第11章 日常時々トレジャーハンティング(10)
ストーリーの諸事情により今回は短めです。
※ 1429字
ゴウと翔太が惑星ヒメジャノメを調査している時・・・。
「翔太、一気にやるぞ」
『いやいや、一気にやるのは良いけどさ。その言い方だと、僕とゴウ兄で作業するみたいだよね。ゴウ兄は作業を手伝う気ないよね』
ゴウと翔太はシマキジに搭乗していた。そのシマキジは森の上空に停止していて、操縦席にはゴウが座っている。
翔太はクールグラスをかけ、自分のコネクトをオペレーションルームの端末にセットし、ルーラーリングを有線接続していた。
「当たり前だ。俺が手伝うより、翔太一人の方が早いんだからな」
『そうだけどさ。少しは手伝おうとする気遣いが必要だと思うなぁー。女性はそういうとこ、結構気にするんだけどね』
「うむ、ならば問題ないぞ。なんせ、翔太は男だからな」
『まあ、気が利かなくても構わないからさ。安全確保は、気を抜かないで欲しいかな』
翔太のいるオペレーションルームには、シマキジの操縦系統と物理的に別の回線になっている。そのためシマキジの安全はゴウの双肩にかかっているのだ。
新開グループのエンジニアが翔太専用に設計開発したもので、小型飛行コウゲイシ”オテギネ”を最大9機を同時に操縦できる。そのような特殊な仕様を盛り込んだため、他の操縦系統との接続が不可能だった。
ルリタテハ王国には操作系用の標準通信規格があり、当然新開グループも標準に準拠している。本来なら操縦系統の統合は容易いのだ。新開グループ以外のエンジニアが知ったら、9機分の操縦系統を1つのオペレーションルームに装備しているのが間違っていると指摘するだろう。
そもそも標準通信規格では9機分の操縦系統の統合をサポートしていない。ただし新開グループでは、独自仕様を追加した拡張通信フレームワークを採用していた。その拡張部分には、最大32の操縦系統を統合できる仕様を盛り込んでいた。その他にも多様な仕様が盛り込まれている。その殆どは、オリハルコン通信と各機種特有の操作を簡便にするための仕様である。
それらの拡張部分は、翔太のマルチアジャストにとって非常に有用であった。
またオテギネは、新開グループのコウゲイシ研究開発生産会社”機械人”が生産している。つまり、新開グループの拡張通信フレームワークを使用しているのだ。
「任せろ、翔太。それより今日のノルマは8ヶ所だぞ」
『いやいや、倍でも問題ないぐらいさ』
翔太は軽口と共に9機のオテギネを森の中へと放つと、全機が僅か数秒で最高速に達する。次々とオデギネはモニタリング端末の許に辿り着き、物理接続でデータを収集していった。
TheWOC対策として、シマキジとオテギネは無線ではなく有線で接続している。9機のオデギネが数十ヶ所のモニタリング端末から情報収集したのだ。それにも拘わらず、線同士が絡まりもせず、また森の木や岩で切れることなく収集を完了させた。
ノルマの8ヶ所の倍どころか、3倍の24ヶ所でも廻れそうな早さだった。
ゴウは惑星ヒメジャノメに来る前の翔太の実力から推定して、ノルマ8ヶ所と言った。しかし翔太は、実力に裏打ちされたの軽口であったことを1ヶ所目で証明したのだ。
翔太はオテギネをシマキジの格納庫に帰還させてから、オペレーションルームに向かった。ゴウは翔太がオペレーションルームに戻るのを待たず、次のポイントへとシマキジを飛ばす。
暫く飛行すると森を抜けた。モニタリング端末は渓流に設置している。その渓流へと向かう途中に、小高い急峻な岩山がある。
そこは、オオヒゲワシの群生地だった。




