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エレメンツハンター  作者: 柏倉
第3部 ルリタテハ王国の空人の本気
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第2章 エレメンツハンター学の教授は常に忙しい(9)

 選抜軍人のライデン8機は編隊を崩さず、アキトと翔太のラセンを迎撃する陣形を取っている。

 この一年、選抜軍人たちは戦闘シミュレーションで、編隊飛行の連携を崩され、孤立や隙をみせた機体から破壊されていった。操縦の腕をあげ、編隊飛行の連携技術を磨き、簡単には倒されないようになってきた。

 そして戦闘シミュレーションの時間が徐々に延びていき、今では1時間以上かかるようになっている。アキトと翔太が未だに手加減している状態での結果だが・・・。

 しかしその実力では、突撃してきた2機を迎え撃つには、実力が不充分だった。

 選抜軍人によるエンライの射撃による輝線は、掠めるどころか数舜前の場所を通る。

 連携した射撃で追い詰めようとしても、悉く先に回避されている状況では、アキトと翔太を誘導できない。

 アキトは螺旋の軌道を大きくしたり小さくしたりと、選抜軍人の射線を見て、予測を加えて調整している。

 選抜軍人の射線の数が、半分に減った。

 ラセンからの4度の射撃で4機が撃墜されたからだ。

 アキトと翔太は完璧な連携射撃をみせている。

 アキトが相手の動きを読み、先回りしてエンライからレーザービームを放つ。エンライの輝線に突っ込まないよう機体に急停止をかける選抜軍人の機体は、もれなく翔太の射撃の餌食となるのだ。

 エンライの輝線が自機の進行方向に見えたら、軌道を緩やかに変更するのが正解だ。

 反射的に停止しようとしたら、サムライの戦術コンピューターが精確な位置の予測を演算する。パイロットは指定された位置へと射撃するだけで済む。加速を緩めたり、軌道変更を予測して射撃し、敵にダメージを与えるのがパイロットの腕の見せ所なのだ。

 残念ながら、射撃で翔太の腕の見せ所はなかった。

 残り4機編隊にアキトと翔太は突入し、乱戦に・・・はならなかった。

 腰に佩いたコクトウを抜き放ち、右腕を一杯に伸ばす。

 機体がすれ違う勢いを、そのままコクトウにのせただけ。それでアキト機は、ライデン1機を、袈裟斬りに二つに切り裂いた。翔太機はライデン1機を、両腕ごと腹部を横真一文字に切り裂いた。

 ただコクトウの切れ味は抜群だが、何の抵抗もなく刃が通り抜ける程ではなかった。

 アキトと翔太は、その抵抗を利用し機体の向きを変えると、残りの2機へと急襲する。

 それぞれに防御姿勢を取ろうとしたようだが、コクトウは機体のどの部分でも切り裂ける。

 翔太は相手のエンライと腕を一刀で切り裂き、返す刀で胴を薙いだ。アキトは空間把握能力を活かし、一突きで相手のコクピットを貫いた。


 アキトはシミュレーターのコクピットで息を吐き、今回の戦闘シミュレーションに思考を巡らせた。

 ネルソンたち選抜軍人は、オレの相手にならない。

 それは仕方ねぇーだろうな。

 今やっている戦闘シミュレーションは、戦争とは全く異なる。

 軍隊が宇宙空間で人型兵器を運用するのは、宇宙戦艦を撃沈するためで、人型兵器同士の戦闘を目的としていない。宇宙空間で繰り広げられる人型兵器同士の戦闘は、一方が宇宙戦艦を攻撃しようとし、一方が宇宙戦艦を攻撃させまいとする。

 そこに人型兵器同士の戦闘が発生する。

 人型兵器を撃破するのは、お互いにとって邪魔だからだ。

 敵の宇宙戦艦を撃沈されれば、人型兵器は投降するか、宇宙空間を彷徨うしかないのだ。

 つまり選抜軍人は、人型兵器同士の戦闘を主とした訓練を受けていない。

 選抜軍人がオレと翔太に勝てないもう一つの理由は、長所を活かした戦い方をしてないからだ。

 オレの長所は空間把握能力と頭の回転の速さ、思考力だ。互いの空間を把握し、敵の軌道を予測する。予測と異なったら刹那で思考し、再予測が完了する。オレに対抗するなら、予測を外させ続けねばならない。

 翔太の長所は、人外のスキル”マルチアジャスト”だ。機体の反応速度、操作精度で翔太に対抗できる人類はいないだろう。

 対抗できるとしたら、人類でないジンぐらいだ。

 オレと翔太は、自分の長所を理解しているし、長所を活かした戦術で戦っている。

 比較的オレにタイプの近いネルソンなんかは、士官学校のパイロットコースで習った戦術に固執しなければイイのにな・・・。

 もっと創造的に、もっと柔軟な発想で戦術を考えれば、選抜軍人8機でなら、翔太相手にイイ線いくだろう。

 まあ、ネルソンの上位互換のオレには、絶対に通用しないけどな。

 かくいうオレらも、ジンには全く通用しないんだが・・・。

 1年ぐらい前、翔太との戦闘シミュレーションの特訓で、オレはジンに勝てると自信を深め、挑戦した。その時は翔太の実力を最も発揮できる3機のセミコントロールを選択して、オレと共に戦闘に参加した。

 つまり、4機対1機でジンと戦闘したのだが、相手にならなかった。

 5分もしないで撃墜されたのだった。

 それからも挑戦を重ね、この一年で挑戦数は3桁に近づいた。

 その際、翔太は1機から8機のセミコントロールを試したし、オレはいくつもの戦術を試した。

 ジンに小破以上のダメージを与えられず、オレたちは最長15分が記録となった。それは、ジンに撃墜されるまでの時間が、だ。

 オレは軍人じゃない。

 だからジンを倒すのは戦場である必要ない。しかし倒せそうな場面がない。全く以て厄介だぜ。

 いずれにせよ、風姫との話し合いが先か・・・。

 今日の夜、新開グループの社宅に来てもらう予定になってるしな。

 アキトは思考を止めて呟く。

「とりあえず、今日は早く帰れるようにするか。なんせジンは、疲れを知らないボディーの持ち主だからな。付き合いきれねぇーぜ」

 アンドロイドであるジンは疲れを知らないボディーなだけでなく、頭脳も疲れを知らない超高性能な量子コンピューターなのだ。

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