッ!と何かが床に落ちた音に、素早くステイルがそれを足で踏んで隠し瞬間移動で隠滅してくれた。……部屋のどこからか放たれた、ナイフを。

いきなり私に腕を引っ張られて体勢を崩したり、アーサーが前のめりになってきたりステイルが床を踏みつけたりと色々なことが同時に起こってわけがわからないように目をぱちくりさせているネイトだけど、もう私は冷や汗でいっぱいいっぱいだった。

パウエルに見られてないかと目だけで盗み見したけれど、カラム隊長が腕で前にでないようにと庇ってくれていた。腕に視界が塞がれたのと、あまりに一瞬のことにわかっていないようだ。今も突然動いたステイルの背中に目を丸くしていた。「虫でもいたか?」と尋ねた言葉からしても、アーサーが叩き落としたものまでは見えていないらしい。良かったセーフ!!!


突然生徒に向かってナイフが飛んできたなんてそれこそテロ紛いの大事件だ。


寸前に予知した先だと、ナイフはネイトではなく彼の真横を通り過ぎて壁に突き刺さったから牽制だろうけれど、もう狙ったことには違いないしもの凄く心臓が煩い!!


「じょっ、……女性に!そういうことをいうべきじゃありませんよ……。ジャンヌが怒るのも当然です」

「そ、うだな。勿論だからといって実力行使は褒められるべき行為ではないが。ジャック、虫を叩き落としてくれて感謝する」

「はい!いくら口が悪くてもナイ……手を!出すのは駄目っすよね?!」

ステイルから私がネイトを引っ張った理由付けに始まり、キャッチボールのようにカラム隊長がどこかで見ているであろうハリソン副隊長に「この場で実力行使をするな‼︎」という暗に窘めとアーサーの行動への誤魔化し、更に直属の上司であるアーサーから遠回しに「いくらなんでもナイフ投げるのはやめて下さい‼︎」と制止が入る。

見事な連携だ。まだ背筋にぞくぞくと冷たいものを感じるから、まだハリソン副隊長が王女への暴言に怒っている可能性はあるけれど。

取り敢えず誤魔化せたから良かった。クロイの毒舌は許してくれたけれど、今の悪口はハリソン副隊長的に無しだったらしい。ディオスが私を突き飛ばした時もそうだけれどハリソン副隊長本当に容赦無くて流石過ぎる‼︎これがお忍びではなくて、普通に王族の警備だったら彼一人で完璧防御だっただろう。

けど、今はあくまで極秘視察。こんなところで小学生の悪口程度でナイフが放たれたら堪ったものじゃない。


「そっ、そうよ!?ネイト!!わ、わわ私だって怒る時は怒っちゃいますからね?!勿論実力行使で脅かすのはとっても駄目よ?!ごめんなさい?!!?」

届けこの思いハリソン副隊長に!!

心の中でそう叫びながら、ネイトから手を離す。足を崩して座ったまま、上体だけが右方向に倒れ込んだ彼を私から両手で支えるようにして起き上がらせる。目をぱちくりしていた彼は、未だに私を凝視していた。

「手を出すって……」と小さい声で疑問のように零す彼は、掴まれた腕を見た後に眉を中央にぎゅっと寄せた。もしかしたらちょっとした軽口で腕を引っ張られるなんて暴力女だと思われたのかもしれない。もうそう思われても良いから、とにかくお願い逃げないでと願いを込める。引っ張る時に掴んだ彼の左手を両手で包み、ひっくり返りそうな声で笑い掛ける。


「本当に、本当に謝るわ。もう一度自己紹介からやり直しましょう⁈私はジャンヌ・バーナーズ。実家の山では父と母とお爺さまと親戚家族で暮らしているわ!何か困ったことがあったら何でも相談してね!」

昼休みが終わる前に早く本題を進ませたい気持ちと、そして数秒間のできごとを誤魔化すべく大きめの声で告げる。

ぎゅっと包んだネイトの手に力を込め、次は貴方の番よと伝わるように促した。彼もこれにはわかってくれたのか、「俺は……」と小さい声を漏らした後に今度は悪口以外も話してくれた。



「ネイト・フランクリン……。一緒に住んでるのは父ちゃんと母ちゃん、だけで。困ってるのは、………………めんどくさい堅物脳筋騎士と気持ち悪い女と取り巻きに絡まれたこと」



辿々しい自己紹介に最後はぶすっと顔を反らされ言い放たれた。

今度はナイフもなく終えた彼との接触は、ファーナム兄弟と同様に最悪第一印象からのスタートだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 相変わらずハリソンはハリソンだったw 最もプライド一味が連携した瞬間ではなかろうかw
[一言] ヴァルさんの見た目よりもハリソンふくたいちょうのほうが怖いですぅ
[気になる点] 少年を男勝り(女でありながら男みたいな、男を勝るような)で表現するのは微妙だけど……ネイトは小柄ながらも「気丈」だと言いたいのかな?
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