第11章 日常時々トレジャーハンティング(8)
「さて、結界を張るぞ」
「張るのはオレだけどな」
警戒網から約100キロメートル、宝船から約350キロメートル離れた地点。そこの小高い岩山にアキト、ゴウ、翔太が立っていた。
「いやいや、僕とゴウ兄の協力なしではできないよね」
「協力といっても、荷物運びだけだろ」
「それは、十分に協力してるってことさ」
「そうだともっ! しかも、トレジャーハンター2名が護衛までしてるのだぞ」
両腕を組み少しだけ背を逸らした尊大な態度と、偉そうな口振りでゴウは言い切った。
「なあ。結界はオレの為じゃなく、全員の為だよな? なんでオレが感謝しなきゃいけねぇー流れなんだ? 逆だぜ」
「結界を張る提案をしたのはアキトだぞ」
「そうそう。それにトレジャーハンターハンティングユニットお宝屋が協力するんだよ。それなのに感謝の気持ちを表すのに言葉だけで済むのは、普通じゃあり得ないね。それもこれもアキトと僕が永遠の友だからさ」
議論にならない議論をするなんて、時間が勿体ないだけだな。今日中に結界を張って、明日からはトレジャーハンティングに専念したい。
昨日ゴウが風姫と戦い勝った。暫くはゴウからの圧力に屈して、風姫はワガママを言えないはずだ。圧力が効いているうちに思う存分トレジャーハンティングを愉しみたいぜ
その為に、対TheWOC用の結界を張り巡らせ、安全を確保するのが喫緊の課題なんだからな。
昨日、ゴウと風姫が戻ってくる前に、警戒エリアの索敵システムのレーダー装置に反応があった。
少なくとも大気圏突入艦船が2隻。
ルリタテハ王国船籍であることを示す識別コードを発していなかったことから、TheWOC所属の艦船と断定できる。ここはルリタテハ王国領であり、船籍を明らかにするため、ルリタテハ王国の識別コードを発する義務がある。
他国の船であっても、ルリタテハ王国に許可された識別コードを発していなければならない。そうでなければ、問答無用で撃沈されても文句を言えない。
つまり、惑星ヒメジャノメで識別コードを発していない船は敵である。
「翔太。ここは寿老人にすんぜ。防御優先設定な」
「了解だよ、アキト」
翔太は寿老人ロボに乗り込み、岩場の陰に隠す。隠しきれていない部分は、防御用の盾にもなる宝船の帆で護るように設置する。
防御優先でも攻撃も必要である。大気圏内では宇宙空間と比べレーザービームの減衰が激しいので主武装はレールガンにした。宝船のマストに弾倉を装備し長距離レールガンとする。
「ゴウは索敵レーダーの設置を」
「ふっはっはっははーーー、任せろアキト」
トウカイキジの格納庫からトライアングル”カミカゼ”が顕れゴウの許へと向かう。カミカゼの3枚のオリハルコンボード上に4台の小型機器が載っている。12台1セットのレーダー装置で、寿老人とレーダー警戒網にデータリンクするようになっている。
アキトたちは森や渓谷、岩場など、七福神ロボを隠せそうな7ヶ所に同じように設置したのだ。最後は、七福神ロボの中央付近にワープエンジンから取り出したミスリルを設置し、アキトお手製の装置を取り付けたのだった。
結界を張り終えたのは、日が沈んでから2時間経っていた。
「これで明日からトレジャーハンティングができるぜ」
「うむ。良くやったぞ、アキト」
アキトは結界を張る作業で疲弊していた。その体にゴウとの会話による疲労を重ねたくなかったので、アキトは労いの言葉に対して無言を貫いたのだった。




