表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家人 Kajin  作者: サバ缶
5/6

早朝のサプライズ

朝5時 ― 潮見坂(静岡県湖西市)道の駅


運転窓をパタパタと小突く音が聞こえた。


最初は雨風のいたずらかと思って無視した。

再び運転窓を小突くしたが、最初のより大きい。窓の前に人影が立っているのが見えた。

「す、すいませ〜ん」とくぐもった声。


「ふぁ〜い……」

寝袋からモソモソと抜け出した。

服は着たままだから、このまま対応できる。


遮光カーテンを少し開けると、ガラス越しに人影がふたつ見えた。部屋の中を覗かれたくないので、こちらも窓越しに声をかけた。

「何かご用ですか〜?」


ペコリと頭を下げるおじさんと、隣に立つ若い女性。年齢差も服装も、何もかもが釣り合わない感じ。おじさんはジャンパーにスラックス。女性は競輪選手みたいな格好──ピタッとしたスーツにヘルメット、ウェーブした金髪が流れる。選手と監督?


互いに聞き取りにくい。

しぶしぶ運転窓を全開にした途端、湿度を含んだぬるくて重たい風が入り込んできた。7月の朝ってもう暑いんだな。セミの鳴き声、たわいない会話が流れてきた。


「トイレ、掃除中だった「コーヒー買ってきたよ〜」「運転、今日も俺?」とか。


空はすでに淡い水色に染まり始めていて、 売店の前では、観光バスの乗客たちがゆるやかに集まり始めていた。こちらで何やら揉めているのを遠巻きに見てくる人もいる。


まあ、いいや、目の前の問題に集中しよう…


おじさんは道の駅の職員だと名乗った。女性がずずいと前に出てきた。


「ここ、家人用のスペースなんですけど、どっか行ってくれますか?車は車用に停めろ」スマホの音声翻訳で言ってきた。ドライかつ表現がキツい。流暢な英語で音声入力した結果だ、語気の強い英単語でも使ってるんだろか。


「車用に停めろ、だって?! これは、家人だぞ?」しかも、駐車場の端の端。目立たないように、空気読みまくって停めてるんですけど?


俺が早口かつ、発言が多過ぎて、彼女側の翻訳が間に合わない。顎でしゃくって、もう一度話せと促してくる。(態度わりいな…)


「これ、は、家人、です。証明、でき、ます」俺は室内に戻り、冷蔵庫のドアにマグネットで貼り付けておいた「家人証明証」を見せた。


…さあ、誤解はとけた。道の駅の人も安心したらしい。謝罪してくる。彼女は俺の大事なパッチワークを、改造車だと思ったらしい。


それにさっきから巨大な影が被さってくるなと思ったら、彼女の家人が覆いかぶさりそうに立っていた。…ん、これは。


ラビットフット型。足の長い、跳躍力に優れた二足歩行タイプ。全身ピンク。タンデム座席。屋根にはクレーンが付いていた。今は、足の長いピンク色のチョウチンアンコウみたいな姿勢で静止している。


道の駅の人が言うには、あわよくばボクのパッチワークを力付くでレッカー移動しようとしていたらしい。恐ろしい女性だ。


ようやくこれで信じてもらえたようだ。

手足の有無で、こんなに扱いが変わっちゃうのか?


実は俺の家人にも、ちゃんと手足はある。

短足すぎて車輪に隠れてるだけ。


手は左右の壁にドアノブみたいに申し訳程度にぶら下がる。でも、これで家検は通っている。ジョイント箇所は油圧も電装系も備えてる。飾りじゃあない。ちゃんとしている。


「でも良いです、どきます。もう出発するんで…」今度は僕が翻訳機で伝えた。


もう少し惰眠を貪っていたかったが、仕方ない。居心地が悪くなったし、紳士的に振る舞うことにした。


…でも、ここから因縁が始まってしまった。

ウサギとカメの争いが。


---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ