表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1026/2200

〈コミカライズ重版出来・感謝話〉懐古王女は懐かしみ、

10月24日に出版して頂いたコミカライズが重版、再重版して頂けることになりました。

そのため、感謝を込めて特別話を書き下ろさせて頂きました。

少しでも楽しんで頂いて感謝の気持ちが伝われば幸いです。


時間軸は〝我儘王女と準備〟あたりです。


〝昔昔あるところに美しいお姫様が暮らしていました〟


「あらっセドリック。貴方も来たのね」

ここに、とそう言いながらプライドは図書館の扉前で鉢合わせたセドリックに笑い掛けた。

ティアラの休息時間となり、二人で侍女や護衛達と共に図書館へ訪れていたプライドだったがちょうど退室しようとしたところでセドリックが図書館へ入ってきた。

近衛兵のジャックが抱える数冊の本と、そして姉妹でも一冊ずつ楽しみの本を抱えている。

セドリックを確認した途端、プライドの背後にティアラが小さくなって隠れた。ぴょっ、とまるで天敵にでもあった小動物のように引っ込んでしまうティアラにプライドも苦笑いしてしまう。

あまりの不意打ちにティアラも心の準備ができなかった。そしてそれはセドリックも同じである。


「あ、ああ……まさかこんな所で会えるとは思わなかった。……今日は良い日だ」

愛らしいティアラとの再会に顔が火照る中、正直な感想を言ってしまうセドリックの目はプライドの背後に釘刺さる。

姉の背後に隠れるティアラは白い肌を真っ赤にして恥ずかしい台詞にぷるぷると肩を震わせるだけで何も言わない。ぷくっ、と頬を膨らまして怒っているようにも見える表情を姉の背後で俯き隠す。

やっと脈が落ちついたところで、セドリックは次にプライドの護衛と侍女達にも一人一人挨拶する。今や郵便統括役として同じ城に住むセドリックだが、それでもフリージア王国且つプライド関係者である彼らへの礼儀は忘れない。

一頻り挨拶を終えた後、ふとそこでプライドが抱える本に目がついた。


「……それは、何だ?初めて目にするな」

表紙を目に、セドリックは軽く小首を捻る。

絶対的な記憶力を誇る彼は既にフリージア王国の図書館で膨大な数の本を読み耽っていたが、今プライドが手にしている本はその中でも一度も目にした覚えがないものだった。図書館から借りてきたということは自分がまだ学んでいない分野だろうかと興味深く凝視する。

セドリックのその視線にプライドは少しおかしそうに笑ってからその本を抱えていた状態から表紙を見えるように掲げてみせた。


「フリージア王国の絵本よ。ティアラと懐かしいわねって話してたら読みたくなっちゃって」

「……っ、せ、セドリック王弟はご存知ないかもしれませんけどっ」

プライドの言葉にほう、と目を見開くセドリックへ今度はティアラも勇気を振り絞る。

鈴の音のような声を上擦らせながら、姉の背中越しに少しだけ歩み寄ってみる。ティアラが初めて言葉を掛けてくれたことに嬉しさで僅かに顔を上気させながらセドリックは顔まで綻ぶ。興味深い、と言葉にしながら本へ僅かに重心をずらせばプライドも抱えていた本を一度差し出した。

もともと絵本として頁数の少ないそれをセドリックは丁重に受け取ると、パラパラと一枚一枚挿絵の細部まで堪能しながら速読していった。一度視界にいれれば思い返しながら読み込むこともできるが、今は彼女達の前で感想まで伝えたかった。

パタン、ともののニ分もせずに読み終えたセドリックは、先に閉じた本をプライドへ返した。「なるほど」と言いながら、楽しげな笑みを瞳の焔に宿す。


「子ども向けと思ったが、なかなか面白い。絵本など初めて読んだが、物語のみならず絵も美しく細部まで凝っている」

「?子どもの頃とか読まなかったの⁇」

いつも難しい本ばかりを暗記しまくっている彼に気に入って貰えたのは良かったが、意外な一言にプライドは首を傾けた。

セドリックのゲームの設定こそ知っている彼女だが、幼少期の細かい過去までは知らない。

プライドとセドリックのやり取りにティアラもひょこひょこと小さくモグラのように顔を出した。彼女にとっても興味がない話では決してない。

ティアラが顔を半分出してくれたくれたことに一瞬心臓が大きく高鳴りながら、セドリックはプライドへ「ないな」と首を振った。近年まで国を閉じていたハナズオ連合王国でも絵本文化はあったが、セドリックは一度も読んだことがない。


「物語の記述本ならば十九冊読まされたことはあるが、……どれもあまり子ども向けとは思えん」

そう言った時だけ、セドリックの男性的な顔が顰められた。

ぎゅっと眉間を狭めながら、頭の中には鮮明に当時暗記させられた一字一句違わない本の内容と大人達の卑しい顔が交互に浮かぶ。しかし折角目の前にプライドとティアラがいるのにとすぐに悪しき記憶は振り払った。

その代わりについ今目を通した絵本についての記憶を思い出す。


「その絵本の方が遥かに好ましい。特に「幸せに暮らしました」の締め括りが何とも胸が温まる。それにこの主人公と王子も、心なしか似ている」

誰に、とそこではっきりと柔らかな笑みでセドリックは自分の知る王女と王子の名を上げた。

さっきまでセドリックが子どもの頃に一体どんな本を読んでいたのかと、彼の兄達二人に疑問が浮かんでいたプライドもその言葉に懐かしくはにかんだ。ありがとう、と否定も肯定もせずに本を抱きしめ直す。が、途中からはふつふつと熱を感じて視線ごと振り返った。見れば、さっきまで自分の背中に隠れていたティアラが出した半分の顔以外も全て真っ赤に茹だらせている。

ティアラ⁈と思わず叫べばセドリックも目を丸くする。細い眉をぎゅっと寄せて顔中のパーツを中央に寄せているティアラは、唇を絞ったまま怒っているような表情で固まっていた。

自分も抱えていた本を肌に跡がつくほどを握り締め、言葉が見つからない。まさか子どもの頃の自分と同じ感想をよりにもよってセドリックに言われてしまうとは思わなかった。

これがアーサーや他の人間ならば「一緒ですねっ!」と声を弾ませたが、セドリックは別だった。


「〜〜っっ……しっ、失礼しますっ‼︎お先にお姉様のお部屋で待ってますね‼︎」

耐えきれず、顔中から薄く湯気を上げて立ち去るティアラはドレスの下の細い足を細かく走らせる。

タタタッ‼︎と逃げ去るティアラにプライドの方が慌てる中、彼女を追ってその分の専属侍女と衛兵も去っていく。ごめんなさいね、と妹の代わりにプライドが謝ればセドリックも自然と肩が落ちていた。

自分としては素直な感想を言ったつもりだったが、彼女を怒らせることを言ってしまったのかと落ち込んでしまう。「いや、俺が悪いことを言ったのだろう」といえば、プライドも視線を僅かに浮かせてから胸の中だけで納得した。

セドリックから失言はなかったと思うが、少なくとも子どもの頃のティアラと似たような感想を言ったことはわかる。きっと被ったことがティアラにはセドリック限定で腹立たしかったのかしらと考えれば、折角歩み寄った気がした二人の溝は深いと自分まで肩を落としたくなった。取り持つ、まではいかずともセドリックの片想いを応援したい気持ちが強い。


「プライド。もし良ければ今度、他にもティアラが好む物語を教えて貰えるか?絵本でも勿論構わない」

「?え、ええ、構わないけれど…。どうするの⁇」

突然の依頼に目をぱちくりさせてしまう。教えることも構わなければ、プライドもティアラが好む本ならいくつでも知っている。彼女が抱えていった本もそうであるように、博識で読書家のティアラはさまざまな本を読んでいる。今ぱっと思いつくだけでもこの図書館にティアラが好む本は多く所蔵されている。

プライドの純粋な疑問に、セドリックも今度は頭を傾けた。




「好きな女性の好きなものならば、知りたいと思うのは当然だろう?」




「……はい」

あまりの純粋過ぎる答えに、プライドはジワリと顔が熱くなるのを感じた。

顔に力が入ってしまうまま、正面のセドリックに目も合わせられず一言しか返せない。一瞬、このまま本当にセドリックに本を教えるべきか悩む。教えたら最後、原稿用紙百枚分の感想をティアラに語りそうだと思う。

取り敢えず五冊ほどだけティアラが好きな本を抜粋して伝えると、一度で暗記したセドリックは礼を残して機嫌良く図書館内へと去っていった。

その背中を彼女もぱたぱたと手で顔を仰ぎながら見送り、ティアラを追う。ふと自分以外からも熱を感じて振り向けば、背後に控えていた近衛騎士のアーサーが僅かに頬が赤かった。

さらにその背後では、専属侍女のロッテもマリーの隣で目をきらきらしながらぽっと両手で顔を挟んでいる。目の前で繰り広げられる王女と王子の恋は、まさに王族専属侍女だからこそ見れる恋愛ドラマだった。

セドリックの直球台詞に顔が熱くなったのが自分だけではないことにプライドは小さく笑うと、ゆっくりとした足取りで部屋へと向かった。

近衛兵のジャックが寡黙な口を更に強く結ぶ中、マリーとエリックだけが微笑ましく目を合わせ、また前を見る。


部屋へ戻れば、姉の部屋に一足早く戻っていたティアラが、ちょこんと大きなソファーに小さくなっていた。

先に失礼してしまってごめんなさいとプライドへ開口一番に謝るが、姉からすればもういつものことである。

大丈夫よ、セドリックも怒ってないわと言いながらも心の中ではもう少しでも彼と仲良くできたら良いのになとまた思う。未だにティアラが怒って中座する相手などセドリックだけだと考えれば、そちらの方で眉が下がってしまう。だが既に反省もしている上にいっぱいいっぱいな様子のティアラに嗜めを言う気にもなれず、代わりに彼女の気持ちを取り直せるように言葉を選んだ。


「絵本、気に入ってくれると良いわね。私も今度ステラちゃんに読んであげたいわ」

「!はいっ‼︎」

優しい姉の言葉にティアラの金色の目がぴかりと光を宿した。

これからの楽しみを思い出せば、焦燥と羞恥で落ち込んでいた胸が飛び上がった。膝の上に置いていた絵本をぎゅっと握り直しながらプライドの持つ絵本とジャックがテーブルに積んでくれる絵本とを順々に見つめて確認する。

ジルベールの娘であるステラ。今年三歳になる彼女は屋敷でも両親により何冊も絵本を読んで貰っているが、今回は王女二人のお気に入りの絵本を彼女に読んでもらうべくの図書館訪問だった。ただし、ステラへその絵本を読み聞かせるのはプライドでもティアラでも、ましてやバトラー夫妻でもない。


「セフェクもケメトも何度か読んだことがあるので、きっと上手に読めると思いますっ」


そう言ってティアラは嬉しそうに声を弾ませた。

三年以上前からヴァルのナイフ投げ師事の礼に、二人へ絵本や勉強をみていたティアラだが、今ではその二人がステラに絵本を読んであげたいと思うようになっていた。

ジルベールの屋敷へ定期的というほどではなくともステラへ会う為に時折訪れていた二人にとって、今ではまるで妹のような感覚だった。特にセフェクは積極的に面倒を見たがった。そして今回、その為に絵本を貸してほしいとティアラに相談したのもセフェクである。

楽しみね、と二人で積み上げた絵本をテーブルに広げる。この後に配達で訪れた際にケメト達に選んで貰うつもりだが、気持ちだけで言えば全て貸したいくらいだった。読み終えた後はステラからジルベール越しに返してもらう予定だが、流石にこれ全ては荷物として邪魔である。最悪の場合、配達物とは別にヴァルの手荷物を増やすことになると二人は言わずとも想像できた。

アーサーとエリックへもどれか読んだことはある本はあるかと投げかけながら、懐かしい思い出に姉妹達は話に花を咲かせる。

すると今度はコンコンッとノックの直後、扉の向こうから声がかけられた。プライドの返事からすぐに開かれた扉から彼女達のもう一人の兄弟が現れる。


「いかがでしたか、良い絵本は見つかりましたか」

休息時間を与えられたステイルの訪問に、笑顔で返す姉妹はテーブルに並べた絵本を彼に示した。

懐かしいですねと見覚えばかりの表紙を眺めるステイルも彼女達に並ぶ。どの絵本も自分が子どもの頃にティアラ達と一緒に読んだものばかりである。

一つ一つに当時の思い出が浮かべば自然と顔が綻んだ。中でも一番記憶に強い絵本が目に止まれば、ティアラもすぐに察して兄の顔を覗き込んだ。


「兄様も懐かしいでしょ。この絵本は一番特別だからセフェク達にも絶対勧めるのっ」

ふふっ、と悪戯っぽい笑みを溢しながら、ステイルの視線が釘刺さる絵本をさらりと指で撫でた。

その途端、一瞬〝特別〟の意味が浮かんだステイルは反射的に口を噤む。僅かに頬が染まる中、プライドが「特別?」と投げかけた。近衛騎士二人も気になるように視線を注ぐ中、元気の良い声でティアラは絵本を手に取り彼らにも見えるように両手でそれを抱き締めた。


「兄様とお姉様と初めて一緒に読んだ絵本ですものっ!私、今でもしっかり覚えています!」

ほくほくと幸せいっぱいの満面の笑みを浮かべるティアラは、目をきらきらさせた。

当時、まだ新しい生活や兄姉にも馴染みきれるかと小さな心臓が忙しなかった自分を二人が温かく迎えてくれたことは、彼女にとって忘れられない思い出のひとつである。

兄姉の中で一番年下にも関わらず、ちゃんと覚えていると胸を張る妹にプライドとステイルも互いに目を合わせて笑んだ。ティアラと同じく当時のことは当たり前のように二人も覚えている。

私もよ、と返すプライドに続きステイルから「当然だ」と落ち着けた声が出た。二人の反応を嬉しそうに満面の笑みで輝かせるティアラは、この場で跳ねたい気持ちを抑えた。代わりにくるりと踊るように近衛騎士達へと向き直る。

表紙を見えやすいように持ち直しながら「お二人は読んだことはありますか?」と黄金の瞳で投げかけられればアーサーとエリックも瞼を強く開いて見返した。


「いや、俺はあんまそういうのは……」

「自分は表紙だけ覚えがあります。昔、近所の子どもが読んでいたので。とても人気でしたしきっと良い話なのですね」

首を横に振るアーサーに代わり、エリックが記憶を手繰り寄せた。

子どもの頃から少女向けの絵本は全く読まなかったアーサーは、買って貰ったとしても全て騎士関連のものである。しかも途中からは絵本よりも父親の話を聞くことの方に夢中だった為、あまり絵本に思い出はない。店の客の子どもが読んでいても全く気にも止めなかった。

そして男兄弟しかいないエリックも、ティアラが掲げてみせる絵本については自身は同様である。しかし弟達の面倒を見ていたこともある彼は、近所の少女がそういった絵本を好んでいたことを覚えている。

エリックからの言葉に嬉しそうに頷くティアラは、城下の子どもにも人気であることに今度こそ小さく飛び跳ねた。自分の大好きな絵本を城下の子どもも読んでいることが言いようもなく嬉しくて堪らない。

にこにこと嬉しそうなティアラと笑みで返すエリックを横に、アーサーは小さく位置をずらすと相棒へ視線を投げた。


「一緒にっつーことはお前も読んだのか?」

「…………まぁ」

表紙からして少女向けの絵本だが、姉妹に付き合って読んだのだと言われればアーサーもステイルなら納得がいく。

しかし自分が出会った頃には既に分厚い上に小難しい本ばかり読んでいたステイルが絵本も読んでいたというのは少しアーサーには意外だった。相棒からの問いかけに、眼鏡の黒淵を指で押さえたステイルは小さく目を逸らす。

そんなことをしてもアーサーに隠せないことはわかっている。それでも当時の絵本を読んだ記憶を浮かべれば、耳がほんのり熱を抱いた。この場でその時の思い出を言うのは色々な意味で苦しい。しかし


「ステイルも子どもの頃は気に入ってくれたわよね」

「ッッいえ!それはっ…‼︎」

フフッ、と含みもなく微笑ましい思い出を軽く溢すプライドにステイルの肩が上下した。

どうかどうかそれ以上は言わないでくれと心の中で念じながら、今度こそ顔色に出てしまう。当時の自分がその絵本をどれほど気に入り、……気になって読み返してしまったことを思い出せば今でも顔から火が出る思いだった。庶民だったころは読んだことのない絵本だったが、今でも完全に暗記してしまっている。

ティアラも兄のその様子にふふっと笑いながら、当時のことを思い返す。あの時も姉の優しさと兄の可愛さに胸がぽかぽかしたことを覚えているが、今ここでアーサー達にも言うのは意地悪すぎるかしらとそこは唇を敢えて結んだ。

それは、って?とプライドが首を捻れば、ステイルは水面下で慌ただしく言い訳を探す。間違っても「ティアラの為に仕方なく」「本当は興味ありません」と二人を傷つける嘘をこの場で言いたくない。当時自分があの絵本を気に入った理由は……とそこまで頭を回してとうとう絞り出す言い訳が見つかった。


「……子どもの頃、それに出てくる〝魔女〟がジルベールに似ていたので。王子に真っ二つにされる魔女の場面は爽快でした」


もう兄様っ!と、直後にはティアラの怒った声が叫ばれる。

ぷんぷんと細い眉を吊り上げて怒るティアラだが、反してステイルは誤魔化せた安堵で気づかれないように息を吐く。

あはは……とプライドが何とも言えない枯れた笑みを溢すが、確かに当時からステイルが魔女に敵対心が凄まじかったことを思い出す。まさかよりにもよってその場面が気に入っていたなんて、と思いながら怒る妹と怒られる弟を見比べた。

アーサーが「ジルベール宰相は男だろ」とまた別方向の訂正を口にしたが、ステイルはそういう話じゃないと短く切った。絵本を読めば当時のジルベールの悪行を知るアーサーにも言わんとしている意味は伝わるとは思ったが、今ティアラやエリック達がいる前でまであきらかにしたくはない。

否定のまま一度口を閉じて誤魔化そうとするステイルの表情に、じぃぃ……と蒼い視線だけをアーサーは真っ直ぐ注いだ。気付いたステイルも、むぎゅっとアーサーの顔面を広げた手で掴むように背けながら「見るな」と顔ごと逸らした。それ自体がアーサーへの返事でもある。


〝泣かないで下さい、姫。私はきっと七年後にここへ帰ってきます。その証としてこの誓いを貴方に送りましょう〟


「私も今でもその絵本は好きよ。初めてティアラとステイル二人と一緒に好きになれた本だもの」

頬を膨らます妹と全員から顔を逸らす弟に、困り眉を垂らしながらプライドはせめてフォローをと自分からも絵本の感想を試みる。

当時から弟妹共通の〝好きな〟姉であるプライドの言葉にステイルとティアラも自然と肩の力を抜いた。

「私もですっ」とプライドへ飛びつきぎゅっと抱き付くティアラは、改めて他の並べた絵本も近衛騎士達へ示して見せた。


他に見たことがある絵本はありますか、と。ティアラ主導で行われる絵本談義はヴァル達が到着するまで続いた。


Ⅰ291.316

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] セドティア日照りに恵みの雨がめっちゃ沁みます。ありがたや。 こう見てるとセドリックってプライドともティアラとも似てる面があるんだなって思いました。 プライドとは、恋愛面の感性が非常に鈍いこと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ