表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンツハンター  作者: 柏倉
第2部 ルリタテハ王国の神様の所業
64/119

第11章 日常時々トレジャーハンティング(4)

 ゴウとアキト、翔太は史帆達3人の許へと全速力で駆ける。意外にも、3人の中で海辺を走るのはゴウが1番早い。そしてアキト、翔太に続き、3台のカミカゼが高速で疾走する。

 3人ともカミカゼのROP機能を起動したのだ。

 ROP機能・・・Return to Owner Position機能とは、カミカゼが自動で所有者を迎えに行く機能である。正確にはルーラーリングで生体情報を読み取り、コネクトがカミカゼと一定間隔でデータ通信している。その通信によってカミカゼは所有者の位置を常に把握し、ROP命令を受信次第、駆けつけるのだ。

 カミカゼに乗るより走った方が早いと、ゴウ達3人は即座に判断したからだ。

 その判断は正しく、ゴウは史帆の元にカミカゼより早く到着したのだ。そしてアキトと翔太は、カミカゼにタッチの差で勝利した。

 アキトはゴウより脚が早く、同じ場所にいた。それにもかかわらず、アキトはゴウより到着が遅れた。その場所で1番早い走り方をゴウは選択しているからだ。2人のトレジャーハンターとしての経験が差となって表れたのだ。

「風姫、史帆を立たせろ。動かすなっ。そのまま抱きしめてろ」

 ゴウの勢いに、風姫は言われた通り座り込んでいた史帆を立たせ抱きしめた。

 女子2人が水着姿で抱き合い、滑らかな肌が海水の雫をはじいている姿は、非常に魅惑的である。特に風姫がもつ華やかな雰囲気はアキトを魅了する。逆に言うとアキトは、余裕があるため風姫に魅了されたのだ。

「エラブウミヘビにしては口の開きが大きいぜ・・・独自進化したエラブウミヘビ亜種だな」

 エラブウミヘビ属内のエラブウミヘビ種の口は小さい。

 いくら細身の史帆の太腿とはいえ、咬めるものではないのだが、口が180度近くまで開いているのだ。惑星ヒメジャノメで独自の進化を果たしたらしい。

「おお、そうなのか。千沙、史帆の膝を固定してくれ」

 ゴウはアキトの言いたいこと、そして史帆に聞かせたくないことを瞬時に理解した。エラブウミヘビは、エラブトキシンと呼ばれる神経毒の一種を持っている。独自進化した亜種も神経毒を持っていると推定される。

 流石のコンビネーションであった。

「・・・なに?」

 史帆は不安そうに尋ねたが、翔太が安心させようと微笑を浮かべ、軽薄な口調で答える。

「まあまあ、まーったく心配ないよ」

 少しだけ史帆は落ち着いたが、それは一瞬だけだった。

 史帆の目に2本のコンバットナイフを構えたゴウの姿が映ったからだ。

「ひぃっ。い、嫌ぁ・・・」

 史帆が悲鳴を上げきる前に、ゴウは2本のコンバットナイフを一閃した。

 エラブウミヘビの毒牙を微動だにさせず、口の端から風姫が切断した頸部まで上下に分割したのだ。そして重力によって蛇の頭と下顎が下へと動くよりも早く、ゴウは頭と下顎をコンバットナイフで深々と突き刺す。

 そして、コンバットナイフを器用に使い、史帆の太腿に余計な傷をつけずに毒牙を引き抜いた。ゴウがコンバットナイフを背後に向けると、アキトはエラブウミヘビの頭と下顎を受け取る。

「アキト、分析しろ。翔太、簡易メディカロイド準備。往けっ! それとカミカゼはアキトの1台だけでだぞ」

 2人に指示を出しつつも、ゴウは史帆の傷口から視線を外さない。

「「了解!」」

 アキトのカミカゼ水龍カスタムモデルは、適合率調整を元に戻していた。つまり残る4人には操縦不可能なのだ。

 アキトのカミカゼをアキトでなく翔太が操縦し、トウカイキジに積んである簡易メディカロイドへと急ぐ。アキトには不本意だが、翔太が操縦する方が早く到着するからだ。

「千沙は蛇の胴体を回収。翔太のカミカゼで待機だ」

「私にできることはあるかしら? 何でもするわ」

 風姫が手伝いを申し出たが、彼女にできることはないな。

 それどころか、お宝屋のコンビネーションの邪魔にしかならない。風姫に何もさせないことが最大の手伝いだろう。

「今は、そのまま史帆を押さえてろ」

 ゴウは顔を上げ、史帆に尋ねる。

「痺れはあるか?」

「はい・・・」

「呼吸はどうだ? 苦しくないか?」

「・・・特には」

 体全身の痺れてるが、呼吸困難にはなってないか・・・。

 毒は史帆の体内に入ったが、すぐに処置すれば問題ない量と判断して良いだろう。しかし、体内にある毒の量は少なkれば少ないほど良い。

 ゴウは躊躇せず史帆の太腿に口をつけた。

「ひゃっ・・・あ、あ、あっ」

 史帆の口から、思わず羞恥に塗れた声が漏れ出た。

 構わずゴウは史帆の太腿から神経毒の混じった血を吸い、海へと吐き出した。

 血を口で吸いだすのは、口の中に傷があるなどで対処者にも毒が入るリスクを抱える。そのため推奨されないどころか、本来はすべきでない。

 しかし、ゴウに一切の躊躇はない。

 5回ほど毒を吸い出した後、ゴウは有無を言わせず史帆を横抱きにし、自分のカミカゼに乗った。史帆が抵抗したがゴウの膂力には全く敵わない。

「動くなっ! 体中に毒が回るぞ。大人しく俺に抱えられてろ」

 一喝された史帆は、顔を真っ赤にしながら大人しくなった。心の準備もないまま、男性に初めてお姫様抱っこをされては、心拍数が限界値まで跳ね上がっても仕方ないだろう。しかも史帆は、学生生活を技術で埋め尽くしていたため、恋愛に縁が遠かったのだ。

「千沙は風姫と一緒に乗ってこい」

 ゴウは千沙の返事も聞かず、カミカゼを追尾モードにしてトウカイキジへと疾走させた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ