壱の記 新生活
何かが燃えているような匂いがする。
パチパチと、火花が飛ぶ音がする。
まるで生き物のようにうねって燃やしていく何かが見える。
人の悲鳴が聞こえる。
生きたい、という叫び声や、死にたくないという声が聞こえる。
周りは全てさっきまで友達や家族と談笑していたり、休日の用事等を電話で相談したり、思い思いの時間を過ごしていた人達、
いや、人だった物があるだけ。
一歩歩くと、何かを踏んだ、それは良く自分の兄弟が首に掛けていた勾玉を象った装飾品が付いているネックレスだった。
翡翠色に光る、それは今さっきまで、家族が一緒にいたことを示していた。
「そこの君!大丈夫か!?」
そんな声が聞こえた時、俺の意識はフッと消えていった。
ピピピと目覚しの音が聞こえる。
(煩い…、今何時だよ。)
目覚しに表示されている、時間を確認する。
午前五時って、流石に早すぎじゃないか。
取り敢えず、軽くランニングをしてきて、朝食を摂って、身支度を終わらせたら、
七時になっていた。
やばい、走りすぎた……
今日から寮生活になることに少しの心配があったが、自分が決めたことだから、
そしてあの日見た放火犯を探すために自分はこの道に進むのだから、何時の間にか迷いは無くなっていた。
「行ってきます」
玄関に置いている、あの日のことを忘れないために、不器用ながらに作った真っ黒に焼けている木材で作った写真立てに入っている、今は亡き家族の写真に向かって俺は別れの挨拶をした。
そして、桜の花びらが舞う、外に飛び出した。
あの火事から、十年後。
俺は、とある高校に入学していた。
(ヤバイ、絶対俺行くとこ間違えたかもしれない…)
その学校の名は、御識高校。
今、世界各地で起こっている超常現象を止めるための人材育成する為に設立された高校。
その学校は、他の学校とは違うことが一つあった。
俺が火事にあった、次の年から次々と見つかっている、ある物が使われる学校らしい。
神話や、寓話の力を使うことができるようになるって聞いているが、実際はどんなものなんだ?
「おーい、竜切!」
何だ、うるさいな。
「うるさいぞ、少しは静かに出来ないのか。アッシュ。」
いきなり名前を叫んできたのは、幼馴染のアッシュリー・解。
俺が家族を失って、茫然自失としていた時に、家族として迎えてくれた恩人の娘だ。
「そうだねー、でもさ、びっくりしたよ。」
「何がだ?」
「急に、御識に行く!って、言いだして。」
こいつが言いたいことも分かる、
俺はいつもこいつと離れないように、一緒の学校に通っていたのだから、急に違うとこに行きたいっと言えば驚かれるのも無理はない。
こいつは、既に別の有名高校に受かっているから、そっちに行くことになっていたのだが、こいつは、「だったら、私も御識に行く!」って、言って聞かなくて…
結局、一緒にズルズルと、この状態になっているんだよなー。
まぁ、これまでも一緒にだったから、ちょっとあった不安も軽くなる。
「では、行くとするか、アッシュ。」
「うん!竜切!」
一迅の風が、俺らの背中を押すようにふいた。