第9章 TheWOCの科学者(1)
気が付くと草原に横たわっていた。
ここは何処なんだろうか?
目を瞑り、覚醒しきれていない頭で気絶する直前の記憶を探ってみる。
空を舞っていた・・・。
落とされた・・・。
巨大な猛禽類の趾に胴体を鷲掴みされ、どこかに連れ去れそうになっていたんだ・・・眼下には森が広がっていた・・・。
どうして猛禽類に捕まっていまったんだろうか?
そうか・・・。
突如として甲殻獣の群れに襲われ、オリビーの全速力で逃走してた・・・体当たりを喰らって岩壁に叩きつけられ・・・オリビーが潰れた?
オリビーの中では、積んでた調査機が壊れ散乱し邪魔だった・・・外に脱出するのに時間を要したんだ。何とかオリビーから這いでと思ったら、巨大な猛禽類の鋭い爪が目前に迫り・・・そして。
腹部を締め付けられ、苦しくて気が付いたら・・・そう、空だったんだ。
落ち着け・・・いいか落ち着け、ヴェンカトラマン・ラマクリシュナン。
さっき目を開けた時、風景は草原だった。
そう、助かったんだ。
ウォルトンあたりが、慌てて救助しにきたんだろう。
TheWOCの天才研究者にして調査隊の責任者たる俺様は、この惑星において誰よりも優先保護の対象なのだ・・・。
しかし俺様は、なぜ草原の上に横たわっているのだ?
現状を確認、理解するまでは慎重な行動が好ましいだろう。
まず自然にみえるよう寝返りして、反対側を確認するのだ。
62歳のラマクリシュナンの希望は裏切られることになる。
彼の反対側には宝船の舳先が停泊している。そして宝船のすぐ横には防腐処理を施され、解体されつつある甲殻獣の死骸があるからだ。




