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第一章 五月上旬~五月中旬 6

           6

 隣で春夫と松野の話を聞いていた斜め前の瀬川主任が、左隣の席の渡海に話しかける。


「だけど、こっちだって、問題だよな。してる最中に突然女性の姿をした人間が入って来たら止まっちゃいそうだな」

「確かに。男性と分かっていても緊張しますよね。でも、そうなりそう」

 渡海は、答える。

「日報、お待ちしておりまぁす」

 

 瀬川主任と横並びだが、少し距離を置いている吉村係長の言葉に雑談が止まった。

 

 春夫は日報の用紙を机の上に置いた。営業活動した日は必ず提出する義務がある。訪問先、訪問日時、内容や感想などの他にそれぞれに要した時間も記述する様式になっている。どこの会社においても、営業活動に日報はつきものだが、近年、パソコンで記入、上司に送るシステムが、ほとんどだろう。けれど、フェルシアーノは未だに印刷した用紙に手書きで記入する。


「文房具会社だから紙の報告書で続けようや」という三田部長の方針に基づいているのだ。「仙台サテライト」「名古屋サテライト」「金沢サテライト」「大阪サテライト」「福岡サテライト」の地方の営業担当者も手書きである。書き上げたら、ファクスで当日送る決まりだった。


 日報は、係長に提出、判が押されて課長、部長と渡っていくが、細かくチェックするために課長のところでしばしば停滞する。

本日、春夫の最初の訪問先は、山手線、駒込駅近くの「藤木文具」だった。文字を藤木まで書いた時だった。


「やっちゃうか」

 三田部長の声が春夫の耳に届いた。続いて「そうですね、佐伯君」という自分を呼ぶ営業部営業課と業務課兼任の木川課長の声があった。

「はい」

「ちょっと、打ち合わせテーブルで」

 木川課長は、オフィスの奥に向かって歩いて行く。


 春夫は、フェルシアーノの刻印が印刷された手帳とボールペンを持って木川課長の後に続いた。        


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