新しい服と共に 【月夜譚No.375】
久し振りに新しい服を買った。ショッピングモールを歩いていて、偶々目に留まったものに一目惚れをしたのだ。
正直なところ、出費の多いこの時期に買うには少々手痛い価格ではあったのだが、思い切って奮発してしまった。しかし高揚した気分の今では、買って良かったと心から思う。
カフェのテラス席でコーヒーカップを両手に包んだ彼女は、そっと向かいの席に置いた紙袋を見て微笑んだ。
これを着て、何処へ行こうか。今日みたいにショッピングも良いし、少し足を伸ばして小旅行も捨て難い。友人を誘って映画を見にいくのも魅力的だ。
彼女は想像に翼を生やして、未来の楽しみに思いを馳せる。ここのところ明るい話があまりなかったので、心が浮き立つ事柄に飢えているという事情もあった。
(よし、全部やろう)
指折り数えながら、彼女は頬を紅潮させた。
まずは計画から。鞄からスマートフォンを取り出した彼女は、スケジュールアプリを跳ねるようにタップした。




