行方不明事件
「それじゃ、今からごはんを作るね。カレーで大丈夫かな?」
「たぶん、大丈夫。」
リビングに移動し、なっちゃんのお母さんがカレーを作り始めた。
「遥ちゃん。カレーだと制服にシミがつくかもしれないから、別の服に着替えたほうがよくない?」
「そうだね。でも、着る服がないから…。」
「ちょっと待ってて。」
そう言うと、なっちゃんはリビングを出てどこかの部屋に行ってしまった。
「もしかして、わたしの着れそうな服を探しに行ったのかな。」
数分後、なっちゃんは一着のシャツと短パンを持ってきた。
「こんなのしかなかったけど、よかったかな?」
「これを着ればいいの?」
「試しに着てみるといいよ。」
わたしは制服を脱いで、なっちゃんから渡された服に袖を通してみた。
「なっちゃん、この服って…!」
「おっ、サイズはピッタリじゃん♪」
「そうじゃないよ!!」
なんと、袖を通した服はかつてなっちゃんが中学生の時着ていた体操服だったのだ。
「なんで体操服なんか持ってきたの!?」
「服を探してたら、たまたま見つけたからなんとなく着せてみたかったの。」
「てっきりかわいい服だと思ったのに…。着てみたら、胸元に大久保って書いてあるし。」
「いいじゃない。とりあえず、その格好でごはんを食べれば。」
「…っもう。」
わたしは、渋々なっちゃんの体操服でごはんを食べることにした。
「ちょっとテレビでも見ようか。」
なっちゃんは、テレビの電源を入れた。
『お昼のニュースです。』
ちょうど昼のニュースの始まる時間のようだ。
「もしかしたら、あのニュースもやるのかな?」
「あのニュースって?」
「見ればわかるよ。」
わたしは、なっちゃんに言われるがままテレビをじっと見ていた。
『次のニュースです。昨日、那古市で小学四年生の女の子が行方不明になる事件が発生いたしました。行方がわからなくなっているのは、那古市南区の小学四年生 平原沙織さんです。平原さんは昨日の午前9時頃、母親に「お昼まで遊びに行ってくる。」と言って出ていったきり昼過ぎになっても帰ってこなかったため、母親が警察に捜索願を届け出ました。警察が捜査員を増やして捜索をしておりますが、いまだ有力な情報は掴んでおりません。』
「この事件、私の警察署管内で起きたものなのよね。」
なっちゃんが、真剣な口調で話し始めた。
「昨日、警察署で遥ちゃんに関することを調べてたら、急に慌ただしくなってね。何事かと思ったら、行方不明事件だって。」
「それがこの事件なんだね。」
「最初は、この事件に私も捜査に加わる予定だったんだけど、遥ちゃんのことがあるからってことで、捜査から外してくれたんだ。」
「そうなんだ…。」
「早く、この子も見つかるといいね。」
「そうだね。」




