成人式
東京の大学に進学して、早二年。
ふるさとの成人式に合わせて帰郷した。
「久し振り~!元気!?」
振袖を着た同級生と再会し、テンションはMAXに達した。
皆それぞれに成長し、それぞれの道を歩んでいるらしい。
「あ、あれ大輔クンじゃない?」
誰かが言った。途端に、みんなが騒ぎ出す。
「え?どこどこ。」
「ほらぁ~、あっちあっち!」
「ってか大輔クンって誰~?」
「あ、そっかクラス違ったから知らないよね~」
「ほら、中学の時すっごいモテてた子!美希が付き合ってたじゃん!」
う…大輔の名前が出た時からうすうす覚悟はしていたけれど、本当に出るとは思わなかった。
そう、大輔と私はかつて付き合っていた。
中学のころ、大人でもなく子供でもないあの頃、付き合っていた。
あの頃は、それが本当の恋愛だと思っていた。
それが愛だと。
小学校のころより少し大人になった自分たちに過剰なまでに自信を持ち、その恋愛が愛なのだと信じ込んでいた。
今から思えば、その恋愛すらもまだまだ子供なのに。
噂話に気づいたのか、大輔が近寄ってきた。
よってこなくていいっつのっ!
と思っている私の気持ちに気づくわけもなく、
「よう!」
と私たちに声をかけた。
「久し振り~今何やってるの?」
「っていうかさ、ますますかっこよくなってない?」
「ほんとほんとっ!なんか大人っぽくなってさー!!」
一斉に話しかけられて一瞬戸惑ったようだが、
「久し振り。ってかそんなにカッコよくなったか?」
と照れたように首筋に手をかけた。
っていうか…
ホントにカッコよくなってない?
付き合っていたころより、中学を卒業したころより、高校を卒業したころより、カッコよくなってない?
そんな大輔にときめく自分に、若干あきれる。
あの恋はもう終わったのだ。
あの純粋で何も知らない恋はもう終わったのだ。と思う。
でも、また新たな恋としてなら?
そう問う自分に苦笑する。
苦笑した瞬間に、大輔と目が合った。
もう一度、自分に問う。
新たな恋としては?
いい、かな?