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虹のファンタズマゴリア~全属性チートは異世界で王の証~  作者: 神丘 善命
第一章:斯くて王は異世界に降臨す
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第32話「エピローグ ――いざ虹都シンシュデトックへ――」

 陽斗たちが倉庫を出ると、他の倉庫利用者や近隣の住民が大勢扉の前に集まって人垣を形成していた。

 盗賊たちの悲鳴や陽斗が立てた轟音が、周囲一帯に響き渡っていたのだ。耳目を集めるのは当然と言えるだろう。


 陽斗が「退け」と命令しようとしたところで、人垣が割れ騎士隊の制服に身を包んだ二人の男たちが姿を見せる。

 小柄な男と大柄な男の凸凹コンビだ。小柄な方が声を張り上げる。


「通してくれ通してくれ! 一体何の騒ぎだ?!」


 倉庫の扉を半円状に囲む人々の中心に位置する陽斗たちに、騎士隊の男が目を留めた。 


「君たちが騒ぎの中心か? 一体何の……?!」


 男の視線は陽斗、澪、抱きかかえられたソフィーを辿り、最後に陽斗の肩に掴まるヒナで止まった。


「そ、それは一体……」


 男がブルブルと体を震わせ顔を青ざめさせながら問いかける。聞きはしたが、その様子から大凡の検討は付いているのだろう。

 陽斗は腕を組み、面倒な説明を澪に任せた。


「ドラゴンの赤ん坊っすよ」


 ざわりと人垣がざわめく。あちこちから「ドラゴンだって?!」「あれが?!」「可愛い!」などといった言葉が飛んで来る。また半円が一回り大きくなった。


 騎士隊の男が何かを言う前に澪が説明する。


「この倉庫を根城にしていた奴らが、ウルフズフォレストで子育てをしていたドラゴンからヒナを盗んだんす。私たちはドラゴンに頼まれてそれを取り返すために戦っていたんす」

「ドラゴンに頼まれただって?!」


 男が訝しげに陽斗たちを眺める。その目は陽斗たちが犯人だという可能性を疑っているようだった。

 男はまさしく騎士隊の仕事を果たしていると言えるだろう。


 いったい誰がどうやって言葉の通じない凶暴なドラゴンに頼まれるというのか。それを疑うのは至極当然である。

 なので陽斗も澪も疑いを向けられたからといって、気分を害するということもない。


「そうっす。私たちは森でウルフの氾濫が起こっているということで、調査に行った冒険者チームっす。これはギルドに確認をとってもらって大丈夫っすよ。そいで出向いた森でドラゴンに遭遇したってわけっす」

「ほ、本当なのか……?」


 騎士隊の男も澪の言葉に傾きかけてきた。さらにここに至る経緯を澪が説明しようとしたところで陽斗が口を挟んだ。


「俺たちは一刻も早く、このヒナを親の下まで返しに行かないといけない。ここで話し合っている内に、ドラゴンがこの街で暴れることになってもいいというのなら構わないが」


 それを聞いた騎士隊の男の顔は見ものだった。

 一瞬で顔を蒼白に染め上げ飛び上がらんばかりに道を開け、人垣にもこちらの方を通せと叫ぶ。

 それから陽斗たちに住民に代わってと礼を言い、丁重な扱いで門まで護衛してくれた。


 陽斗たちはソフィーを自分たちの宿屋の部屋に寝かせ、その足でヒナをグラナの下まで返しに行く。

 街へと帰ってきた陽斗たちは、大勢の騎士隊や噂が広がって見物に集まった野次馬に出迎えられる。

 そしてドラゴンが来ることはないのかと何回も聞かれ、うんざりしながらも付き合っていると再び騎士隊の者達に礼を言われ、金一封まで手渡されたのだった。



   ■



 それから二日。

 陽斗は一日の大半をベッドの中で過ごしていた。


「陽斗様。明日にはもうシンシュデトックに発つ日っすよ。いつまでそうしてるんすか?」

「……一人にしてくれえ」


 呪詛でも吐き出しそうな声が、澪の目の前のかたつむりから漏れ出てくる。


「うつだ……死にたい」

「なんだあれは……あんなの俺じゃない」

「何カッコつけて澪に命令してるんだよ。イタすぎる……」


 陽斗は二日前にヒナの鳴き声を聞いた途端、体の中が熱くなり、火属性の魔力が溢れ出て来た後のことをばっちり覚えたいた。

 そして陽斗に最もダメージを与えたのが、あの偉そうな態度が別の人格が乗り移ったなどいったものではなく、完全に陽斗自身だったと断言できてしまうことだろう。


 何だか急に態度が大きくなってきて、ああいうふうに振る舞わないといけない気がしてきたのだ。

 本人としては忘れていた方が幸せだったかも知れないが……。


「あのときの陽斗様カッコ良かったっすよ! こう! 支配者のオーラがビンビン出てたっす!」


 澪が手をわちゃわちゃさせながら陽斗を慰めてもそれは逆効果でしかない。

 必死に忘れようとしていることをまざまざと思い出させられ、陽斗が布団の中で身悶える。


「~~~っ! やめてくれマジで……」


 その時バンと宿の扉が開かれた。


「遊びに来たわよ! ……ってまだ引き篭もってるの?」


 ソフィーだ。二日前の怪我の余韻などまるで感じさせない元気に溢れた様子で、傷跡も全く残っていない。すべて魔法のお陰だ。

 ちなみに宿の鍵は盗賊たちと戦ったときの怪我をソフィーがここで癒やしていたので、その時に登録していた。


「……あんた怪我の一つもしてなかったじゃない。何があったか知らないけど、それがアタシよりずっとベッドの上ってどういうわけ?」


 ソフィーも呆れ顔だ。


「うるへぇ。心の傷は治りが遅いって言うだろ」


 魔法でも心の傷は――闇属性で催眠をかけるしか――どうしようもない。

 いっそそれもいいかもと思った陽斗だが、澪に危険だからと止められては押し通すことは出来なかった。


「とにかく一人にしてくれぇ……」


 取り付く島もない陽斗に美少女二人はやれやれと肩を竦めた。




 澪とソフィーの二人はチーム結成以来、何かと頻繁に訪れている例の喫茶店にやってきた。

 ドリンクを注文し、それが運ばれてきたところで澪の方から口火を切る。


「――それでソフィーは大丈夫なんすか?」

「え? 何が?」


 ソフィーがコップを傾けようとしていた手を止めて、きょとんと首を捻る。


「陽斗様は心の傷がどうのって言ってたっすけど、ソフィーだってあの盗賊たちに色々言われたんじゃ……」

「ああ、そのことね。まあ今回は本当にマズいかもって思ったけど、向けられた視線とか言葉は割りといつものことだしね」


 ソフィーは喉を潤してから、「ミオだってそうでしょ?」と笑った。


「それはそうっすけど……」


 陽斗の言葉はいくらなんでも無神経過ぎだと澪は思う。


「……うう、やっぱり許せないっすよ! 乙女の貞操の危機を何だと思ってるんすか陽斗様は! あとでガツンと言ってやるっす!」


 男では陽斗以外には触れて欲しくないとすら思っている澪が、女心が分かっていないと気炎を上げる。


「ミオが言いたいのなら止めないけど、アタシは本当に気にしてないわよ? ……それよりあの赤い髪の人は誰だったのかしら?」


 ビクッと澪が身体を震わせる。

 ソフィーには陽斗が火属性の魔力を出した途端、髪と眼の色が紅く変わったことを話していない。

 


 もしそれがセブリアント王族の――陽斗以外の地球に来てからの子孫にそんなことは一度もないらしいが――特徴。もしくは、陽斗と同じく七属性を持っていたという初代国王と同じ特徴だったとして、セブリアントに詳しいソフィーにバレたら厄介という判断である。


 彼女には赤髪の人は通りすがりの助っ人で名も名乗らずに去っていったと説明していた。


「さ、さあ? もしかしたら、ヒナのお父さんとかかも知れなっすね。すっごい火属性の魔力してましたから。人間に化けて娘のピンチに駆けつけたとか?」


 ソフィーはあせあせと言い訳を並べ立てる澪に訝しげな視線を向けた。


「ドラゴンが人間に変化できるなんて聞いたことがないけど……ねえミオ、何か隠してない?」

「か、隠してないっすよ~。ピ~ピヒョ~」


 口笛だけは苦手な澪。

 しかしソフィーにはいきなり髪の色と瞳の色が変わるなど想像できるはずもなく、陽斗と自分を助けてくれた男は線で結ばれない。


「……まあいいわ。いつかまた会った時にお礼を言えば」


――もしここに未来を予言できるものがいたとしたらこう言うだろう。その時は案外早く訪れるかもしれない、と。




 翌日。


「じゃあ出発するっすよ~!」

「オー!」

「おぉ~……」


 天気に恵まれた旅日和な晴天の早朝。陽斗、澪、そしてソフィーの三人はフィールドの街の西の城門の外にいた。


「ほら陽斗様。元気出してっす!」

「そうよ。せっかくグラナがシンシュデトックの近くまで送ってくれるって言うんだから楽しまないと損よ」


 そのグラナは街から少し離れた所に佇んでいた。そしてドラゴンを一目見ようと、陽斗たちの背後には大勢の住民が集まっている。

 陽斗は上目遣いにソフィーの様子を恐る恐る窺う。


「ソ、ソフィー、昨日のことなんだが……その……ゴメン! いろいろ無神経だった!」


 ソフィーが澪に目を向けると、彼女はうんうんと当然のことのように頷いていた。


「まったく……気にしていないって言ったのに……まあでもその謝罪は受け入れるわ。女の子の心は繊細なんだから、何が傷つけることになるか分からないんだから次からは気をつけること!」


 ソフィーは腰に手を当てて弟がいたらこんな感じかなとお姉さんぶる。

 陽斗はそんなソフィーの態度にホッと一息ついた。そして一つ問題が解決すると、またもや盗賊たちと戦った時のことを思い出して暗い気持ちになる。


 ウジウジといじける陽斗に、美少女二人は顔を見合わせた。ニヤリと笑い合うとガシっと陽斗の腕をそれぞれ左右から掴み、勢い良く走りだす。


「うあああ?!」

「このままグラナのところまで全速力っすよ!」

「ヒナァアア!」


 転けてもなお引き摺られる陽斗の悲鳴と楽しげな少女たちの笑い声が、異世界の草原にこだました。

ここまでを第一章としたいと思います!

お読み頂きありがとうございます!

この機会に↓の欄から感想、ポイント評価、レビューのどれか一つでも付けて頂けましたら、作者が泣いて喜びます!

執筆の励みになります!


そして。

第2章執筆中です!

需要があるかどうかは分かりませんが……続きが読みたい!という方の反応が感想欄で聞けると嬉しいですね。


現在進捗率30%といったところでしょうか。

一週間後に進捗の報告を兼ねて閑話を上げたいと思います。


それではこの辺で!

これからも虹のファンタズマゴリア~全属性チートは異世界で王の証~をよろしくお願いします!


感想、ポイント評価などお待ちしております!

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