第5章 戦闘(2)
話し合い終了から、更に2時間後。
アキトVS翔太の模擬戦闘開始まで、15分後に迫っていた。
ジンに装備の提供を承諾させ、換装にヘルを手伝わせ、ようやくセンプウの出撃準備が整った。センプウのコクピットで、アキトは立ったままの状態で体を固定された。クールメットを被りコクピットを閉じる。機体内部の全面がディスプレイになり、情報はクールメットに半透明で映し出された。
模擬戦闘モードへと設定変更し、アキトはユキヒョウの戦略戦術コンピューターを選択する。お互いの戦略戦術コンピューターが、命中及び損害を判定する。
しかしジンは、お互いの戦略戦術コンピューターでも判定するダブルチェックが必要だなと宣い。そこにジンの性格の悪さというか、強かさが窺える。
損害判定に???要な七福神ロボの武器のスペックのデータを、お宝屋から提供させて???いて、ジンの方は通常のレーザービームライフル”雷”の武器スペックを渡したのだった。
演習モードへと切り替えた瞬間、風姫の凛とした声が鼓膜に響く。
《1対1のはずだわ。なんで7機も布陣しているのかしら? お宝屋とは言葉を違える卑怯なトレジャーハンティングユニットなのかしら?》
演習モードと模擬戦闘モードとの最大の違いは、戦闘相手とも会話が可能になることだ。つまり敵陣営との通信が繋がった状態での戦闘である。
『俺は、1人対1人と言ったぞ。何を問題としているのか、まったく理解できぬなぁ』
『私はセンプウででるわ。ジンも出撃し・・・』
『風姫よ、落ち着くが良い。アキトが話していたが、お宝屋の次男は7機を1人で操縦できるそうだ』
《そうそう。そしてアキトは、僕に勝ったことがないんだよね》
「正しい説明をしろよ、翔太。4機相手までならオレの方が強い」
《いやいや、その場合でも僕の勝率は、30%ぐらいあったよね。それにさ、僕が5機を操縦したら、勝率は100%だったかな》
「そん時は、3機撃墜したぜ」
『それではダメでしょう。お宝屋は7機なんですよ』
彩香は、即座にダメ出しした。
『最新鋭のサムライでジンの訓練を受け、死線すらも乗り越えてきたわ・・・。だから・・・、やっぱり無理かしら? 無理そうね』
風姫は冷静に検討し、あっさりと結論を出した。
戦意が萎んでいくぜ。味方ならオレの戦意を高揚させたり、応援するべきだ。
「ふぅ・・・出撃するぜ」
《頑張ってぇ~。アキトく~ん》
オレを応援するのは、敵のはずの千沙だけかよ。
「勝ってもイイのか、千沙?」
ゆっくりとした口調だが、即座に答える。
《う~ん、それは困る~》
そうだよなぁ・・・。
ホントの味方が欲しいぜ。
ユキヒョウの格納庫のハッチが開き、アキトの乗るセンプウが格納庫から出撃した。
4本のオプションスラスターを装備し機動力を上げ、両手に幽黒レーザービームライフル”轟雷”を持つ。そして背中に手打鉦を装備している。これで背後からのレーザーなら防げる。
しかし手打鉦の所為で、背中のメインエンジンが使用できなくなる。ほぼ機動力に変化はなく、的が大きくなる分不利になる。
『7機を1人で操縦するなんて、非常識』
史帆の呟きに風姫は思考を刺激された。
『ジン。お宝屋はどうやって、1人で7機を同時に操縦するのかしら?』
《僕はマルチアジャスターなのさ》
翔太は風姫の疑問に対して間髪入れずに、核心から少しずらした答えを返した。
『聞いたことないわ』
《ふっはっはっははーーー。翔太以外には存在しないだろうな。これぞ、お宝屋の血の成せる業ぞ》
《いやいや、ゴウ兄。存在するかも知れないし、これは遺伝でもないからさ》
彩香は丁寧な口調であるが、猜疑心一杯の声音で断定するように訊く。
『本当は戦術コンピューターが操縦するのではないでしょうか?』
『なんだとぉおおおーーー。それでは、すでにお宝屋は負けているのだなぁあ。我輩を宝船に乗船させ、全ての技術を晒すのだぁあああああ』
「うっさいぜ、ヘル。翔太は7機でも10機でも戦闘可能だ。ただ単に、目的地へと編隊を組んで進むだけなら、100機でも200機でも操縦できる特殊人間なんだ」
『脳の改造手術かしら?』
『薬?』
『お宝屋という、人外の血の成せる業でしょう』
『おおぉおぉおおおおーーー。なんと異能の存在ということなのかぁああああ。是非、我輩に解析させて欲しいぃいいい。いや、絶対に解析するぅううううーーー』
《な、んだと・・・。そうだったのか、翔太。いつの間に異能を手に入れたんだ?》
《知らなかった・・・》
《とうとう・・・バレてしまったよ、アキト。これは、アキトと2人だけの秘密だったんだ。アキトと僕は、ある惑星で禁断の大蛇の肉を口にし、覚醒したんだよ。覚醒には個人差があってね。僕はルーラーリングからの適合率が向上し、アキトはエンジニアとして才能が著しく向上したんだ。僕は向上した適合率を滝行や瞑想などの修行により、マルチアジャストというスキルにまで昇華させたのさ》
「もっともらしいウソを吐くなっ! オレは大蛇に丸飲みされた上、その肉で食中毒になったんだ。トレジャーハンティングで1日に2度死にそうになったのは、初めてだったぜ」
《えっ・・・トレジャーハンティング以外では、1日に2度以上死にそうになったの?》
「ルリタテハの踊る巨大爆薬庫と一緒にいるんだ。どうやっ・・・」
『素晴らしいぃいいい。なんと素晴らしいぃいいいーーー。その大蛇の肉は残ってないのか? 分析してみせる。きっと精神感応ダークマター”オリハルコン”が脳に滞留しているに違いない。おおぉおおお、我輩としたことがぁあああーー。アキトの脳というサンプルがあるではないか、早速解析せねばなら・・・』
ヘルの妄言を千沙が遮る。
《アキトくんは、実験動物じゃないのっ!》
《そんなことは、絶対に許さんぞ。俺が貴様を葬り去ってやる》
ゴウは激昂し、声を荒げた。
『これ以上、迷走しないようにっ!』
厳しい口調で、彩香は全員を黙らせた。
センプウが戦闘宙域に到着し、アキトは戦闘開始準備を整えた。
翔太と同様の特殊人間と誤解されたままでは堪らないので、風姫たちに事実を教える事にした。
「マルチアジャストは、大蛇の肉を食べる前から持っている翔太のスキルだぜ」
《良かった良かった、どうやら誤解は解けたようだね・・・。そうそう、僕はいたって普通の人間さ》
『いい加減にしてくれないかしら。不愉快だわ、面白屋劇団さん。さっさと勝負を開始しなさい。アキトに勝てないから開始を引き延ばしてるのかしら?』
《あれあれ、さっきは”無理そうかしら”って言ってたよね?》
「御託は、いらねーぜ、翔太。戦闘開始だっ!」
センプウのオプションスラスターを全開にし、宝船へと針路をとり一直線に加速する。
《油断するな、翔太よ。アキトは、サムライシリーズのセンプウを操縦しているぞ》
《了解だよ》
翔太は短く返答した。
それは、七福神ロボのセミコントロールマルチアジャストの影響である。流石に7機を操縦し、戦闘状態となっては、いつもの軽口を叩く余裕がないのだろう。
「ゴウ。アドバイスは反則だぜ」
《アキトくん、このぐらいは応援のうちだよ~》
『まったくだ。汝は我の指導を受けたのだ。そのぐらい叩き伏せてみせよ、アキト。良いか翔太とやら、センプウの背中に装備した手打鉦は、宇宙戦艦の主砲ですら弾き返す』
「ジィィィィーーンーー。なんてこと、敵に教えてんだぁああああ?」




