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「でもさ、モラン。ひとつ疑問。どうやって偽装する?」

「そうだな。はめ込み型が一番いいんじゃないのか? そのほうがやりやすい気がする」

「わかった」

  *

 お茶を飲んでいたモランは外が静かなのに気付き、修理をしている哉惟を探していた。

「哉惟?」

 隙間から見ただけでは哉惟は見つからず呼んだ。

「なに。今どうしようか考えているんだけど」

「悩むな……。さっき、俺がはめ込み型でいいと言ったばかりだろ」

「うん。そうだね。きっちりだとあとで抜けなくなるから多少、余裕は持たせないとね。ま、なんとか作っておくよ」

 哉惟は何か思いついたようで、さっそく作業に取りかかった。

 モランはそう言えばと朝のことを思い出し、目を閉じた。

  *

 まだ修理されていない隙間からモランは浮かない顔をしていた莱に声をかけた。

「いや、先日、哉惟に言ったんだが、もう少し女らしくしたらいいのにと俺は思うんだ」

「それは俺も思っている。しかし、哉惟はそのすべをしらない」

 そうか……とつぶやいた莱は少し黙った。しばらくして、なにか思いついたのか、つぶやいた。

「哉惟とお同年の娘と一緒に一日を過ごさせるというのはどうなんだ?」

「それは無理だろう。仕事が一番という哉惟には仕事以外を優先させる気はない」

 無理に仕事を休ませても、気になってすぐに戻ってくるとモランは言う。

「哉惟だって年頃の娘だ。この仕事を選んでいなかったら、他の娘と変わらない生活をしていただろう。後、好きになる男の一人ぐらいがいてもおかしくない」

「それぐらい俺もわかっている。しかしな……無理矢理は性に合わん。生前、佐伊稀が言っていた。哉惟のことを考えて行動しろと。俺が覚えていたら話そう。どう行動するか、哉惟次第だ」

「わかった」

 莱はその場で目を閉じ、哉惟が起きてくるのをじっと待っていた。

  *

「モラン! こんな感じだけどいい?」

モランは外から聞こえてきた哉惟の声で我に返った。見ると先ほどまで開いていたところが綺麗になって塞がっていた。モランは近くまで行き、じっくり見ていた。

「凄いな、哉惟。細かいところまで綺麗にやってある」

「あぁ、前に仕事で行った集落に住む大工に教えてもらったのを思い出してね。今回は助かったよ」

「飲み込みが早いのは知っていたが、ここまでできるほどまでとはな。そのうち本職より上になるんじゃないのか」

 モランは笑っていたが、哉惟は大して気にすることなく、答えた。

「それはない。私にとって、妖怪討伐の仕事が一番」

「それならいいが……。あぁ、哉惟。武器を見てやるから全部出せ」

 哉惟は武器を全部出し、モランに渡した。

「丸腰の時に妖怪が来たら大変だね」

「いや、お前は丸腰じゃないだろ」

 哉惟は廊下と茶の間を繋ぐ襖越しにモランを見ていた。

「とにかく、やることはやったから、明日から仕事再開ね」

 哉惟はそれだけ言って、茶の間を出て行った。

「情報収集をするために修理のほとんどを終わらせたが、さっき、哉惟がやったところだけが残っているだけか。俺が少しずつ修理すればいいだけか。強度を増してもいいが、佐伊稀との思い出ある屋敷を勝手に改造するのも哉惟が怒りそうだな。ん? あいつら帰ってきたのか?」

 モランがジャックたちの妖気を感じて、外へ様子を見に行った。帰ってきた三匹の妖怪は体が傷だらけ。モランは気にすることなく、ジャックに声をかけた。

「やつら直々の手下だと語る妖怪の大群だ」

「お前とアーサーが手こずるなんて珍しいな。何があった」

「莱が暴れた」

 ジャックの代わりに答えたのは莱の背に乗っているアーサーだった。

「おい。莱……またか」

 モランがまたかというのには意味がある。莱は何十年も前に佐伊稀絡みで、大暴れをしたことがある。

そのときは集落の真ん中で暴れ、当時建っていた屋敷、畑などほとんどが莱のおかげで壊滅となっていた。集落のほとんどの人間は莱に文句を言いつつも、妖怪を退治してくれた感謝の意を表していた。集落の復興は集落の人間、佐伊稀たち総出で行われた。

過去にこういうことがあったので、以降、佐伊稀から口がすっぱくなるほど注意された。

「大丈夫だ。集落からは離れているから問題は……」

「ないじゃなくてある。被害あったら困るのこっちだ」

「すまん。しかし、悪いのは向こうだと俺は思う」

「わかった、わかった」

 モラン、ジャック、アーサーが屋敷へ入る。莱は屋敷の邪魔にならないところにいる。その直後、哉惟が茶の間に入ってきた。

「哉惟、これからどうするんだ」

「予定はもうモランと話してある。そこの壁の修理はモランに任せる。明日からまた仕事を再開する。もしかしたら、奴らが私たちを襲ってくる可能性は高い。ありえるのは更に強い人、妖怪を集めて、ここ、もしくは私たちのところへ襲撃に来るよ。あんまりよくない予感がする」

「それは妖怪討伐屋としてか。それとも巫女としてか」

「両方。一日でも早く仕事を再開しないと国が危険になりそうな気がするんだ」

 哉惟の感はよく当たる。それは巫女としての能力が強いのか外れたことが少ない。

「だったら俺は早く武器の整備をしないとな。明日から再開ならなおさらだ」

「頼んだよ」

 モランは工房においてある哉惟の武器を修理しに行った。

  *

 モランが出て行った後、ジャックが聞いた。

「莱の手当てはしないのか?」

「いや、それは莱の自業自得だからモランはしないと思う」

「あぁ……そういえば、過去にそんなことがあったな……。佐伊稀は笑っていたけど、モランは激怒していた」

「モランならありえる話しだね」

 それに私は手当てできないしねと哉惟は笑っていた。

「俺も手当てされるのはごめんだ。これぐらい、明日には治る」

「妖怪は傷の治りが早いんだね」

 でもね……と哉惟はつぶやいた。

「こうやって怪我をした姿を見ると十年前を思い出すよ。親父を殺された日、あの日はジャックが私を庇ってくれたから怪我しちゃったんだもんね」

 哉惟はジャックの頭を優しく撫でた。

「過ぎたことはもう気にするな。あの時はまだ慣れていないお前に怪我をさせたくなかっただけだ」

「でも、誰が怪我をしても同じだよ。そのおかげで、あの時は今より強くなりたいと思っていたんだ」

 哉惟は立ち上がり、どこかへ向かおうとした。

「どっか行くのか?」

「モランとこ。精のつく料理にしてほしいって頼もうと思って。後は新しいお札を作ること。大量に使ったからその分、多目に作らないとね。足りなくなったら困る」

「モランにだったら俺が伝えてこようか? 哉惟はお札を作っとけよ」

 ジャックは哉惟の返事を聞く前に勝手にモランがいる工房へ向かった。哉惟は自室に戻り、文台(ふみだい)の前に座り、袖を捲くり、硯箱を開け、時間をかけてゆっくり墨を磨った。

 しばらくして、哉惟は墨を置き、引き出しにしまってある紙を出し、書きはじめた。

  *

 数時間後、外は日が暮れはじめていた。哉惟はかたわらに置いてあるろうそくを手に取り、茶の間へ向かった。茶の間に入るとモランはまだ修理中なのか戻ってきておらず、いなかった。哉惟はジャックのそばへ行き、起こした。

「んー……哉惟? 終わったのか?」

「まだ。日が暮れてきて暗いから火がほしい」

 そう言って、ジャックの前にろうそくを持ってきた。

「わかった。モランはまだ工房か」

 ジャックは寝ていたせいか、のんびり動き、屋敷の外に出た。哉惟は地面にろうそく立てを置いた。

 ジャックが小さく息を吹くと小さな火が出て、ろうそくに火が灯った。

「ありがとう。ついでに囲炉裏の火も起こしておくよ」

 哉惟は先に屋敷へ戻り、ジャックは工房へ向かった。

  *

 どれくらい時間が経ったのか。アーサーが目を覚ました時、外は完全に暗くなっていた。かまやの前ではモランが夕餉の支度をしていた。

「おぉ、起きたか。もうすぐできるから待ってろ。」

 ジャックが起きた頃、アーサーはモランに哉惟を呼んでくるように言われ、哉惟の部屋へ向かう。

「哉惟。モランがもうすぐ夕餉ができるから来いってさ」

「わかった。ちょうど終わろうかと思っていたから。入っておいで」

 アーサーが部屋に入ると哉惟は片づけをしていた。周囲には百枚以上はあると思われるお札が乾かすために置いてある。

「結構、作ったんだ」

「ま、私とモランが今回、多く使ったからね」

「哉惟は仕事と同じくらい本が好きだからな」

「うん。このお札は夕餉の後、片付ければいいだけだから。あんまりモランを待たせるのはよくないし」

 どうやら片付け終わったようで、哉惟とアーサーは茶の間へ向かった。哉惟たちが茶の間に入るとすでにモランたちが待っていた。特にジャックは空腹なようで、必死に耐えていた。アーサーはジャックの隣へ。哉惟はいつもの場所、壁を背にし、囲炉裏前に座るモランの右側の囲炉裏前に座る。

「お札作りはどうだ」

「今日は終わり。今は乾かしているよ。明日、時間があればまた作る予定」

「明日から忙しくなると思う。もしかしたら作れないと思うが……」

「そうだね……。早く食べようか、ジャックが耐え切れなさそうだ」

「ジャック。無理しなくていい」

 そう言って、哉惟は食べていた。

「あ。そういえば莱は?」

「あぁ。あいつは用事を思い出したからと言って、帰った」

 何事もなければいいけど……と哉惟はつぶやいた。

 夕餉を食べ終わった後、モランは片づけを終わらせ、哉惟は自室へ戻り、お札を片付けた。数分後、片付けたお札を哉惟は茶の間にいたモランに渡し、明日から忙しいし朝も早いから早く寝る! と言って、茶の間から逃げた。

  *

 翌朝、哉惟はいつもより早めに起きた。茶の間へ向かうとまだ、モランはいないようで、ジャックたちは寝ていた。起こすことなく外へ向かい、朝日を見ていた。

「まぶしい……」

 哉惟は朝日に背を向けて、鍛錬をはじめた。

 しばらくして、何を思ったのか途中で、鍛錬をやめた。

「莱……か……」

 莱の妖気だとわかり、哉惟はまた鍛錬の続きをした。哉惟に気づいた莱は声をかけることなく通り過ぎようとした。

「一言、声かけようよ」

「哉惟なら気づくだろうと思ってな」

「まぁ、いいけどね。莱、一度、手合わせ願う」

「あまり人が来ないところでなら受けてたとう」

 ニヤリと嬉しそうに笑う哉惟と莱はそのまま人が来ない場所へ行った。莱は思い出した表情で、隣を歩く哉惟に聞いた。

「そういや、お前、武器は持ってこなくていいのか?」

「鎌鼬と灯龍がなくても問題ない。雷神と銃が夕べ戻ってきたからね」

 そう言って左右の腰につけている二つのホルスターを軽く叩いた。

「なるほど、そういうことか」

 哉惟の答えを聞いて、莱は納得した。目的の場所に着き、哉惟はどちらを出すこともなく、莱から離れた場所に立っていた。

「使わないのか?」

「今日からまた仕事を再開するのに怪我したらモランが後々うるさいからね。それに素手の手合わせが望みだから」

 そうかと一言言っただけで、莱はしばらく黙った。哉惟は静かに待つ。

「だったら俺もお前と同じ条件で手合わせをする」

 哉惟はその返事を待っていたかというように正面から莱めがけて攻撃を始めた。

  *

 その頃、屋敷ではジャックたちが起きていた。

「あれ? 哉惟、いないんだ」

「あー莱と手合わせをしているようだ。俺が起きてきたとき丁度、どこかへ行くところだったからな」

「そうだよな。今日から仕事再開するから少しでも体動かしといたほうがいいもんな」

 俺の仕事を増やさなければいいとモランはいい、誰も迎えに行こうとしなかった。全員、いつものことだから構わないと言った感じだ。

  *

 哉惟と莱はまだ戦っていた。どちらも軽いかすり傷程度。

 しかし、なかなか決着が着かない。

「決着、着かなかった場合どうする?」

「持ち越し」

「俺も今、同じこと思っていた」

 遠くからおーいという声が聞こえた。声がしたほうを見るとアーサーが哉惟と莱を呼びにきていた。

「なに?」

「朝餉。お前食べないで仕事行くとか言ったらどこにも行かないからな」

「もうそんな時間なんだ。じゃ、持ち越しで」

「わかった」

 決着は着かず、朝餉を食べるために屋敷へ戻った。哉惟は屋敷に戻る前に井戸に向かった。懐に入れていた手ぬぐいを出し、井戸水に濡らした。濡れた手ぬぐいで、埃と汗を拭い落としてから屋敷に入った。屋敷からはいい匂いがしていた。哉惟は入るなり、モランに味噌汁頂戴と言った。

「またか。ここにある」

 指差す先はいつも哉惟が座っている場所。哉惟は水亀から水の入った柄杓を出し、また手ぬぐいを濡らし、今度は日当たりがいい窓の上につけられている哉惟特製の小さい竿に手ぬぐいをかけてから朝餉を食べ始めた。

「アーサーに聞いたが、決着がついていないんだとな」

「そう。だからそのうち時間があったら続きから」

「にしてもかすり傷だらけだな」

「別に支障はないと思うよ」

「それならいいけどな」

 そう言って、モランは味噌汁を飲んだ。

「久しぶりの仕事か……。国王のところへ行って、側近がいなければ、伝えることすべて伝えて、後はあの兵士たちの稽古、見られたら見られるように努力するくらいか。やること多いな……」

「どうしようもないな。お前が選んだことだからな」

 仕事再開初日にやることが多いと哉惟は少し嘆いた。食後、哉惟は落ち着くまで、読書をしていた。三十分ほど経ち、哉惟は立ち上がり、二匹に声をかけ、城へ向かった。

 先に出たアーサーが巨大化して待っていた。隣ではジャックがお座りして待っていた。遅れて出てきた哉惟は背に鎌鼬を背負い、左の腰帯に灯龍を差してでてきた。哉惟、ジャックはアーサーの背中に飛び乗った。乗ったのを確認したアーサーは上空高く飛んだ。

「久しぶりだなー。こんな高くを飛ぶアーサーの背に乗るなんて」

「仕事休んでいたからな」

「でも嫌になるよね。誰か知らないけど、私の仕事を妨害した罪は償ってもらわないと困るな。とにかく面倒だよ」

「話しは聞くだけ聞いて、後は国王に任せればいいだろ」

「うん……」

 哉惟は紙と筆を両手に持ち、せっせと何か書いていた。

「何書いているんだ?」

「国王宛の手紙。側近がいたら式文として送る。国王にはちゃんと伝えたいことを伝えたいから」

「そうだよな。屋敷は半壊。襲撃が数回。面倒なことばかりだ。これで、今日もまた襲撃されたら余計面倒だ」

「私も同じだよ」

「お前ら……面倒、面倒ってうるさい……」

「だったらジャックがうるさい」

「哉惟もだからな」

「わかったよ。手紙を書き終わらせるからしばらく黙れ」

  *

 哉惟は城に着くまでの間、ずっと手紙を書いていた。城に着く直前、哉惟は手紙を書き終えたようで、まとめていた。まとめ終わった手紙は懐に入れた。

「久しぶりの城か、何が待ち構えているか……」

 アーサーはそのまま城へ急降下した。哉惟は珍しく空中に浮くアーサーの背から飛び降りることなく、このままでいるのも悪くないねと言った。

 地上から哉惟を呼ぶ声が聞こえ、見ると、門番の兵士がこちらに向かって手を振っていた。アーサーが門から離れた場所に降りると先ほど哉惟に手を振っていた兵士が近づいてきた。

「お久しぶりです、哉惟殿。もう屋敷の方は終わったのですか?」

「一応ではあるけど、後はモランに任せてきた。最近は気になることが多いから早く仕事を再開したかったという理由はあるけどね」

「ということは我々の稽古を見てもらうというのは……」

「当分無理だね」

 哉惟はきっぱりといい、兵士を置いてさっさと城の方へ消えていった。落ち込む兵士の横にお座りしていたジャックは哀れんで、兵士の太ももあたりに前足を置いた。

「ま、当分あきらめろ。あいつの気分次第では近いうちに稽古を見るかもしれないからな。俺たちも哉惟同様忙しくなるかもしれない身だからな」

 完全に落ち込んであきらめた様子の兵士はとぼとぼと門の方へ戻った。

 アーサーはいつもの大きさに戻り、ジャックの背に乗り、城の中へ入っていった。

「遅いよ」

 城の中に入った途端、後ろから声が聞こえ、振り向くと哉惟が体を壁に預け立っていた。

「悪い。あいつ完璧、落ち込んでるな。時間さえあれば稽古に来るんだろ?」

「もちろんだよ。さ、行くよ」

 哉惟は接見の間へ向かった。接見の間に入ってから五分ほど経過したとき、雄霧(ゆうぎり)が接見の間に入ってきた。哉惟は雄霧が入ってきた扉を見ると側近がこちらを見ていた。

 椅子に座った雄霧は哉惟に聞いた。

「門番から話は聞いた。屋敷の修理はほとんど終わったようだな」

「いいえ、早く仕事を再開させたく、モランに無理を言って終わらせたようなものです」

「そうか。悪いことをした。この国の兵士は人間相手にはなんとかなるが、妖怪相手だとどうしてもかなわない」

 哉惟は少し考えごとをしていたようで、ジャックが小突いた。

「国王、少し大事な話しがあるのですが……」

「よかろう。流、お前は少し下がっていろ」

「しかし……」

 流と呼ばれた初老の男は下がる気配はない。

「話しが終われば呼ぶ。お前に聞かれたくない話だったら私が困る」

 雄霧に言われ、流と呼ばれた側近は接見の間から出て行った。出て行く直前、哉惟を睨んだことに哉惟は気づいているだろうとジャックは思った。

「哉惟。話しとは?」

「先日、ジャックたちが狙われました」

「まことか!」

「はい」

 雄霧はしばらく黙り、そうかと言った。哉惟はなにか思い出したようで、懐から文を出した。

「国王。私はあまり時間を作ることができないので、ここに詳細をまとめておきました。流殿がいたら式文でと思っていたのですが……」

「わかった。今後、なにかあれば式文で教えてほしい。しかし、哉惟、式文というものは話しでしか知らないが……」

「元々、他国に住む優れた術者が使うものらしく、私も書物でしか知りませんでした」

「そうか。その式文というものを見てみたいのだが……」

「すぐにできます」

 哉惟は自分の目の前に文を置き、術を唱えた。すると文は蝶の形をした式文になり、雄霧の方へ飛んでいった。はじめて式文を見る雄霧は驚いており。おぉと言った。

「これが式文」

「はい。相手の手元に届いたら文に戻ります。国王、申し訳ございませんが、この後、襲撃をしてきたものを探すために行かなければなりません。仕事は今まで通りします」

「わかった。私は哉惟からの連絡を待つ」

 哉惟たちは雄霧に挨拶をして、屋敷へ戻った。

  *

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