わたしの服選び1
次にわたしたちは、同じ階の服売場に向かった。
「どんな洋服が好みなの?」
「どんなのって言われても、わかんないなあ。別に、毎日制服でもいいと思ってるもん。」
「毎日その格好で問題ないの?」
なっちゃんは不思議そうな顔して、わたしに聞き返した。
「だって、記憶がないから着たいと思う服が思い浮かばないの。それに、記憶のある時からこの制服を着てたから、制服はわたしのからだの一部分って感じで愛着が湧いちゃったの。」
「そうなんだ…。」
わたしの答えに、ひどく落胆した様子のなっちゃんだった。
おそらく、服選びでわたしに喜んでもらおうと考えてたけど、わたしが制服でもいいやって言ったから、それじゃあ服選びをしても意味がないと思っちゃったのかもしれない。
そこで、わたしなりにフォローの言葉を考えた。
「でも、好みがわかんないからこそなっちゃんにわたしの服を選んで欲しいの。」
「えっ…?」
「だから、なっちゃん。わたしを、お人形さんみたいに綺麗な服に着せ替えてくれるかな?」
「遥ちゃん…。」
「よろしくお願いします♪」
なんとかなっちゃんも笑顔に戻ってくれたみたいだ。
「まさか、私が遥ちゃんに励まされるなんてね。」
「今までお世話になってるお礼だよ♪」
「ありがとう、遥ちゃん。」
わたしたちは、女の子向けの服売場に到着した。
「さて、遥ちゃんの服はどれがいいかなー?」
「わたしも、どんな服を着せてくれるのか楽しみだな♪」
「そう言われると、自分の服選びより真剣に考えちゃうな。」
「もしかして、プレッシャーってやつ?」
「そんな感じです、はい。」
「いい大人が、子どもにプレッシャーかけられて緊張するなんて。」
「うるさい!」
「あっ、怒った怒った♪」
なっちゃんを小バカにしてみるわたしだった。




