桜田さんは存在しない!?
クルマで走ること30分、春田中学校に到着した。
「ようこそいらっしゃいました。」
校門の前で、この学校の校長先生が出迎えてくれた。
「南署の大久保です。早速、お話を伺ってもよろしいでしょうか?」
なっちゃんは、すぐに校長先生に話を聞こうとしていた。
「まあ、立ち話もなんなので応接室へ御案内致します。」
そう言うと、校長先生はわたしたちを応接室に案内してくれた。
「お茶を用意しますので、少々お待ちください。」
校長先生は、お茶の用意のために部屋から出て行った。
「この雰囲気、とても緊張する…。」
「なに固まっちゃってるの。遥ちゃんったら。」
しばらくして、校長先生が戻ってきた。
「お待たせしました。」
校長先生は、わたしたちの前にお茶を出した。
「すいませんが早速、こちらの桜田さんに関してお聞きしたいのですが。」
なっちゃんは、すぐに話を始めた。
「こちらの中学校に、桜田という名字の生徒さんはいらっしゃいましたか?」
なっちゃんの質問に、校長先生はすぐに回答した。
「残念ながら、桜田と名乗る生徒は当校には存在しません。」
それを聞いて、わたしは愕然とした。
「えっ、それじゃわたしは桜田じゃないってこと!?」
「遥ちゃん、落ち着いて!!」
「本当にちゃんと調べたの!?」
わたしは、つい校長先生に詰め寄った。
「全学年調べました。しかし、いくら探しても桜田さんはどこにもいないのです。」
「そ、そんな…。」
わたしはショックのあまり、腰を抜かしてしまった。
「それじゃ、わたしはいったい誰なのよ…。」
そして、わたしはその場で泣き崩れるのだった。
「遥ちゃん…。」
校長先生は、淡々と話を進めていった。
「だけども、確かに桜田さんの着用している制服と名札は当校のものですね。もしかして、過去に桜田と名乗る生徒がいて、その制服を桜田さんに着せたとかではないでしょうか。」
「なるほどね。」
「とりあえず、現時点では私が答えられる内容はこれだけです。」
「そうですか…。」
「ですが、私共も桜田さんのために是非ともご協力させていただきます。」
「ありがとうございます。」
そのあともわたしが泣いている間に、なっちゃんは校長先生と話を進めていったみたいだ。




