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そして上がる。


「元はと言えば兄貴の所為だろ。……いたいけな弟がこうなったのも全部」


誰がいたいけだ、と。兄貴が今度は少し笑い混じりに言った。

突っ伏した顔を上げてみたらやっぱり笑ってる。まぁ確かに〝いたいけ〟なんて年じゃなかったけど、こっちは遅くまで仕事で疲れてるところを押してまでこうして待ち伏せていたっていうのに。

そう思って眠気で半分潰れた目で睨んでやると、兄貴は「俺は何もしてないだろ」と言ってきた。いいや絶対兄貴の所為だと俺からも言い返す。


「まだ十四だった弟にあれだけ擦り込みしたらこうなるって」

「擦り込んでいないだろ。お前が自分からプライド様の話や噂を俺に聞かせてきたんだから」

背もたれに掛けた腕に顎を乗せ、懐かしそうに笑う兄貴を見上げる。

確かに兄貴の言っていることは本当だ。けど、思い返せば思い返す程にガキだった俺がこうなったのは兄貴の影響としか思えない。


『プライド第一王女殿下の噂⁇兄さん、そんなのに興味あったっけ』


八年前のある日。

まだ家に住んでたロベルトの兄貴に、エリックの兄貴が突然プライド様のことを話題に出した。

兄貴の二つ下のロベルトの兄貴はその前から家庭教師の仕事を始めていて、あの頃はまだ中級層の平民中心に雇われていた。

教え方が上手いからそれから数年で下級貴族に雇われたりして、後ろ盾を得た今もかなり稼いでいる。


騎士を目指して、やっと騎士団に入団できたエリックの兄貴はそれから実家に帰ってくることは少なくなった。当然まだ十代だった俺にとっては、騎士団に入団できた兄なんて自慢だし、……正直結構懐いていた。

エリックの兄貴も昔から面倒見が良くて俺もロベルトの兄貴にもかなり世話を焼いてくれたし、文字通りの〝良い兄〟だった。

騎士団に入団した後から実家に帰ってこない日が続けば、そりゃあ寂しくなって余計に懐くし帰ってきたら構って欲しいと思う。ロベルトの兄貴は昔から勉強ばっかだったし。時々実家の様子を見に帰って来た兄貴に飛び付いては構ってもらおうとしていた頃に、……ある日帰ってこない日が続いた。

今までは時々帰ってきてたのに、急にピタリと実家に帰ってこなくなった。最後に会った日の四日後は隣国との新兵合同演習があるって言っていた日で、最初はきっと遠征で疲れているんだろう程度にしか思わなかった。けれどそれが何日も何日も続いて、ひと月以上経ってからひょっこり兄貴は帰ってきた。

家族は皆兄貴に何かあったんじゃないかって心配したのに、とうの本人は「何もない」としか答えなかった。

俺は一番末っ子で、兄貴に懐いていて、しかも話したいことも聞きたいこともあって、構って欲しいこともあって一人で色々といっぱいいっぱいだった。そんな中で、家族で食卓を囲った時に兄貴が突然ロベルトの兄貴に投げかけた言葉が『プライド第一王女の噂って、聞いたことあるか』だった。


今まで噂話に興味なんて持ったことがない兄貴が突然だ。

家庭教師をしていたロベルトの兄貴は、それなりに噂話に通じていたし教え子から話題でそういうことを聞くことも多かった。

不思議がったロベルトの兄貴がそのままプライド様の噂を思い出しては並べれば、どれも当時は悪い噂ばかりだった。エリックの兄貴はどこか気まずそうな、難しそうな顔で真剣に話を聞いていた。俺はといえば、そんなことよりも自分に構って欲しくてそれをガキみたいだと言い出せずに苛ついたことを覚えている。……けど。


『兄さんはプライド第一王女に会ったことはある?』

『!いや、まぁ……この前……騎士団の視察にいらっしゃって、遠巻きにな。会ったってほどじゃない』

『どうだった?本当に我儘姫様で義弟になったステイル王子にまで酷い扱いしていた?』

『いいや、全然。噂なんてあてにならないな。…………とても、本当に素晴らしい王女殿下だった。お優しくて、可愛くて、……まだお若いのにこれ以上ないくらい立派な御方だった』

ロベルトの兄貴と話しながら、遠くを見るような眼差しで微笑んだ兄貴の横顔は今でも覚えている。

俺も話していたロベルトの兄貴も首も捻ったし、お袋も親父も、まだ歩けた爺ちゃんと婆ちゃんも不思議がっていた。今まで王族の話題なんて自分から出したこともなかった兄貴が、突然王族を褒め出すんだから不思議がって当然だ。

兄貴がそこまで褒めるような王女なんて一体どんな人だろうと思ったし、噂と違うプライド様の話を城で働いている兄貴がいたからこそ知れたのが嬉しかった。

しかもその後にロベルトの兄貴に「もし話せそうだったら、少なくとも今のプライド様はそんなことないと教えてやってくれ」「またプライド様の噂を聞いたら聞かせてくれ」とエリックの兄貴が言えば、…………まぁ、そりゃあ…………当時の、当時〝は〟兄貴大好きで自慢で構って欲しくてたまらなかったし喜ばれたかった俺は当然のことながら、もう仕方ないし、本当に当たり前の流れで



プライド様の噂を集め出すようになった。



兄貴がそんな夢中で聞いていた話のネタを、次に帰ってくるまでに集めれば兄貴は喜ぶだろうと思った。

実際、次に帰ってきた時に兄貴へプライド様の良い噂を聞いたとか、プライド様を一目見た人が褒めてたとか話せばその度に兄貴は喜んで聞いてくれたし、正直俺が兄貴の時間を独占するのに食いつきもかなり良かった。帰ってくる度に必ず話を聞いてくれた。ただでさえその頃から急にエリックの兄貴は鍛錬にもっと集中したい、どうしても本隊騎士になりたいと言い出して家に帰ってくることも更に減って、帰っても家の手伝い以外は鍛錬漬けで構ってくれることが減っていたから余計に俺にとっては兄貴に構ってもらう為の良い餌だった。

プライド様が王配殿下と一緒に城下の視察に降りてきた時の話とか、ステイル様やティアラ様と仲良さそうだったと聞いたとか、優しいお姫様と噂されていたとか、実際に視察で会えた人は悪く言ってないぞとか。そういうプライド様の良い話を聞くとその度に、そりゃあもうガキの頃の俺ですらわかるくらいニッコニコで。

んなことされたら俺も嬉しくなってまた集めるし、忘れないように記録した。プライド様の悪評もとりあえずは記録したけど、それが日を追うごとに減っていくのも統計して兄貴に話せばやっぱり喜んだ。正直、最初の頃はエリックの兄貴の為にプライド様手帳を作っていた。新聞社を知ってすぐに就職したのも今思えば「面白そう」だけじゃなく「これでもっとプライド様の情報を調べられる」があった。確実に。

もうその時には兄貴離れもできていたし構って貰う為に情報を集めるなんてことはしてなかったけど、それでも時々帰ってくる兄貴にプライド様の話を聞かせてやるのは結構好きだった。

何年経っても嬉しそうに聞くし、兄貴の方から「最近は何か噂とか聞いたか?」と聞いてくることだってあった。もうその頃には慣れ過ぎて兄貴との会話の八割がそれだった気がする。


そんで新聞社で働けば、まぁ当然のことながらプライド様の単純な噂話だけじゃなくて経歴みたいなものも知るようになる。

どういう政策を打ち出したか、どういう活躍をしたか、他国とどう関わって、どんな風に次期女王として段階を踏んでいるか、単なる噂だけではなくて正確な〝記録〟を調査して記事にするのが新聞社での仕事の一つだ。

昔っっっから兄貴の所為でプライド様の噂を集めていた俺は、そこで単なる良い王女様の〝近衛兵〟〝近衛騎士〟国内の〝学校〟に同盟共同政策の〝学校〟とか〝国際郵便機関〟とか〝婚約解消後も元婚約者の王子と良好な関係〟とかまぁ本当にそりゃあ色々な情報が入ってきて知るわけで。

しかも上辺の功績だけじゃなく、例えば国内の〝学校〟は下級層の子どもとか貧民の未成熟児の飢死を減らす為に無償の衣食住提供とか、俺達みたいな家庭教師を雇えない庶民でも一定の教育を受けられる為の教育機関とか、というか騎士だけじゃなくて身分も立場も低い筈の衛兵まで近衛として傍に付けるとか、特殊能力の所為で周辺諸国から遠巻きにされている俺達が理解される為に同盟国との学校を我が国にとかまで聞いてしまえば。もうそりゃあ当然に、もともと兄貴の所為で色々と擦り込みが済んでいた俺は本当に当然に仕方なくも必然に


……プライド様に、嵌った。


もともとは兄貴の為だったけれど、調べれば調べるほどプライド様の功績や噂が良過ぎて無理だった。

憧れるなという方が無理な話だし、情報を追わないという選択肢が無い。知れば知るほどプライド様は素晴らしい人だと思うし、本当にどんだけ完璧なんだと思うくらい完璧だった。

気がつけば兄貴の為じゃなく自分の為に調べて知って手に汗握っていた。もう調べれば調べるだけ好きになるとか、どこの底無し沼だと何度も思った。


子どもの頃から噂を追って来た人がどういう経緯で今のような王女になったのか、俺達民の為にどんなことをしてくれているのか、それを新聞で広められる今の仕事は俺にとって天職だった。もう毎日が楽しすぎる。

そりゃあ記事にするのが全部プライド様や王族の話だけじゃないし、今日みたいにステイル様の誕生祭で紙面全部を王族の情報で書き潰せることなんて時々だ。でも、取材をすればひょっこりプライド様の噂を聞けるし、視察に降りてきたのを見たという話も聞ける。王族関連の話なら八割方プライド様のことにも結び付く。

ステイル様とティアラ様の評判だって、それだけでもプライド様の王政は明るいなぁと浸ってしまうほどだ。プライド様の御活躍に比例してフリージア王国は確実に良い方向へと進んでいる。……と、その統計を職場で算出するのも結構楽しかったりする。


「兄貴の所為だろどう考えても……。兄貴がプライド様大好きじゃなかったら俺もこんなに嵌ったりしなかったよ……。新聞社の仕事に就いたのも元はと言えば兄貴の所為だ」

「でも楽しいんだろ?」

「最高に楽しくてしんどいよ」

ふっ、と兄貴が笑いを堪えて口を結んだ。

こんだけ疲れて、毎日寝る間も惜しんで働いて、大した高給でもないのに辞めないのは結局そういうことだ。エリックの兄貴もロベルトの兄貴も親も爺ちゃん婆ちゃんも皆がわかってくれている。俺が昔からプライド様のことを調べることが好きだったことを見てきた家族は、俺が新聞社の仕事について話せば「やりたいことができるなら良かったな」という感想だった。


「じゃああと数週間ぐらいは大好きな仕事で気を紛らわせろ。その間の代わりの手帳なら買ってやるから」

「いや流石に手帳買う金くらいはあるよ……。そりゃあ俺の仕事は本隊騎士や貴族の嫁貰ったロベルトの兄貴ほど稼ぎは良くないけど」

当時貴族の家庭教師をしていたロベルトの兄貴が、結婚してナンシーさんの屋敷へ移らないといけなくなった。その話が出た時は、ちょうど新聞社で働くことにした俺も稼ぎが前の仕事より薄くなることをそれなりに気にはした。お袋も元気だし、親父もガンガン働いているけどウチには爺ちゃんと婆ちゃんがいるし。

けれど、「新兵の時は俺の方が頼らせて貰っていたから気にするな」「金銭面は任せとけ」と本隊騎士に上がっていたエリックの兄貴が背中を押してくれたお陰で、ロベルトの兄貴も安心して家を出られたし、俺もやりたい仕事を気ままにできている。……いや、あの時のエリックの兄貴は俺の目から見てもロベルトの兄貴の目から見ても贔屓目無しで本当に格好良かった。本隊騎士を目指し始めた頃から頼もしさが増したと思う。


「あの手帳じゃないと駄目だって兄貴も知ってるだろ。……この八年間どんだけ俺が手帳読み返してると思ってるんだよ……」

「取り敢えず二千は超えてるだろ。俺だって何十も読んだ」

「いいや百は読んでる」

俺が読ませた、と。そう断言すればとうとう夜中にも関わらず、ははっと笑い声が兄貴から溢れた。

けどこれだけ言ってもやっぱり手帳は返されない。

本当にただ恋する女の子を目覚ましに頼んだぐらいでどうして俺がこんな目に。今まで一度もプライド様をこの目で間近に見れたこともない俺にとって、どんだけあの手帳が生き甲斐か。

取材をいくらやってもプライド様が視察に降りてくる時期も場所も読めたことがなかった。暗殺とか目的の待ち伏せを防ぐ為に、国内のそういう視察の道のりは本人の希望以外は宰相が担っているらしい。今期の宰相はかなり優秀だと評判だし、そりゃあ俺達には読めるわけもない。

新聞社なんて小さい機関で働く俺達には式典に招かれる権利もないし、兄貴の叙任式も身内ってだけじゃ呼ばれない。だから本当にあの手帳だけが俺の数少ないプライド様情報だっていうのに‼︎毎回式典の取材後なんて手帳追記が一番の楽しみなんだぞ‼︎‼︎

明日も早いからもう寝ると、自分の部屋へ上がって行こうとする兄貴が俺にも部屋で休めと続けてくる。本当に今手帳は手元に無いんだなとわかると腹が立ってきた。

ジャンヌと付き合えと言ったわけでもないし、ロベルトの兄貴の息子二人に寝込みを襲われた時は突然飛びかかられようと乗られようと任務や飲み会の朝帰りで寝不足だろうと笑って相手してたくせに。逆になんでジャンヌじゃ駄目なんだ。

まさかプライド様の夢を見ていたのを邪魔した腹いせじゃないだろうなとまで思えてくる。俺と違って兄貴は少なくとも一度はプライド様を見たことがあるのに、夢の中でまで会えるなんて贅沢過ぎるだろ。


「……そんなにジャンヌに構わせたくないなら、兄貴もさっさと彼女作れよ。一回目の入団試験で落ちた時別れてから一度も見てねぇぞ」

「〜っ‼︎い、ないのはお前もだろ。家名ならロベルトが継いでくれたし、俺はいつ死ぬかわからない立場だから……」

「なら死にたくないと思わせてくれる相手見つければ良いだろ。どっちにしろ家計を今支えてくれているのはエリックの兄貴なんだし……、……?どうした?」

突然、口を片手で覆った兄貴が俺から顔ごと逸らした。

「いや……」と籠った声は静け切った夜じゃなかったらきっと聞こえなかった。

自分のことを棚上げして言っただけだけど、どうやら効いたらしい。暗くて顔色はわからなくても、顔を見れば動揺してることくらいはわかる。まさかもう〝死にたくないと思わせてくれる相手〟程度はいるのか。つまりは片想いかとまで考えれば、それなりに兄貴も人生楽しんでるみたいで安心する。ここ数年じゃ、俺も兄貴も口に出す女の名前なんてプライド様くらいだ。


「……彼女できたら、ロベルトの兄貴みたいに隠さず紹介しろよ」

「違う。それは絶対違う。間違ってもジャンヌ達に言うなよ」

「彼女が居るって言ったらジャンヌの恋も覚めるかもしれねぇぞ」

「ぜっっっっったい駄目だ」

一体兄貴はジャンヌをどうしたいんだ。

上官の親戚だからって過保護過ぎるだろ。あのアランさんって人も、怖そうどころか裏表がありそうな人にも見えなかったけど。それとも単に色恋沙汰を親戚伝てでアランさんに知られたくないのか。……まさかアランさんとか騎士団が知ってる人か。

城内の侍女とかなら良いけど頼むから騎士団の身内に手を出すなよ、と思うだけで口を固く閉ざす。そりゃあ兄貴なら叶っても叶わなくても相手を大事にはするんだろうけれど。

ロベルトの兄貴もそうだった。男爵家のナンシーさんと恋仲になったくせに俺達家族に心配を掛けないよう隠して、結婚を認められるまで彼女の家に婚姻を認めてくれと頼み続けていたらしい。最終的には兄貴が彼女の屋敷に移り住みながら、向こうの家督や家名は継がず家庭教師の仕事を続けることで丸く収まった。今じゃ下級貴族や商家相手にかなり稼いでるらしい。


「……わかったよ。アランさんにも誰にも言わねぇよ」

軽く返せば兄貴が目に見えて脱力した。

その後も俺にまた一言二言念を押しながらヨロヨロと歩き、足音を響かせないように階段へと足を掛ける。ジャンヌ達がまた明日も来るからとかで今夜も帰ってきたけれど、騎士団でステイル様の誕生祭の護衛や警備で色々忙しかったんだろう。もしかすると城下の見回りでもしていたのかもしれない。隊長格でも城下の見回りは珍しくない。


「キース。お前も上がれ」

上り切る前に振り返る兄貴が今度は強めに言う。

もう覚め切った頭だし、仕方なくソファーから身体を起こして立ち上がる。ボサボサになった髪を搔きながら階段まで歩けば、兄貴も掛けた足で登り始めた。足音にだけに気をつけながらふらふら深夜に二人で階段を上がっていった。登り切ったところで右と左に分かれる俺と兄貴は、互いに目だけ合わせたら手を振った。

おやすみ、とその意思は口にしなくても互いにわかる。音を立てないように扉を開き、殆ど同時に部屋へと入った。ベッドに倒れ込み、突っ伏したまま手帳が取り返せなかったことに低い声だけ漏らす。

仕事後の疲れた身体を引きずってここまで踏ん張った結果がこれだ。ついこの前まではプライド様の急病とかラジヤの侵攻とか奪還戦とか色々あったのに、仕事帰りの兄貴を良い年して待って起こされるとか間抜けなもんだ。民に新しい出来事や情報を広める新聞記者がこんな平凡な生活ばかりじゃ自慢にもならない。

はぁぁぁぁ……、と昔から自覚してる自分の平凡さに呆れて息を吐きながら目を瞑る。

ついこの間までプライド様重病とかラジヤ帝国侵攻とか奪還戦に祝勝会に学校開校と騒がしくて騒動に慣れた所為か、今度は「何か起こらないかな」と仕事柄思ってしまう。権力者の悪行判明とか、騎士団が絡んだ大騒動とか、プライド様に会えるとか、ロベルトの兄貴ん家に女の子が産まれるとか、エリックの兄貴の隊長昇進とか近衛騎士任命とか。別に誰か不幸になって欲しいわけでもないし、簡単に起こるわけがないのはわかってる。けれど。…………まぁ、ある意味こういう




〝平凡〟で〝普通〟なことを、幸せとも呼ぶのかもしれない。




「……取材側からすれば致命的だけど」

最後に呟いた俺は、そこで二度目の眠りに入った。


Ⅱ98

Ⅰ680



ゲームにキースは出てきません。

女王が残した爪痕は、彼の一生分で辿り切れるものでも辿り着けるものでもありませんでした。


いま、キースは幸せです。

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― 新着の感想 ―
ギルクリスト家尊い…エリック大好きキース尊い(◜¬◝ )
[一言] ゼッタイ、後に関わるよね。プライドは新聞の影響力とか有用性、よくわかってるし。 ……この国の印刷技術ってどうだっけな
[一言] 「簡単に起こるわけがないのはわかってる」の例として挙げられたことの中で、騎士団が絡んだ大騒動とかエリックの近衛騎士任命は実際に起きたしキースは知らないうちに既にプライド様に会えたから面白い。…
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