第9章 TheWOCの科学者(4)
宝船に装備されたメディカロイドは、新開グループの最先端技術の固まりである。それはルリタテハ王国の最先端技術であることを意味する。他のメーカーの最新機は新開グループの2世代前ぐらいの性能なのだ。
しかし高い性能には高い価格が伴う。新開グループのメディカロイドの市場価格は、桁が1つ上になる。
その最新鋭メディカロイドを翔太は苦もなく操ったのだ。
7ヶ所の粉砕骨折。
10ヶ所以上の単純骨折。
腱と筋の断裂は多数。
裂傷は無数である。
そんな満身創痍のヴェンカトラマン・ラマクリシュナンの肉体が、約1ヶ月で回復するとメディカロイドに診断されたのだ。
またメディカロイドには、オリハルコン合金の精神感応による痛覚無効化技術が標準搭載されている。
治療中の肉体への負荷をミスリル合金の重力を変化させてコントロールする。宝船のメディカロイドは、無重力から2Gまで0.001G単位でコントロールできるのだ。体の治り具合によって、メディカロイドは治療カプセル内の重力を調整するのだ。
ラマクリシュナンを治療しているメディカロイドの部屋に、アキトたち4人が入る。
「なんだ、あれ?」
「最新式のメディカロイドさ」
「そうじゃねぇーぜ。きたねぇーもん見せんなってんだよ! しかも何で強調してんだ?」
円柱状の治療カプセルの中で、ラマクリシュナンが素っ裸で浮かんでいるのだ。
「ライトといったら、アップライトに決まってるぞ」
「そうじゃねぇー。オレが言いてぇーのはっ・・・」
アキトの言葉を遮るように、翔太が口を挟む。
「そうそう、アキトの言う通りだよ、ゴウ兄。やっぱりダウンライトも必要なのさ。次の整備で、全カプセルに取り付けるべきだよね」
「うむ・・・だがダウンライトより、横からのスポットライトを追加すべきと俺は思うぞ」
翔太は顎に手を当て、肯きつつ答える。
「なるほどなるほど、それも魅力的なオプションだね」
「何を言うのだぁああああ」
突然大声を出したシュテファン・ヘルが、オーバーリアクションでセリフを続ける。
「我輩が考えるにぃーー・・・両方を装備するという、その一択しか、あ、り、得、な、いぃいぃぃーーーー」
ヘルは治療カプセルを指さし、最後にポーズを決めた。
「シュテファーン・・・ヘルッ!」
ゴウはヘルの両肩に手を置き、喜色満面の笑顔で告げる。
「うむ、良くぞ、良くぞ言った。その通りだぁああああ。そしてお前は、科学者としてでなくトレジャーハンティングユニットお宝屋で輝く逸材である」
暑苦しい筋肉ダルマと禿頭のマッドサイエンティストが意気投合している。
「貴様の目に寸分の狂いも、いや量子レベルでの誤差もない」
満足気に肯き、ヘルは言葉を継ぐ。
「ただ・・・しかぉーし、我輩は宇宙一の科学者にして研究者である。人類の技術の進歩は貴様の手を置いている我輩の双肩にかかっているぅうううう」
何だって装備に余計な代物をつけたがんだ。オモシロくしないと死んじゃう病なのか?
全くもって、相も変わらずのオモシロやだぜ。
「何を言ってるのだ、ヘルよ。宝船で今も研究してるじゃないか」
「おおぉーーー。まさしく我輩は、今も研究しているぅ。宝船でも研究は可能・・・承知したぁあああーーー」
ゴウはヘルの肩から手を離し、一歩下がってから右手を差し出した。その手をヘルが力強く握りしめた。
その時、4人以外の声が部屋に響いた。
『君たちは面会に来たんだろう? 何故にワシを放っておく。目的を忘れるとは、科学者としての基本がなってない。まず目的を達成するためのマイルストーンを設定し、それをクリアしていかねばならないのだからな』
素っ裸のラマクリシュナンが目を開け、口を動かしていた。
「うむ、それはそうだが・・・股間を輝かせて吠えても、みっともないだけだぞ」
「いやいや。神聖なる光に隠されてるじゃないか、ゴウ兄」
『これは、ワシの意思ではない』
「その通りだ。しかぉーし、みっともないことに変わりはない。我輩は、同じ民主主義国連合の出身として恥ずかしいなぁあああーーー」
『おぉーっと、それは間違ってる。すでに君は死亡したことになっている。シュテファン・ヘルという人間の戸籍は抹消されているのだからな。全くもって、浅慮というしかない』
「たかが書類上のこと、我輩はまっっったく気にならない。書類上は生きていて、もうすぐ死亡する己自身の行く末を案じる方がいいそぉおおおーー」
『待てっ! この惑星には、TheWOCの軍が駐屯している。今頃はワシを捜し回っているんだ。そっ、そう・・・ワシなら、TheWOCとの間をとりなしてやれるんだからな。どっ、どうだ?』
「残念だったなラマクリシュナン。貴様は1ヶ月もの間、目を覚まさなかったのだ。宝船はヒメジャノメ星系に向かって航行中であぁあぁるっ。そして貴様は我輩に命の貸しがあるだろう。故に命で返してもらおう。そうだぁあああーーー、取り敢えずは全身脱毛からしてもらおぉおおおおーーー」
サラッと嘘を吐いた上に、ヘルはジンの思考パターンを見事にパクっていた。
「ホント、人として間違ってるぜ」
「いやいや、アキト。マッドサイエンティストって人種は、人として扱わなくてもいいのさ」




