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一年前に投稿して、すでに結果が分かっている小説です。

長編ですので、パソコンから読むことをお勧めします。

  妖国(ようこく)。大陸からは離れた場所にある。他国からは離れ小島と言われるほど、小さな島国。

 そんな妖国では人間と妖怪が共存している。過去に一度、人間と妖怪の対立があった。互いに仲間を失い、悲しみあった。以来、大きな対立はなくなった。

 その大きな対立から何百年と月日が経ち、現在の妖国は少しずつ変わっていた。

  *

 ある日の昼下がり、周囲を小高い丘と雑木林に囲まれた妖国。その中央にある集落上空を飛んでいた鷹の妖怪・アーサーの背から一人の若い女が飛び降りた。

「あー……また飛び降りて、先に帰ったな」

「いつものことだから、哉惟(かない)はどうにもなんねぇだろ。ジャック、気にしたら負けだ」

 哉惟と呼ばれた彼女は何事もなかったかのように地面に着地し、さっさと屋敷隣にある少し広めの工房へ入った。

  *

「モラン、ただいまー」

 モランと呼ばれた中年の男は両手に持っていた修理途中の農機具と修理道具をその場に置き、声がした方を向いた。

「またアーサーから飛び降りてきたか……」

「早く本の続きが読みたいから、さっさと仕事終わらせて、城へ報告も済ませた」

「相変わらずだな」

「そういえばモランに一つ聞きたいことがあったんだよね。私が妖怪討伐の仕事をやる理由は後継者ってことはわかるけど、私が巫女もやる理由はなに?」

 哉惟はこの妖国で数少ない妖怪討伐の仕事をするかたわら、同じく数少ない巫女の仕事もしている。今、着ているのは巫女服。

「他の集落に巫女がいねぇんだよ。それだけの理由だと言いたいが、幼い頃の哉惟にはわずかに霊力があると言われていたんだ」

「誰が言ってた?」

「今は亡き、俺の親父だ……」

 工房の入り口に遅れて帰ってきたアーサーがいた。

「あぁ……あいつか」

「そういや、あいつ、十年前はまだ、生きてたな」

 アーサーはモランを睨んだ。理由がなんとなくわかっている哉惟はアーサーに言った。

「……アーサー、屋敷を壊さない程度になら暴れてもいいよ」

 哉惟はけんかに巻き込まれる前に工房から逃げ出した。

 屋敷周囲を含め、アーサーの怒りの妖気が漂っている。彼がモランを睨んだ理由は亡き父の亡くなった時期を忘れるな。哉惟は黙認しているので、誰も止めない。こう言ったけんかはよくあることなので、近所の人たちは誰も気にしていない。一匹だけ、外にいたジャックは屋敷へ戻る前にアーサーの妖気を感じ、巻き込まれるのはごめんだという表情で、屋敷の近くにある木の太い枝の上へ避難していた。

「ジャック」

 ジャックは声がする方を見るといつの間にか隣に哉惟が座っていた。

「んー? どうした、哉惟」

 哉惟がいるのに驚くことなく、ジャックは話しを聞いていた。

「モランは相変わらずだと思ってね」

「あれがモランだろ。昔からあんな性格じゃなかった。親父の話しだと佐伊稀(さいき)が原因」

 ジャックの父は十年前まで哉惟の亡き養父・佐伊稀と妖怪討伐の仕事をやっていた。

 佐伊稀が原因。ジャックに言われて、哉惟は初めてモランの性格を知った。

「そういえば、親父が生きていたときどんな人だった? モランに聞いても毎回はぐらかされて、よく教えてくれなかったけど」

「そうだろうな。ん? 十年前に知ったんだよな? 佐伊稀と哉惟、血の繋がっていない親子だって話し」

「うん。近所の友達と遊んで帰って来たときだから」

「俺からしたらまだ最近のことに思えるな。お前を拾ったのは俺だったし」

 哉惟は二十年ほど前、妖怪の溜まり場になっている森の中に生後一ヶ月か二ヶ月のとき、籠に入れられて眠っていた。当時の哉惟を拾ったのはジャックと彼の弟。森の危険性を知っていた二匹は佐伊稀が住んでいた現在の屋敷へ哉惟を連れて帰った。

「佐伊稀が哉惟を育てると言った時は驚いた。ずっと、仕事一筋と思っていた男が右も左もわからない状態で子育てをしようと思ったのは今でも不思議だ」

いろんな人間に会ってきたけど、一番不思議だったのは佐伊稀かなと一言付け加えた。

「もう少し詳しい話しが聞きたい」

「知らない方がいい……」

「答えろ」

 哉惟は手には妖怪の鎌鼬(かまいたち)から作られた仕事道具の鎌を持ち、ジャックの首筋に刃をあてている。さすがの妖怪もこんな至近距離、すぐ隣に座る人間、ましてや女性に命を脅かされるという経験は誰もしたことはないだろう。

 だが、哉惟は幼い頃から佐伊稀とモランに鍛えられていたということもあり、妖国中の兵士以上の戦闘力を持っている。この妖国に一人しかいない妖怪討伐という仕事をしているからということもある。ジャックはなぜ毎回、「俺がこんな目に遭わないといけないんだ」と青ざめ、涙、鼻水垂れ放題となっている。

「言ったほうが身のためだよ」

「いや、俺、本当のことしか言ってないから……。佐伊稀が昔どんな人間だったかは教えられる……。だ、だから鎌鼬は片付けてください」

 ジャックに言われたとおり鎌鼬を片付け、哉惟はジャックを自分の膝の上に座らせる。哉惟の突然の行動に驚くもジャックは生前の佐伊稀について簡単に話しをした。

 モラン曰く、一言で言えば、ふざけた性格をした人間。その性格に困り、何度、殺してやりたいと思ったことか。仕事一筋だったから、連日連夜仕事が続けば、ほぼ不眠不休の生活を送っていた。逆にそれが仇となり、何度、妖怪に命を狙われかけたとモランが説教している姿をジャックはアーサーと何度か見かけたことがあった。説教をするモランは一瞬で凶暴な妖怪を睨み殺すことができるのではと思った。そう思っただけで、怖くて眠れない日々が数日続いたという。今では、冗談で言っても聞く側からしたら、冗談に聞こえないと思う時もある。ジャックは体を震わせながらそう答えた。

「え……。それ、ジャックがただ単にバカだからじゃないの?」

「いやいや、そうだって、あの時、アーサーも一緒にいたから絶対そうだって」

 ジャックは一匹、「これだから話したくなかったんだよー!!」と勝手に嘆き、そのままどこかへ逃げた。

「……相変わらず逃げ足だけは早いんだから……。あ、貴重な読書時間が無くなる!!」

 木の枝から飛び降り、急いで屋敷の中へ消えた。

  *

 それから三時間後、日が傾き、辺りが少し薄暗くなり始めた頃、モランとの戦闘を終えたアーサーが屋敷へ戻ってきた。茶の間で読書中の哉惟に気づいた。

「あれ……哉惟、ジャックは?」

「逃げた」

 それだけで、理由がわかったアーサーは呆れた。

「……おい、また鎌鼬使ったか……。あいつを脅したろ!」

「うん、つい」

「ついってなんだよ……。で……」

「ただいま……。疲れた。今日はもう嫌だ……」

 アーサーの話しをさえぎったのは体が汚れたジャックだった。ジャックは体中いたる所に草をつけて帰宅した様だ。

「お前……体中、草だらけだぞ。体洗って来いよ」

「あ、本当だ。アーサー、水浴びする準備を手伝ってくれないか?」

「まぁ、構わないが」

 二匹の妖怪は水浴びの準備のため、ジャックがたらいをくわえて、屋敷の近くにある井戸へ行った。二匹と入れ違いで、モランが戻ってきた。

「ジャック、何であんなに汚れているんだ?」

「草むらを避けずに走ったみたい」

「またか……」

 呆れたモランは哉惟に話しがあると告げた。哉惟は読んでいたページに栞を挟み、モランの方を向いた。

「で、話しって何?」

「佐伊稀のことだ……。あの時、俺たちはお前に嘘をついたが、もう真実を知っても問題ないだろうとアーサーに言われて話すことにした。幼いお前が悲しむのが嫌だっただけだ」

「親父のことならさっき、ジャックから少し聞いたよ」

「そうか、ジャックと言うことは被るかもしれないが、お前にすべて話す。俺が知る十年前までの佐伊稀という男を」

  *

 モランが佐伊稀と初めてあったのは今から三十年前。佐伊稀が妖怪討伐の仕事をするようになってから数年経ったある日の妖国にある深い森の中。当時、佐伊稀は一人で妖怪討伐の仕事をこなしていたとモランは聞いていた。

 ある日、仕事帰りの途中、佐伊稀は森の中で倒れている男を見つけた。それがモランだった。モランは意識が無かったようで、佐伊稀が呼んでも返事が無かった。妖国の夜は妖怪が森の中で獲物を求め、さ迷う姿が多数目撃されている。狙われたら最後、獲物として、殺されることが多い。モランは佐伊稀の屋敷へは運ばれた。

 翌日の昼頃、佐伊稀が井戸へ水をくみに行ってしばらく、モランの意識が戻った。モランはなぜ、誰かの屋敷で寝ているのかと考えていた。

すると、屋敷の入り口で、壷を脇に抱えた男が「やっと起きたか!」と声をかけてきた。壷を置いた佐伊稀はモランの側へ来た。

「お前、森の中で倒れていたんだぞ!」

 モランはこのとき、佐伊稀があの森を通らなかったら今頃、たちの悪い妖怪に喰われて死んでいたかもしれないと言われ、特に目立った外傷は無いと思うが万が一ということもあるからしばらくはここで休んでいってくれと佐伊稀に言われた。

「俺は仕事があるからあまり屋敷にいない。近所の連中ならお前にいろいろと教えてくれるかもしれない。それにこの国じゃ、あまり見慣れない身なりしているからな。その話しは後で聞くとして、何か食べるか? その前に喉が渇いていないか? 丁度、水を汲んできた帰りだ」

「あぁ……すまない、水を少しくれるとありがたい……」

「ちょっと待っていろ」

 佐伊稀は壷に入った水を湯飲みに注ぎ、モランに渡した。渡された湯飲みを受け取り、ゆっくり飲み干した。

「ありがとう。それに助けていただいて……」

「いやいや、構わないさ、それよりそろそろ朝飯を作るが食欲はあるか?」

「そんなにない」

「そうか……。だが、少しでいいから食べてくれ」

 モランは佐伊稀に少々押され気味だったが、作られた不格好なおにぎりを受け取り一口食べた。

「うまい……」

 今まで無かったはずの食欲が嘘の様に出てきた。

 佐伊稀に助けられ、世話になった数日後、モランは毎日、小さなことからひとつひとつ手伝い始めた。最初は佐伊稀に教えてもらいながらだったが、すぐに慣れたのか佐伊稀が気づいたときすでに作業を終わらせ、次の作業を聞くことが多くなった。

 佐伊稀は一日のほとんどを仕事に費やし、屋敷にいない。そのため、屋敷の事全般はモランが引き受けることになった。なにも知らなかったモランは佐伊稀が、近所の女性たちにモランを紹介し、いろいろと教えてほしいと頼んだので、困ったときは彼女たちに聞いていた。

 そのおかげで、半年もしないうちにモランの料理はこの集落では天下一品と言われるぐらい美味しいと女性たちの間では評判になっていた。気づいた頃には彼女たちから『料理の師匠』と呼ばれていた時期もあったと言う。

  *

 現在に戻る。

「えーっと、ひとつ聞きたいことがあるけど」

「どうかしたか?」

「料理の師匠ですか。モラン、そこまでは上達をしたのですか」

 料理がおいしいことは哉惟も知っている。いつの間にか主夫になっていたのか……と哉惟の顔が言っている。

「しょうがねーだろ。あの時は何もかもが初めてどうしていいのかわからず、気づいたら俺は彼女たちからそう呼ばれていたんだ。ここ数年では師匠と呼ぶ人数が減ってきたが、一部ではまだいる」

「そう。だからと言って、女を悲しませる行動はとったらだめだよ」

 嫌な表情をするモランは哉惟に言った。

「話しはもういいな」

「私は親父の話さえ聞ければいい。それに親父の一番近くにいた人って言ったらモランでしょ?」

「それは確かにそうだが、三十年以上前のことは佐伊稀の昔なじみの妖怪に聞けよ? あいつらの方が俺より知ってるはずだ」

 ジャックより頼りになると言う哉惟にモランは若干呆れていた。ジャックはよく哉惟にバカにされている。哉惟が笑っていると、屋敷の入り口から怒ったアーサーが入ってきた。哉惟が理由を聞くよりも先に、アーサーが答えた。

「ジャックは哉惟のせいで、泣いてどっかに行った。行き先は俺も知らない!」

いい加減、ジャックをいじるな。こっちは毎日あいつのお守りをさせられているみたいで疲れるんだよ! と文句を二人にぶつけ、アーサーはモラン特製の寝床へ体を休めた。一方的な文句を聞き終わった二人は話しの続きをしていた。

「あいつ、冗談も通じない妖怪だね……」

「帰ってきたら繊細(せんさい)なんだから気をつけろとかなんとか泣きながら文句いいそうだな」

 その後、佐伊稀のことで、詳しく知りたいなら、妖怪に聞けばいいとモランに言われた。ジャックのことはそのうち戻るだろうからと放置することになった。哉惟はアーサーがいるから、仕事の支障はないと思った。相手が逃げ足の速い妖怪だったら、少し困ると一瞬考えたが、いないなら仕方がない。自分の使う武器を最大限有効に活用することにし、話しは片づいた。

 結局、ジャックは夕餉(ゆうげ)の時間を過ぎても帰ってこなかった。

「遅いね。帰ってくる気ないなら無理に連れ戻さないけど、どうしようもないね。モラン」

 左隣で、鍋に少しだけ残っている味噌汁を飲もうとしていたモランに訪ねた。

「そうするしかないだろ。それで片はついたんだから」

「そうだよね。アーサー、うるさい」

 哉惟が注意したものの、数分経てば、また物音が聞こえてくる。二人が指摘したが、同じことの繰り返し。なかなか落ち着かないアーサーは部屋中を歩き回りと何度も繰り返している。

「アーサー。本当は探しに行きたいくらい心配なんでしょ?」

「悪いか……」

「悪くないよ。アーサーがそういう性分だってことは私たちがよく知ることなんだから、行きたかったら勝手に行ったって全く問題ないよ」

 アーサーは哉惟の返事には答えず、無言で、屋敷を出て行った。

「世話がやける奴らだな」

「ま、いいんじゃない? 外見が大人と言ってもあいつらはまだ子供。時には親を必要とするから悪くないでしょ」

「そうだな。お前、そろそろ寝ないと明日も仕事があるんだろ?」

「もう、寝るよ。それと明日から親父のことについて色々と知りたい」

「それなら、昔から俺たちと特に仲がいい妖怪を探しておこう。よく(から)んでくる奴がいる。そいつに話しを聞けば、少しはわかるかもしれないな」

 モランはジャックがお腹を空かせて帰ってきても困らないようにアーサーの分も含めて、簡単な夕餉を準備し始めた。

「わかった。私は先に寝るよ」

 哉惟は自室へ戻た。

  *

 翌朝、夕べは何事もなかったかのように茶の間に入ってきた哉惟はモランと本日の予定を確認していた。

「とりあえず、依頼内容によって一度、城へ報告に行く。話しを聞くのはその後で構わないよね?」

「ん? そうだな。あいつはいい奴だからお前が聞きたいことは教えてくれるだろうな。俺たちも昔、妖国の歴史について聞いたことあるが、かなり参考になる答えが返ってきたから役立った」

「それは期待できるね。さてと、そろそろ行きますか。ジャック、アーサー」

 アーサーは先に屋敷の外に出て、ジャックは置物の様に動かなかった。

「ジャック! お前がいないと仕事にならないんだけど。早く来て」

「俺がいなくても、アーサーがいるからいいだろう……」

 哉惟はため息をつき、ジャックに言った。

「昔から人一倍……いや、妖怪だから妖怪一倍努力してたんでしょ? それにジャックとアーサーがいるから私は仕事が要領よくこなせるんだよ。私が、頼りにしているということは親父もそうだけど、モランも感謝していると思うよ? 親父の場合はお前たち一族に感謝だろうけどね」

 今まで不機嫌で、全く動く気配がなかったジャックは諦めた様子で、ゆっくり動き、外で待つ、アーサーの元へ向かった。

「今のところは一先ず安心と言ったところか?」

「ま、昨日のことが原因だから何とも言えない状況だよ。後でまた、けんか腰になるだろうからね。とにかくさっさと仕事を終わらせてくるよ」

 哉惟は巨大化したアーサーの背中に乗り、依頼人が住む東の端にある小さな集落へ向かった。高度が上がるにつれ、集落はどんどん小さくなる。集落へ着くまでの間、ジャックは隅で大人しく座っており、いつもと違うからやりにくいと哉惟は困っていた。

「そういや、俺たち今日の仕事内容を聞いてない」

「ん? 予定は調査が中心。討伐がなければいいけど……。あったら困るよ。特に、そこで普段より大人しくなっているジャックは役に立つからこっちはありがたいんだよ。移動は毎回ありがたいと思っているけど、人助けは君らに悪い言い方かもしれないが、足としてありがたくこき使うよ。一人でも多くの人を助けた分、仕事に集中できるんだよね。まぁ、私には巫女としての能力以外は親父とモランから教わった国の兵士をしのぐ戦闘力だけ。なかったら普通の人間だよ」

「俺たちは重宝されているってわけか。依頼人がいる集落に着いたぞ」

 目的の集落が見えてきた。アーサーは高度を落とし、集落近くの広く何もない所に降りた。哉惟とジャックが降りたのを確認すると、アーサーの周囲に竜巻の様な風が突然起きた。風が止むといつもと変わらないアーサーが近くの木の枝に止まっていた。哉惟が気づくと周囲には集落の住人が野次馬となり、こちらを不思議そうに見ていた。その中の一人の老人が近づいてきた。

「お待ちしておりました。哉惟様ですね。詳しいお話は私の屋敷でお話しします。どうぞこちらへ」

 二匹と一人は長老と名乗った男の案内で、屋敷へ案内された。哉惟は先に話しを切り出した。

「我々は今回、調査という依頼で来ましたが、詳しいことを教えてください」

「ことの始まりは一月(ひとつき)前、この集落の周囲と畑で、妖怪と思われる者を目撃したと多数、私の方へ相談がきています」

 長老の話しによると原因を知ろうと、ここ数日間の夜、危険を承知で数人の男と共に集落周囲など、この集落の住人が所有している土地を一つずつ確認していた。もう、見回りをやめようかと思ったある日、闇夜に浮かぶ、小さな光と妖怪らしき唸り声が聞こえ、姿を確認する勇気もなく、それぞれの屋敷へ逃げ帰った。

「あの晩以来、戸締まりだけはしっかり確認して、寝るようにしていますが……あの光景が私の脳裏にしっかりと焼き付いてしまい……寝るのが怖いのです。お願いです。どうか、どうか私たちが見た者が妖怪か調査をしてください!」

 長老の顔は青白くなり、必死に調査をしてくれるよう、頭を下げてお願いをした。

「頭をあげてください。事情はわかりました。今から妖怪らしき者が現れた場所を調べますので、案内をお願いしたいのですが……よろしいですか?」

「はい。私にできることであれば何なりと……」

「後、もう一つ、一緒に見回りへ行った方からも話しを聞きたいのですが」

「そう言われるだろうと思い、その者たちには後で、ここへ来るように伝えてあります」

「それは助かります。では案内をお願いします。」

 哉惟たちは長老の案内で、妖怪らしき者が出た場所へ向かった。

「このあたりです」

 ジャックは周囲の匂いを嗅いでいた。アーサーは上空からなにかないか調べており、哉惟は周囲に手がかりがないか探していた。

「色んな匂いがするが、人間の匂いに交じってある。俺たちより少しでかい」

「その姿より?」

「歩幅の匂いからするとこの姿よりだな」

「他の匂いは?」

「血の匂い。目撃されたと思われる妖怪の匂い。血は人間か妖怪かわからないからな。それとどこからかはい出てきたみたいだな。こんなところに穴を開けた跡がある」

 近くの雑木林に掘った形跡があった。

「アーサーは何かわかった?」

 哉惟は上空から見ているアーサーに声をかけた。アーサーは近くの木に止まって答えた。

「空からはあんまりたいした手がかりはなかった」

 不安そうな表情をしている長老は哉惟にお願いをした。

「今夜、あれがまたここへ来るかどうかわかりませんが、どうかお助けください」

「一度、長老の屋敷へ戻って、一緒にいた方々の話しを聞いてからにしましょう。場合によっては一度、屋敷戻らなければならないこともありますし、夜までには必ず、お邪魔しますが、それでもいいですか?」

「はい……」

 長老の屋敷に戻るとすでに五人の男たちが待っていた。

「一人ずつ別室でお話を聞きたいのですが、どこかありませんか?」

「今すぐでしたら、客間がありますが……」

「お願いします」

「こちらへどうぞ」

 哉惟はジャックとアーサーをその場に置いて行き、長老の案内で、客間へ向かった。

「では一人ずつこちらへ通してください」

 長老は哉惟の指示通り、一人ずつ客間へ案内した。五人の話しは最初に長老が言っていたことと全く同じ内容だった。全員の話しを聞き終わってからは長老に一旦、屋敷へ戻ることを伝え、帰り道、アーサーの背中で寝転がり、悩んでいた。

「どうした?」

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